2011年8月30日のシリア情勢

アサド政権の動き

『シャルク・アウワト』(30日付)は消息筋の話として、反体制デモ弾圧において重要な役割を果たしているシャッビーハは、報酬の未払いが続けば「仕事」をボイコットすると脅迫していると報じた。またダマスカスに展開していたシャッビーハ多数が、報酬が支払われないことを不服として、ラタキアなどに去っていったという。

同紙消息筋の話によると、シャッビーハの日当はアレッポ市の場合、5,000シリア・ポンド(100ドル相当)でこのほかに移動手段およびその費用が負担される。またアレッポ市以外の場合、日当は2,000シリア・ポンド(42ドル相当)。しかし金曜日の手当は7,000~10,000ポンドにあがるという。

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『クッルーナ・シュラカー』(30日付)によると、数週間前に、ラーミー・マフルーフ氏に近い一部のビジネスマンの海外渡航禁止と資産凍結の命令が出された。

資産凍結対象となったとされるビジネスマンのなかには、リード社を経営するニザール・アスアド氏、ガッサーン・マフナー氏(ムハンマド・マフルーフ氏の義兄弟)などが含まれているという。またアレッポのビジネスマンでアサド政権に近いムハンマド・カーミル・サッバーグ・シュルバーティー氏は渡航を禁止された。同氏はベイルートへの移住を検討していたという。

他方、シリア当局は、投資家のマフムード・スライマーン・トゥラース・ファルザート氏(ファルザート開発グループ社長)を逮捕した。同氏がアサド政権支持者が運営するラスタン・ニューズ・ネットワークによると、反体制活動への資金援助が理由だと考えられる。

シリア政府は、一部のシリア政府が大商人やビジネスマンの反体制デモへの対応に不満を持っているとされる。例えば、ダマスカスの事業家でアサド大統領の兄弟から直接支援を受けていたイマード・ガルユーティー氏は、デモ発生後にシリア国内市場から外貨を退避させ、またヒムスの事業家のナジーブ・アッサーフ氏は自らが経営する砂糖工場の操業を停止し、そのことがシリア国内の砂糖価格の高騰を招いた。

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バッシャール・アサド大統領はダマスカス県内のハーフィズ・アサド・モスクでイード・フィトルの礼拝を行う。礼拝には、アブドゥッサッタール・サイイド宗教関係大臣、アフマド・ハッスーン共和国ムフティー、バシャル・サッバーン・ダマスカス県知事らも参加した。

反体制運動をめぐる動き

シリア革命調整連合によると、フェイスブックではシリア革命2011がイードの礼拝後のデモを呼びかけたに呼応するかたちで、ダマスカス郊外県、ダルアー、ヒムス、アレッポ、タドムルなど50カ所でデモが行われ、軍・治安部隊の発砲や逮捕に直面した。

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ヒムス県では、シリア革命調整連合によると、すべての地区に治安部隊が多数展開し、礼拝後のデモを阻止しようとしたが、デモが発生、各地で銃声が間断なく続き、デモに参加した1人が殺害された。またタッルカラフ市入り口にある墓地を治安部隊の車輌が包囲した。タッルカラフ市は地上電話が不通となっている。さらにタドムル市では、礼拝後市内の墓地に向かった数千人が行進を行い、犠牲者を追悼、アサド大統領の処刑を求めるシュプレヒコールを連呼した。クサイル市でも10,000人以上が市内の墓地に向かって抗議のデモ行進を行った。

ダルアー県では、シリア革命調整連合によると、ダルアー市で11歳の少年1人を含む4人が軍・治安部隊の発砲により殺害された。インヒル市でもデモ参加者1人が殺害された。またダーイル町では、市内各所のモスクから10,000人以上が街頭に出て抗議行動を行い、そのなかにはイード・フィトルにもかかわらず喪服を着た子供たちも参加した。またナワー市のイマーム・ナワウィー大モスクは当局によって閉鎖されていたが、市民はモスク前で礼拝を行い、その直後に大規模な抗議行動を行い、軍・治安部隊の発砲を受けた。

ハマー県では、シリア革命調整連合によると、ハマー市のほとんどの地区で礼拝後にデモが発生、軍・治安部隊がデモ参加者に発砲した。

ハサカ県では、シリア革命調整連合によると、アームーダー市で大規模なデモが発生し、カーミシュリー市でも1,500人以上がデモを行った。

ダイル・ザウル県では、シリア革命調整連合によると、ダイル・ザウル市で、1,000人を越える治安部隊、シャッビーハ、軍部隊がタカーヤー通りに突入し、デモ参加者に無差別発砲を行い、多数を逮捕した。

アレッポ県では、シリア革命調整連合によると、アレッポ市のカビール・モスクで礼拝した市民がデモを行ったが、治安部隊によって強制排除された。

ダマスカス県では、カーブーン区、バルザ区に治安部隊、シャッビーハが低回していたもかかわらずデモが発生した。またダマスカス郊外県ではクドスィーヤー市で1,000人以上がデモを行った。また『クッルナー・シュラカー』(9月3日付)によると、ダマスカス県ルクンッディーン区の遊園地で12歳の子供たちが「子供たちは体制打倒を望む」と連呼。治安当局は遊園地に検問所を設置し、身分証明書の提示を求める。また、治安当局は、「貴方が好きです、アッラー、シリア、バッシャールのみ、バッシャールは我らが指導者」というペイントを子供たちの頬に無理矢理書かせた。

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ハラスター(ダマスカス郊外県)、ラスタン(ヒムス県)でのシリア国軍兵士の離反、そして離反兵とシリア軍・治安部隊の衝突が続くなか、『シャルク・アウサト』(30日付)は自由将校旅団筋の話として、シリア国軍の離反がきわめて大規模で、アサド政権はさまざまな手段を駆使してその封じ込めに躍起だと報じる。

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アムネスティ・インターナショナルは3月に始まった反体制デモで逮捕され、獄中死したシリア人の数が88人以上いるとの報告書を発表した。

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シリア民主尊厳潮流が声明をだし、暫定国民評議会をめぐって改めて露呈した反体制勢力の足並みの乱れを非難。暫定国民評議会に賛同の意を示し、内外の反体制勢力に糾合を呼びかける。なおシリア民主尊厳潮流のメンバーは暫定国民評議会に名を連ねていない。

諸外国の動き

米財務省は昨日、ワリード・ムアッリム外務大臣、ブサイナ・シャアバーン大統領府情報顧問、アリー・アブドゥルカリーム駐レバノン・シリア大使の3人を金融制裁や取引禁止の対象となるシリア政府高官らの「制裁リスト」に追加すると発表した。

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アドナーン・マンスール外務大臣はヒズブッラーが運営するヌール・ラジオのインタビューに対して、和平フォローアップ委員会(28日)では、シリア問題をめぐって声明を発表しないとのコンセンサスがあり、それは冒頭で確認された、と述べ、シリアが同声明を拒否したことは正しいステップだとの見解を示す。

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ブリュッセルでは、キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表がデモ弾圧を「蛮行」と非難し、シリア情勢への「深い懸念」を表明した。

AFP, August 30, 2011、Akhbār al-Sharq, August 30, 2011、al-Ḥayāt, August 31, 2011、Kull-nā Shurakā’, August 30, 2011, August 31, 2011, September
3, 2011、Naharnet.com, August 30, 2011、Reuters, August 30, 2011、SANA, August
31, 2011、al-Sharq al-Awsaṭ, August 30, 2011などをもとに作成。

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