2014年1月11日のシリア情勢

反体制勢力の動き

イスラーム戦線の政治委員会は、シリアのクルド人に宛てて声明を出し、アサド政権を支持して戦闘に参加しないよう呼びかけるとともに、民主連合党をアサド政権の手先と批判、「政権を支える党部隊(民主連合党)に対する戦争」を行うと宣言した。

Kull-na Shuraka', January 11, 2014

Kull-na Shuraka’, January 11, 2014

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スワイダー県軍事評議会に属すスルターン・バーシャー・アトラシュ大隊は声明を出し、自由シリア軍参謀委員会からの援助不足、「サラフィー主義者の陰謀」を理由に、武装闘争を停止すると発表した。

スルターン・バーシャー・アトラシュ大隊は2011年12月7日に「シリア国民の防衛と救済」を目的に結成され、ダルアー県、スワイダー県などで活動してきた。

結成時の司令官はハルドゥーン・ザインッディーン中尉で、同中尉戦死後は、弟のファドル・ザイン・ディーン中尉が司令官を務め、スワイダー軍事評議会の傘下で活動してきた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長はシリアの友連絡グループ(ロンドン11)外相会議に出席するためパリを訪問した。

会議に先立って、ジャルバー議長は、サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣、UAEのシャイフ・アブドゥッラー・ビン・ザーイド外務大臣、カタールのハーリド・アティーヤ外務大臣、ヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣、エジプトのナビール・ファフミー外務大臣、フランスのローラン・ファビウス外務大臣と相次いで会談し、ジュネーブ2会議への対応などについて協議した。

このうちファビウス外務大臣は、ジャルバー議長との会談で、ジュネーブ2会議に関して、権力移譲プロセスにおけるアサド大統領の役割を認めないとの姿勢を確認したという。

クッルナー・シュラカー(1月11日付)が伝えた。

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自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長は『ハヤート』(1月12日付)に、ジュネーブ2会議の参加の是非に関して「シリア国民反体制勢力国民連立の同胞にとって周知の条件のもと…犯罪者バッシャールが去るという枠組みのなかで…連立が参加することを望んでいる」と述べた。

またイスラーム戦線について「その構成組織のほとんどは参謀委員会の枠内にいたが、戦線結成発表直前に、参謀委員会から身を引いた。しかし彼らは、我々が彼らと確固たる協力関係にあることを知っている。前線においてイスラーム戦線と完全なかたちで調整を行っている。我々に出来ることは…兵站支援を行うことだ…。イスラーム戦線だけでなく、ムジャーヒディーン軍など、国内で活動するそれ以外の勢力に対してもだ。彼らは基本的には自由シリア軍だ。彼らは参謀委員会ともに常に活動している」と述べた。

そのうえで「自由シリア軍は今、イドリブ郊外、アレッポ市および郊外、ラッカ、ダイル・ザウル、ハサカでイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と戦っている。ダーイシュからアレッポは完全に解放され、イドリブの一部も解放された。この戦いが早急に終わり、反体制軍事活動に再び集中できることを望んでいる」と述べた。

一方、アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長などの再選後に参謀委員会代表がシリア革命反体制勢力国民連立から離反したことに関して「連立との会合で、我々は軍人であり、現在も体制打倒後もいかなる地位も欲していないと我々は言ってきた。また私は、我々が包括的な政治組織を承認すると述べてきた。しかし残念なことに、そのためには、さらなるケアが必要で、彼ら自身が互いにどのように協力し合うかが指導される必要がある」と述べた。

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ムハンマド・リヤード・ヒジャーブ元首相はシリア公務員国民自由連合に宛てたメッセージで、シリア革命反体制勢力国民連立脱会について「連立内の活動の地平を支配する曖昧な状況」が理由だったと説明した。

ヒジャーブ元首相は1月4日に連立の代表メンバーとして加入、その2日後の6日の議長選挙で落選した直後にムスタファー・サッバーグ前事務局長らとともに連立脱会を宣言していた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ前議長はフェイスブック(1月11日付)で、シリアの危機の政治的解決のため、反体制勢力にジュネーブ2会議に出席するよう呼びかけた。

