2012年6月21日のシリア情勢

空軍パイロット脱走

ヨルダンのサミーフ・ムアーイタ広報担当大臣は、シリア空軍のMiG21戦闘機がヨルダン領内に着陸したことを明らかにし、「内閣はシリア人パイロット、ハサン・マルイー・ハマーダ大佐の要請に基づき政治亡命を認めることを決定した」と発表した。

Akhbar al-Sharq, June 21, 2012

Akhbar al-Sharq, June 21, 2012

ヨルダン武装部隊総司令部の高官によると、同戦闘機は21日午前10時45分にヨルダン領空に進入した、という。

またヨルダン内閣筋によると、戦闘機はヨルダン領空を侵犯した後、フサイン国王空軍基地に強制着陸させられた。

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シリアの国防省は空軍パイロットのヨルダンへの脱走に関して、「パイロットのハマーダは任務から逃れた、祖国と軍の栄誉に対する裏切り者だ…軍の規則および法律に沿ってこうした行為に科せられる処罰を受けることになるだろう」と発表した。

国防省によると、同戦闘機が午前10:34に訓練中にヨルダン国境で連絡を絶った。

声明では「ヨルダンの各方面に戦闘機の返還を求めるための連絡を行っている」ことが付言された。

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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー報道官は、ハマーダ大佐によるMiG21での脱走に関して、「ダルアー・スワイダー間の軍の飛行場から戦闘機が離陸し…、離反したパイロットはレーダーによる追跡を避けるため、単独で高速低空を行った」と述べた。

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シリア国民評議会は声明を出し、MiG21戦闘機による空軍パイロットの脱走・亡命を歓迎した。

国内の暴力

ヒムス県では、赤十字国際委員会とシリア赤新月社の医療チームが、ヒムス市旧市街に取り残された病人、負傷者、女性、子供を搬出するため同市に入ろうとしたが、発砲を受け退却した。

赤十字国際委員会のヒシャーム・ハサン報道官が発表した。

ヒムス市では赤十字国際委員会とシリア赤新月社の医療チームによる活動のため、シリア軍、反体制武装集団が戦闘停止することを確認していた。

外務在外居住者省高官は、SANA(6月21日付)に対して、搬出作業は市内に立て籠もる武装テロ集団によって阻止されたと非難した。

一方、シリア人権監視団によると、ヒムス市で13人が死亡した。犠牲者のうち10人はダイル・バアルバ地区で、3人はハーリディーヤ地区で、軍・治安部隊の砲撃・銃撃により死亡した、という。

またクサイル市では軍・治安部隊の掃討作戦で2人が死亡したという。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、インヒル市で10人が死亡した。

うち9人は砲撃による犠牲者だという。

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ダマスカス郊外県では、ドゥーマー市などで軍・治安部隊による掃討作戦や反体制武装集団との戦闘が続いた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アターリブ市で軍・治安部隊の砲撃により1人が死亡、またダーラ・イッザ市での軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦で1人が死亡した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アルマナーズ市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、後者の戦闘員複数が死亡した。

レバノンの動き

ナハールネット(6月21日付)によると、シリア領内からベカーア県ヘルメル郡ムシャッラフィーヤ村にRPG弾4発が撃ち込まれた。

イスラエルの動き

イスラエルのダニー・アヤロン国防副大臣は訪問先のパリで記者団に対して、「長く待てば待つほど、混乱と犠牲は増えるだろう…。シリア情勢を鏡のように映し出すレバノンとイランに戦争が波及することは危険である」と述べ、西側とロシアに混乱拡大回避のためのボスニア・モデルに沿った介入を呼びかけた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は「モスクワのこだま」ラジオ(6月21日付)で、「暴力停止と政治プロセスに先立って(シリア)大統領の退任を義務づける案は、当初から機能しない案だ。大統領は退任しないであろうから実行不可能だ」と述べた。

また反体制運動の弾圧に利用可能な攻撃ヘリを輸送していると英国が疑惑を向けている貨物船MV Alaedについて、「船は防空システムを積んでいたが、それは外国からの攻撃に対してのみ用いられるものであり、平和的デモの参加者に対するものでない…。(同船舶は)修理を終えたヘリコプター3機も積んでいた」と述べた。

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ロシア外務省報道官は記者会見で、貨物船MV Alaedに関して、「シリア側に所有権があるM25ヘリコプター複数機を積んで、(シリアを)6月11日に出港した。修理作業後にシリアに引き渡されるだろう」と述べた。

MV Alaedはスコットランド沖合で19日に発見された後、貨物船の護衛を請け負っていた英国企業が契約を破棄したため、タルトゥース港への航行を中断し、ムルマンスク港に帰港中だという。

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『デイリー・テレグラフ』(6月21日付)は、英国のデビッド・キャメロン首相が、武器を輸送しているとされるロシア船籍(英国領海に向けて航行中)を特殊部隊によって攻撃・阻止することを検討していたと報じた。

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『ニューヨーク・タイムズ』(6月21日付)は、CIAのエージェントが、アル=カーイダに武器が流入していないことを確かめるべく、トルコ領内でシリアの反体制勢力への武器供与を監視している、と報じた。

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アラブ連盟のアフマド・ベン・ヒッリー事務次長は、「あらゆる暴力支援は停止されねばならない」と述べ、ロシア政府にアサド政権への武器供与を停止するよう求めるとともに、アナン特使による停戦プロセスの強化を訴えた。

インテルファクス通信(6月21日付)が報じた。

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米国務省のビクトリア・ヌーランド報道官は、ジュネーブでの開催が検討されているシリア情勢に関する国際会議へのアサド大統領の出席の安全を保障しようとしているとの『ガーディアン』(6月21日付)の報道を「正しくない」と否定した。

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スイスのデディエ・ブルカルテール外務大臣はスイス紙に対して、アナン特使と連絡し、シリア情勢をめぐる国際会議の招致を行っている、と述べた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、シリア国民評議会の使節団16人と会談、7月2、3日にカイロの連盟本部でシリアの反体制勢力の拡大会合を開くと発表した。

AFP, June 21, 2012、Akhbar al-Sharq, June 21, 2012、The Daily Telegraph, June 21, 2012、al-Hayat, June 22, 2012、Kull-na Shurakāʼ, June 21, 2012、Naharnet.com, June 21,
2012、The New York Times, July 21, 2012、Reuters, June 21, 2012、SANA, June 21, 2012などをもとに作成。

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