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反体制勢力の動き
イスラーム旅団、フダー青年大隊、コマンド部隊などから構成されるシャリーア委員会は20日付で声明を出し、ダマスカス郊外県東グータ地方の1983~1994年生まれの青年に対して、「ジハードの義務」を果たし、「アサドの悪党とイスラームの敵」に対する戦闘に参加するよう呼びかけた。
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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)によるアアザーズ市制圧を「シリア革命勢力への敵対行為」、「シリア革命の得枠組みから逸脱している」と非難した。
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自由シリア軍参謀委員会のルワイユ・ミクダード政治広報調整官は『シャルク・アウサト』(9月19日付)に、「イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)をはじめとするジハード主義集団には、反体制武装集団を標的にするため、計画的で調整された動きがある」と批判した。
ミクダード調整官は「これらの組織は、政府軍と戦い、独裁体制からシリア人を解放するのを支援するためにシリアにやってきた。しかし、我々は今日、彼らが民衆を弾圧し、宗教を利用して彼らを脅迫し、彼らを口実にシリア人を弾圧してきた体制にとって代わってしまった」と述べた。
シリア政府の動き
シリア外務在外居住者省は国連安保理議長と事務総長宛てに書簡を送り、そのなかで米国、およびその西側同盟国、一部地域諸国が、国連憲章、国際法、そしてテロとの戦いに関する国連安保理決議に違反して、シリア国内のアル=カーイダおよびその分派を含む武装テロ集団に資金、武器を供与していると指摘した。
声明は、米英仏、トルコ、サウジアラビア、カタールを名指しで批判し、これらの国の活動に対処するよう国連に求めた。
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カドリー・ジャミール経済問題担当副首相は『ガーディアン』(9月19日付)のインタビューに応じ「反体制武装集団も、政権も、相手の陣営を負かすことはできない。パワーバランスは早々に変わることはない」としつつ、「外国の介入がなくなることが、停戦と平和的政治プロセスの開始をもたらす」と主張した。
そのうえで、反体制武装集団との停戦に合意できれば、「中立的な友好国」の監視団による「国際管理のもと」化学兵器の廃棄が行われるだろうとの見方を示した。
一方、アサド政権の退陣の是非について「体制が今のようなかたちで続くことを恐れてはならない。様々な具体的理由により、現体制はこれまでの体制ではなくなった」と述べ、西側諸国にアサド政権の主導のもとでの改革を支援するよう呼びかけた。
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クッルナー・シュラカー(9月21日付)は、欧州議会のヴェロニク・ドゥ・カイザー議員(ベルギー)がシリアを訪問し、アサド大統領と会談したと報じた。
同報道によると、会談で、アサド大統領は民主的変革諸勢力国民調整委員会のアブドゥルアズィーズ・ハイイル氏が2012年9月の中国訪問を終え、帰国した直後に誘拐された事件に関して、「武装集団が彼を誘拐した」と答えたという。
国内の暴力
アレッポ県では、シリア人権監視団などによると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が北の嵐旅団を放逐し、制圧したアアザーズ市に、自由シリア軍を名乗るタウヒード旅団などが増援部隊を派遣した。
タウヒード旅団の報道官だというアブー・ハサン氏はAFP(9月29日付)の取材に対し、「タウヒード旅団が事態収集のため活動する…。我々はこの対立を収集するために尽力したい。みなが満足する解決にいたり、両当事者を治める委員会を設置し、民衆の要求を実現しなければならない」と述べた。
また「アアザーズ市民は動揺していて、アアザーズ市からの「ダーイシュ」の撤退と、前線に去ることを求めている」と付言した。
アアザーズ市を奪われた北の嵐旅団は声明を出し「我々は、タウヒード旅団に対して、人民を保護するというアッラーへの宣誓を履行するため、アアザーズ市にただちに向かい、同市を守り、ダーイシュから解放するよう求めている」と発表した。
アブー・ルワイユ・ハラビーを名乗る活動家によると、北の嵐旅団は、アアザーズ市内の病院でボランティア活動をしていたドイツ人医師を拉致しようとしたダーイシュと争い、同市を奪われたという。
