「穏健な反体制派」の最有力組織ヌールッディーン・ザンキー運動とアル=カーイダ系組織のヌスラ戦線が和解(2015年10月6日)

「穏健な反体制派」の最有力組織の一つヌールッディーン・ザンキー運動とアル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線が停戦合意を締結し、アレッポ県西部での対立を解消し、和解したと発表した。

ヌールッディーン・ザンキー運動がツイッターの公式アカウントを通じて明らかにしたところによると、両組織は、アターリブ市・第46連隊基地間の一帯で検問所の配置をめぐって衝突していたが、戦闘を停止し、双方が拘束していた捕虜を釈放、また双方の対立を解消するための法務委員会の設置などで合意したという。

停戦合意の文書には、ヌスラ戦線のアブー・スライマーン・ミスリー氏とヌールッディーン・ザンキー運動のアフマド・リズク氏が署名している。

Kull-na Shuraka', October 7, 2015
Kull-na Shuraka’, October 7, 2015

 

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ヌールッディーン・ザンキー運動が6日に出した声明で、ヌスラ戦線が、アブザムー町、マアーッラト・アルティーク村にあるヌールッディーン・ザンキー運動の検問所を攻撃、またダイル・ジャマール村では爆弾を仕掛けた車を爆破し、戦闘員5人を殺害、数十人を負傷させていたと主張、ヌスラ戦線が「アレッポ市を飲み込もうとしている」と非難していた。

しかし、ヌスラ戦線はこれに対して声明を出して反論し、ダイル・ジャマール村での爆破攻撃とは無関係だと主張していた。

Kull-na Shuraka', October 7, 2015
Kull-na Shuraka’, October 7, 2015
Kull-na Shuraka', October 7, 2015
Kull-na Shuraka’, October 7, 2015

 

AFP, October 7, 2015、AP, October 7, 2015、ARA News, October 7, 2015、Champress, October 7, 2015、al-Hayat, October 8, 2015、Iraqi News, October 7, 2015、Kull-na Shuraka’, October 7, 2015、al-Mada Press, October 7, 2015、Naharnet, October 7, 2015、NNA, October 7, 2015、Reuters, October 7, 2015、SANA, October 7, 2015、UPI, October 7, 2015などをもとに作成。

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トルコのエルドアン大統領「ロシアがトルコのような友好国を失えば、多くを失うことになる」(2015年10月6日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、訪問先のブリュッセルでの記者会見で、ロシア軍による領空侵犯や「嫌がらせ」に関して、「トルコに対するいかなる攻撃もNATOへの攻撃とみなされる」と警告したうえで、「ロシアとの良好な関係は周知のものだ。しかし、ロシアがトルコのような友好国を失えば…、多くを失うことになる。ロシアはそのことを理解すべきだ」と述べた。

これに対して、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、「当初から述べている通り、我々はシリア軍を攻撃する標的に対して空爆を行う」と述べた。

一方、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ロシアの有志連合への参加の是非に関して、「シリア政府の同意、あるいは安保理の同意を経ずに参加はしない」と述べた。

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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ロシア軍が3日に続いて、4日にもトルコに領空侵犯、また5日には地対空ミサイルのレーダーでトルコ軍機を捕捉(2015年10月6日)

トルコ軍は声明を出し、3日のロシア軍によるトルコ領内への領空侵犯に続いて、4日と5日にも、トルコ軍が「嫌がらせ」を受けたことを明らかにした。

声明によると、ロシア軍戦闘機は3日、シリア領からハタイ県上空に領空侵犯、緊急発進をしたトルコ軍戦闘機(F-16)に対して、5分40秒にわたって「嫌がらせ」(レーダーによる捕捉)を行っていたが、これに続き、4日にも、トルコ領内に領空侵犯した所属不明のSu-29戦闘機1機が、トルコ空軍のF-16戦闘機を4分30秒にわたってレーダーで捕捉するという「嫌がらせ」を行ったという。

また5日には、偵察飛行中のトルコ軍戦闘機(F-16)が、シリア領内に展開している地対空ミサイルの標的として捕捉されたという。

この「嫌がらせ」は4分15秒にわたって続いたという。

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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シリア軍は、ロシア軍の爆撃と並行してアレッポ県、ヒムス県、ダイル・ザウル県でダーイシュ(イスラーム国)拠点を爆撃(2015年10月6日)

アレッポ県では、SANA(10月6日付)によると、ロシア軍による空爆と並行して、シリア軍が、カフキーフ村、アイン・ハンシュ村、クワイリス航空基地一帯、ジャービリーヤ村、ジャディーダ村、アルバイド村、シャルバア村、航空士官学校一帯、ライヤーン村、アイン・サービル村、カッバーラ村、タッル・イスタブル村、フワイジーナ村、マフラサ村、ジュブ・サファー村、ラドワーニーヤ村でダーイシュ(イスラーム国)と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、ARA News(10月7日付)によると、ダーイシュ(イスラーム国)が、イフラス村にあるシャーム戦線の拠点に対して、ダーイシュが爆弾を積んだ車で攻撃を行い、数十人が死傷した。

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ヒムス県では、SANA(10月6日付)によると、ロシア軍による空爆と並行して、シリア軍がカルヤタイン市でダーイシュ(イスラーム国)に対する空爆を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル航空基地一帯で、シリア軍、国防隊がダーイシュ(イスラーム国)と交戦し、シリア軍が同地を2回にわたり空爆した。

一方、SANA(10月6日付)によると、ロシア軍による空爆と並行して、シリア軍がダイル・ザウル航空基地一帯、ジャフラ村、ダイル・ザウル市工業地区、ラサーファ地区、ハウィーカ地区で、ダーイシュ(イスラーム国)に対して攻撃を加え、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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米中央軍(CENTCOM)は、10月6日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して23回の空爆を行ったと発表した。

このうちシリア領内での空爆は3回におよび、ブーカマール市近郊のダーイシュに対して攻撃が行われたという。

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、October 7, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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シリア軍は、クナイトラ県でヌスラ戦線などと交戦(2015年10月6日)

クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、県北部(ハーン・アルナバ市、バアス市一帯)でシリア軍、国防隊が、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と戦闘を続けた。

戦闘ではシリア軍の砲撃で、ジハード主義武装集団戦闘員2人が死亡した。

クナイトラ県北部では、ヌスラ戦線を除く反体制武装集団が「堪え忍ぶ者たちに吉報をもたらせ」合同作戦司令室を設置し、シリア軍への攻勢を激化させ、アフマル丘、アマル農場などを制圧していた。

「堪え忍ぶ者たちに吉報をもたらせ」合同作戦司令室は以下の武装集団が参加しているとされる。

シャーム征服(ファトフ)作戦司令室
イスラーム軍
シリア革命家戦線
アンサール・ディーン戦線
カシオン旅団
フルカーン旅団
シャームの剣大隊

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ラタキア県では、SANA(10月6日付)によると、シリア軍戦闘機がファルズ村、サルマー町、アックー村、ダルーシャーン村で、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団の拠点を空爆し、トルコ人、サウジアラビア人の戦闘員ら12人を殲滅、車輌、武器を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(10月6日付)によると、ロシア軍がグータ地方某所を空爆するなか、シリア軍がザブディーン村、サクバー市、アルバイン市、ミスラーバー市、ハラスター市、ドゥーマー市西方でイスラーム軍、アジュナード・シャーム・イスラーム連合、ラフマーン軍団、ウンマの暁旅団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市シャイフ・マクスード地区一帯で、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊とシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団が交戦した。

またアレッポ市アシュラフィーヤ地区、ナイル通り(いずれもシリア政府支配地域)に迫撃砲弾複数発が着弾した。

一方、SANA(10月6日付)によると、ロシア軍による空爆と並行して、シリア軍がアレッポ市ラーシディーン地区、カブターン・ジャバル村、ダーラト・イッザ市、バーシュカウィー村、フライターン市のダーイシュ(イスラーム国)の拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、教練キャンプなどを破壊した。

しかし、シリア軍が空爆したという地域は、アル=カーイダ系のシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団の支配地域。

シリア軍はまた、アレッポ市ナアナーイー広場一帯、ライラムーン地区、バニー・ザイド地区、科学研究センター施設一帯で反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がタルビーサ市、ウンム・シャルシューフ村を空爆、またタスニーン村一帯でシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦した。

一方、SANA(10月6日付)によると、ロシア軍による空爆と並行して、ガジャル村、キースィーン村東部で、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団の拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市マンシヤ地区をシリア軍が砲撃した。

一方、SANA(10月6日付)によると、シリア軍がダルアー市避難民キャンプ一帯、電力会社東部一帯、マアスィラ地区一帯、警察住宅地区一帯、バジャービジャ地区、旧税関地区で反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区で、シリア軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員がシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦した。

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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ロシア軍がタドムル市一帯(ヒムス県)、ダマスカス郊外県を初めて爆撃(2015年10月6日)

ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官は、過去24時間でロシア軍戦闘機が、ヒムス県タドムル市一帯、ダマスカス郊外県、アレッポ県、イドリブ県、ダイル・ザウル県、ラタキア県の12カ所を20回にわたって空爆した。

またSANA(10月6日付)は、シリア軍消息筋の話として、シリア軍の支援を受けたロシア軍戦闘機による連日の空爆で甚大な被害を受けたダーイシュ(イスラーム国)、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線、ヤルムーク軍の戦闘員3,000人以上が、シリア領内の支配地域からトルコ、ヨルダンに逃亡している、と伝えた。

SANA, October 6, 2015
SANA, October 6, 2015

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ヒムス県では、SANA(10月6日付)によると、シリア軍の支援を受けたロシア軍戦闘機が、UNESCO世界文化遺産に指定されているパルミラ遺跡を擁するタドムル市一帯を空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)の車輌20輌、武器庫2カ所、ロケット弾発射拠点3カ所を破壊した。

