ハヤート紙が活動家らの証言をもとにシリア国内での反体制デモ発生のメカニズムを掲載(2011年7月4日)

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反体制勢力の動き

『ハヤート』(7月4日付)は、BBCが行ったネット活動家らへの取材を通じて、シリア国内での反体制デモの発生のメカニズムをまとめた。

それによると、イブン・タッルカラフ(タッルカラフの息子)を名のる活動家の一人はBBCに「デモは(抗議行動の最初の月に発生した)ダルアーやバーニヤースでの事件を人々が目の当たりにすることで発生した」と述べたうえで、別の都市へのデモの拡大・継続は、治安部隊による暴力の過度の行使に起因すると明言した。

また「人々はインターネットでビデオ映像を観た。映像は起きていることの一部に過ぎない。おそらく実際に起きていることの5%程度に過ぎない。シリア国内で起きていることはもっとひどいものだ…。彼らは初めて我々に実弾で応えた。治安部隊が人々を挑発したので、デモ参加者は丸腰で街頭に出て、彼らにこう言った。『お前たちが発砲するなら、我々はお前たちに丸腰で対峙する。我々はダルアーの住民ほど優れてはないが、彼らと同じように死ぬだろう。我々は自由が欲しいだけだ』」と続けた、という。

一方、ダマスカスの活動家だというムスタファー氏はBBCに対し、自らの活動が「三つの活動家層」の分業体制のもとに進められていることを明かした。

この分業体制は、3ヶ月以上続く反体制デモにおける責任や任務を分担する必要から確立したという。

ムスタファー氏によると「最前線、すなわちデモ参加者がいる。次に調整者たちがおり、フェイスブックやツイッターといったSNSを通じて活動を行っている。さらにアジテーターがおり、水面下で活動家が何を行うかを連絡・通達している」。

また「ときどき、私は最前線のデモ参加者のところに赴き、現地で何が起きているのかを自分の目で見ている。そして家に戻って、目撃したことをニュースや映像で配信する。目にしたすべて、そして得たものすべてをインターネットのページ上で『シリアでのデモ監視団』の名で公開している」という。

しかし、シリアの当局にその存在を知られた多くの活動家はレバノンに逃れざるを得なくなっており、現在、数千人のシリア人が国外でデモを唱道、その多くはトルコ、レバノン、エジプト、米国、フランスで活動しているという。

なお、『ハヤート』(7月4日付)によると、ラーミー・ラフマ氏やウマル・イドリビー氏といったネット活動家らは、抗議行動開始から数週間後にレバノンに逃れたシリア人で、2人はニュースや映像を入手し、レバノンの滞在先から発信するという活動を行うとともに、報道機関や国際人権団体と連絡をとっているという。

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フェイスブックの「シリア革命2011」は、「我々は銃弾の代償を払わない」と銘打って、「体制の経済的資源をボイコット」するためのキャンペーンを呼びかけた。

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シリア政府の動き

SANA(7月4日付)によると、アイン・アラブ市(アレッポ県)、ダーライヤー市(ダマスカス郊外県)、アルトゥーズ町(ダマスカス郊外県)、ヒムス市でアサド大統領の包括的改革プログラムを支持するデモ行進が行われ、各会場に数千人の市民が参加した。

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SANA, July 4, 2011

SANA, July 4, 2011

ダマスカス県では、SANA(7月4日付)によると、ダマスカス大学学生の主導のもと、「シリア・ポンド支援キャンペーン」が行われ、シリア・ポンドの下落を防ぐため、不動産銀行ダマスカス支店で米ドルをシリア・ポンドに換金、同支店長によると800万米ドル/27万8,000シリア・ポンドの売買が行われた。

国内の暴力

ハマー県では、複数の活動家・目撃者によると、シリア軍戦闘機が早朝から日中にかけてハマー市上空で低空飛行を繰り返した。

また市内各所では治安部隊の治安維持活動により、子供1人が死亡、20人以上が負傷、数百人が逮捕された。

シリア人権監視団によると、これに対して「ハマー市住民は、治安部隊に投石で応戦し、市内各所に検問所を設置し、タイヤを燃やし」、軍の戦車や装甲車の進入を阻止しようとしているという。

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イドリブ県では、複数の活動家によると、軍がマアッラト・ヌウマーン市とハーッス村に進入した。

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『ハヤート』(7月5日付)によると、ダマスカス郊外県、ヒムス市、ダイル・ザウル市、ラタキア市、ハマー市で夜間にデモが発生し、2人が死亡、数十人が負傷した。

ハマー市では約5万人がデモに参加したという。

諸外国の動き

UPI(7月4日付)は、ヨルダンの人権団体の情報として、シリア人150人がヨルダンに避難し、マフラク県で困難な避難生活を強いられていると報じた。

AFP, July 4, 2011、Akhbar al-Sharq, July 4, 2011、al-Hayat, July 4, 2011, July 5, 2011、Kull-na Shuraka’, July 4, 2011、Naharnet, July
4, 2011、Reuters, July 4, 2011、SANA, July 5, 2011などをもとに作成。

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