2012年6月22日のシリア情勢

トルコ空軍戦闘機撃墜をめぐる動き

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、アンカラでの危機管理会合後に声明を出し、シリア領海内でトルコ空軍のF4戦闘機がシリアの防空システムによって撃墜されたと発表した。

SANA, June 22, 2012

SANA, June 22, 2012

声明によると、「関係機関が集めた証拠と、調査救出活動のなかで得た情報を評価した結果、シリアが我々の戦闘機を撃墜したことが判明した…。パイロット2人の調査救出活動は継続されている…。トルコは最終的な態度を近く発表し、この事件に関する事実が完全に明らかになった場合、必要な措置を断固たる姿勢をもって講じる」という。

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トルコ軍参謀本部の声明によると、トルコ空軍機は午前10時30分にトルコ領内のマラティヤを離陸、午前11時58分にハタイ県西南沖で消息を絶った。

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『ハバル・トゥルク』(6月22日付)は、メキシコでのG20参加を終え、帰国の途についていたエルドアン首相が、「シリアはこの事件に関してきわめて真摯なかたちで謝罪し、大きな悲しみの念を示し、事件は過失だったと認めた」と述べ、トルコ空軍機が撃墜されたことを認めたと報じていた。

また同紙は、戦闘機に乗っていたパイロット2人は無事救出され、発見されていないは機体期待だけだと首相が述べたと報じた。

しかし帰国後、エルドアン首相は『ハバル・トゥルク』の報道を否定し、「正確な情報を得るまで、墜落したと断言できない」と述べた。

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シリア軍報道官は、22日午前11時40分、ラタキア西方10キロのシリア領海上を高速低空飛行する未確認飛行物体を対空砲で迎撃・破壊、その後、この飛行物体が領空侵犯したトルコ空軍機だと判明し、その撃墜が国際法に基づく適切な対処だったと発表した。

また、軍報道官は、シリア海軍がトルコ海軍とともに撃墜現場付近でパイロットの救出作業を行っていると付言した。

アサド政権の動き(国内での主な動き)

シリアのワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣はロシアのサンクトペテルスブルグでセルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談した。

SANA(6月22日付)によると、両外相は、アナン特使の停戦案の実施の必要を合意するとともに、いかなる当事者の暴力も停止させるべく努力する必要があることを確認した。

会合には、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官も同席した。

ラブロフ外務大臣は、ムアッリム外務大臣との会談後、ロシア24に対して、アサド政権のアナン特使の停戦案実施に関して、「彼らはこれまで多くのことを行ってきたが、さらに多くのことを行わねばならない」と述べた。

また6月30日に予定されているシリア問題をめぐる国際会議に関して、「政府軍、反体制武装集団の都市部、住宅地区からUNSMISの監視のもと同時に撤退」を求める意向を示した。

そのうえで、「シリア政府はこれを実行する準備がある…。我々は今、反体制勢力にもこのことを実行する準備をさせるために行動しなければならない」と付言した。

アサド政権の退任に固執する西側諸国の姿勢に関しては「政治的な面で非現実的だ…。シリア国民のみが自らの国の行方を決定できるという原則に我々は依拠している」と批判した。

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キリスト教カルディア派アレッポ司教区長のアントワーン・アウドゥー司教は東方教会支援会合出席のために訪問したローマで、西側メディアのシリア報道に関して、「アラブの春という動きのなかで報じているが、実際にはより複雑で、より慎重かつ公正に報じるべき」と批判した。

国内の暴力

アレッポ市などで小規模な反体制デモが発生し、治安部隊が強制排除した。一方、反体制武装組織と軍・治安部隊が引き続き交戦し、死傷者のほとんどはこの交戦によるものだった。

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アレッポ県では、SANA(4月22日付)がダーラ・イッザ市で武装テロ集団が市民多数を誘拐し、虐殺したと報じた。

また反体制武装集団がアレッポ市の検問所を襲撃し、治安維持部隊兵士2人を殺害した。

一方、シリア人権監視団によると、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と反体制武装集団がダーラ・イッザ市で交戦し、兵士16人が死亡した。