タドムル市一帯への空爆は、9月末に米国が初めて実行していたが、ロシア軍による空爆が行われるのはこれが初めて。

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アレッポ県では、SANA(10月6日付)によると、シリア軍の支援を受けたロシア軍戦闘機が、ダイル・ハーフィル市、バーブ市を空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)の拠点を破壊した。

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イドリブ県では、ロシア国防省によると、ロシア軍は、戦闘機2機を投入し、カフル・ウワイド村にあるダーイシュの前線キャンプを破壊した。

コナシェンコフ報道官によると、この前線キャンプでは、外国語で無線連絡が交わされており、このことは、外国人戦闘員の教練基地として使用されていたことを示すものだという。

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ダイル・ザウル県では、ロシア国防省によると、ロシア軍戦闘機複数機が、ダイル・ザウル市近郊のダーイシュ司令部2カ所を地中貫通爆弾(バンカーバスター)を使用して破壊した。

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ダマスカス郊外県では、ロシア国防省によると、ロシア軍戦闘機複数機が、グータ地方のダーイシュの爆弾製造工場、車輌を空爆、破壊した。

ロシア軍がダマスカス郊外県で空爆を行うのはこれが初めてだが、空爆が行われた正確な場所は不明。

なおグータ地方一帯では、ダマスカス県南部を除くと、アル=カーイダ系組織のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動、そしてイスラーム軍などが優勢で、ダーイシュの活動が確認されることは少ない。

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https://youtu.be/Y3gx4y7r_yw

https://youtu.be/HktgSG6BCIA

https://youtu.be/qoJuPy9XVoQ

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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UNHCRヨルダン事務所連絡担当官「支援物資不足を受け、シリア人避難民が1日平均150人の割合でシリアに帰国している」(2015年10月6日)

UNHCRヨルダン事務所のムハンマド・ヒワーリー連絡担当官は、ARA News(10月6日付)などに対してヨルダンで避難生活を送ってきたシリア人避難民が1日平均150人の割合で、シリアに帰国していることを明らかにした。

ヒワーリー連絡担当官は、シリアへの帰国の手続きは24時間を要するとしたうえで、シリア人避難民の帰国が増加している理由が「物資や資金の支援の不足」にあると指摘、「22万9,000人の難民へのWFPからの支援が途絶えており…、1人あたりの支援は、1ヶ月7米ドルにまで落ち込んでおり…、多くの難民が支援を必要としており、国際的な貧困のレベルを下回る生活を強いられている」と述べた。

なお、ヨルダンにおけるシリア人避難民の数は、63万人に達しているとされる。

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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シリア国民連合はロシア軍の爆撃でイドリブ県の遺跡が破壊されたと主張(2015年10月6日)

トルコのイスタンブールで活動するシリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、ロシア軍が10月4日にイドリブ県で行った空爆によって、ザーウィヤ山に位置するサルジーラー村の遺跡が標的となり、大きな被害を受けたと主張した。

破壊された遺跡は2000年以上前に建設されたものだという。

イドリブ県は、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動、ジュンド・アクサー機構などが主導するファトフ軍の支配地域だが、シリア革命反体制勢力国民連立は、遺跡一帯には、ダーイシュ(イスラーム国)は存在していなかったと強調、UNESCOなどに対して、「ロシアの占領」を非難し、シリアの歴史文化遺産破壊という犯罪に対して早急に対応するよう呼びかけた。

Kull-na Shuraka', October 6, 2015
Kull-na Shuraka’, October 6, 2015

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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最新論考「シリア「反体制派」へのロシアの爆撃が欧米諸国にもたらす苦悩と恩恵」(Yahoo Japan! News)

青山弘之「シリア「反体制派」へのロシアの空爆が欧米諸国にもたらす苦悩と恩恵」

Yahoo Japan! News、2015年10月5日

http://bylines.news.yahoo.co.jp/aoyamahiroyuki/20151005-00050167/

2015年9月、今後のシリア情勢に大きな影響を及ぼすであろう二つの出来事が起きた。一つは、欧州への難民・移民の流入に対する関心の高まりであり、もう一つは、ロシア軍によるシリア領内での空爆開始である。
このうち、シリア領内でのロシア軍による空爆に対して、欧米諸国の首脳・政府高官、そしてメディアは、ダーイシュ(イスラーム国)だけでなく、「独裁体制」と戦う「反体制派」や民間人を標的としているとの批判を繰り返している。また、ロシアの空爆で「反体制派」が弱体化すれば、バッシャール・アサド政権とダーイシュの双方が勢力を伸ばし、シリア国内がさらに混迷するといった懸念が表明されている。
しかし、カッコ付きで敢えて標記したシリアの「反体制派」への空爆は、欧米諸国にとってどのような意味を持つのだろうか?・・・

ファトフ軍支配下のイドリブ市でロシア軍の爆撃に反対するデモ発生(2015年10月5日)

クッルナー・シュラカー(10月6日付)は、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などが主導するファトフ軍の支配下にあるイドリブ市で、ロシア軍によるシリア領内での空爆に抗議するデモが発生したと報じ、その写真を掲載した。

イドリブ市は、9月末にイラン、トルコの仲介で発効した停戦合意が、イドリブ県フーア市、カファルヤー町、ダマスカス郊外県のザバダーニー市などとともに非戦闘地域に指定されている。

Kull-na Shuraka', October 6, 2015
Kull-na Shuraka’, October 6, 2015

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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アレッポ県で活動する反体制派2組織がアル=カーイダ系のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動にそれぞれ忠誠を誓う(2015年10月5日)

アレッポ県西部で活動するクドス大隊は、アル=カーイダ系のシャームの民のヌスラ戦線に忠誠(バイア)を誓うと発表した。

また、アレッポ市などでシリア政府関係者らの暗殺などを行ってきたアブー・アマーラ特殊任務中隊は、アル=カーイダとの関係を否定するアル=カーイダ系の組織シャーム自由人イスラーム運動にバイアを誓うと発表した。

ARA News(10月6日付)が伝えた。

AFP, October 6, 2015、AP, October 6, 2015、ARA News, October 6, 2015、Champress, October 6, 2015、al-Hayat, October 7, 2015、Iraqi News, October 6, 2015、Kull-na Shuraka’, October 6, 2015、al-Mada Press, October 6, 2015、Naharnet, October 6, 2015、NNA, October 6, 2015、Reuters, October 6, 2015、SANA, October 6, 2015、UPI, October 6, 2015などをもとに作成。

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論考「シリア反体制武装勢力の同質性と異質性」(『国際情勢紀要』より転載)

「シリア反体制武装勢力の同質性と異質性:アル=カーイダ系組織、ジハード主義者、「穏健な反体制派」

『国際情勢紀要』第85号(http://www.sekaiseikei.or.jp/kokujo2014.pdf、2015年3月、125~133ページ)より転載

青山 弘之(東京外国語大学)

図Ⅰ はじめに

シリアで紛争が発生してから2015年3月半ばで4年が経とうとしている。「アラブの春」の一環として始まったはずのこの紛争が「独裁政権」対「民主化運動」といったイメージとはほど遠く、混沌と暴力の応酬によって特徴づけられていることは今や周知の事実である。そこでは、シリア軍、国防隊、西クルディスタン移行期文民局人民保護部隊(Yekîneyên
Parastina Gel、略称YPG)、反体制武装勢力が入り乱れて戦いを続けるなか、米国が主導する有志連合が、一方でイスラーム国壊滅に向けて空爆を行いつつ、他方でバッシャール・アサド政権退陣をめざして「穏健な反体制派」を支援している。

本論では、現下の武力紛争における主要な当事者のうち、アル=カーイダ系組織、ジハード主義組織、「穏健な反体制派」といった言葉(カテゴリー)で分類されることが多い反体制武装勢力の組織間の関係に着目することで、その異質性と同質性を明らかにする。そのうえで、反体制武装勢力への支援や共鳴が持つ意味を考察する。なお2011年以降のシリア国内情勢の詳細な推移については「シリア・アラブの春顛末記――最新シリア情勢――」(https://syriaarabspring.info/)を参照されたい。

Ⅱ アル=カーイダ系組織、ジハード主義組織

2014年9月23日に米国およびアラブ5カ国がシリア領内のイスラーム国拠点への空爆を開始したことで、シリアの紛争においてもアル=カーイダ系組織の存在がようやく広く認識されるようになった。ここで言う「アル=カーイダ系」とは、明確な定義を持つものではなく、「ジハード主義」(Jihadism、al-Salafīya
al-Jihādīya、ないしはイスラーム過激派)と称される思想・運動の一部をなすものである(1)。だが、この言葉を敢えて定義するなら、それは、ウサーマ・ビン・ラーディンが創始し、アイマン・ザワーヒリーが指導者を務めるアル=カーイダ総司令部に忠誠(al-bayʻa)を誓った組織・個人、そして国連や米国がテロ組織と認定し、「アル=カーイダとつながりがある」(murtabiṭ
bi-al-qāʻida)と認知されている組織・個人と言うことができよう。

上記のような定義に基づいて、シリアの反体制武装勢力を俯瞰すると、イスラーム国、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動、ムハージリーン・ワ・アンサール軍といった組織がアル=カーイダ系組織に含まれる(2)。またジハード主義組織には、これらに加えて、イスラーム軍、タウヒード旅団、ジュンド・アクサー機構、シャームの鷹旅団、シャーム・イスラーム運動、シャームの暁イスラーム運動、クルド・イスラーム戦線、アジュナード・シャーム・イスラーム連合、ラフマーン軍団、ハビーブ・ムスタファー旅団、イスラーム・ウカーブ旅団などが含まれる。

