イスタンブールで「国民救済大会」が開催され、反体制派内の潮流の対立が浮き彫りに(2011年7月16日)

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反体制勢力の動き

トルコのイスタンブールで反体制活動家が「国民救済大会」を開催した。

しかし、『ハヤート』(7月17日付)などによると、会合では主席者の間で意見の相違が露呈した。

対立は、反体制活動家の会合にオブザーバーとして初参加したブルハーン・ガルユーン氏が、シリアのすべての反体制勢力を代表する発足会議、ないしは国際社会の承認を念頭において「影の内閣」を設置しようとすることでもたらされる「結果」に警鐘をならしたことを受けたものだった。

ガルユーン氏は「反体制勢力全体を代表できる者など誰もいない」と指摘し、出席者のなかから調整委員会を結成し、これまでの大会で発足した諸々の委員会とともに活動すべきだと提案し、大会を主催したハイサム・マーリフ氏らに疑義を呈した。

また大会では二つの潮流の対立も顕著だった。

第1の潮流は、アサド政権とのいかなる対話の可能性も絶とうとする潮流である。

第2の潮流は、対話が時期尚早とみなすとともに、アサド政権が弱体化していると考えつつも、反体制勢力もまたその言説や方針を統一するための充分なレベルに達していないとみなす潮流である。

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シリアの反体制活動家のワリード・ブンニー氏は、15日の各地での抗議デモ弾圧を受け、国内の反体制勢力が、ダマスカス県カーブーン区の「ムハンナド式場」で予定されていた国民救済大会を中止したと発表した。

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複数の人権団体と活動家たちは昨日、インターネットなどを通じて「服喪の土曜日」を宣言した。

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ダマスカス県マイダーン地区での13日の反体制デモで逮捕された女優のマイ・スカーフさん、女流作家のリーマー・フライハーンさんら28人が釈放された。

シリア政府の動き

SANA(7月16日付)によると、イドリブ県ジスル・シュグール市住民183人が15、16日に避難先から自宅に帰宅した。

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SANA(7月16日付)によると、ダマスカス県バーブ・ムサッラー地区からマイダーン地区に向けて、アサド大統領の包括的改革プログラム支持者がデモ行進を行った。

またアレッポ市からラタキア市に向けて、アサド大統領の包括的改革プログラム支持者数百人が車に分乗しデモを行った。

デモ参加者はラタキア県カルダーハ市のハーフィズ・アサド廟を経由して、ラタキア市に向かった。

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SANA(7月16日付)によると、ヒムス市で「武装テロ集団」に殺害された警官の葬儀がヒムス軍事病院で行われた。

国内の暴力

al-Hayat, July 17, 2011

al-Hayat, July 17, 2011

ダマスカス県では、前日のカーブーン区での抗議デモ弾圧で死亡した18人の葬儀が行われ、複数の目撃者によると、数十万人が参列した。

複数の活動家によると、犠牲者の弔問会が、カーブーン区のほか、ルクン・ディーン区、カダム区、バルザ区、ダマスカス郊外県ドゥーマー市なども行われたという。

慰問会はシリア革命調整連合が呼びかけたという。

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『ハヤート』(7月17日付)によると、イドリブ県、ダイル・ザウル県ブーカマール市で、大規模な治安維持作戦が行われ、複数の活動家によると、治安部隊の発砲で2人が死亡した。

これに関して、『ハヤート』(7月18日付)は、ブーカマール市で軍事情報局が14歳の少年1人を含む5人のデモ参加者を殺害したと伝えた。

一方、SANA(7月16日付)によると、ブーカマール市で、治安部隊隊員3人が「武装テロ集団」の襲撃により死亡、2人が拉致された。

諸外国の動き

トルコ訪問中のヒラリー・クリントン米国務長官は、「国外からシリア情勢に影響を及ぼすことは不可能だ」と述べた。

CNN-トルコ(7月16日付)とのインタビューで、クリントン国務長官は「真の影響力を持っている者は我々のなかにはいない。我々には自分たちの考えを述べ、我々が望む変化を奨励することしかできない」と語った。

そのうえで「シリアで起きていることは先行き不透明で、混乱を呼ぶものである。なぜなら我々の多くが、アサド大統領が不可欠な改革を実行するとの希望に依然として突き動かされているからだ」と続けた。

クリントン国務長官はさらに、金曜日の抗議行動がこれまで「最大規模だった」と述べ、アサド政権による平和的抗議行動の弾圧が「懸念を呼ぶ」と非難した。

クリントン国務長官はまた、イスタンブールのカフェでのトルコ人青年たちとの会談で「蛮行は停止されねばならない」と強調した。

そのうえで、国民とシリア政府が共同行動を行うために「和解を実現する」可能性があるとの希望を表明し、「これこそがシリア国民が行っていることであり、よりよい未来のために政府との平和的協力を我々が希望しているなかで、彼らは方針を提示することのできる反体制勢力を結成しようとしている」と述べた。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、シリア政府に対して改革実施か民主勢力によって退陣の危機に直面するかしかないと改めて警告した。

そのうえで「社会の要求を考慮しない政府は続かない」と述べ、「アサド大統領は、国会でさまざまな政党組織が結成されるだろうと述べた…。私はシリアに野党が作られ、それらが自らの声を上げることを望んでいる」と付言した。

AFP, July 16, 2011、Akhbar al-Sharq, July 16, 2011、al-Hayat, July 17, 2011、July 18, 2011、Kull-na Shuraka’, July 16, 2011、Naharnet,
July 16, 2011、Reuters, July 16, 2011、SANA, July 16, 2011などをもとに作成。

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