2011年8月20日のシリア情勢

反体制デモをめぐる動き

各地で19日(金曜日)のデモでの犠牲者の葬儀が行われ、夜の礼拝後にはデモが発生した。

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ヒムス市郊外のラスタン市で夜の礼拝後のデモに参加した人々に治安部隊が発砲、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、2人が殺害、複数が負傷。その後、複数の消息筋によると死者数は15人にのぼった。またシリア革命調整連合によると、各地で死者数は13人にのぼった。シリア革命調整連合によると、うち5人は軍から離反し、脱走しようとして殺害され、またザアファラーニーヤ(ラスタン郊外)でも5人が殺害された。

またヒムス市のハーリディーヤ地区、バーバー・アムル地区、インシャーアート地区には早朝から午前にかけて複数の装甲車が進入したほか、夜間から続く銃声はハーリディーヤ地区、バーバー・アムル地区、インシャーアート地区で続いている、という。同所長によると、インシャーアート地区、バーバー・アムル地区では地上電話が遮断、ハーリディーヤ地区では地上電話、携帯電話ともに不通となっている。

他方、シリア革命調整連合によると、クスールに面したハマー街道からヒムス市に戦車10輛が進入したが、行く先は不明とのこと。

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シリア人権監視団によると、ラタキア市クナイニス地区に早朝、治安部隊とシャッビーハが突入し、住民を脅迫、外出している人々の身柄を拘束。なかには「18歳の青年」も含まれており、「シャッビーハは地区を包囲し、出入りを禁止している」。

シリア革命調整連合によると、ラタキア市のラムル地区からトルコへと逃れようとして2人が殺害された。

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 19日に軍・治安部隊の発砲によって5人が殺害されたフラーク市では、治安当局が同市西側の入り口近くの病院に安置されている犠牲者の遺体の引き渡しと、大規模な葬儀を行わないよう住民に誓約させようとしたが、住民は拒否し、病院近くでデモを行おうとしたが、強制排除された。シリア人権監視団によると同市には「対テロ部隊」が多数展開している。

シリア革命調整連合によると、ダルアー県フラーク市では1人が葬儀参列中に殺害された。

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ジャズィーラによると、イドリブ県ドゥライキーシュ地域で複数が殺害。またイドリブ県内のデモでは、「国民は大統領処刑を望んでいる」とのシュプレヒコールが連呼された。

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ダマスカス郊外県のザバダーニー、キスワなどでは、治安部隊、シャッビーハが多数展開。

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トルコのイスタンブールで国内害の反体制活動家約60人が会合を開き、6月に提示された案をもとに「シリア国民評議会」発足をめざす。会合は21日までの2日間開催予定。

参加者は、ヤースィル・タッバーラ弁護士(在米)、ウバイダ・ナッハース氏(在英)、ムルヒム・ダルービー氏(シリア・ムスリム同胞団)、ムティーウ・バティーン氏(ダルアーでの抗議行動を主導していたとされる)、ハーリド・ハーッジ・サーリフ氏(元政治犯)、ハーズィム・ナハール(作家、デモ参加で一時投獄され、その後シリアを去る)ら、欧米諸国在住・亡命中の反体制活動家。

ナッハース氏によると、シリア国民評議会には国内外の活動家115人から150人が参加する。「アフバール・シャルク」(20日付)によると、同評議会のメンバー選出はワーイル・マルザー氏が主導的な役割を果たしている。

またナッハース氏によると、シリア国民評議会の下には「7つか8つの部局」(作業委員会)が設置され、「外務、政策策定、経済、情報など」を担当素する予定。

なおシリア国民評議会発足の動きに先立ち、インターネット上などで活動する約44の団体がシリア革命総合委員会を発足している。

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シリア世俗民主大会準備委員会が声明を出し、9月にシリアでの革命を支援するための大会を開催し、革命を勝利に導き、自由、公正といった国民の目的を実現するための対話を行うことを呼びかける。

