ブリンケン米国務長官は国連安保理で2020年に停止された2カ所の国境通行所を通じた越境(クロスボーダー)人道支援の再開と現在も唯一利用が認められている通行所の使用延長を求める(2021年3月29日)

アントニー・ブリンケン米国務長官は、国連安保理で開かれたシリアの人道状況への対応をめぐる会合に出席し、2020年7月に停止されたバーブ・サラーム国境通行所(アレッポ県)とヤアルビーヤ国境通行所(ハサカ県)を通じた越境(クロスボーダー)人道支援の再開と、現在も唯一利用が認められているバーブ・ハワー国境通行所(イドリブ県)を通じた支援の期間延長を呼びかけた。

ブリンケン国務長官は次のように発言した。

安保理は複雑な多くの課題に取り組んでいる。だが、これはそうした課題ではない…。シリアの人々の命は、緊急支援が受けられるかどうかにかかっている。我々は、そうした支援が彼らのもとに届けられるための経路を作り出し、それを閉鎖するのではなく、開かねばならない。

安保理が当時、これらの二つの人道的な通行所(バーブ・サラーマ国境通行所とヤアルビーヤ国境通行所)を再び承認しなかったことの正当な理由はなかった。また、これらの通行所が今日も閉鎖されたままである正当な理由もない。

安保理メンバーはすべき仕事をしなければならない。それは人道支援のため三つの国境通行所すべてを再び承認することだ。

シリア人数百万人の生活がかかっている人道支援を政治的な争点にすることを止めよう。

CNN(3月29日付)などが伝えた。

**

国連安保理は2014年7月14日に、安保理決議第2165号を採択し、半年に限って反体制派支配地域への国連関連機関による越境人道支援を行うことを認めていた。

同決議では、周辺諸国の同意とシリア政府への通告(同意は不要)がなされれば、反体制派の支配下にあったバーブ・サラーマ国境通行所(アレッポ県)、バーブ・ハワー国境通行所(イドリブ県)、ラムサー国境通行所(ダルアー県)、クルド民族主義勢力の民主統一党(PYD)の実効支配下にあったヤアルビーヤ国境通行所(ハサカ県)を経由して人道支援を行うことができる旨、定められていた。

同決議はその後、安保理決議第2191号(2014年12月17日採択――2016年1月10日まで延長)、第2332号(2016年12月21日採択――2018年1月10日まで延長)、第2393号(2017年12月19日採択――2019年1月10日まで延長)、第2449号(2018年12月14日採択――2020年1月10日まで延長)、第2504号(2020年1月11日採択――2020年6月10日まで延長)、決議2533号(2020年7月11日採択――2021年7月10日まで延長)で更新された。

だが、国連安保理決議第2504号では、シリア政府の支配下に復帰したラムサー国境通行所とヤアルビーヤ国境通行所が除外された。

また、賛成12、棄権3(ロシア、中国、ドミニカ共和国)で辛うじて採択された決議2533号では、トルコの占領下に置かれていたバーブ・サラーマ国境通行所が除外された。

AFP, March 30, 2021、ANHA, March 30, 2021、CNN, March 29 2021、al-Durar al-Shamiya, March 30, 2021、Reuters, March 30, 2021、SANA, March 30, 2021、SOHR, March 30, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ハサカ県フール町一帯の有力部族の一つハワーティナ部族の報道官は、ダーイシュの家族の隔離を主唱(2021年3月29日)

ハサカ県フール町一帯の有力部族の一つハワーティナ部族のマフムード・ハラフ・スバーフ氏は、ANHA(3月29日付)のインタビューに応じ、そのなかで「人道と治安」作戦に関して、「キャンプを小さなブロックに分割し、ダーイシュの家族をそれ以外の家族から隔離しなければ実をなさない。還付の南部方面(ダイル・ザウル県)でも定期的に重点的な治安作戦を行う必要がある」と述べた。

AFP, March 29, 2021、ANHA, March 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 29, 2021、Reuters, March 29, 2021、SANA, March 29, 2021、SOHR, March 29, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア民主軍のアブディー総司令官は諸外国にダーイシュの外国人戦闘員と家族の身柄引き取りを改めて呼びかける(2021年3月29日)

