Contents
国内の暴力
ダルアー県では、『ハヤート』(4月28日付)によると、ダルアー市で未明から朝に銃声が聞こえた。
SANA(4月27日付)によると、シリア軍は、ダルアー市およびその郊外で「治安と安定の実現」のため、「過激テロ集団追跡の…任務を継続している」と発表した。
この追跡で、軍・治安部隊の兵士3人が死亡、15人が負傷したという。
**
ダマスカス郊外県では、ロイター通信(4月27日付)が目撃者の話として、「少なくとも戦車30輌からなる」増援部隊が「首都の環状道路を移動している」と報じた。
**
デモ発生以来、内務治安部隊の負傷者の数が295人にのぼったと発表した。SANA(4月27日付)が報じた。
国内の動き(シリア政府の動き)
シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表大使は記者団に対して、治安当局によるデモ弾圧に関して、「我々自身があらゆる調査を透明性をもって包み隠さず行う。我々は事件を遺憾に思うが、あなた方は暴動があり、その一部には隠されたアジェンダがあったことも認めねばならない」と述べた。
**
アフバール・シャルク(4月27日付)は、233人のバアス党員が連名で声明を出し、タルトゥース県バーニヤース市郊外のバイダー町などでのデモ弾圧を「人道や党が主唱するスローガンに反する」と非難、党からの脱退を表明したと報じた。
声明には、バーニヤース市出身者たちが署名しており、「治安機関の行為は…党のあらゆる価値観、人道規範、党のスローガンに反しており」、「単一の祖国の民内に宗派主義的混乱と敵意」をもたらすと述べられていた。
**
アフバール・シャルク(4月27日付)は、ダルアー県ハウラーン地方のバアス党員203人が連名で声明を出し、デモ弾圧に抗議し、党からの脱退を表明したと報じた。
**
軍消息筋は「軍部隊の間で分裂」が発生したとの情報を否定した。SANA(4月27日付)が報じた。
同消息筋によると、「偏向した一部の衛星放送が最近、軍部隊の間で分裂が発生したとのニュースを放映し、軍の評判を貶め、シリアが行うレジスタンスの手法に打撃を与え、その治安と安定を揺るがすための陰謀計画の真相から目をそらそうとしている」という。
そのうえで同消息筋は、こうした放送が「何らの信憑性もなく、こうした報道を行う勢力が破綻し、その卑劣な目的を実現できないことを示している。またこうした報道が情報婉曲の域を脱しておらず、真実を歪め、ねつ造し、シリア社会、とりわけ軍部隊が持つ国民的調和の基礎に打撃を与えようとしている」と明言した。
**
シリア・アラブ・テレビ(4月27日付)は、シリア国内の2カ所で逮捕された「テロ細胞」のメンバーの自供する映像を放送した。
**
シリア共産党ユースフ・ファイサル派が声明を出し、暴力の即時停止と包括的国民対話の開始を呼びかけた。
反体制勢力の動き
亡命中の反体制活動家数十人がイスタンブールでの会合を開き、閉幕時に「国民変革イニシアチブ」と題した共同声明を発表、アサド政権に対して、「真の民主的変革」か、「体制打倒をめざす「民衆革命」との対決」のいずれかを呼ぶよう呼びかけ、「複数政党制…即時の国会選挙、新憲法制定」、「政治犯釈放」、デモの自由、報道の自由を要求した。
また彼らは、「シリアへのあらゆる外国の干渉、国家分裂をもたらすようなあらゆるイニシアチブ」への拒否の意思を強く示した。
この声明には国内の反体制活動家150人が署名したという。
**
シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン会長は2011年3月半ば以降の民間人死者数が453人に達したとし、その氏名を公開した。
諸外国の動き
国連の潘基文事務総長は、記者団に対して、シリアでの治安部隊によるデモ弾圧に関して「我々は情勢を重点的に懸念をもって監視している」と述べた。
また弾圧に関して独立且つ透明性のある調査を行う必要があるとの見方を示した。
**
フランス、英国、イタリア、ドイツ、トルコは、シリア情勢について協議するため、在シリア大使を本国に召還した。
**
米国の有力議員、ジョン・マケイン米上院議員は、バッシャール・アサド大統領に対して、「正統性を失った」とみなし退任を呼びかけた。こうした立場が表明されたのは初めてである。
**
ヨルダンでは、ラムサー市で、隣接するダルアー県の住民との連帯を求めるデモが行われ、住民数百人が参加した。
また約1,000人のヨルダン人が対シリア国境地点まで行進し、「ダルアーは我々のためにある…。ダルアー支持は我々の義務」と連呼した。
一方、ヨルダン治安部隊は、国内で活動禁止処分を受けているイスラーム解放党メンバー200人以上が在アンマン・シリア大使館前でシリア国民との中隊を訴える座り込みを行うことを黙認した。
このような黙認は前例のない措置だという。
AFP, April 27, 2011、Akhbar al-Sharq, April 27, 2011、al-Hayat, April 28, 2011、Kull-na Shurakā’, April 27, 2011、Reuters, April 27, 2011、SANA, April 27, 2011などをもとに作成。
(C)青山弘之 All rights reserved.