昨日に発生したシリア領空侵犯問題についてトルコ大統領は「意図しないものだった」と明言、シリア国内では第1次リヤード・ヒジャーブ内閣が発足(2012年6月23日)

Contents

トルコ空軍戦闘機撃墜をめぐる動き

アナトリア通信(6月23日付)は、トルコのアブドゥッラ・ギュル大統領が「航空機の速度で海上を飛行すれば、短時間で越境してしまうのも当然だ…。これは航空機の速度が原因で意図せずして起きたことだ」と述べた。

ギュル大統領はまた、シリア政府と事件発生後電話で連絡を取ったことを明らかにしたしたうえで、「我々は平静を保たねばならず、挑発的な声明や姿勢を許してはならない」と付言した。

大統領によると、撃墜されたF4戦闘機は、「偵察訓練任務」についており、武器は搭載していなかった。

**

イランの外務省は、アリー・アクバル・サーレヒー外務大臣が23日晩、トルコとシリアに対して自制を求めたと発表した。

**

国連の潘基文事務総長は報道官を通じて、トルコとシリアに自制を求めた。

**

『ハヤート』(6月24日付)は、トルコ空軍機がシリア領海上で撃墜された可能性が高いため、トルコ側が軍事的な報復に出る可能性は低いと報じた。

国内の主な動き

アサド大統領は政令210号を発し、第1次リヤード・ヒジャーブ内閣を発足させた。

ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣、ムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣、ダーウード・ラージハ国防大臣ら主要閣僚は留任し、主要閣僚では内務大臣がウムラーン・ズウビー氏に交替しただけだった。

また進歩国民戦線加盟政党ではない政党・政治組織のメンバーがハーフィズ・アサド前政権発足以来初めて入閣した。

入閣したのは、変化解放人民戦線の代表で人民意思党党首のカドリー・ジャミール議員と、同戦線メンバーでシリア民族社会党インティファーダ派党首のアリー・ハイダル党首の2人で、前者は副首相兼国内通商大臣、後者は国民和解担当大臣。

**

アサド大統領は、ヒジャーブ内閣の発足に合わせて政令第44号を発し、灌漑省を水資源省に再編した。

**

アサド大統領は、ヒジャーブ内閣の発足に合わせて政令第45号を発し、住宅都市開発省と公共事業省を新設した。

**

アサド大統領は、ヒジャーブ内閣の発足に合わせて政令第46号を発し、国内通商消費者保護省と経済対外通商省を新設した。

国内の暴力

ヒムス県では、SANA(6月23日付)によると、タッルカラフ郊外のカルアト・ヒスン市の貯水池近くに武装テロ集団が敷設した爆弾が爆発し、テロリスト多数が死亡した。

**

ダイル・ザウル県では、SANA(6月23日付)によると、ダイル・ザウル市旧空港地区、ハミーディーヤ地区、ウルフィー地区で治安維持部隊と反体制武装集団が交戦し、テロリスト多数を死傷させた。

一方、複数の反体制活動家によると、ダイル・ザウル市内各所で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、少なくとも28人が死亡した。

反体制勢力の動き

『ガド』(6月23日付)は、ヨルダン内閣筋の話として、21日にヨルダン領内にMiG21戦闘機で脱走したハサン・マルイー・ハマーダ大佐の家族が、その数日前にヨルダン領内に入国していたと報じた。

Kull-na Shurakāʼ, June 24, 2012

Kull-na Shurakaʼ, June 24, 2012

**

シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、ヒジャーブ内閣の発足に関して、「非常事態令解除宣言に似た欺き」と非難し、「改革の一部を構成し得るはずない」と断じた。

また変革解放人民戦線から2閣僚が輩出されたことに関して「飼い慣らされた野党」と非難した。

**

『シャルク』(6月24日付)によると、シリア国民評議会報道官のジョルジュ・サブラー氏(執行委員会メンバー)はドーハで開かれたアラブ地域・国際関係に関するフォーラム(6月22、23日開催)で、シリア・ムスリム同胞団が2008年のガザ紛争時に採用した反体制運動凍結を解除し、アサド政権打倒に参加するまでに2ヵ月半も要したとして、対応の遅れを批判した。

レバノンの動き

自由国民潮流代表のミシェル・アウン元国軍司令官は、「シリアのオルターナティブ(反体制勢力)は民主主義を信じておらず、権力を握ったとしても約束を果たさないだろう」と述べた。

諸外国の動き

インテルファクス通信(6月23日付)によると、M25ヘリコプター複数機を積んでシリアのタルトゥース港に向かっていた貨物船MV Alaedは、ムルマンスク港に到着後、近く再出航し、ロシア国旗を掲揚し、タルトゥース港に向かう、と報じた。

**

イラクのホシェル・ゼバリ外務大臣は、スウェーデン外務大臣と共同記者会見で、「我々の最大の懸念はシリアの危機が…周辺諸国に波及することだ。社会的構成や…エスニック・宗派的時限ゆえにこうした波及に耐えられる国はない」と述べた。

またイラクは「シリアでの政治的民主的変革プロセスを支持」しており、国内での暴力に無関心ではないとしたうえで、「政治的変革のプロセスがどのように行われるかに関心がある…。このプロセスは充分検討されたものでなければならず、この問題に関わる国々の国益を保護し、近隣諸国に消極的影響を及ぼさないようにしなければならない」と付言した。

AFP, June 23, 2012、Akhbar al-Sharq, June 23, 2012、al-Ghad, June 23, 2012、al-Hayat, June 24, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 23, 2012, June 24, 2012、Naharnet.com,
June 23, 2012、Reuters, June 23, 2012、SANA, June 23, 2012、al-Sharq, June 24, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.