2012年6月19日のシリア情勢

国内の主な動き

シリアのブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官はモスクワを訪問し、ミハイル・ボクダノフ外務副大臣と会談した。

RT(6月19日付)によると、会談では、アナン特使の停戦案実施を保障するためにロシアが提案している国際会議に関して集中的に意見を交換した。

一方、シャアバーン大統領府政治情報補佐官は、シリア、イラン、ロシア、中国が軍事演習を行うとのファルス通信(6月18日付)の報道内容を否定した。

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シリアの外務在外居住者省は声明を出し、ヒムス市での反体制武装集団掃討作戦に関して、住民を安全な場所避難させるべく地元当局が努力を行っているとしたうえで、当局はそのためにUNSMISと連絡調整を行い、協力をめざしたが、「武装テロ集団がこの努力を妨害」しているため、この試みはいまだ成功していないと述べた。

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『クドス・アラビー』(6月19日付)は、シリアのダーウード・ラージハ国防大臣が6月14日にモスクワを秘密裏に訪問し、アナトーリー・セルジュコフ国防大臣と両国の軍事関係について協議したものと思われる、と報じた。

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ロイター通信(6月19日付)は、ヒムス市での弾圧時に略奪された商品が売られる「スンナ派市場」と称される闇市が横行している、と報じた。

同報道によると、「スンナ派市場」では、政権支持者が略奪した雑貨、衣類、家具などが売られている、という。

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SANA(6月19日付)によると、人民議会が、一般的自由、人権、女性・家族・児童の権利、若者の権利、報道・出版・発行に関する新たな常設委員会の設置を可決した。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、旧市街、カラービース地区に対する軍・治安部隊の掃討作戦が続き、反体制武装集団の戦闘員1人を含む2人が死亡した。

またバーブ・アムル地区近くで軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦した。

自由シリア軍のナースィル・ナハール氏によると、「戦況は厳しく…、我々はまだバーバー・アムルに入っていない」。

ラスタン市でも、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊の砲撃で1人が死亡した。

一歩、SANA(6月19日付)によると、レバノン領内からクサイル地方に潜入しようとしていた武装テロ集団と当局が交戦し、テロリスト多数を殺害、レバノン領内に追い返した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、「何者」かがクーラ市の石油パイプラインを爆破した。

SANA(6月19日付)はこの爆破に関して、石油大臣高官の話として、武装テロ集団の犯行と断じた。

また、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市ジャウラ地区に軍・治安部隊が突入し、3人が死亡した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市スッカリー地区で夜間デモが発生し、治安当局が強制解除、その際1人が死亡した。

またアアザール地方では、軍・治安部隊と反体制武装集団の交戦で1人が死亡した。

一方、SANA(6月19日付)によると、アレッポ市アズィーズィーヤ地区で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、建設作業員2人が死亡した。

「アフバール・シャルク」(6月20日付)によると、アレッポ市の裁判所内で「自由弁護士」の一団が「革命」との団結を訴えて示威活動を行った。

http://www.youtube.com/watch?v=KxSsz4gn738&feature=share

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市での軍・治安部隊の掃討作戦により、子供1人を含む5人が死亡した。

一方、SANA(6月19日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊が武器を車に積んで逃走中の武装テロ集団を追撃し、全員を殺害した。

またランクース市・ザバダーニー市間で、武器を密輸しようとしていた武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、テロリスト4人を殺害した。

さらにクドスィーヤー市では武装テロ集団が民家を襲撃し2人を殺害した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、対トルコ国境地帯で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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ハマー県では、SANA(6月19日付)によると、ハマー市クスール地区で軍・治安部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト多数が死傷、逮捕された。

反体制勢力の動き

自由シリア軍国内合同司令部のカースィム・サアドッディーン大佐は声明を出し、クルド人に対して、「不正」を打倒するための運動に参加するべく、自由シリア軍に参加するよう呼びかけた。

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シリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長とシリア・クルド民主党(アル・パールティー)のアブドゥルハキーム・バッシャール書記長(シリア・クルド国民評議会代表)は共同声明を出し、反体制勢力統合のための常設調整合同委員会に関するワーキングペーパーに署名したとの一部発表(6月13日)を否定した。