シリア政府の動き

SANA(1月11日付)は、ハマー県の関係当局が、「最近の事件に関与したが、捜査の結果殺人を犯していないことが判明し、今後、シリアの治安に抵触するいかなる行為も行わないと誓約した61人」の身柄を釈放したと報じた。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表はマヤーディーン・チャンネル(1月11日付)に「人々にテロを煽動し、ジハードを訴えてシリアにテロリストを送り込むことに骨の髄まで関与している」と非難した。

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シリア民族社会党インティファーダ派党首のアリー・ハイダル国民和解問題担当大臣は、ラタキア市で「第1回シリア政界対話会合」を開催し、シリアの現下の危機を脱却するための方途について議論した。

SANA, January 11, 2014

SANA, January 11, 2014

同会合には、シリア国内で活動する以下の11の政党・政治組織の代表が参加した。

進歩国民戦線加盟政党(連立与党):バアス党、シリア共産党ニムル派、アラブ社会主義連合党、シリア国民誓約党、統一社会民主主義党、アラブ民主連合党
変革解放人民戦線加盟政党(連立与党):シリア民族社会党(インティファーダ派)、人民意思党
野党:民主前衛党、団結党、国民民主党

SANA(1月11日付)が伝えた。

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム(ダーイシュ)の拠点の一つであるサラーキブ市周辺で、ダーイシュとイスラーム戦線などからなる反体制武装集団が交戦した。

反体制武装集団はダーイシュの拠点制圧をめざしているという。

またサラーキブ市内では、反体制武装集団の車輌が地雷に触れ、戦闘員5人が死亡した。

しかし、これに関してAFP(1月11日付)は活動家の話として、ダーイシュの戦闘員がシャーム・イスラーム自由人運動のピックアップ・トラックに爆弾を仕掛け自爆したと報じた。

一方、SANA(1月11日付)によると、サラーキブ市、マアッラト・ヌウマーン市、バスィーダー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

これに関して、シリア革命総合委員会は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がサラーキブ市内のイスラーム戦線本部に対して自爆攻撃を行ったと主張した。

また同委員会は、サラーキブ市でのダーイシュとイスラーム戦線などの交戦に関して、シリア軍がイスラーム戦線司令官の住居を砲撃するなどして側面支援している、と主張した。

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ラッカ県では、Syria-news.com(1月11日付)がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、イスラーム戦線、ファールーク大隊、使徒末裔旅団、シャーム・イスラーム自由人運動との数日にわたる戦闘の末にタッル・アブヤド市を(再)制圧し、対トルコ国境の通行所で緊張が増している、と報じた。

ダーイシュはシャーム・イスラーム自由人運動が制圧しているタッル・アブヤド国境通行所を包囲し、事態の緊張を受け、トルコ当局は通行所を閉鎖、トルコ軍が部隊を増強しているという。

これに関して、シリア人権監視団は、ダーイシュがタッル・アブヤド市近郊の村を制圧したと発表した。

また同監視団によると、ラッカ市内の鉄道駅および同駅の反体制武装集団検問所をイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が制圧した。

さらにシリア人権監視団によると、戦闘で死亡したダーイシュ戦闘員の遺体数十体がラッカ国立病院に搬送され、安置されている一方、イスラーム戦線やシャームの民のヌスラ戦線の戦闘員の遺体数十体がザジュラ村に遺棄されたという。

こうしたなか、シリア赤新月社の災害管理チームが、ラッカ市国立病院法医学科に安置されている70体以上の遺体の身元確認作業を行うと発表し、行方不明となった親族を持つ住民に、身元確認と遺体引き取りのための協力を求めた。

クッルナー・シュラカー(1月11日付)が伝えた。

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ヒムス県では、クッルナー・シュラカー(1月11日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がラスタン市郊外のザアフラーナ村にある「自由シリア軍」の検問所の一つ前で、爆弾を仕掛けた車を爆発させ、戦闘員3人を殺害、多数を負傷させた。

またシリア・メディア・センター(1月11日付)によると、サアン村では、ダーイシュの侵入を拒否する住民複数が拉致されたという。ダーイシュは拉致事態を認知しているが、犯行を否定しているという。