またハラビー氏は「アアザーズを制圧したダーイシュは、国境通行所に近づき、アレッポ北部一帯を制圧しようとしているようだ」と危機感を露わにした。
複数の目撃者によると、このドイツ人医師は「国境なき医師団」のメンバーで、同医師が活動していた病院へのダーイシュの襲撃によって、2人が死亡し、その後、ダーイシュと北の嵐旅団の戦闘によってさらに2人が死亡し、戦闘も対シリア国境近くにまで拡がったという。
ザマーン・ワスル(9月19日付)によると、アブー・イブラーヒーム・シーシャーニーらダーイシュの一部司令官は「イスラームの血が流れないよう」戦闘停止を呼びかけたが、外国人戦闘員はこの呼びかけに応じず、戦闘を続けたという。
またダーイシュの司令官の一人によると、ダーイシュの攻撃は、指導者のアブー・バクル・バグダーディーから祝福されている一方、別の指導者のアブー・アブドゥッラフマーン・クワイティーは「事態収拾を試みたが、失敗した」という。
しかしその後、クッルナー・シュラカー(9月19日付)などは、タウヒード旅団とダーイシュがアアザーズ市での停戦合意に署名したと報じ、文書の写真を公開した。
停戦合意内容は以下の通り:
1. 双方(ダーイシュ、北の嵐旅団)による即時発砲停止。
2. 双方が拘束した逮捕者の24時間以内の釈放。
3. 双方の行方不明者・身柄拘束者の返還。
4. 合意履行と兵力引き離しのため、タウヒード旅団による検問所設置。
5. シャリーア委員会での紛争の審理。
6. 北の嵐旅団への48時間以内の拠点の返還。
7. タウヒード旅団とムハンマド軍による合意履行の保証。
なおイラク・シャーム・イスラーム国の略称である「ダーイシュ」(داعش)は、同集団のアラビア語名「الدولة الإسلامية في العراق والشام」の頭字語。
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同じく、アレッポ県では、SANA(9月19日付)によると、クワイリス村、ラスム・アッブード村、ハイヤーン町北部、アレッポ中央刑務所周辺、アレッポ市サラーフッディーン地区、ジュダイダ地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ジャッブーリーン村街道で、反体制武装集団が仕掛けた爆弾が爆発し、近くを走っていたバス2台に乗っていた14人が死亡した。
14人のなかには、国防隊民兵も含まれていたという。
一方、SANA(9月19日付)によると、カフルナーン村、タッルドゥー市、キースィーン市、タッルダハブ市、ガースィビーヤ村、ラスタン市、ヒムス市カラービース地区、ジャウラト・シヤーフ地区、ワーディー・サーイフ地区、ワルシャ地区、アクラード・ダースィニーヤ村、ファルハーニーヤ村、カフルラーハー市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またカフルナーン村の住民が反体制武装集団によって襲撃され、13人が死亡、複数が負傷、さらにマシュラファ村でも、反体制武装集団の襲撃により、1人が死亡、6人が負傷した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団が軍の戦闘機を攻撃、撃墜したとの情報が流れた。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区、バルザ区で、軍と反体制武装集団が交戦した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザマルカー町の南部環状道路沿いの軍拠点の近くで爆弾が仕掛けられた車が爆発し、軍と反体制武装集団が交戦した。
一方、SANA(9月19日付)によると、シャブアー町、ダイル・アサーフィール市、ミスラーバー市、アルバイン市、ザマルカー町、ドゥーマー市、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、ダーライヤー市郊外、ムウダミーヤト・シャーム市郊外、カタナー市郊外、ラアス・アイン市、サルハー村、ジャイルード市、アドラー市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ラタキア県では、SANA(9月19日付)によると、ラタキア市ブスターン・サマカ地区で、関係当局が反体制武装集団のアジトを捜索、手榴弾、拳銃、爆弾などを押収した。