人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍のマズルーフ・アブディー総司令官は、ツイッターのアカウント(https://twitter.com/MazloumAbdi/)にメッセージを投稿し、ダーイシュ(イスラーム国)の外国人戦闘員の出身国に対して、改めて戦闘員と家族の身柄を引き取るよう呼びかけた。

投稿の内容は以下の通り:

我々の部隊は、ダーイシュの犯罪者たちを逮捕し、市民を守るため、フールで人道と治安作戦を開始している。我々は改めて、諸外国に対して自国の市民を帰国させ、フールにさらなる人道支援を行い、キャンプの状況と安定を高めるよう呼びかける。

AFP, March 29, 2021、ANHA, March 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 29, 2021、Reuters, March 29, 2021、SANA, March 29, 2021、SOHR, March 29, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アサーイシュがシリア民主軍とともにフール・キャンプで「人道と治安」作戦を続け、18人を逮捕、地下トンネルを発見(2021年3月29日)

ハサカ県では、ANHA(3月29日付)によると、北・東シリア自治局の内務治安部隊(アサーイシュ)が人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍とともにフール・キャンプで「人道と治安」作戦を続けた。

**

作戦2日目となる3月29日、内務治安部隊は、キャンプ第1ブロックで捜索活動を継続し、同ブロックのテント1張内で掘削中の地下トンネルを発見し、軍服服数着、ラップトップ・コンピュータ複数台を押収した。

ラップトップ・コンピュータにはダーイシュのメンバーに関するファイルが保存されているという。

ANHAによると、内務治安部隊はまた、ダーイシュのセル幹部と思われる4人を含む18人を新たに拘束した。

これにより、28日以降の逮捕者数は27人となった。

**

一方、内務治安部隊のアリー・ハサン報道官は、第1ブロックでの作戦を終了したと発表した。

トルコで活動する独立系シンクタンクのジュスール研究所が2020年9月1日に発表したレポートによると、フール・キャンプは6つの区画、8つのブロックから構成されている。

6つの区画のうち、第1区には、ダーイシュ(イスラーム国)とつながりがない国内避難民(IDPs)、第2区と第3区にはイラク難民、第4区にはダーイシュとつながりがあるとされるIDPs、第5区には欧州出身のダーイシュ戦闘員の家族、そして第6区にはそれ以外の外国人戦闘員の家族が収容されている。

一方、8つのブロックのうち、第1、2、3、7ブロックにはイラク人難民が、第5、6、8ブロックにはシリア人IDPsが、第4ブロックにはイラク人難民とシリア人IDPsの両方が収容されている。

また、この8ブロックとは別に、シリア、イラク以外の国の出身者が収容されている。

AFP, March 29, 2021、ANHA, March 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 29, 2021、Reuters, March 29, 2021、SANA, March 29, 2021、SOHR, March 29, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるアレッポ県タッル・リフアト市近郊を砲撃(2021年3月29日)

アレッポ県では、ANHA(3月29日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるタッル・リフアト市近郊のマルアナーズ村、アイン・ダクナ村、バイルーニーヤ村を砲撃した。

また、トルコ占領下のアフリーン市マフムーディーヤ地区では、シリア国民軍に所属しているシャーム戦線とスルターン・ムラード師団のメンバーどうしが交戦し、住民らが巻き添えとなって負傷した。

**

ハサカ県では、ANHA(3月29日付)によると、トルコの占領下にあるラアス・アイン市で、車に仕掛けられていた爆弾が爆発した。

AFP, March 29, 2021、ANHA, March 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 29, 2021、Reuters, March 29, 2021、SANA, March 29, 2021、SOHR, March 29, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ロシア軍戦闘機複数機が「決戦」作戦司令室の支配下にあるイドリブ市西一帯を爆撃(2021年3月29日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機複数機が、「決戦」作戦司令室の支配下にあるイドリブ市西一帯を爆撃した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

狙われたのは、シャーム解放機構に自治を委託されているシリア救国内閣の施設複数棟。

また、シリア軍は「決戦」作戦司令室の支配下にあるザーウィヤ山地方のスフーフン村、カンスフラ村、ファッティーラ村、フライフィル村、バイニーン村、バーラ村一帯、ルワイハ村、マジュダリヤー村を砲撃した。