このうちイスラーム国は、他のアル=カーイダ系組織やジハード主義組織から独立した存在として捉えられがちである。その理由として、イスラーム国が2013年末以降、他のジハード主義組織と全面的な武力衝突を繰り返していること、シリアからの撤退を求めるザワーヒリーの指示を拒否し、アル=カーイダ総司令部から「破門」されたこと、さらにカリフ制という「ハコ」を作ることで求心力を得ようとする「俗物的」、「実利的」な性格を持っていること(青山[2014])があげられる。だが、イスラーム国を含むアル=カーイダ系組織、そしてジハード主義組織は、以下3点において同質的である。

第1点は、これらの組織が共通の起源を有していることである。このことはイスラーム国とヌスラ戦線において顕著である。ヌスラ戦線は、イラクでの治安対策によって弱体化していたイラク・イスラーム国の「支部」として、2012年1月頃からシリアで活動を開始し、台頭した組織である。一方、イスラーム国は、ヌスラ戦線の吸収を企図して2013年4月にイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ(3))に改称したイラク・イスラーム国が、2014年6月のカリフ制樹立宣言に合わせて再改称した組織である。ダーイシュ結成は、ヌスラ戦線によって拒否され、以後両組織が徐々に対立を深めていったことは周知の通りである(髙岡[2014]などを参照)。

これに対し、シャーム自由人イスラーム運動は、「グラーバー・シャーム」(ghurabāʼ al-shām、シャームの奇異なる者たち)の一人としてアフガニスタンやイラクでの戦闘経験を持ち、ヌスラ戦線とイスラーム国の対立を仲裁するため、ザワーヒリーに仲介役を任じられたアブー・ハーリド・スーリー(4)らが結成した武装集団である。また、ムハージリーン・ワ・アンサール軍は、アブー・ウマル・シーシャーニー(チェチェン人)の指導のもと、チェチェン人など外国人戦闘員によって結成された武装集団である。同組織は、シーシャーニーのイスラーム国への合流により分裂し、イスラーム国への参加を拒否した派閥はヌスラ戦線などと共闘している。

なお、外国人戦闘員に関して、イスラーム国が外国人主導、それ以外のジハード主義組織がシリア人主導というイメージがある。だが、いずれの組織も、トルコなどを経由してシリアに潜入した外国人戦闘員が参加している点で違いはない。

第2点は、これらの組織・個人の所属が流動的だということである。例えば、2014年6月末、ヌスラ戦線のナンバー2と目されていたアブー・ムハンマド・アドナーニー報道官とダイル・ザウル県で活動していた同戦線のメンバー多数は、カリフ制樹立を宣言したイスラーム国に忠誠を表明し、同組織に参加した。また同県でのイスラーム国の勢力拡大を受けて、イスラーム軍、さらには後述する「穏健な反体制派」戦闘員も次々とイスラーム国に合流した。

これに対して、有志連合のシリア空爆によってイスラーム国の勢力が減退の兆しを見せるようになった2014年12月には、イスラーム国に忠誠を誓っていたイスラーム・ウカーブ旅団が、イドリブ県で攻勢に出たヌスラ戦線に追随するという逆の現象も起きている。こうしたことから、アル=カーイダ系組織、ジハード主義組織に分類される組織・個人の多くが、その時々の戦況において、より有力な集団に日和見的に所属を変更し、活動していることが推察できる。

第3点は、連合組織結成や共同戦線設置を通じた共闘である。例えば、2013年12月にサウジアラビアの後援のもとに結成されたとされるイスラーム戦線は、シャーム自由人イスラーム運動、タウヒード旅団、シャームの鷹旅団、イスラーム軍、クルド・イスラーム戦線、そして「穏健な反体制派」の自由シリア軍アンサール・シャーム大隊からなっている(5)。また2014年2月頃にアレッポ県で結成されたシャームの民の合同作戦司令室には、ヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動、タウヒード旅団、そして「穏健な反体制派」のハズム運動が参加している。さらに同年8月以降、アレッポ市周辺でのシリア軍との戦闘を主導するようになったアンサール・ディーン戦線には、ムハージリーン・ワ・アンサール軍、シャーム・イスラーム運動、シャームの暁イスラーム運動、そして「穏健な反体制派」のハドラー大隊が参加し、同時期に結成された東グータ統一軍事司令部も、イスラーム軍、アシュナード・シャーム・イスラーム連合、ラフマーン軍団、ハビーブ・ムスタファー旅団、シャーム自由人イスラーム運動から構成されている。

また連合組織結成や共同戦線設置を明言せずに共闘するケースも多い。ダマスカス郊外県やダマスカス県ジャウバル地区での東グータ統一軍事司令部所属組織とヌスラ戦線の連携、ダルアー県の対ヨルダン国境地帯やクナイトラ県のゴラン高原一帯でのヌスラ戦線とシャーム自由人イスラーム運動の協調、ダマスカス郊外県カラムーン地方無人地帯やレバノンのアルサール地方(ベカーア県バアルベック郡)でのヌスラ戦線、イスラーム国、さらには自由シリア軍を名のる武装集団の共闘などがその典型である。

むろん、上記のような共通の起源、所属の流動性、共闘にもかかわらず、ダイル・ザウル県、アレッポ県などでは、イスラーム国とそれ以外のジハード主義組織が衝突を繰り返している。しかし、イスラーム国を「国際社会の脅威」として特別視し、他のアル=カーイダ系組織と区別すること、ないしはアル=カーイダ系組織を他のジハード主義組織と区別してその是非を評価することは、紛争の実態を見誤ることにつながりかねない。

Ⅲ 「穏健な反体制派」

「穏健な反体制派」(moderate opposition)は、ジハード主義組織が反体制武装勢力の主流を占めるようになるなか、「民主化」、「人道主義」というシリアへの内政干渉の根拠を誇示しようとする欧米諸国が2013年3月頃から頻繁に用いるようになった言葉である。この言葉は当初、欧米諸国が「シリア国民の唯一の正統な代表」として承認したシリア革命反体制勢力国民連立(いわゆるシリア国民連合)などの非武装組織を指していたが、次第にジハード主義組織以外の武装組織を指すようになった。2013年3月以前においては、「穏健な反体制派」ではなく、自由シリア軍という言葉が好まれる傾向があった。だが、自由シリア軍を名のる組織は、2013年末に最高意思決定機関と目されてきた参謀委員会(最高軍事評議会)がシリア領内(対トルコ国境地域)の主要な拠点をジハード主義組織に奪われ、また2014年9月にはシリア国民連合に解散を命じられたことで、欧米諸国の支援の受皿としてのプレゼンスを失った。

アル=カーイダ系組織と同様、「穏健な反体制派」は、シリアの紛争の文脈において明確な定義を持たないが、上記のような経緯を踏まえると、欧米諸国が積極的に支援し、なおかつ「シリア革命」の名のもと、アサド政権の打倒と世俗主義に立脚した民主制の樹立を支持する組織だと言うことができる。しかし、欧米諸国の支援には若干の補足説明が必要である。なぜなら、欧米諸国は当初、アサド政権の打倒をめざしていたが、2014年9月以降はイスラーム国に対抗し得る武装勢力の教練・育成に力点を置くようになっており、「穏健な反体制派」支援と「シリア革命」支援はもはや同義ではなくなっているからである。

いずれにせよ、上記の定義に基づいた場合、「穏健な反体制派」に分類できる組織としては、自由シリア軍を名のる参謀委員会、ダイル・ザウル軍事評議会、アレッポ革命軍事評議会、南部戦線(6)、クルド人戦線旅団、アンサール・シャーム大隊の他、ハズム運動(7)、ハドラー大隊、ウンマ軍(8)、シリア革命家戦線などをあげることができる。しかし、これらの組織も、以下四つの理由でアル=カーイダ系組織やジハード主義組織と同質化している。

第1の理由は、自由シリア軍参謀委員会(そしてシリア国民連合)などによる戦果の誇張(ないしはねつ造)である。例えば、2013年8月にヌスラ戦線などジハード主義組織がカサブ区(ラタキア県)の制圧を目的として開始したいわゆる「海岸解放作戦」に際して、参謀委員会は自由シリア軍が戦果をあげていると喧伝した(9)。むろん、ジハード主義組織とともに、自由シリア軍を名のる武装集団が戦闘に参加していたと見ることもできるが、こうした喧伝が事実と異なることは、2014年末には誰の目からも明らかなものとなった。2014年12月、イドリブ県で勢力を増大させたヌスラ戦線は、シャーム自由人イスラーム運動、ジュンド・アクサー機構とともに、マアッラト・ヌウマーン市郊外のワーディー・ダイフ軍事基地とハーミディーヤ航空基地を制圧したが、シリア国民連合はその際、ムハンマド・カッダーフ副代表が声明を出し、(自由シリア軍ではなく)ヌスラ戦線を「革命部隊」とみなし、その戦果を賞賛したのである。

第2の理由は、ジハード主義組織との戦闘での敗北である。例えば、2014年11月、イドリブ県ザーウィヤ山一帯を勢力圏としていたシリア革命家戦線は、ヌスラ戦線などの攻勢を受け、ジャマール・マアルーフ司令官以下戦闘員約1,400人がアレッポ県方面に敗走した。またこれに先立って、同年5月には、ダルアー県ハウラーン地方で、自由シリア軍南部戦線とヌスラ戦線が対立、前者の司令官複数名が後者に拘束される事件が発生した。さらに2015年1月には、ダマスカス郊外県でイスラーム軍によるウンマ軍掃討作戦が行われ、後者がドゥーマー市一帯から放逐された。

