キールー氏含む有識者らが共同声明を発表、「自由、諸権利、平和的な民主化」要求の弾圧を停止するよう求める(2011年5月24日)

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反体制勢力の動き

ミシェル・キールー氏ら著名な有識者が共同声明を出し、軍・治安部隊による市民、有識者、政治家らの逮捕停止、釈放、「自由、諸権利、平和的な民主化」要求弾圧を停止するよう求めた。

共同声明には、キールー氏の他、アリー・ファルザート氏、ハイダル・ハイダル氏、ユースフ・アブダルキー氏、ナビール・スライマーン氏、ハーリド・ハリーファ氏、ウサーマ・ムハンマド、サーイル・ディーブ氏、ムハンマド・マラス氏らが署名している。

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シリア人権機構(SWASIAH)は治安部隊が2011年3月のデモ開始以降、少なくとも1,100人を殺害したと発表した。

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シリア人権国民機構のアンマール・カルビー代表は、AFP(5月24日付)に対して、3月半ばのデモ開始以降、1,062人が殺害され、約1万人が逮捕されたとしたうえで、犠牲者の氏名と殺害場所のリストを持っていると述べた。

シリア政府の動き

アサド大統領はロシアのメドヴェージェフ・ロシア大統領と電話会談し、シリア情勢について協議した。

会談でアサド大統領は、可能な限り表現の自由を保障することを確約する一方、過激派には寛容な姿勢で臨むことはないと強調したという。

『サフィール』(5月25日付)が伝えた。

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大統領府声明によると、アサド大統領はダルアー県のイマーム、説教師たちと会談し、「県内に積極的な雰囲気を確立するため、現段階で宗教関係者が果たすべき役割」について検討した。

会談で「イマームと説教師たちは、ダルアーの現状への安堵感を表明した」という。

SANA(5月24日付)が報じた。

ダルアー県のムアンマル・シハーダ宗教関係局長は『ハヤート』(5月25日付)に対して、宗教関係者14人との会談が2時間以上に及んだとしたうえで次のように述べた。

「(会談では)国の治安、安定、国民統合の維持において宗教関係者が果たす役割について、積極的かつ実質的、さらに透明なかたちで取り上げられた。そして自らの積極的な役割を果たすことで、モスクの役割が慈愛と平和を広めることにあることを認識に至った。モスクをデモに利用する者は、真のイスラームのイメージを歪めようとする者である…。出席者たちは治安、安定維持における軍の役割、アサド大統領の民族主義的、愛国的な立場を強調した」。

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アーディル・サファル内閣は閣議で、新情報法案作成メディア改革委員会、経済改革開発委員会の二つの委員会を設置することを決定した。

『ハヤート』(5月26日付)が伝えた。

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SANA(5月24日付)によると、内務省のハサン・ジャラール次官は、関係当局に投降した暴動参加者の数が32,000人に達したと述べた。

諸外国の動き

EUの官報で、外相理事会が5月10日に、欧州内の資産凍結、EU加盟国への渡航禁止からなる制裁対象とした13人に加えて、新たに制裁対象となる政権高官10人を発表した。

制裁リストに追加された10名は以下の通り:

1. バッシャール・アサド大統領

2. ファールーク・シャルア副大統領

3. ダーウド・ラージハ参謀長

4. アースィフ・シャウカト副参謀長

5. ムハンマド・ナースィーフ・ハイル・ベク副大統領補、退役少将

6. バッサーム・ハサン大統領顧問

7. ムハンマド・ハムシュー(ビジネスマン)

8. イヤード・マフルーフ民族治安局長

9. イーハーブ・マフルーフ(シリアテル社副社長)

10. ヒシャーム・ビフティヤール国民安全保障会議メンバー

なおすでに制裁対象となっている13人は以下の通り:

11. マーヒル・アサド

12. アリー・マムルーク

13. ムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール

14. アーティフ・ナジーブ

15. ハーフィズ・マフルーフ

16. ムハンマド・ディーブ・ザイトゥーン

17. アムジャド・アッバース

18. ラーミー・マフルーフ

19. アブドゥルファッターフ・クドスィーヤ

20. ジャミール・ハサン

21. ルストゥム・ガザーラ

22. ファウワーズ・アサド

23. ムンズィル・アサド

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スイス政府は、国内の銀行に対して、アサド大統領のすべての預金を開示するよう要請するとともに、大統領を含む高官23人の入国を禁止した。

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カナダのジョン・ベアード外務大臣は記者団に対し、抗議デモ参加者に「激しい弾圧」を加える「現シリア政府のメンバーにただちに経済制裁を発動する」と述べた。

外務省が回付した資料によると、制裁対象になるのはアサド大統領、ファールーク・シャルア副大統領、ダーウド・ラージフ国防大臣ら「カナダにとって望ましくない」25人。

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IAEAは、2007年9月にイスラエルが空爆で破壊したダイル・ザウル県キバルの施設に関して、原子炉である「可能性が大きい」とする報告書をまとめた。

同報告書によると、「IAEAが得た情報とその技術的評価に基づき、IAEAはダイル・ザウルの破壊された施設が深刻が必要とされる原子炉である可能性が大きいと見ている」と結論づけられている。

AFP(5月24日付)が伝えた。

AFP, May 24, 2011、Akhbar al-Sharq, May 24, 2011、al-Hayat, May 25, 2011, May 26, 2011 、Kull-na Shuraka’, May 24, 2011、May 25, 2011, May 26, 2011、Naharnet, May 24, 2011、Reuters, May 24, 2011、al-Safir, May 25, 2011、SANA, May 24, 2011などをもとに作成。

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