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シリア人権監視団は、ヒムス市内で2,000世帯以上が避難できずに砲撃にさらされていると指摘し、国連、アラブ連盟、人権団体などに対して、ヒムス市でのシリア国民に対する暴力を体系的に停止するための充分な措置を講じるよう呼びかけた。

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シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン前事務局長は『シャルク・アウサト』(6月19日付)に対して、「我々はムードがそうすること(UNSMISの活動停止)を期待していなかった。なぜなら求められていたのは、負傷者救出のための殺戮停止、シリア政府によるアナン特使停戦案履行だったからだ」と不満を吐露した。

UNSMISをめぐる動き

UNSMISのロバート・ムード司令官は国連安保理にシリアでの活動に関する報告を行った。

報告のなかでムード司令官は、UNSMISが連日、300~400メートルの距離から「間接的に発砲」を受け、車輌9台が損害を受けた、と述べた。

外交筋によると、UNSMISは数百回にわたって標的になった、という。

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ヘルヴェ・ラドス国連平和維持活動担当事務次長は安保理でのムードUNSMIS司令官の報告後に声明を出し、UNSMISをシリアに引き続き駐留させると発表した。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は安保理でのムードUNSMIS司令官の報告後に記者会見を開き、安保理の一部の国が当初からアナン特使の停戦案を頓挫させ、国連憲章第7章に基づく強引な介入を狙っていた、と非難した。

諸外国の動き

AFP(6月19日付)は、イラクに避難したシリア人(クルド人)のほとんどが同国内の避難民キャンプで「静かに」暮らしていると報じた。

イラクにはドホーク県ドゥマイズ・キャンプ(1,500人)などに約5,400人のシリア人が避難生活を送っている。

なお周辺諸国に避難したシリア人の総数(推計)は86,000人。

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シリア国民評議会のニザール・ヒラーク氏(ヨルダン在住)はAFP(6月19日付)に対して、ヨルダンへのシリア人の入国が新たに制限されるようになっている、と述べた。

ヨルダンには2011年3月以降、12万人以上のシリア人が入国した、とされている。

G20閉幕

バラク・オバマ米大統領は、メキシコ(ロスカボス)でのG20閉幕時、記者団に対して「現段階で、米国をはじめとする国際社会はロシアと中国の立場を支持していると述べることはできないが、(シリアが)全面内戦の危機にあることを両国が認識すると確信する」と述べた。

オバマ米大統領はまた「アサドは完全に正統性を失っており、彼を権力の座に残したかたちでのいかなる暴力の解決をイメージすることは残念ながらできない」と述べ、反体制武装集団のテロ活動を事実上黙認した。

そのうえで「(露中がシリアでの)虐殺を黙認できるとは思っていない。シリアに暴力停止の仕組みを案出し、正当な政府を発足することがすべての人々の利益になると両国は考えているだろう」と述べた。

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英国のデビッド・キャメロン首相は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領がアサド大統領の退陣を望んでいないと述べた。

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しかし、プーチン大統領はキャメロン首相の発言をただちに否定し、「シリア人だけが、アサド大統領が留まるか去るかを決めねばならない」と反論した。

そのうえで、すべての当事国が交渉のテーブルにつき、対話を通じて危機を解決すべきだと主張した。

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フランスのフランソワ・オランド大統領は、「ロシアはシリアの移行期間を円滑に進めるうえで役割を果たしている」と一定の評価をした。

AFP, June 19, 2012、Akhbar al-Sharq, June 19, 2012, June 20, 2012、al-Hayat, June 20, 2012, June 21, 2012、Kull-na Shurakāʼ, June 19, 2012、Naharnet.com, June 19, 2012、al-Quds al-ʻArabī, June 19, 2012、Reuters, June 19, 2012、SANA, June 19, 2012, June 20, 2012、al-Sharq al-Awsaṭ, June 19, 2012、UPI, June 19, 2012、Youtube, June 19, 2012などをもとに作成。

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