第3の理由は、自由シリア軍を名のる武装集団のジハード主義組織との共闘である。その最たる例が、自由シリア軍参謀委員会指揮下にあったダイル・ザウル軍事評議会のイスラーム国への合流である。2014年6月半ば、ダイル・ザウル軍事評議会はイスラーム国への忠誠を表明し、その傘下に入った。またハズム運動は、前述の通りシャームの民の合同作戦司令室においてヌスラ戦線やイスラーム戦線と共闘し、自由シリア軍アンサール・シャーム大隊とハドラー大隊もアレッポ県でジハード主義組織と共闘している。なお、ハズム運動、自由シリア軍南部戦線、ウンマ軍といった武装集団は、「穏健な反体制派」からなる連合組織だが、参加組織のなかにジハード主義組織が含まれていることは注6~8の通りである。

第4の理由は、シリア政府と戦略的な協力関係にあるYPGとの共闘である。もっとも代表的なケースは、アイン・アラブ市(アレッポ県)をめぐるイスラーム国とYPGの攻防に際して、地元の武装組織がとった姿勢である。すなわち、ラッカ県、アレッポ県でイスラーム国と戦闘を続けてきた自由シリア軍クルド人戦線旅団は、シリア政府への敵対的姿勢を維持しつつ、イスラーム国のアイン・アラブ市侵攻に対抗するため、2014年9月上旬にYPGとユーフラテスの火山合同作戦司令室を発足した。また、自由シリア軍アレッポ県革命軍事評議会前議長としてアレッポ市一帯でシリア軍との戦闘を続けてきたアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐も同年10月、トルコを経由してアイン・アラブ市に入り、YPGとともにイスラーム国と戦った。

なお、西クルディスタン移行期文民局との共闘の他に、2014年2月のヒムス市での停戦合意、同年3月のバービッラー市(ダマスカス郊外県)での「国民和解」などを通じてシリア政府と和解し、武装闘争を放棄した武装集団戦闘員が少なからずいることも看過すべきでない。

「穏健な反体制派」は、「シリア革命」成就に向けて「独裁政権」に抵抗し続ける「フリーダム・ファイター」のように見える。しかし、上述の通り、彼らはジハード主義組織に吸収されることで周縁に追いやられ、独立した主体としては事実上存在していないことが改めて確認できる。

Ⅳ おわりに

これまで各節では、アル=カーイダ系組織、ジハード主義組織、「穏健な反体制派」の特徴や組織間の関係を見てきた。そこから明らかになったのは、こうしたカテゴリーが、イデオロギー的傾向や政治目標を度外視して離合集散を繰り返す反体制武装勢力の実態を反映していないという事実である。

欧米諸国、そしてサウジアラビア、トルコ、カタールといった国々は、この事実を無視して、反体制勢力をジハード主義組織と「穏健な反体制派」に二分し、前者に対しては軍事行動(ただしトルコは不参加)、後者に対しては軍事教練を行っている。しかし、間断なく連関し合う反体制武装勢力のスペクトルのなかで、「穏健な反体制派」を仮想し、支援しようとすることは、自らが根絶しようとしているイスラーム国の同盟者を育てることに等しい。また、こうした矛盾を回避しようとして、反体制武装勢力全体を疎外するような消極的姿勢を示せば、アサド政権を利することにつながってしまう。アル=カーイダ系組織、ジハード主義組織、「穏健な反体制派」という分類は、イスラーム国殲滅、アサド政権打倒、シリアの「民主化」など、「アラブの春」波及後のシリア情勢のなかで夢想されたいかなる目標の実現にも資さないのである。

シリアの紛争においては、アサド政権に殺戮や混乱の責任のすべてを押しつけ、その打倒を目的化しようとする言説がいまだ散見される。同政権が「アラブの春」波及当初に行った過剰な弾圧が現下の混乱の起点にあることは明白である。だが、ORB[2014]やSADA[2014]といった反体制NGOや世論調査機関の調査からも読み取れる通り、シリア国民の間では、反体制勢力全般への支持が低落する一方で、アサド政権と反体制勢力の対話(そして国際社会による対話支援)を前提とした和解が希求されるようになっている。こうした現実を直視せず、「民主化」や「テロとの戦い」といった過度に単純化されたパラダイムに固執し、シリアへの介入を正当化し続けようとする無責任な姿勢こそが、実は混乱を長期化させる最大の要因になっているのである。

(1) ジハード主義(ないしはイスラーム過激派)とは、おおむね以下のような特徴を有する思想・運動だと言える――①現代社会における政治、経済、社会的な秩序が、西洋においてであれ、いわゆるイスラーム世界においてであれ、イスラーム教の教えに反していると全否定し、糾弾する、②イスラーム教を真に理解した前衛集団が非妥協的なジハード(暴力)をもって現代社会を打破することが不可避だと考える、③イスラーム法に基づき、初期イスラーム教世界を範とした政治、経済、社会的秩序の樹立(カリフ制の再興など)をめざす。

(2) 米国務省は、2004年12月17日にイラク・アル=カーイダを外国テロ組織(Foreign Terrorist Organization、FTO)に指定、2012年12月11日にヌスラ戦線を、また2014年5月14日に(イラク・シャーム・)イスラーム国をイラク・アル=カーイダの別名(Alias)として認定した。国務省はまた、2014年9月24日にシャーム自由人イスラーム運動、ムハージリーン・ワ・アンサール軍、そしてジュヌード・シャームの指導者でチェチェン人のムラド・マルゴシュヴィリを特別指定国際テロリスト(Specially
Designated Global Terrorists、SDGT)に追加した(US. Department of State[2014a][2014b][2014c])。一方、国連は、2013年5月13日にヌスラ戦線をイラク・アル=カーイダ(QE.J.115.04.)の別名(a.k.a.)としてアル=カーイダ制裁委員会のリストに登録、その後2014年5月14日に独立組織(QE.A.137.14.)として登録変更した。また(イラク・シャーム・)イスラーム国も2013年5月30日にイラク・アル=カーイダ(QE.J.115.04.)の別称として同リストに登録した(Al-Qaida
Sanctions Committee [2014]、United Nations[2013])。

(3) 「ダーイシュ」(Dāʻish)は、イラク・シャーム・イスラーム国のアラビア語「al-Dawla al-Islāmīya fī al-ʻIrāq
wa al-Shām」の頭字語。

(4) アブー・ハーリドは2013年2月にアレッポ市でダーイシュによるとされる自爆攻撃で暗殺された。

(5) イスラーム戦線の前身とされるシリア・イスラーム解放戦線(2012年9月結成)も、シャームの鷹旅団、ファールーク大隊、イスラーム旅団、タウヒード旅団などからなっていた。

(6) 自由シリア軍南部戦線に参加した組織は以下の通り――南部シリア革命家戦線、下カラムーン旅団、ヤルムーク旅団、ファッルージャ・ハウラーン旅団、ムハージリーン・アンサール旅団、アスワド・スンナ旅団、3月18日師団、ハムザ・アサドゥッラー旅団、第1特殊任務師団、イスラームの暁旅団、シャバーブ・スンナ旅団、イッズ・ブン・アブドゥッサラーム旅団、カラーマ旅団、シャーム解放師団、第1砲兵中隊、第1旅団、ドゥーマー殉教者旅団、グータ・ムジャーヒディーン旅団、アバービール・ハウラーン旅団、ハウラーン大隊統合、上カラムーン第11師団、ムウタッズ・ビッラー旅団、特殊任務旅団、クナイトラ軍事評議会、シャームの剣旅団、シャーム解放旅団、ダマスカス殉教者旅団、イスラーム殉教者旅団、自由殉教者旅団、ヤルムーク殉教者旅団、アームード・ハウラーン旅団、ラジャーの盾旅団、二大聖地旅団、ハビーブ旅団、建設大隊、ナワー自由人旅団、サラーフッディーン旅団、ハウラーンの嵐旅団、タバールク・ラフマーン大隊、ラジャー・タウヒード大隊、第1騎兵中隊、第2騎兵中隊、ムウタスィム・ビッラー大隊、ヒムス・ワリード旅団、イブン・ワリード末裔旅団、特殊任務中隊、ハウラーン殉教者旅団、西部郊外自由人大隊。

(7) ハズム運動に参加した組織は以下の通り――北部ファールーク大隊、第9師団特殊部隊、第1機甲師団、アッラーへの信仰旅団、アビー・ハーリス大隊(ハマー・ファールーク)、サラミーヤ自由人大隊(ハマー・ファールーク)、殉教者アブドゥッラフマーン・シャマーリー大隊、殉教者バクル・バッカール大隊、殉教者ハムザ・ザカリヤー大隊、ラシード大隊、アブー・アスアド・ニムル大隊、アフバーブ・アッラー旅団、ファーティフ大隊、第60歩兵旅団、アブドゥッラフマーン大隊、殉教者アブドゥルガッファール・ハーミーシュ大隊、ザアフラーナ・ファールーク大隊、殉教者アブドゥッラー・バッカール大隊、ラスタン殉教者大隊、殉教者アンマール・トゥラース・ファルザート大隊、真実の声連隊。

(8) ウンマ軍に参加した組織は以下の通り――ドゥーマー殉教者旅団、アスワド・グータ旅団、ファールーク・ウマル旅団、ファトフ・シャーム旅団、アルバイン殉教者旅団、アンサール・ウンマ旅団、特殊部隊中隊、ダマスカスの剣旅団、ハルマラ・ブン・ワリード大隊、ザイド・ブン・サービト旅団。

(9) 「海岸解放作戦」は、ダーイシュのイスラーム国への改称と時を同じくして、同地一帯に展開していたヌスラ戦線らが突如としてトルコ領内ないしはイドリブ県に撤退したことで、シリア軍の勝利に終わった。

文献リスト

青山弘之[2014]「「イスラム国」の正体を探る――「国家」を作って聖戦を仕掛ける逆転の発想――(特集 異次元動乱 世界を震撼させる「イスラム国」)」『外交』第28号(11月)、56~60ページ。

髙岡豊[2014]「「イラクとシャームのイスラーム国」は何に挑戦しているのか」『世界』第859号(8月)、20~24ページ。

Al-Qaida Sanctions Committee[2014]“The List Established and Maintained
by the Al-Qaida Sanctions Committee with Respect to Individuals, Groups,
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on December 12 (http://www.un.org/sc/committees/1267/pdf/AQList.pdf).