一方、トルコ軍は、兵站物資を積んだ車輌約20輌をカフル・ルースィーン村に違法に設置されている国境通行所からシリア領内に新たに進入させた。

**

ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるガーブ平原一帯を砲撃した。

**

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シリア政府の支配下にあるアジャミー村近郊の街道で、シリア軍第4師団に従軍していた男性2人(兄弟)が正体不明の武装集団の発砲を受けて死亡した。

**

スワイダー県では、シリア人権監視団によると、シリア政府の支配下にあるウンム・ルンマーン村の民家を武装集団が襲撃し、1人が死亡した。

**

ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を26件(イドリブ県15件、ラタキア県8件、アレッポ県2件、ハマー県1件)確認したと発表した。

シリア政府によると、停戦違反は23件。

一方、トルコ側の監視チームは、停戦違反を11件確認したと発表した(ただし、ロシア側はこれらの違反を確認していない)。

AFP, March 29, 2021、ANHA, March 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 29, 2021、Ministry of Defence of the Russian Federation, March 29, 2021、Reuters, March 29, 2021、SANA, March 29, 2021、SOHR, March 29, 2021、March 30, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で140人、北・東シリア自治局支配地域で101人、シャーム解放機構主体の反体制派とトルコの支配下にあるイドリブ・アレッポ県で1人(2021年3月29日)

保健省は政府支配地域で新たに140人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者115人が完治し、8人が死亡したと発表した。

これにより、3月29日現在の同地での感染者数は計18,638人、うち死亡したのは1,247人、回復したのは12,492人となった。

SANA(3月29日付)が伝えた。

**

北・東シリア自治局の保健委員会(保健省に相当)は、支配地域で新たに101人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者7人が完治し、3人が死亡したと発表した。

これにより、3月29日現在の同地での感染者数は計9,766人、うち死亡したのは372人、回復したのは1,300人となった。

新規感染者の性別の内訳は、男性43人、女性58人。

また地域の内訳は、ハサカ県のハサカ市21人、カーミシュリー市44人、マーリキーヤ(ダイリーク)市14人、ダルバースィーヤ市2人、マアバダ(カルキールキー)町5人、アームーダー市3人、ラッカ県のラッカ市9人、アレッポ県のシャフバー地区(タッル・リフアト市)3人。

ANHA(3月29日付)が伝えた。

**

反体制派系NGOの支援連携ユニットは、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を握る「解放区」とトルコ占領下の「オリーブの枝」地域と「ユーフラテスの盾」地域で3月29日に新たに1人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、13人が完治したと発表した。

新規感染者の内訳は、イドリブ県ジスル・シュグール郡0人、イドリブ郡0人、ハーリム郡0人、アリーハー郡0人、アレッポ県スィムアーン山郡1人、ジャラーブルス郡0人、バーブ郡0人、アフリーン郡0人、アアザーズ郡0人。

これにより、同地での感染者数は計21,289人、うち回復したのは19,468人、死亡したのは637人となった。

https://www.facebook.com/ACUSyria/photos/1544790469059172/

AFP, March 29, 2021、ACU, March 29, 2021、ANHA, March 29, 2021、al-Durar al-Shamiya, March 29, 2021、Reuters, March 29, 2021、SANA, March 29, 2021、SOHR, March 29, 2021などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ロシア難民受入移送居住センター:難民196人が新たに帰還、2018年半ば以降帰還した難民は652,724人に(2021年3月29日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(3月29日付)を公開し、3月28日に難民196人(うち女性58人、子供100人)が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは難民196人(うち女性58人、子供100人)、ヨルダンから帰国したのは0人。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は652,724人となった。

内訳は、レバノンからの帰還者257,724人(うち女性77,398人、子ども130,618人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者395,248人(うち女性118,618人、子ども201,569人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

43カ国で難民登録したシリア人の数は6,747,928人。

なお、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は882,004人(うち女性264,674人、子供449,529人)となった。

**

一方、国内避難民の新たな帰宅はなかった。

2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は82,552人(うち女性30,325人、子供30,762人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,351,118人(うち女性412,884人、子供674,528人)。

Ministry of Defence of the Russian Federation, March 29, 2021をもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.