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イドリブ県では、SANA(9月19日付)によると、ビンニシュ市、マアッラトミスリーン市、クーリーン市、ナフリヤー市、カフルラーター市、カフルルーマー村、マアルシャムシャ市、タッル・サラムー村、ブワイティー村、アブー・ズフール航空基地周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(9月19日付)によると、ダイル・ザウル市アルディー地区にある農業研究施設近くで、軍が反体制武装集団と交戦し、戦闘員を殲滅、拠点・装備を破壊した。
レバノンの動き
ムスタクバル潮流のウカーブ・サクル議員は、LBCI(9月19日付)に「我々はシリアの反体制武装集団に武器を供与する手段を持っていない」と述べ、シリアの紛争への関与を否定した。
またヒズブッラーに関して「シリア、エジプト、バーレーンに戦闘員が輸出されたことで、レジスタンスは終わった…。もはやレジスタンスではない。単なる請負人になってしまった」と非難した。
諸外国の動き
チュニジアのルトフィー・ベン・ジッドゥー内務大臣は議会で、シリアに「結婚ジハード」の名目で派遣されたチュニジア人女性をめぐる問題に関して、「20人、30人、そして100人(の戦闘員)が彼女らと交わり、結婚ジハードの名のもとでの性的交渉の結果、彼女らは身ごもって帰国しているが、我々は沈黙し、手をこまねいているだけだ」と発言した。
ベン・ジッドゥー内務大臣はまた、2012年3月以降、シリアでの戦闘に参加しようとした6,000人の出国を阻止し、チュニジア人のシリアへの潜入を支援していた86人を逮捕したことを明らかにした。
AFP(9月19日付)が報じた。
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ロイター通信(9月19日付)は、トルコ高官からの情報として、アレッポ県アアザーズ市での北の嵐旅団(アフマド・ガザーラ大尉)とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘を受け、トルコ当局がキリス市とアアザーズ市を結ぶオンジュプナル国境通行所を一時的に封鎖したと報じた。
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ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は、ダマスカス郊外県での8月21日の化学兵器攻撃に関して「挑発だったことを示すあらゆる根拠がある」と述べた。
プーチン大統領は、その一例として、国連調査団の報告書が攻撃に使用されたと指摘したロケット弾について「こうした挑発を行うために、キリル文字が書かれたロケット弾を見つけて利用することは難しいことではない」と述べた。
シャームプレス(9月19日付)などが伝えた。
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フランスのフランソワ・オランド大統領は、訪問先のマリでの記者会見で「ロシアは(シリア政府に兵器を)定期的に供与している。しかし、我々は諸外国とともに、より広い枠組みのもと、監視可能な枠組みでこれを行う。なぜなら、武器が自由シリア軍でなく、ジハード主義者の手に渡ることを我々は受け入れられないからだ」と述べ、反体制武装集団への武器供与の意思を示した。
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アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長は、シリアの化学兵器廃棄に関して、NATOが直接関与することはないとしつつ、「もちろん一部の加盟国は個別に貢献する用意があり、またその能力を持っている」と述べた。
AFP, September 19, 2013、Champress, September 19, 2013、The Guardian, September 19, 2013、al-Hayat, September 20, 2013、Kull-na Shuraka’, September 19, 2013, September 21,
2013、Kurdonline, September 19, 2013、LBCI, September 19, 2013、Naharnet,
September 19, 2013、Reuters, September 19, 2013、Rihab News, September 19,
2013、SANA, September 19, 2013、al-Sharq al-Awsat, September 19, 2013、UPI, September 19, 2013、Zaman al-Wasl, September 19,
2013などをもとに作成。
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