ORB (Opinion Research Business)[2014]“Face-to-face National Opinion Poll
in Syria.” (http://www.opinion.co.uk/perch/resources/syriadatatablesjuly2014.pdf).

SADA (Muʼassasa Sada li-l-Abḥāth wa Istiṭlāʻ)[2014]“Istiṭlāʻ Raʻy ḥawla
Fikra Taqdīm Mubādarāt l-Ḥall al-Azma al-Sūrīya ʻabra al-Mufāwaḍāt al-Mubāshira
maʻa al-Niẓām.” August 30 (http://www.sadasy.org/?p=101).

United Nations[2013]“Security Council Al-Qaida Sanctions Committee Amends
Entry of One Entity on Its Sanctions List (SC/11019).” May 30 (http://www.un.org/press/en/2013/sc11019.doc.htm).

US. Department of State[2012]“Terrorist Designations of the al-Nusrah Front
as an Alias for al-Qaʻida in Iraq: Press Statement.” December 11 (http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2012/12/201759.htm).

――― [2014a]“Terrorist Designations of Groups Operating in Syria: Media
Note.” May 14 (http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2014/05/226067.htm).

――― [2014b]“Designations of Foreign Terrorist Fighters: Media Note.” September
24 (http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2014/09/232067.htm).

――― [2014c]“Foreign Terrorist Organizations.” Last Updated on December
18 (http://www.state.gov/j/ct/rls/other/des/123085.htm).

アレッポ市シャイフ・マクスード地区でのYPGがヌスラ戦線戦闘員4人を殺害(2015年10月5日)

アレッポ県では、ARA News(10月5日付)によると、アレッポ市シャイフ・マクスード地区一帯で、西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊とシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団が交戦し、ヌスラ戦線戦闘員4人が死亡した。

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シャーム自由人イスラーム運動は「穏健な反体制派」など41組織とともに、ロシアに対抗するための地域同盟の結成を呼びかける一方、ヒムス県北部でヌスラ戦線とともに「大作戦司令室」を設置(2015年10月5日)

アル=カーイダ系組織のシャーム自由人イスラーム運動をはじめとする41の反体制武装集団は共同声明を出し、ロシアとイランと戦うため同盟の結成を地域諸国に呼びかけた。

「シリア国民に対するロシアの軍事攻撃をめぐる声明」と題されたこの共同声明は、ロシア軍の攻撃を「あからさまな占領」としたうえで、その空爆が「民間人を直接狙っている」と指弾、「シリアを占領するロシアとイランの同盟に対抗するための地域同盟の結成」を呼びかけた。

共同声明に参加したのは、以下の組織。

アジュナード・シャーム

アジュナード・シャーム・イスラーム連合

シャーム戦線(ジャブハ・シャーミーヤ)

第101歩兵師団

第13師団

第16歩兵師団

第1沿岸師団

中部師団

第111連隊

海外第10旅団

ハサカ自由軍旅団

フルカーン旅団

イッザ連合

山地の鷹旅団大隊連合

「正しく進め」連合

アサーラ・ワ・タンミヤ戦線

インカーズ戦闘戦線

シャーム戦線(ジャブハト・シャーム)

イスラーム軍

ヒムス・タウヒード軍

ムジャーヒディーン軍

ヤルムーク軍

シャーム自由人イスラーム運動

ヒムス解放運動

ヌールッディーン・ザンキー運動

フルサーン・ハック

スルターン・ムラード師団

部族師団

シャーム解放師団

アームード・ハウラーン師団

ラフマーン軍団

シャーム軍団

イスラーム覚醒大隊

シャーム革命家大隊

スィッディーク旅団

ファトフリュオ段

タルビーサ旅団

ザーウィヤ山の鷹旅団

タファス旅団

第1連隊

アンサール・シャーム大隊image002 image003

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アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線は4日、シャーム自由人イスラーム運動、ヒムス軍団などヒムス県北部で活動するジハード主義武装集団と「大作戦司令室」を結成し、シリア軍の攻勢に対抗すると発表した。

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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フランスのファビウス外相は「ダーイシュ(イスラーム国)およびテロリストと目される組織」を爆撃すべきと述べ、オランド大統領の前言を撤回し、ロシアの主張に事実上同調(2015年10月5日)

フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、Euro 1(10月5日付)のインタビューで、ロシア軍によるシリア領内での空爆に関して、ダーイシュ(イスラーム国)だけでなく、シャームの民のヌスラ戦線などアル=カーイダ系組織をも標的とすべきだと述べ、ロシアの主張を事実上認める。

ファビウス外務大臣は「ダーイシュおよびテロリストと目される組織への空爆」を行うべきだと述べ、これに対して記者が「ヌスラ戦線を加えるべきだということか」と聞き返すと、「ダーイシュのみ」を空爆すべきたどのフランソワ・オランド大統領の発言が「簡略的だった」と答えた。

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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ロシアのラブロフ外務大臣「米国は自由シリア軍がどこにおり、誰が指導しているかといった情報を開示しない…。自由シリア軍は想像上の組織に過ぎない」(2015年10月5日)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は記者会見で、「自由シリア軍」との連絡を行うためのチャンネルを開設する用意があるが、米国が「自由シリア軍」に関する情報を開示しようとしないと述べた。

ラブロフ外務大臣は、チャンネル開設に向けて、米政府に「自由シリア軍」に関するデータ、具体的には「自由シリア軍がどこにおり、誰が指導しているのかといった情報」の提示を要請したが、「我々はまだ何らの情報も得ていない」と述べ、米国からの回答がなされていないことを明らかにした。

そのうえで、「自由シリア軍は想像上の組織以外の何ものでもない」と指摘、「シリア軍のみがシリア全土でダーイシュ(イスラーム国)と戦うことができる軍だ」と述べた。

一方、イラクでのダーイシュに対する空爆については、イラク政府から正式な要請は受けていないと述べ、空爆実施の可能性を否定した。

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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トルコ政府、NATOはロシア軍戦闘機によるハタイ県への領空侵犯に厳重抗議(2015年10月5日)

トルコ外務省は声明を出し、トルコ軍戦闘機がハタイ県領空を侵犯したロシア軍戦闘機1機に対して緊急発進し、同機をシリア領内に退却させた、と発表した。

これを受け、トルコ外務省は、駐トルコ・ロシア大使を呼び、厳重抗議したという。

これに関して、トルコ軍も声明を出し、トルコ軍のF-16戦闘機が1日、ロシア軍のSu-29戦闘機の領空侵犯によって5分40秒により「嫌がらせ」(レーダーによる捕捉)を受けた、と発表した。

ロシア軍機によるトルコ領空への侵犯を受け、NATOは理事会の緊急会合を開き、「全加盟国はトルコや加盟国での領空侵犯に強く抗議する。無責任は行動はきわめて危険」とする声明を発表し、ロシア側に抗議した。

ジョン・ケリー米国務長官は、ロシア軍戦闘機のトルコ領空への侵犯に関して「トルコが自らの権利に従って対応していたら、ロシア軍戦闘機は撃墜されていたろう」と述べた。

『ハヤート』(10月6日付)が伝えた。

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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ダーイシュ(イスラーム国)はパルミラ遺跡の凱旋門を破壊:アブドゥルカリーム遺跡博物館局長「選択肢は簡単だ。タドムルが完全に破壊されて終わるか、シリア軍が国際社会とロシア軍の支援を受けて、同市解放に向けて迅速に進軍するかだ」(2015年10月5日)

『ハヤート』(10月6日付)などは、ヒムス県タドムル市にあるUNESCO世界文化遺産のパルミラ遺跡の主要な遺構の一つである凱旋門がダーイシュ(イスラーム国)によって破壊されたと報じた。

シリア文化省のマアムーン・アブドゥルカリーム遺跡博物館局長はAFP(10月5日付)の取材に対して、「我々は、凱旋門が昨日(4日)に破壊されたとの現地情報を得た」ことを明らかにした。

アブドゥルカリーム局長はまた「選択肢は簡単だ。タドムルが完全に破壊されて終わるか、シリア軍が国際社会とロシア軍の支援を受けて、同市解放に向けて迅速に進軍するかだ…。最優先されるべきは、同市の救済で、そのうえで政治問題を議論すればよい」と訴えた。

さらに「我々はダーイシュがほかの遺構に爆弾を仕掛けていることを知っている。彼らは劇場、円柱さえも破壊しようとしている。我々は遺跡全体に破壊が及ぶことを恐れている」と付言した。

凱旋門は、パルミラが古代ローマに支配されていた約2000年前に建設された代表的遺構。

Kull-na Shuraka', October 5, 2015
Kull-na Shuraka’, October 5, 2015

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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シリア軍はアレッポ県、ヒムス県中部、ダイル・ザウル県でダーイシュ(イスラーム国)の拠点を爆撃(2015年10月5日)

