EU外相理事会はロシア爆撃を非難しつつも、アサド大統領の処遇をめぐって足並みの乱れ(2015年10月12日)

ルクセンブルクで開かれた欧州連合(EU)外相理事会は12日、ロシア軍によるシリア空爆に関して「紛争を長引かせ、(その解決に向けた)政治プロセスの停滞、人道状況の悪化、過激化をもたらす」とする声明を発表した。

またフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は、ロシア軍の空爆が「ゲームのルールを変更する」として懸念を表明するとともに、ロシア軍のトルコ領内への侵犯などを踏まえ、「紛争への介入を調整」する必要があると述べた。

そのうえで、ロシアに対して「ダーイシュ(イスラーム国)や国連がテロ組織とみなすそのほかの組織以外の…穏健な反体制派を標的とした攻撃をただちに停止」するよう呼びかけるとともに、「すべての当事者を含む平和的な移行プロセス」を開始するよう主唱した。

紛争の解決に向けた政治プロセスに関しては、スペインのホセ・マヌエル・ガルシア=マルガージョ外務大臣が「交渉を早急に始めるべきだ…。アサド政権がテーブルに着き、シリアの未来における一当事者となることがなければ、交渉は不可能だ」と述べた。

しかし、これに対してフランスのアルレム・デジールEU問題担当大臣は、「政治的移行プロセスはアサドなしで進められねばならない」と異論を唱えた。

一方、英国のフィリップ・ハモンド外務大臣は「我々がアサドと協力を試みれば、ダーイシュを擁護することになってしまう…。これは我々が望んでいることとまったく逆のことだ」としつつも、「シリアの未来のための長期的な解決策としてアサド」を認めるべきでない、と述べ、短期的な交渉については含みを持たせた。

『ハヤート』(10月13日付)などが伝えた。

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NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ノルウェーのスタヴァンゲルでの加盟国国会議員会議で、ロシア軍によるシリア空爆に関して「ロシアはダーイシュ(イスラーム国)の撃退のために建設的な役割を演じなければならない。アサド政権支援は建設的ではなく。シリアの戦争の長期化をもたらすだけだ」と述べた。

『ハヤート』(10月13日付)などが伝えた。


AFP, October 12, 2015、AP, October 12, 2015、ARA News, October 12, 2015、Champress, October 12, 2015、al-Hayat, October 13, 2015、Iraqi News, October 12, 2015、Kull-na Shuraka’, October 12, 2015、al-Mada Press, October 12, 2015、Naharnet, October 12, 2015、NNA, October 12, 2015、Reuters, October 12, 2015、SANA, October 12, 2015、UPI, October 12, 2015などをもとに作成。

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