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シリア国民民主変革諸勢力国民調整委員会は声明を発表し、軍を動員したアサド政権によるデモ弾圧を強く非難し、「大きな困難」をもたらし、外国の内政干渉の機会を与えると主張。

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シリア・クルド・ムスタクバル潮流が声明を出し、クルド人が暮らす各地区で治安当局および同当局と結託するクルド人勢力が、シリアの反体制勢力をおとしめる噂を広めていると非難。こうした噂には根拠がないと述べる。

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「アラブ山国民イニシアチブ」と称する団体が声明を出す。デモ参加者への暴力停止、軍による国民支援、政治犯釈放、国民統合強化、民衆による武装化拒否、避難民への人道支援、責任者を処罰するための国民委員会の設置を呼びかける。

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アレッポで人権活動家のマラーク・サイイド・マフムード女史が一時身柄を拘束される。

アサド政権側の動き

SANAによると、アサド大統領はブラジル在住のシリア人使節団と会談。

SANAによると、ダマスカス県中心部のヒジャーズ駅前で数千人がアサドの改革を支持する集会。

SANAによると、ヒムス市のジャウラト・アラーイス地区で武装テロ集団が、軍の車輌を襲撃し、士官2人が殺害、3人が負傷。

SANAによると、ラタキア市ラムル地区で武装テロ集団の大量の武器弾薬が押収される。

SANA, August 20, 2011

SANA, August 20, 2011

SANAによると、ダマスカス県ヤルムーク難民キャンプの人民使節団がラムル地区を訪問し、地元の機関権委員会や住民らと会談。シリアの軍・治安部隊が難民キャンプを攻撃したとする一部の外国メディアなどの報道を根拠がないと非難。

SANAによると、ヒムス県、イドリブ県、ダマスカス郊外県で19日(金曜日)に殺害された軍・治安部隊の殉職者の葬儀が行われた。

ムハンマド・サイード・ラマダーン・ブーティーのウェブサイトがハッカーの攻撃を受ける。

諸外国の動き

国連の人権調査チームがシリアに到着。OCHAジュネーブ事務所代表のラシード・ハリコフ氏が代表。9月1日まで滞在予定。

ビクトリア・ノーランド米国務省報道官は「ロバート・フォード大使は、反体制勢力とワシントンとの接触を支援するためダマスカスにとどまる」と述べるとともに、イスタンブールでの会合を受けるかたちで、シリアの反体制勢力が「シリア社会をより体現、代表するようになった…。「反体制勢力には、アラウィー派、ドゥルーズ派、キリスト教徒、ビジネスマン、商人、さらにはアサドへの忠誠をとりさげた士官さえも加わるに至っている」と評価した。

ヨルダンのイスラーム行動戦線のハムザ・マンスール書記長は、ヨルダン政府に対して駐ダマスカス・ヨルダン大使の召還を求める。

英国のアリステール・バート中東問題担当大臣はBBCとのインタビューで、石油部門への制裁がアサド大統領ではなくむしろシリア国民に打撃を与えかねないとして、EUが提言している制裁に躊躇しているとの見解を示した。こうしたなか、複数の西側会合筋によると、英国の石油企業ガルフサンズ社は、EUの制裁強化により、同社のシリアにおける今後のプロジェクトに支障が生じかねないことを懸念している。ガルフサンズ社は、約12,000バレル/日をシリアで産出し、9月には増産を計画している。なお、ラーミー・マフルーフ氏はガルフサンズ社の株5.7%を保有している。

AFP, August 20, 2011、Aljazeera.net, August 21, 2011、Akhbār al-Sharq, August
20, 2011, August 21, 2011、al-Ḥayāt, August 21, 2011, August 22, 2011、Kull-nā Shurakā’, August 20, 2011, August
26, 2011、Reuters, August 20, 2011、SANA, August 21, 2011などをもとに作成。

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