アレッポ県では、SANA(10月5日付)によると、シリア軍が、アイン・ジャマージマ村、ジュッブ・サファー村、東クワイリス町、西クワイリス村、ダイル・ハーフィル市、マスカナ市、バーブ市、航空士官学校一帯、アルバイド村、ナアーム丘一帯、シャイフ・アフマド村、ジャッブール村、ライヤーン村、タッル・ファーウーリー村、トゥライディム村、サーリヒーヤ村などで、ダーイシュ(イスラーム国)の拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、シリア人権監視団によると、ロシア軍と思われる戦闘機が、ダーイシュ(イスラーム国)の拠点都市の一つバーブ市を空爆した。

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ヒムス県では、SANA(10月5日付)によると、シリア軍がシャーイル・ガス採掘所一帯、カルヤタイン市、ハダス村、タドムル市郊外採石場一帯などでダーイシュ(イスラーム国)の拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(10月5日付)によると、シリア軍がジャフラ村、マリーイーヤ村、ハトラ村でダーイシュ(イスラーム国)の拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が、ダーイシュ(イスラーム国)が展開するウカイリバート町一帯を空爆した。

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ハサカ県では、ARA News(10月6日付)によると、ハサカ市南西部のアブドゥルアズィーズ山一帯での西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊とダーイシュ(イスラーム国)の戦闘で、人民防衛隊はダーイシュ戦闘員100人以上を殲滅、17ヵ村を奪還した。

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米中央軍(CENTCOM)は、10月5日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して24回の空爆を行ったと発表した。

このうちシリア領内での空爆は7回におよび、ハサカ市近郊(5回)、ダイル・ザウル市近郊(1回)、マンビジュ市近郊(1回)のダーイシュに対して攻撃が行われたという。

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、October 6, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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シリア軍は、ロシア軍の爆撃と並行して、イドリブ県、ハマー県、ラタキア県、ヒムス県でヌスラ戦線などの拠点を爆撃(2015年10月5日)

イドリブ県では、SANA(10月5日付)によると、シリア軍がロシア軍の空爆と並行して、ジスル・シュグール市、フバイト村、アービディーン村、タッル・マラク村、カッサービーヤ村などでシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団の拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(10月5日付)によると、シリア軍がハタムルー村、ラターミナ町、マンスーラ村でシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団の拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、シリア人権監視団によると、シリア軍がカッサービーヤ村を「樽爆弾」などで空爆した。

またサラミーヤ市郊外のカーファート村では、爆弾が爆発し、シリア軍兵士5人が殺害された。

他方、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団は、アレッポ県ハナースィル市とヒムス県イスリヤー村を結ぶ街道一帯、ムーリク市、ハマーミーヤート村のシリア軍拠点複数カ所、を攻撃した。

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ラタキア県では、SANA(10月5日付)によると、シリア軍がロシア軍の空爆と並行して、ダッラ村、リーハーニーヤ村の反体制武装集団拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
た。

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ヒムス県では、SANA(10月5日付)によると、シリア軍が、ロシア軍の空爆と並行して、ダイル・フール村、タルビーサ市、サアン・アスワド村でシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団の拠点を空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がドゥーマー市など東グータ地方各所を砲撃、またダーイヤト・アサド町一帯では、シリア軍、国防隊がジハード主義武装集団と交戦した。

シリア軍はまた、東カラムーン地方、ダーライヤー市に対しても「樽爆弾」などで空爆、砲撃を行った。

一方、SANA(10月5日付)によると、シリア軍がドゥーマー市西部一帯のイスラーム軍拠点に対して、正確な攻撃を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

他方、クッルナー・シュラカー(10月5日付)によると、東グータ地方のマルジュ・スルターン村近郊に、同地での空爆を行っていたシリア軍戦闘機が墜落した。

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アレッポ県では、SANA(10月5日付)によると、シリア軍がジャービリーヤ村、ナイラブ航空基地一帯、アレッポ市シャイフ・サイード地区、ラームーサ地区、アーミリーヤ地区、ナアナーイー広場一帯、バニー・ザイド地区、ライラムーン地区、ブスターン・バーシャー地区、スライマーン・ハラビー地区、カースティールー地区などでタウヒード旅団、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がシャイフ・マスキーン町、ハーッラ丘一帯を「樽爆弾」で空爆した。

一方、SANA(10月5日付)によると、ダルアー市ビラール・ハバシー・モスク一帯、旧税関地区一帯、西ガーリヤ村で、シリア軍がシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がアフマル丘一帯、アマル農場を空爆した。

一方、SANA(10月5日付)によると、シリア軍がタルジャナ村、ハーフィル村でシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、タダームン区でシリア軍、国防隊が、ジハード主義武装集団と交戦、シリア軍が同地を砲撃した。

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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ロシア軍はイドリブ県、ヒムス県、ラタキア県でダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線の拠点を爆撃(2015年10月5日)

ロシア国防省のイゴール・コナシンコフ報道官は、過去24時間で、ロシア軍のSu-34、Su-24M、Su-25戦闘機が、イドリブ県、ヒムス県などの9カ所に対して25回にわたり空爆を実施したと発表した。

スプートニク通信(10月5日付)などが伝えた。

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イドリブ県では、ロシア国防省によると、ロシア軍の空爆は6回に及び、イドリブ市郊外のテロリストの基地やT-55戦車などの戦車・装甲車車輌30輌以上、ジスル・シュグール市の迫撃砲発射拠点を破壊された。

また、SANA(10月5日付)によると、ロシア軍は、ジスル・シュグール市一帯を空爆し、教練キャンプ、Gradミサイル発射基地、武器弾薬庫、車輌30輌を破壊した。

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ヒムス県では、ロシア外務省によると、ロシア軍は、ラスタン市郊外のダーイシュなどの拠点に対して9回にわたって空爆を実施した。

また、SANA(10月5日付)によると、ロシア軍戦闘機は、タルビーサ市でダーイシュ(イスラーム国)に対する空爆を実施し、武器庫、連絡本部を破壊した。

しかし、タルビーサ市一帯は、ダーイシュではなく、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団の支配地域で、ダーイシュの活動はほとんど確認されていない。

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ラタキア県では、SANA(10月5日付)によると、ロシア軍は、バイト・ズィーファー村、ダッラ村、リーハーニーヤ村のテロ組織拠点を空爆し、司令部、車輌・装備を破壊、複数の戦闘員を殺害した。


AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、Sputnik News, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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アサド大統領がイランのテレビ局のインタビューに応じる「トルコ、ヨルダン、カタール、サウジアラビアといった国に圧力をかけ、シリアへのテロリスト、武器、資金の流れを止めることだ…。テロ支援が止まれば、ほとんどの難民はただちに帰国するだろう…。テロを支援する国がいては、政治的解決は実現し得ない」(2015年10月4日)

シリアのアサド大統領はイランのテレビ局ハバル・ネットの単独インタビュー(https://www.youtube.com/watch?v=SSqOCuPfpWk)に応じた。

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, October 4, 2015
SANA, October 4, 2015

「私はイランの同胞そして首脳と同じ意見を共有していると考えている。その意見とは、西側の首脳は信頼できないというものだ。もちろん、移行期などに関する彼らの最近の発言について、私は次のようにはっきりと言っておきたい。いかなる外国の首脳もシリアの未来を決定する資格などない。彼らは、将来の政治体制、誰が統治し、誰が統治しないかということを決める資格を持っていない。こうしたことはシリア国民が決定することである。それゆえこうした発言は我々には関係ない」。

「西側の首脳らは喪失状態のなかにおり、暗中模索のなかで視界を失っている。同時に、自分たちが策定し、その目的を達成できなかった計画が失敗したと感じている。もちろん、彼らが実現した唯一の目標は…、シリアのインフラを破壊し、多くの人々に血を流させるというものだ。しかしその代価は高くついた…。シリアでの起きていることに関して、これらの国の政府は自国民に対して嘘をついていたことが明らかになり始めた。そして、彼らはテロに直面するというかたちであれ…、難民問題に直面するというかたちであれ、その代価を払うことになった。難民はシリアからだけでなく、中東のさまざまな地域から押し寄せている。こうした要素すべてが(西側の)姿勢を変化させたのだ」。

「我々が「西側諸国」という概念で呼ぶ国々について話す時、我々はある一つのシステムについて話している。それは、これらの国々には米国という一人の主人がいる、というものだ。これらのすべての国は、米国という指揮者が命じるがままに振る舞っている…。彼らはシリアを弱体化させ…、弱体化した国々が…自らの問題や国内対立に気を取られることを望んでいる…。その典型がパレスチナ問題だ」。

「今日、我々の地域にはさまざまな種類のテロが存在するが、テロ組織がイスラーム教に依拠しているということで、「イスラームのテロ」などと言われるテロが優勢だとされる。もちろん、これらの組織とイスラーム教は無関係だ。だが、この概念こそが今日、もっともよく使用されているのだ。これらの組織は、宗派主義的な反乱につけ込んでいる…。つまり、その最大の被害とは時間とともに社会が分断されていってしまうことにある」。

「サウジアラビアは、民主主義、人権、国民参加の手本と言えるだろうか? いや、この国は、世界レベルでもっとも遅れた最悪の国だ…。一方、エルドアンは、トルコの社会内に亀裂を創り出そうとしている…。この人物(エルドアン)にも、ダウトオールには、いかなる国、世界のどの国民にも忠告できるような立場にない」。

「シリアには改革が必要なことが多くある。また亀裂もある。我々はすべてのシリア人に対してこうした亀裂の責任を負っている…。しかし、シリアで起きていることの実態に目を向けると、我々は外国の要因が大きな意味を持っていることを否定できない。デモに参加するためにカネが支払われてきた…。我々は当初から、デモにおけるすべての要求に対応してきた。デモの多くが信用できず、実態を伴っていないということを知っていたにもかかわらずである…。また、我々は当初から、政治勢力どうしの政治的対話を呼びかけ…、その結果として憲法改正を行った。それによって、危機の原因だと一部の者が主張していた…条文を変更した」。