またバーブ市では治安部隊が発砲し、1人を殺害し、クルド山のアイン・アラブ市では、軍・治安部隊と反体制武装組織が交戦し、3人が死亡した。

さらにアレッポ市郊外で反体制武装集団の要撃により「シャッビーハ」26人が殺害されたと発表した。

反体制デモに関して、シリア人権監視団は、アレッポ市サラーフッディーン地区でのデモに治安当局が無差別発砲し、子供を含む9人が死亡した、と発表した。

またアンマン在住の反体制活動家がロイター通信(6月22日付)に語ったところによると、アレッポ市内でサアドッラー・ジャービリー広場に向かってデモ行進を行っていた数千人に向けて、治安部隊の発砲し、多数が負傷した、という。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バーブ・アムル地区周辺で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、後者の戦闘員1人を含む2人が死亡した。

シリア赤新月社と赤十字国際委員会は、すべての当事者に対して、ヒムス市旧市街に取り残された住民、負傷者などの搬出に協力するよう呼びかけた。

一方、シリア人権ネットワークは、ヒムス市内のメンバーの話として、軍・治安部隊の砲撃により、赤十字国際委員会とシリア赤新月社の医療チームが旧市街での負傷者らの搬出作業を阻止されていると発表した。

反体制デモに関して、シリア人権監視団によると、ヒムス市クスール地区でデモが断行されたという。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で治安部隊の発砲により15歳の少年が死亡した。

一方、SANA(6月22日付)によると、シリア赤新月社ダイル・ザウル支部のバッシャール・ユースフ救急医が、ダイル・ザウル市で武装テロ集団に撃たれ、死亡した。

また同市では、治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト1人が死亡、多数が負傷した。

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ダルアー県では、軍・治安部隊の砲撃により、カラク村で4人が、ムハッジャ村で女性1人が、ブスル・ハリール市で1人が、ナーフタ町で1人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊の砲撃により、ダーライヤー市で1人が、ザバダーニー市で1人が死亡した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、タダームン区で治安部隊の発砲により1人が死亡した。

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シャーム・ニュース・ネットワーク(6月22日付)は、反体制武装集団55人が各地で殉教したと報じた。

諸外国の動き

国連のアナン特使は、ジュネーブでの記者会見で、6月30日に開催予定の国際会議に関して、「イランは解決策の一部でなければならない」と述べ、参加を求める意向であると述べた。

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レオン・パネッタ米国防長官は、ロイター通信(6月22日付)に対して、「現段階でシリアの反体制勢力への武器支援は行わないと決定した…。現在もっとも重要なのはみなが責任を伴った政治的転換に全力を注ぐことで、それが実現しない場合、恐るべき内戦に突入するような…真の危機が生じる」と述べた。

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米国務省のビクトリア・ヌーランド報道官は、MiG21戦闘機でヨルダンに脱走した空軍パイロットの離反を「きわめて勇敢」と賞賛した。

またロバート・フォート米大使も、フェイスブック(6月22日付)で、この空軍パイロットの離反を「勇敢な行為」と讃えた。

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フランス外務省報道官は、MiG21戦闘機でヨルダンに脱走した空軍パイロットの離反に関して「歓迎する」としたうえで「この脱走は、軍・治安部隊に引き続き離反するよう我々が呼びかけることを促している」と述べた。

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国際連合人道問題調整事務所は、150万人がシリア国内で人道支援を必要としていると発表した。

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英国当局は、シリア・オリンピック委員会のムワッファク・ジュムア委員長(少将)へのビザ発給を拒否した。

BBC(6月22日付)が報じた。

ジュムア委員長とアサド政権との関係がビザ発給拒否の理由。

AFP, June 22, 2012、Akhbar al-Sharq, June 22, 2012、AKI, June 22, 2012、al-Hayat, June 23, 2012、Kull-na Shurakāʼ, June 22, 2012、Naharnet.com, June 22, 2012、Reuters, June 22, 2012、SANA, June 22, 2012、SNN, June 22, 2012などをもとに作成。

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