欧州議会は、シリアへの「アラブの春」波及から10年が経つのに合わせて声明を出し「現地で根本的な進展がない限り、議会はシリアの体制と外交関係の正常化に反対する」と表明(2021年3月11日)

欧州議会は、シリアへの「アラブの春」波及から2021年3月15日で10年が経つのに合わせて、公式ホームページ(https://www.europarl.europa.eu/)を通じて声明を出した。

声明において、欧州議会は、紛争から10年が経ち、シリア国民の10%が貧困線以下の状態に置かれ、深刻な経済崩壊と人道危機に見舞われているなか、シリアへのさらなる経済的・政治的対応を求める声が議会内にあるとしつつ、現地で根本的な進展がない限り、議会はシリアの体制と外交関係の正常化に反対する、と表明した。

AFP, March 11, 2021、ANHA, March 11, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 11, 2021、Reuters, March 11, 2021、SANA, March 11, 2021、SOHR, March 11, 2021などをもとに作成。

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国連のグテーレス事務総長はシリアへの「アラブの春」波及から10年が経つのに合わせて会見し政治的解決に向けた決意を表明(2021年3月11日)

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、米ニューヨークの国連本部で、シリアに「アラブの春」が波及してから3月15日で10年が経つのに合わせて会見を行い、「悪夢のような出来事」(living nightmare)の政治的解決に向けた交渉に対する国連の決意を改めて表明した。

グテーレス事務総長の主な発言は以下の通り:

10年に及ぶ紛争の後、世界的パンデミックのただ中で、そして絶え間ない新たな危機に直面し、シリアがトップページで取り上げられることはなくなった…。だが、今も悪夢のような状態が続いている。

シリアがどれほど荒廃したかを完全に理解することは不可能だ。だが、シリアの人々は今世紀に世界が目の当たりにしたいくつもの深刻な犯罪に耐えてきた。

残虐行為の規模に良心は傷む。シリアに持続可能な平和が可能かどうかを説明するために、加害者たちは集わねばならない。

さらなる人道アクセスが必要だ。すべて場所で、困窮するすべて人に到達するために、越境(クロスボーダー)での支援を強化することが不可欠だ。

当事者には、共通の基盤を見つけ、すべてのシリア人が長年にわたる紛争状態を乗り越えようとしていることを認識するチャンスがある。

それには、持続的で強力な外交対話を通じて、国際社会における格差を埋める必要があるだろう…。そうすることに失敗したら、シリアの人々をさらに絶望させるだろう。そうしたことを生じさせてはならない。

AFP, March 11, 2021、ANHA, March 11, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 11, 2021、Reuters, March 11, 2021、SANA, March 11, 2021、SOHR, March 11, 2021などをもとに作成。

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ロシア・トルコ・カタール外相会合:ラヴロフ外務大臣は「分離主義的計画の実施に反対する」と表明(2021年3月11日)

ロシア、トルコ、カタールは、カタールの首都ドーハで外相会合を開き、シリア情勢への対応などについて協議した。

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ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外務大臣は会合後のカタールのムハンマド・ビン・アブドゥッラフマーン・アール・サーニー外務大臣、トルコのメヴリュト・チャヴシュオール外務大臣との共同記者会見で、国連安保理決議第2254号とシリア国民対話大会(2018年)に沿った政治プロセス以外にシリアでの危機を解決する方法はないことを改めて確認したと述べたうえで、制憲委員会の役割の重要性を強調した。

また、シリアの独立、主権、領土保全を尊重し、「分離主義的計画の実施に反対する」と表明した。

さらに、三カ国で人道支援、新型コロナウイルス感染症対策、市民インフラ復旧、難民帰還に向けた努力を続けると付言した。

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カタールのムハンマド外務大臣は、シリアへの人道支援と新型コロナウイルス対策のための支援を認めたことを明らかにした。

また、アラブ連盟におけるアサド政権の資格停止の理由は依然として続いているとしたうえで、国連決議第2254号に沿った政治変革が連盟復帰へのもっとも安全な方法だと付言した。

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トルコのチャヴシュオール外務大臣は、三カ国の外相が、シリア情勢への対応を協議するための会合を継続することを決定したとしたうえで、次回会合がトルコで行われると述べた。

また、アサド政権に圧力をかけて、膠着状態を打開し、政治的解決をもたらす必要があると強調した。

AFP, March 11, 2021、ANHA, March 11, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 11, 2021、Reuters, March 11, 2021、SANA, March 11, 2021、SOHR, March 11, 2021などをもとに作成。

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ヒムス県タドムル市近郊でロシア軍装甲車に仕掛けられていた爆弾が爆発、装甲車が大破(2021年3月11日)

ヒムス県では、アイン・フラート(3月11日付)によると、シリア政府の支配下にあるタドムル市西のドゥーワ地区で、ロシア軍装甲車に仕掛けられていた爆弾が爆発、装甲車が大破した。

死傷者はなかった。

ヒムス県東部でロシア軍の車輌が狙われるのはこれが初めて。

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シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機4機が、アレッポ県、ハマー県、ラッカ県の県境に位置する砂漠地帯で、ダーイシュ(イスラーム国)の拠点を狙って約25回の爆撃を実施した。

AFP, March 11, 2021、ANHA, March 11, 2021、‘Ayn al-Furat, March 11, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 11, 2021、Reuters, March 11, 2021、SANA, March 11, 2021、SOHR, March 11, 2021などをもとに作成。

