シリア革命反体制勢力国民連立のジャルバー議長がジュネーブ2会議に参加するにあたっての3つの条件を提示、西クルディスタン人民議会がシリア北東部地域での自治を行うための「社会契約憲章」(憲法)の承認を発表(2014年1月10日)

Contents

反体制勢力の動き

シャームの民のヌスラ戦線の福祉総局は声明を出し、アレッポ県住民に福祉を提供するための人材が不足していると発表、「報道、電気、水道、パン、清掃といった領域」で専門職員多数を任命する必要があると訴えた。

Kull-na Shuraka', January 10, 2014

Kull-na Shuraka’, January 10, 2014

**

シリア自由人旅団は声明を出し、同旅団がアブー・バクル・バクダーディー氏を支持する人々の家族を中傷しているとの噂を「ダーイシュのシャッビーハ」が広めることで、ムジャーヒディーンを貶めようとしていると批判した。

**

イスラーム戦線のイスラーム・アッルーシュ報道官はクッルナー・シュラカー(1月10日付)に対して、スペインで開催予定の反体制勢力による会合(コルトバ大会)に出席するとの情報は事実無根だと述べた。

**

シリア・ムスリム同胞団は「ジュネーブ2会議への公式の姿勢」と題した声明を出し、政権による殺戮停止、逮捕者釈放、包括的支援プロセス介し、安全保障回廊の設置、包囲されている都市・村の包囲解除を、大会参加のコンセンサスとする必要があると主張した。

**

『ハヤート』(1月11日付)などは、信頼できる複数の消息筋の話として、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長が11日にパリで開催されるシリアの友連絡グループ外相会議で、ジュネーブ2会議参加に関して三つの条件を示す、と報じた。

三つの条件とは、①軍が包囲する地域の包囲解除、②人道回廊の設置、③アレッポ市などへの「樽爆弾」による爆撃の停止。

Rihab News, January 11, 2014

Rihab News, January 11, 2014

**

西クルディスタン人民議会のシールザード・ヤズィーディー報道官は『ハヤート』(1月11日付)に、クルド人が多く住むシリア北東部地域での自治を行うための「社会契約憲章」(憲法に相当)が9日に合同移行期局結成総評議会において承認されたことを明らかにした。

ヤズィーディー報道官によると、1月15日に、ハサカ県カーミシュリー市で予定されている次回の合同移行期局結成総評議会で、西クルディスタン移行期民政局評議会(自治政府)の発足が宣言される予定だという。

またリハーブ・ニュース(1月11日付)によると、西クルディスタン人民議会(民主統一党)のアサーイシュ総司令部が、シリア北西部の住民に独自のIDカードを発行した。

このIDカードは、住民への福祉提供を円滑に進めることなどを目的としているという。

**

シリア人権監視団は、1月3日から10日までのアレッポ県、イドリブ県、ラッカ県、ハマー県での、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と、イスラーム戦線、ムジャーヒディーン軍、シリア革命家戦線などとの戦闘で、482人が死亡したと発表した。

このうち民間人は85人、イスラーム戦線などの戦闘員は240人、ダーイシュの戦闘員は157人で、民間人の多くはダーイシュによって殺害、処刑されたという。

国内の暴力

アレッポ県では、AFP(1月10日付)が活動家の話として伝えたところによると、第46連隊基地周辺、カフルハラブ村周辺、シャイフ・アリー村、ナッカーリーン村周辺で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と、反体制武装集団が交戦した。

一方、アレッポ市タッラト・シャイフ・ユースフでは、軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員が、シャームの民のヌスラ戦線をはじめとするサラフィー主義武装集団と交戦した。

他方、SANA(1月10日付)によると、クワイリス村、フライターン市、マアーッラト・アルティーク村、アレッポ中央刑務所北部、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)、ハーン・アサル村、アズィーザ村、アレッポ市サイイド・アリー地区、ブスターン・カスル地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ラッカ県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がラッカ市マシュラブ地区およびウワイス・カルニー廟モスクに設営されていたシャームの民のヌスラ戦線本部を襲撃、一時制圧した。

その後、ダーイシュはマシュラブ地区、ヌスラ戦線本部から撤退、マシュラブ地区西側の検問所に再集結したという。

またラッカ市フィルドゥース地区でも、ダーイシュとヌスラ戦線が交戦、戦闘はマンスール通り、サイフ・ダウラ通りにまで拡大した。

さらに、対トルコ国境のタッル・アブヤド市でも、ダーイシュとイスラーム戦線などが交戦した。

これに関して、アレッポ県で活動するアラーッディーンを名乗る活動家は、AFP(1月10日付)に対し、「自由シリア軍」がアレッポ、イドリブ県で進軍を続けているもの、ダーイシュは、ラッカ県への兵站路を確保し続けることで、同県での優位に立っていると述べた。

