2014年4月23日のシリア情勢:シリア政府の動き

ムハンマド・ジハード・ラッハーム人民議会議長は、大統領選挙に関する議会臨時会で、マーヒル・アブドゥルハフィーズ・ハッジャール人民議会議員が最高憲法裁判所に対して大統領選挙への立候補を届け出、2014年4月22日付届出第1号として登録されたと発表した。

SANA, April 23, 2014

SANA, April 23, 2014

Kull-na Shuraka', April 23, 2014

Kull-na Shuraka’, April 23, 2014

シリア・アラブ・テレビ(4月23日付)によると、ハッジャール人民議会議員は、アレッポ市バイヤーダ地区出身で、1968年生まれ。アレッポ大学文学人文科学部卒。

大学時代には、アレッポ大学の左派共産運動の幹部として活動し、1984年にシリア共産党(ユースフ・ファイサル派)に入党した。

2000年、共産党を離党し、アレッポ県で共産主義者暫定指導部を結成、その後2003年にカドリー・ジャミール氏(前経済問題担当副首相、現在モスクワで事実上の亡命生活)とともに、シリア共産主義者統一国民委員会を結成し、2012年には同委員会書記長を務めた。

シリア共産主義統一国民委員会(シリア共産党カシオン派)は2011年に人民意思党に改称、またシリア民族社会党インティファーダ派とともに変革解放人民戦線を主導している。

シリア・アラブ・テレビによると、ハッジャール議員は、2007年の人民議会の選挙に落選後、2012年に変革解放人民戦線リストのメンバーとしてアレッポ県アレッポ市選挙区B部門で再立候補し、初当選を果たしたという。

しかし、2012年の選挙時点において、ハッジャール議員はアレッポ国民無所属リストに所属する無所属候補者として出馬し、当選したことになっている(http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/syria/parliament/2012.htm)。

大統領選挙へは、変革解放人民戦線の候補者として出馬したという。

一方、クッルナー・シュラカー(4月23日付)は、ハッジャール議員に次いで、スーサン・ハッダード女史が最高憲法裁判所に対して、大統領選挙への立候補を申し出たと報じた。

またBBC(4月23日付)は、3名が大統領選挙に立候補したと報じた。

しかしSANAによると、情報省は、これらの報道を否定し、立候補届出を出しているのはハッジャール議員だけだと発表した。

他方、『ワタン』(4月23日付)は、進歩国民政党に加盟するアラブ社会主義者連合党のサフワーン・クドスィー書記長が、大統領選挙に立候補する意向だと報じた。

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SANA, April 23, 2014

SANA, April 23, 2014

SANA, April 23, 2014

SANA, April 23, 2014

アサド大統領は、共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師らシリア各県のウラマー、イマーム、ハティーブなどイスラーム教宗教関係者と会談した。

SANA(4月23日付)によると、会談でアサド大統領は、イスラーム教宗教関係者がイスラーム教に関する「謝った諸概念に立ち向かうための正しい概念を確立するうえで基本的な役割を担っている」としたうえで、「我々の地域、およびイスラーム世界全体がさらされている最大の脅威とは、西側が我々の社会における教義やイデオロギーに打撃を与えようとしていることだ。この試みは、人種主義とは無縁の人道的・文明的な概念であるアラブ性(ウルーバ)とイスラーム教を分離させようとする試みに代表されるような諸概念の改悪を通じて進められている。その結果、政治と社会の両面において不安定な状態が作り出されてしまう」と警鐘を鳴らした。

アサド大統領はまた「過激主義やテロとの対決が、それらへの非難や反駁を通じて行われるだけでなく、道徳やイスラームへの深淵な理解に基づく穏健で正しい宗教概念の確立を通じて行われるべきだ」と主張した。

 

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外務在外居住者省は声明を出し、大統領選挙実施に関して「シリアの主権に基づく決定であり、いかなる勢力の干渉も許されない」と表明するとともに、選挙がジュネーブ2会議での和平プロセスを妨害するとした国連の声明に反論、「自らを仲介者でも精錬でもない偏った当事者にしてしまった国連とアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表に、ジュネーブ2会議妨害の責任がある」と批判した。

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フィイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣はダマスカスで化学兵器禁止機関・国連合同派遣団特別調整官のスィグリッド・カーグ国連事務次長補と会談し、化学兵器廃棄の進捗状況について意見を交わした。

SANA(4月23日付)によると、ミクダード外務在外居住者副大臣は会談で、廃棄プロセスが86%完了したことを「大いなる成果、成功」と評すとともに、引き続き廃棄プロセスに協力する意思を示した。

またミクダード外務在外居住者副大臣は「シリア軍部隊は国内のいかなる地域において、いかなる毒性物質を使用していない」と述べ、ハマー県カフルズィーター市での塩素ガス使用疑惑を否定した。

AFP, April 23, 2014、AP, April 23, 2014、ARA News, April 23, 2014、BBC, April 23, 2014、Champress, April 23, 2014、al-Hayat, April 24, 2014、Iraqinews.com, April 23, 2014、Kull-na Shuraka’, April 23, 2014、Naharnet, April 23, 2014、NNA, April 23, 2014、Reuters, April 23, 2014、SANA, April 23, 2014、UPI, April 23, 2014、al-Watan, April 23, 2014などをもとに作成。

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