アレッポ市バドルー山地区にシリア軍の「スカッド」が着弾し50名が死亡、「自由シリア軍司令部」を名乗る組織がレバノン国民に対しヒズブッラーの「砲撃」を48時間以内に停止させるよう呼びかけ(2013年2月19日)

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国内の暴力

アレッポ県では、反体制活動家らが、アレッポ市バドルー山地区にシリア軍の「スカッド」が着弾したと発表した。

『ハヤート』(2月20日付)などによると、これにより住宅10棟が倒壊、約50人が死亡した。

al-Hayat, February 20, 2013

al-Hayat, February 20, 2013

同地区は反体制武装勢力が数ヶ月前から占拠しているが、アブー・ムジャーヒドを名乗る活動家(SNNのメンバー)によると、「戦略的に重要ではない」という。

活動家らによると、シリア軍はアレッポ県、ダイル・ザウル県の反体制武装勢力制圧地域に対する「スカッド」での攻撃を強化しているのだという。

一方、SANA(2月19日付)によると、ナイラブ村、ドゥワイリーナ市、タッル・ハースィル村、アッサーン村、ムスリミーヤ村、ヒルバ市、カフルナーハー村、アウラム・クブラー市などで、軍が反体制武装勢力への攻撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、カラム・トゥラーブ地区、ナッカーリーン・バーブ街道回廊地区、カラム・ジャズマーティー地区、マアーディー地区、マサーキン・ハナーヌー地区などで、軍が反体制武装勢力への攻撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(2月19日付)によると、ダマスカス小児病院とムワーサー病院の近くに迫撃砲2発が着弾した。

迫撃砲は、ティシュリーン宮殿の南側の壁に向かって、発射され、病院の近くに着弾、一部に物的損害が生じたが、死傷者は出なかった、という。

ティシュリーン宮殿は、マッザ区とムハージリーン区の間に位置し、外国の要人を出迎える迎賓館として使用されている。

なおダマスカス県には、ティシュリーン宮殿のほか、人民宮殿(ダマスカス県西部の山頂)、ラウダ宮殿(大統領執務室)がある。

このテロに関して、ダマスカスおよび同郊外軍事評議会広報局はフェイスブック(2月19日付)で声明を出し、「ティシュリーン宮殿に迫撃砲を発射し、負傷者が出たことを確認した」と発表した。

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クッルナー・シュラカー(2月19日付)は、ハサカ県で自由シリア軍とシリア軍が捕虜交換を行ったと報じた。

同報道によると、自由シリア軍はタッル・ブラーク町制圧時に捕捉したシリア軍の大尉と曹長を釈放、これに対してシリア軍は自由シリア軍の戦闘員3人を釈放した、という。

戦闘員3人は、ラアス・アイン市の自由シリア軍ジャズィーラ自由人大隊本部に帰還した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(2月19日付)によると、ダーライヤー市、バービッラー市、アルバイン市、ザマルカー町などで、軍が反体制武装勢力への攻撃を続け、イスラーム旅団メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またジュダイダト・ファドル町では、車に仕掛けられた爆弾が爆発し、複数の市民が死傷した。

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ヒムス県では、SANA(2月19日付)によると、シャムスィーン地方、タッルカラフ地方(対レバノン国境)などで、軍が反体制武装勢力への攻撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(2月19日付)によると、サラーキブ市・アブー・ズフール市間街道、カフルハーヤー村などで、軍が反体制武装勢力への攻撃を続け、戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(2月19日付)によると、ザイズーン・ダム街道の検問所を襲撃しようとした反体制武装勢力を軍が撃退し、複数の戦闘員を殺傷した。

シリア政府の動き

カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣は、人民議会で「経済封鎖によって人は死なないと誰が言ったのか?封鎖によって餓死、凍死、病死したシリア人の数をまだ算出してはいない…。我々は不当な封鎖を科し、数千というシリア人の命を奪った世界の高官らを制裁する…ことを求めるだろう」と述べた。

Kull-na Shuraka', February 19, 2013

Kull-na Shuraka’, February 19, 2013

反体制勢力の動き

「自由シリア軍司令部」を名乗る組織が声明を出し、レバノン国民、とりわけベカーア県ヘルメル郡住民に対して、シリア国内でのヒズブッラーによる「砲撃」を48時間以内に停止させるよう呼びかけ、「砲撃」停止が実現しない場合、報復を行うと脅迫した。

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自由シリア軍国内合同司令部のファフド・ミスリー報道官は「レバノンの声」ラジオ(2月19日付)で、「自由シリア軍司令部」なる集団が発表した声明と自由シリア軍国内合同司令部は無関係だと述べた。

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『シャルク・アウサト』(2月19日付)は、ムハンマド・ヤフヤー・ビータール空軍准将が離反した空軍パイロットらと「第1空軍師団」を結成し、自由シリア軍の「要請のもとあらゆる任務を遂行する準備がある」と発表したと報じた。

同報道によると、「第1空軍師団」は10機の戦闘機を保有するというが、真偽は定かでない。

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アサド政権を離反したマナーフ・トゥラース准将(共和国護衛隊第105旅団司令官)が、DPA(2月19日付)のインタビューに応じ、ファールーク・シャルア副大統領に関して「彼の手は直接血で汚されていないと信じている…。彼は今後の政権移行において役割を果たすことができる」と述べた。

トゥラース准将はまた「彼(シャルア副大統領)を完全に中立だとは思わないが、それなりにコンセンサスを得ている人物であり、政権は必要とあらば、彼をカードとして利用することもあれば、中道的との理由で遠ざけたこともある」と付言した。

アサド大統領については、政権内で「孤立しており…、彼の周りで何が起きているかを評価する能力をもはや持っていない」と断じた。

一方、反体制勢力に関しては、ほとんどの勢力と連絡を取り合い、良好な関係を築いているとしつつ、「狭量な者たちが…地位や分け前に思いをめぐらせ、自分たちの利益だけを追求している」と非難した。

そのうえで、自身が「危機から脱却し、国民の痛みを軽減するための行程表を付く出すことを支援する役割を担っていると述べた。

また国際社会に対しては、「穏健と中庸のシナリオを支持し…混乱や過激化」を回避するよう求めた。

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Orient News(2月19日付)は、シリア・ムスリム同胞団が機関紙『アフド』を復刊し、「解放区」での配布を開始した、と報じた。

諸外国の動き

国連バレリー・アモス人道問題担当事務次長はジュネーブで、シリア政府がトルコ国境からの人道支援の受け入れを拒否したと発表した。

アモス事務次長は「シリア北部に我々が限定的にしか行けないことは大いに問題だ。シリア政府に何度も(対トルコ)国境からの越境を求めた。もっとも最近では一昨日も要請したが、返事は変わらず、拒否された」と述べた。

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国連人権問題調整事務所(OCHA)は、400万人以上のシリア人が支援を必要としていると発表した。

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WHOは、ダイル・ザウル県内の反体制武装勢力制圧地域で約2,500人が腸チフスに感染していると発表した。

ユーフラテス川の汚染水を飲んだことが原因だという。

ロイター通信(2月19日付)が報じた。

AFP, February 19, 2013、Akhbar al-Sharq, February 19, 2013、DPA, February 19, 2013、al-Hayat, February 20, 2013、Kull-na Shuraka’, February 19, 2013、al-Kurdiya News,
February 19, 2013、Naharnet, February 19, 2013、Orient News, February 19,
2013、Reuters, February 19, 2013、SANA, February 19, 2013、al-Sharq al-Awsat, February 19, 2013などをもとに作成。

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