「西側諸国、そしてそのアジェンダに追随する地域諸国、とりわけトルコ、カタール、サウジアラビアは、大統領の問題に限定して主張を展開する。なぜか? 彼らは問題を個人レベルの問題で推し進めたいからだ。つまり、シリアの問題の原因は、一人の人間にあり、そうすることで、シリアにおいて事態を破壊しようとしているテロリスト、西側諸国、あるいは地域諸国ではなく、一人の人間に責任を押しつけようとしている。それゆえ、もう一度言おう。大統領なども問題はシリア国民と結びついた問題だ…。この人間が残るとシリア国民が決めれば、彼は残るのだ。また彼らが去るべきだと決定すれば、直ちに去らねばならない。外国世論がシリア国民の世論の逆であれば、外国の世論には何の価値もない。それゆえ、我々は、対話を再開し、対話を続けることが…シリア危機の解決策だと言っている」。

大統領は制度を通じて就任し、制度を通じて退任する。憲法を通じて就任し、憲法、法律、選挙を通じて退陣する。これこそが制度だ。大統領はテロで就任したり、退陣したりはしない。混乱のなかで就任したり、退陣したりはしない。外国の意見を通じて就任したりするのではない」。

「当初から、我々はテロと戦うと決めていた。今日、我々はこの原則により強く従っている。当初から、我々は独自に自らの問題を解決すると決めていた。友好国の支援を欲している。これはイラン、ロシア、それ以外の世界の多くの国がしてくれていることだ。しかし、誰も我々の代わりに問題を解決などできない」。

「国家がテロリストと対話するために席を共にすることはない、ということは世界中で自明のことだ…。しかし国家は、ある一つの状況のもとでテロリストと対話ができる。それは対話の目的が武装解除であり、テロ行為を行っていた者たちを国家と法の庇護のもとに復帰させる場合だ。これはシリアで実際に起きていることであり、いわゆる「和解」の名のもと、我々は多くの武装グループと対話を行ってきた」。

「我々は、テロ組織、その最たるものであるダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線、そしてアル=カーイダが、我々の地域、そして社会における長く深刻な逸脱によってもたらされた一現象だと見ている…。この逸脱の基礎をなしている現象は、ワッハーブ主義の布教であり、そこではイスラーム教が歪められて解釈されてしまっている…。テロ組織の脅威は非常に大きい。だが、我々が個々の組織と戦っているだけでは不十分だ。もっとも重要なのは、テロをもたらす思想、この思想を弄ぶ国と戦うことだ」。

「テロを支援する国がテロとの戦いを実行することなどできない。これが我々の目にしている有志連合の実態だ。我々が1年半経っても何の成果も目にしていないのはそのためだ。むしろ逆で、我々は逆の結果を目の当たりにしている。我々はテロの拡散を目にしている…。テロを支援してきた国は、テロを隠蔽しようとする。有志連合が真剣であるはずない…。その最たる証拠は…、米国とその同盟諸国がシリアとイラクでテロ、あるいはダーイシュと戦っている一方で、エルドアンとダウトオールの政府はテロリストを支援し、これらテロリストはトルコから越境し、武器、資金、戦闘員を獲得している…。この有志連合は、既存の勢力どうしの間のバランスを作り出すこと以外は何でもするだろう。なぜなら、そうしたバランスがなければ、炎は燃え続け、シリアとイラク、さらには地域の他の国が退廃していくからだ。そしてそれによって、我々みなを数十年、数世代にわたって弱体化させようとしているのだ」。

「もし私がシリアにおけるテロの媒介者だとしたら、イエメンにおけるテロの媒介者は誰だというのか? 私はイエメンにはいない。リビアのテロの媒介者は誰だというのか? イラクのテロの媒介者はどうなのか? 例を挙げるなら、ダーイシュはシリアで生じたのではない。米国が事態を掌握しようとしていた2006年にイラクで発生したのだ」。

「(シリア、イラン、イラク、ロシアによるテロとの戦いのための新たな同盟に関して)成功すると記されねばならない。そうでなければ、我々は地域全体の破壊に直面するだろう…。我々はこの点については信頼している…。テロを支援している諸外国が、テロとの戦いに真剣に参加するのであれば、あるいは少なくともテロリストへの支援を停止するのであれば、そのことは結果の実現を早めることになろう…。しかし、これらの国がテロ支援を続けたとしても…、我々同盟諸国には、ヴィジョンがあり、経験がある…。これらの国は、軍事、治安、情報などといった面で、テロに対して一致団結して戦う。それゆえ間違いなく、この同盟は結果を実現するだろう」。

「彼ら(テロ支援国家)に、テロがいずれあなた方のところに波及すると言いたかったが、すでにテロはこれらの国に波及している。こうした言葉は脅迫でも何でもない…。周知の通り、多数のテロリストが移民のなかに紛れ込んでおり、欧州諸国に潜伏している」。

「シリアとイラクのテロ組織におけるもっとも重要な幹部は欧州出身者だ…。つまりテロには国境はなく、テロをカードとして好きなときに利用することなどできないのだ。私はいつもテロをサソリにたとえている。機会を窺って指してくるサソリをポケットなかにしまっておくことなどできない」。

「我々は敵が何を考えているかを理解せねばならない。危機発生当初から、この戦争は何よりもまず情報戦だったからだ…。外国のメディア(の喧伝)の影響は我々の国にはもはや見られない…。彼ら(欧米諸国のメディア)は自分たちの国の国民を騙すことはできたが、我々を騙すことはできなかった…。国にとって重要な問題があり、自分の国の防衛にあたっている時、他人が何を言おうが関係ない。何よりもまず重要なのは、自分の国を守ることにあり、国民の利益、そして国益を実現することにある」。

「シリア人が難民となることは非常に痛ましいことだ。おそらくシリアの歴史における汚点となり、我々はそれを何十年、何世紀も語り継いでいくことだろう…。しかしより痛ましいのは、西側諸国そして西側メディアが難民問題を利用して、それを自分たちが痛むべき人道的な悲劇だなどとみなすことだ。実際には、欧米諸国こそが、テロ支援を通じてこの惨状を作り出すことにもっとも大きく貢献してきたのだ…。我々が国際機関や諸外国に求めることがあるとすれば、すべての難民がテロ支援を止めて欲しいと求めていること(を伝えること)だと思う。トルコ、ヨルダン、カタール、サウジアラビアといった国に圧力をかけ、シリアへのテロリスト、武器、資金の流れを止めることだ…。シリアの問題の解決は複雑でも何でもない…。テロ支援が止まれば、ほとんどの難民はただちに帰国するだろう」。

「私は国際社会において新たな雰囲気が現れ始めていると思う…。そこでは、シリアの危機への真の解決策を案出することへの圧力が強まっている。事実、この圧力は政治解決という名の下に提起されている。しかし、テロを支援する国がいては、政治的解決は実現し得ない。この二つはパッケージだ。それゆえ、我々はこの圧力が、テロを支援する国への圧力になることを望んでいる…。我々はテロとの戦いと並行して、政治的動きを支援する…我々にとって現在唯一の選択肢は、テロを撲滅することにある。なぜなら、いかなる解決策、あるいは政治的なアイデアを実施するにしても、安定が不可欠だからだ…。テロ撲滅がシリアにおけるあらゆる行動の基礎をなしており、政治的なアイデアはその次に実行される」。

「我々は、旧ソ連、そしてロシアと60年以上の関係がある。しかし、彼らは我々に何かを押しつけようとなど一度もしたことはない…。ロシアと米国の対話はそれゆえ、シリアへの介入のために行われているのではなく…、内政干渉を行おうとする国と…、干渉、覇権、国連決議や国連憲章への違反を阻止しようとする国の対話だ…。ロシアとはシリア情勢の詳細について話合っている…。この関係は完全に透明なものだ」。

「ジュネーブ2会議は、(ジュネーブ合意における)一つの条項のみに依拠していた。それは移行期統治機関に関する条項だ。我々はこの条項を完全に拒否しているが、彼ら(欧米諸国)は、この条項のみを審議し、それをシリア政府…、あるいはシリア国民に押しつけようとした。一方、モスクワ会議では、ジュネーブ合意のすべての条項…が審議されている。そこにはシリアの独立、領土の一体性、シリア人どうしの対話などが記されている…。それゆえ我々はモスクワ3がジュネーブ3を成功させるために不可欠だと言っている」。

「中国は、軍事的な側面においてテロとの戦いに参加してはいない…。しかし、中国はロシアの役割を支援し、テロとの戦いにおいてはプーチン大統領のイニシアチブを支援している」。

「戦略的と評されるこの関係(シリア、イラン、ヒズブッラーの関係)がなければ…、地域の状況は独立性という点において今日とはまったく異なったものとなっていただろう…。おそらく、独立国、独立した政府、独立した国民はもっと少なくなっていただろう。この枢軸は、自らの権利を守り、独立性を維持する点において秀でている」。

「イラン国民は原則を重んじる国民であり…、イランは忠誠に対しては忠誠をもって応え、信頼に対しては信頼をもって応え、透明性に対しては透明性をもって応えてくれる」。

「真の反体制派とは、国民に帰属しているものだ。反体制派だと自認する者がいるのであれば、我々は彼にこう言いたい。シリア国民の関心に目を向けよ、と。あなたが国民の関心、希望、願いに目を向け、国民の利益のために活動すれば、国民はあなたを自分たちの代表だとみなしてくれるだろう。そしてそれによって、あなたは自分の国において役割を得るだろう…。しかし、外国に追随しているのに自分自身を反体制派だと言う者に対してはこう言いたい。反体制派という言葉は愛国者という意味がある。愛国的でない反体制派などいない。愛国的でない人間は反体制派ではなく、単なる手先だ、と」。