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トルコ軍がラッカ県アイン・イーサー市西のM4高速道路沿線近くに4カ所目となる基地を新たに設置(2021年3月11日)

ラッカ県では、ANHA(3月11日付)によると、トルコ軍が、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるアイン・イーサー市西のM4高速道路沿線近くに4カ所目となる基地を新たに設置した。

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アレッポ県では、ANHA(3月11日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるマンビジュ市北東のフーシャリーヤ村を砲撃した。

シリア人権監視団によると、トルコ軍と国民軍はまた、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるタッル・リフアト市と近郊のマンアグ航空基地、マルアナーズ村、シャイフ・イーサー村を砲撃した。

AFP, March 11, 2021、ANHA, March 11, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 11, 2021、Reuters, March 11, 2021、SANA, March 11, 2021、SOHR, March 11, 2021などをもとに作成。

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新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で70人、北・東シリア自治局支配地域で38人、シャーム解放機構主体の反体制派とトルコの支配下にあるイドリブ・アレッポ県で1人(2021年3月11日)

保健省は政府支配地域で新たに70人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者86人が完治し、6人が死亡したと発表した。

これにより、3月11日現在の同地での感染者数は計16,257人、うち死亡したのは1,085人、回復したのは10,711人となった。

SANA(3月11日付)が伝えた。

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北・東シリア自治局の保健委員会(保健省に相当)は、支配地域で新たに38人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、4人が死亡したと発表した。

これにより、3月11日現在の同地での感染者数は計8,755人、うち死亡したのは335人、回復したのは1,253人となった。

新規感染者の性別の内訳は、男性25人、女性13人。

また地域の内訳は、ハサカ県のハサカ市3人、カーミシュリー市15人、ルマイラーン町1人、アレッポ県のマンビジュ市1人、ラッカ県のラッカ市6人、タブカ市7人、ダイル・ザウル県4人。

ANHA(3月11日付)が伝えた。

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反体制派系NGOの支援連携ユニットは、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る「解放区」とトルコ占領下の「オリーブの枝」地域と「ユーフラテスの盾」地域で3月11日に新たに1人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、21人が完治したと発表した。

新規感染者の内訳は、イドリブ県ジスル・シュグール郡0人、イドリブ郡0人、ハーリム郡0人、アリーハー郡0人、アレッポ県スィムアーン山郡0人、ジャラーブルス郡0人、バーブ郡0人、アフリーン郡1人、アアザーズ郡0人。

これにより、同地での感染者数は計21,215人、うち回復したのは19,147人、死亡したのは637人となった。

https://www.facebook.com/ACUSyria/photos/1531628783708674/

AFP, March 11, 2021、ACU, March 11, 2021、ANHA, March 11, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 11, 2021、Reuters, March 11, 2021、SANA, March 11, 2021、SOHR, March 11, 2021などをもとに作成。

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イドリブ市とシリア政府の支配下にあるサラーキブ市を結ぶ街道で、IDPsが、体制打倒、国連安保理決議第2254号の履行を求めて抗議デモを行う(2021年3月11日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、「決戦」作戦司令室の支配下にあるイドリブ市とシリア政府の支配下にあるサラーキブ市を結ぶ街道で、国内避難民(IDPs)が、体制打倒、国連安保理決議第2254号の履行を求めて抗議デモを行った。
https://www.syriahr.com/wp-content/uploads/2021/03/%D9%85%D8%B8%D8%A7%D9%87%D8%B1%D8%A9-1-1.jpeg

一方、シリア軍は「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のファッティーラ村、カンスフラ村、バーラ村一帯、スフーフン村、バイニーン村、フライフィル村を砲撃した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

さらに、イドリブ市西の中央刑務所近くの採石場で大きな爆発が発生し、4人が死亡した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シャーム解放機構の治安機関がバータブー村内の市場でフッラース・ディーン機構のメンバー2人を拘束した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を30件(イドリブ県13件、ラタキア県10件、アレッポ県4件、ハマー県3件)確認したと発表した。

シリア政府によると、停戦違反は27件。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を16件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。

AFP, March 11, 2021、ANHA, March 11, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 11, 2021、Ministry of Defence of the Russian Federation, March 11, 2021、Reuters, March 11, 2021、SANA, March 11, 2021、SOHR, March 11, 2021などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民70人と国内避難民(IDPs)659人が新たに政府支配地域に帰還、2018年半ば以降帰還した難民は650,241人、2019年以降帰還したIDPsは78,830人に(2021年3月11日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(3月11日付)を公開し、3月10日に難民70人(うち女性21人、子供35人)が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは難民70人(うち女性21人、子供35人)、ヨルダンから帰国したのは0人。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は650,241人となった。

内訳は、レバノンからの帰還者254,993人(うち女性76,649人、子ども129,770人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者395,248人(うち女性118,618人、子ども201,569人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,740,681人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は879,521人(うち女性263,925人、子供448,261人)となった。

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一方、国内避難民659人が新たに帰宅した。

ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由して帰宅したのは659人、ヒムス県南東グラーブ山のジュライギム通行所を経由して帰還したのは0人、イドリブ県の「緊張緩和地帯」から帰宅したのは0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は78,830人(うち女性28,624人、子供30,007人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,347,426人(うち女性411,183人、子供673,773人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, March 11, 2021をもとに作成。

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