一方、『ハヤート』(1月12日付)は、活動家の話として、軍の部隊がサフナ市からラッカ県に向けて数十キロ進軍した、と報じた。

他方、SANA(1月11日付)によると、カフルリーシュ村、アシュラフィーヤ村、ダール・カビーラ村、ザアフラーナ村・ダイル・フール村街道、ガースィビーヤ村、ブルジュ・カーイー村、マジュダル村、ヒムス市バーブ・フード地区、ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、軍がトルコに向かうアレッポ市北部の街道制圧に向けて、ナッカーリーン村で反体制武装集団と激しく交戦した。

一方、SANA(1月11日付)によると、ナイラブ航空基地東部、アレッポ中央刑務所周辺、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)、ザルズール村、マアーッラト・アルティーク村、タッラト・ガーリー村、リーターン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、サイイド・アリー地区、ハイダリーヤ地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

クッルナー・シュラカー(1月12日付)は、自由アレッポ県議会のハーシム・ラムウ法務局長が、工業団地地区からアレッポ市内の議会本部に移動途中に失踪したと報じた。

またシリア革命総合委員会によると、アレッポ市マサーキン・ハナーヌー地区でイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がタウヒード旅団の本部2カ所に対して自爆攻撃を行った。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダーイル町のセメント公社近くで、爆弾が仕掛けられた車が爆発する一方、シャイフ・マスキーン市、ダルアー市を軍が爆撃した。

一方、SANA(1月11日付)によると、ダルアー市各所で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(1月11日付)によると、アドラー市(旧市街)、ドゥーマー市、ヤルダー市、バッビーラー町、ダーライヤー市、ヒジャーリーヤ農場で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またジャルマーナー市では、反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、市民7人が負傷した。

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ダマスカス県では、SANA(1月11日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(1月13日付)によると、ダルバースィーヤ市革命青年運動のアミール・ハーミド氏が武装集団に連れ去れられた。

イラクの動き

イラク軍・治安部隊合同司令部は、アンバール県でイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のキャンプ2カ所を攻撃、破壊したと発表した。

またイラク軍対テロ部隊のファーディル・バルワーリー司令官は声明を出し、県内の旧治安機関施設を奪還し、「テロリスト28人」を殺害したと発表した。

このほか、イラキー・ニュース(1月11日付)によると、ブー・フィラージュ地方で、部族の民兵とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が交戦し、部族の戦闘員複数が負傷した。

諸外国の動き

サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、シリアの友連絡グループ(ロンドン11)外相会議に先立って、訪問先のパリの邸宅で、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣、カタールのハーリド・アティーヤ外務大臣、UAEのアブドゥッラー・ビン・ザーイド外務大臣、エジプトのナビール・ファフミー外務大臣、ヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣と会談、ジュネーブ2会議への対応などについて協議した。

『ハヤート』(1月12日付)によると、アラブ外交筋の話として、会談で各国外相は、シリアの友連絡グループ外相会合、ジュネーブ2会議での各国が協調し合うことの重要性が確認されたと報じた。

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ヨルダンの治安警察部隊のザフディー・ジャーンビク准将は記者会見で「北部のイルビド県内でヨルダン人集団所有の複数の施設から、約800キロの銃弾、10万発の砲弾を押収したと発表した。

『ハヤート』(1月11日付)が伝えた。

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バレリー・アモス人道問題担当事務次長がダマスカスに到着した。

滞在は2日間の予定で、シリア政府高官らと人道支援のありようなどについて協議する予定。

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ロシア議会下院のアレクセイ・プシュコブ外交関係委員会委員長はツイッターで、「シリアのイスラーム主義過激派は現在、自由シリア軍と戦っており…、武装集団の分裂は、彼らがアサドに勝利する機会を奪うだろう」と綴った。

AFP, January 11, 2014、AP, January 11, 2014、Champress, January 11, 2014、al-Hayat, January 11, 2014、January 12, 2014、Iraqinews.com, January 11, 2014、Kull-na Shuraka’, January 11, 2014, January 12, 2014, January 13, 2014、Qanat al-Mayadin, January 11, 2014、Naharnet, January 11, 2014、NNA, January 11, 2014、Reuters, January 11, 2014、Rihab News, January 12, 2014、SANA, January 11, 2014、Syria Media Center, January 11, 2014、Syria-news.com, January 11, 2014、UPI, January 11, 2014などをもとに作成。

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