**

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、未明から早朝にかけて、ヒムス市各所で包囲解除を試みようとする反体制武装集団と軍が交戦、反体制武装集団戦闘員45人が殺害された。

一方、SANA(1月10日付)によると、ラスタン市、ヒムス市ワアル地区、スフナ市東部で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ラビーア町一帯で、軍が「樽爆弾」を投下し、少なくとも3人が死亡した。

一方、SANA(1月10日付)によると、サルマー町、カルズ村、ナワーラ村、ハーン・ジャウズ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とシャームの民のヌスラ戦線の外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区に軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(1月10日付)によると、ジャウバル区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市に軍が砲撃を加える一方、サイイダ・ザイナブ町周辺で軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(1月10日付)によると、ドゥーマー市、ダーライヤー市、アーリヤ農場、ヒジャーリーヤ農場で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

また、Syria-News(1月10日付)によると、サクバー市で、シャリーア委員会打倒と地元評議会解体を求めるデモが発生し、多数の住民が参加し、「反体制勢力が人道支援物資を独占している」と非難した。

**

ハマー県では、カーファート村で9日した反体制武装集団による「テロ攻撃」の犠牲者の葬儀が行われ、多数の住民が参列した。

SANA, January 10, 2014

SANA, January 10, 2014

一方、SANA(1月10日付)によると、ハディーラ村、ウカイリバート町で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

SANA, January 10, 2014

SANA, January 10, 2014

また、SANA(1月10日付)によると、会葬者たちは、「テロに対決するための挙国一致強化の必要」を訴えた。

同報道によると、「テロ攻撃」はサラフィー主義者ナースィル・ムーサーによる自爆攻撃によるものだったという。

レバノンの動き

ナハールネット(1月10日付)によると、北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区で、武装集団が軍車輌に発砲し、兵士3人が軽傷を負った。

イラクの動き

イラク軍・治安部隊合同司令部は、ニナワ県モスル市で、イラク軍第二師団がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の拠点を攻撃し、同市東部を統括するダーイシュ司令官1人を含む3人を殺害した、と発表した。

**

イラク空軍のアンワール・ハマ・アミーン司令官は、アンバル県でのイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)掃討作戦に関して、航空機によりダーイシュの能力の60%を破壊した、と発表した。

アミーン司令官によると、イラク空軍は1日400回以上の飛行を行い、ダーイシュの拠点などを爆撃しているという。

イラキー・ニュース(1月10日付)が伝えた。

諸外国の動き

ドーアン通信(1月10日付)は、トルコのアダナ県警察がハタイ県に向かおうとしていたバス2台に隠されていた武器・弾薬を発見、押収したと報じた。

**

国連の潘基文事務総長は『ハヤート』(1月11日付)に対し、ジュネーブ2会議の目的がジュネーブ合意(2012年6月)の実施、とりわけ移行期統治機関(移行期政府)の設置にあるとしたうえで、「さまざまな解釈や期待があるが、すべての国、当事者がそのために行動しなければならない。これこそが大会の最優先事項だが、プロセスは容易ではないだろう」と述べた。

**

ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、記者団に対し、シリアの反体制武装集団への「非殺傷兵器の支援再開に関していまだ決定を下していないが、シリア北部において文民の当事者への武器以外の支援は再開した…。これは穏健な反体制武装集団への支援ではなく、我々の支援の安全保障に関わる問題だ」と述べた。

**

国際赤十字委員会のピーター・マウラー総裁がダマスカスに到着した。

ロイター通信(1月10日付)によると、マウラー総裁はダマスカス滞在中、シリア政府高官らと会談し、軍が包囲する地域などでの医療活動などについて協議するという。

**

パレスチナのガザ地区のジャバーリヤー・キャンプにあるフラファー・モスク周辺で、金曜礼拝後に、ヤルムーク・パレスチナ難民キャンプとの連帯を訴えるデモが行われ、ハマースの支持者らが参加、包囲解除などを要求した。

AFP(1月11日付)が伝えた。

AFP, January 10, 2014、AP, January 10, 2014、Champress, January 10, 2014、Doğan Haber Ajancı, January 10, 2014、al-Hayat, January 10, 2014、Iraqinews.com, January 10, 2014、Kull-na Shuraka’, January 10, 2014、Naharnet, January 10, 2014、NNA, January 10, 2014、Reuters, January 10, 2014、Rihab News, January 11, 2014、SANA, January 10, 2014、Syria-news.com, January 10, 2013、UPI, January 10, 2014などをもとに作成。

 

(C)青山弘之 All rights reserved.