なおインタビュー全文はSANA(http://www.sana.sy/?p=278324)が配信した。

SANA, October 4, 2015、UPI, October 4, 2015などをもとに作成。

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オバマ米大統領は国防総省にシリア国内の「穏健な反体制派」への武器供与を命令(2015年10月4日)

『ニューヨーク・タイムズ』(10月4日付)は、複数の米政府高官の話として、バラク・オバマ米大統領が、国防総省に対して、シリア国内で活動している「穏健な反体制派」への装備(そしておしらくは武器)を直接供与するよう命じるとともに、トルコのインジルリク空軍基地からシリア北部への空爆を強化することを承認した、と伝えた。

オバマ大統領はまた、2万人以上の兵力を持つクルド人部隊(西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊と思われる)が行う戦闘に、アラブ人戦闘員3,000~5,000人を動員し、有志連合がこれを航空支援することで、シリア国内のダーイシュ(イスラーム国)の中心拠点であるラッカ市に圧力をかけようとしているという。

The New York Times, October 4, 2015などをもとに作成。

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トルコのエルドアン大統領「「樽爆弾」が降り注いでいる土地に無垢の人々を送り返すことなどできない」(2015年10月4日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、欧州へのシリア人難民・移民らの流入問題への対応についてEU・NATO高官と協議するため、ベルギーのブリュッセルを訪問し、シリア情勢に関して「「樽爆弾」が降り注いでいる土地に無垢の人々を送り返すことなどできない」と述べた。

ARA News(10月5日付)が伝えた。

AFP, October 5, 2015、AP, October 5, 2015、ARA News, October 5, 2015、Champress, October 5, 2015、al-Hayat, October 6, 2015、Iraqi News, October 5, 2015、Kull-na Shuraka’, October 5, 2015、al-Mada Press, October 5, 2015、Naharnet, October 5, 2015、NNA, October 5, 2015、Reuters, October 5, 2015、SANA, October 5, 2015、UPI, October 5, 2015などをもとに作成。

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シリア・ムスリム同胞団「ロシアの占領に対する抵抗は合法的義務」(2015年10月4日)

トルコで活動するシリア・ムスリム同胞団は、ロシア軍によるシリア領内での空爆開始を受け、ロシアに対するジハードを宣言した。

同胞団のウマル・ムシャウフィフ広報局長は「我々同胞団は今、ロシア軍の介入と民間人への空爆により、ロシアのあからさまな占領の前に身を置いていると明言する。占領者への抵抗は合法的な義務である」と述べた。

ムシャウフィフ氏はそのうえで「政治、軍事、情報などあらゆる合法的な手段をもってこの占領に抵抗」すると主張、「アサド政権を保護するというこの方法でシリアでの自らの国益を維持できるとの幻想をロシアは抱いている。しかし、こうした方法は、アフガニスタン、チェチェンと同じ経験の再来だ。我々は5年にわたってアサド政権、イラン、ヒズブッラーに抵抗してきたように、ロシアに抵抗する」と表明した。

AFP, October 4, 2015、AP, October 4, 2015、ARA News, October 4, 2015、Champress, October 4, 2015、al-Hayat, October 5, 2015、Iraqi News, October 4, 2015、Kull-na Shuraka’, October 4, 2015、al-Mada Press, October 4, 2015、Naharnet, October 4, 2015、NNA, October 4, 2015、Reuters, October 4, 2015、SANA, October 4, 2015、UPI, October 4, 2015などをもとに作成。

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アル=カーイダとの関係を否定するシャーム自由人イスラーム運動のロケット・砲兵旅団がアル=カーイダ系組織のヌスラ戦線に忠誠を誓う(2015年10月4日)

クッルナー・シュラカー(10月4日付)は、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線に近い複数のツイッター・アカウントからの情報として、シャーム自由人イスラーム運動のロケット・砲兵旅団が離反し、ヌスラ戦線に忠誠(バイア)を表明した、と伝えた。

離反したロケット・砲兵旅団は、20人以上の離反士官からなるという。

離反の理由に関して、複数の活動家は「「方法」をめぐる意見の相違ではなく、「組織運営上」の対立」によるものだという。

またヌスラ戦線に忠誠を誓った理由については「旅団が必要としている砲弾を提供してくれた」ためだという。


AFP, October 4, 2015、AP, October 4, 2015、ARA News, October 4, 2015、Champress, October 4, 2015、al-Hayat, October 5, 2015、Iraqi News, October 4, 2015、Kull-na Shuraka’, October 4, 2015、al-Mada Press, October 4, 2015、Naharnet, October 4, 2015、NNA, October 4, 2015、Reuters, October 4, 2015、SANA, October 4, 2015、UPI, October 4, 2015などをもとに作成。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会の幹部ムンズィル・ハッダーム氏が一時身柄拘束(2015年10月4日)

AFP(10月4日付)などによると、シリアの治安当局は、国内で活動を続ける反体制派の民主的変革諸勢力国民調整委員会の幹部ムンズィル・ハッダーム氏を一時身柄拘束した。

民主的変革諸勢力国民調整委員会筋によると、ハッダーム氏は、ダマスカス郊外県クタイファ市の検問所で4日早朝に拘束され、数時間後に釈放された。

AFP, October 4, 2015、AP, October 4, 2015、ARA News, October 4, 2015、Champress, October 4, 2015、al-Hayat, October 5, 2015、Iraqi News, October 4, 2015、Kull-na Shuraka’, October 4, 2015、al-Mada Press, October 4, 2015、Naharnet, October 4, 2015、NNA, October 4, 2015、Reuters, October 4, 2015、SANA, October 4, 2015、UPI, October 4, 2015などをもとに作成。

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ドイツのメルケル首相「反体制派、シリア政府、諸外国などすべての代表者の政治プロセスへの参加が必要」(2015年10月4日)

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ドイツのラジオ局に対して、2日にウクライナ和平協議が開催されたパリで、ロシアのヴラジミール・プーチン大統領とシリア情勢について意見を交わし、プーチン大統領に「軍事的努力は必要だが、それだけでは問題は解決しない…。我々には政治プロセスが必要だ」と伝えたことを明らかにした。

メルケル首相は、この政治プロセスに関して「政治的解決にいたるため、私は、シリア反体制派、ダマスカスで現在統治を行っている者などすべての代表者(の参加)が必要だと考えている…。またそれ以上に重要なのは、各当事者の同盟者たちだ」と述べ、アサド政権だけでなく、ロシア、米国、サウジアラビア、イラン、ドイツ、フランス、英国も紛争解決に向け参加すべきだと述べた。

『ハヤート』(10月5日付)などが伝えた。

AFP, October 4, 2015、AP, October 4, 2015、ARA News, October 4, 2015、Champress, October 4, 2015、al-Hayat, October 5, 2015、Iraqi News, October 4, 2015、Kull-na Shuraka’, October 4, 2015、al-Mada Press, October 4, 2015、Naharnet, October 4, 2015、NNA, October 4, 2015、Reuters, October 4, 2015、SANA, October 4, 2015、UPI, October 4, 2015などをもとに作成。

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チュニジアが米主導の有志連合への参加を表明(2015年10月4日)

チュニジアのハビーブ・スィード首相は、記者会見で「チュニジアはダーイシュ(イスラーム国や…過激派と戦う有志連合に参加する…。我々がテロとの戦いを行っているという事情を踏まえ、有志連合への参加は、チュニジアに関わる…情報交換を基本とする」と述べた。

スィード首相はまた「有志連合への参加で、チュニジアは国内でテロとの戦いを行うことにかかわるすべての情報が入手できるようになる」と強調した。

なお、これに先立ち、バラク・オバマ米大統領は9月29日に、チュニジア、マレーシア、ナイジャリアがダーイシュ撲滅をめざす有志連合に参加したと発表していた。

『ハヤート』(10月5日付)が伝えた。


AFP, October 4, 2015、AP, October 4, 2015、ARA News, October 4, 2015、Champress, October 4, 2015、al-Hayat, October 5, 2015、Iraqi News, October 4, 2015、Kull-na Shuraka’, October 4, 2015、al-Mada Press, October 4, 2015、Naharnet, October 4, 2015、NNA, October 4, 2015、Reuters, October 4, 2015、SANA, October 4, 2015、UPI, October 4, 2015などをもとに作成。

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キャメロン英首相「ロシアのシリア爆撃は決定的な誤り」(2015年10月4日)

デヴィッド・キャメロン英首相は、BBC(10月3日付)に対し、ロシア軍によるシリア領内での空爆を「決定的な誤り」と非難、「事態をさらに悪化させるだろう」と述べた。

キャメロン英首相は「ロシアがISIL(ダーイシュ(イスラーム国)と「正当」なシリアの反体制組織を区別していないことは明白だ。その結果、ロシアは実質的に殺戮者アサドを後押しし、支援している…。ロシアはアラブ世界中から非難されている…。私はアラブ世界は正しいと思っている」と述べた。

また「しかし、我々は今現在、シリアに政治的移行をもたらすための包括的計画を前進させようとするべきだ。なぜなら、それこそが地域に平和をもたらす答えとなるからだ」と付言した。

AFP, October 4, 2015、AP, October 4, 2015、ARA News, October 4, 2015、BBC, October 4, 2015、Champress, October 4, 2015、al-Hayat, October 5, 2015、Iraqi News, October 4, 2015、Kull-na Shuraka’, October 4, 2015、al-Mada Press, October 4, 2015、Naharnet, October 4, 2015、NNA, October 4, 2015、Reuters, October 4, 2015、SANA, October 4, 2015、UPI, October 4, 2015などをもとに作成。

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