2013年6月17日のシリア情勢

アサド大統領のインタビュー

SANA(6月17日付)は『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング』(6月18日付)掲載予定のアサド大統領のインタビュー全文をアラビア語、英語で公開した。

SANA, June 17, 2013

SANA, June 17, 2013

英語:http://sana.sy/eng/21/2013/06/17/487994.htm
アラビア語:http://sana.sy/ara/2/2013/06/18/487993.htm

アサド大統領の主な発言は以下の通り。

(反体制勢力が国土の一部を制圧していることをどう思うかという質問に対して)「我々は国土の一部の支配を失ったり、制圧したりするような体系的な戦争を行っていない…。我々は軍と対決する軍ではない…。悪党と対峙する軍だ。無論、軍は一部の地域に入ることができなかったが、こうした地域に入ることができた。そして我々が入ることができるすべての場所を制圧できる。しかし同時に、軍は常に駐留するものではない。シリアの全土に駐留することが任務ではない…。制圧の有無以上に重要なのは、テロリストの掃討には大きな代価が伴うということだ…。我々がテロリストを国土から完全に殲滅するであろうことに疑いの余地はない。しかし問題は、テロリストが国に残した破壊(への対処)だ」。

「当初から、私は危機がいつ終わるのかを問うてきた。私の答えは長い時間を要するだろうというものだった。なぜなら、外的要因が明らかに存在するからだ」。

「真の復興とは、知性、イデオロギー、概念を再構築することだ。(復興に必要な)礎石は高価ではあるが、それ以上に高価なのが人だ」。

(数年後の地域情勢はどうなると考えているかとの問いに対して)「我々が破壊的な分裂のシナリオを遠ざけるのであれば、それとはまったく異なる前向きなシナリオがあると確信している。それは我々が国家、社会としてどのように振る舞うかにかかっている。このシナリオは挑戦することにかかっている。最初の挑戦とは、治安と安定の回復だ。そして第2の挑戦が復興だ。しかしもっとも重要な挑戦とは、過激主義に対峙することだ…。我々はこの社会をかつてと同じような自然な状態に戻すことが可能だろうか…?寛容、共存について言及する人もいる…。しかし我々がしなければならないのは…一元化・均質化(タジャーヌス)だ…。最後の挑戦が、我々が望む改革(の実施)だ。我々の社会を保つにはいかなる政治体制が最善かが常に問われている…。そこで本質となるのは他者を受け入れることだ。他者を受け入れなければ、民主主義はない」。

「一般的にアラブ社会は、二つの基礎に立脚している。アラブ性(ウルーバ)とイスラーム教だ。それ以外のものは脆弱である…。かつて共産主義が考えていたように世俗主義を理解する人が多くいる。しかし、実際はそうではない。我々にとって、世俗主義とは信仰の自由を意味する。こうした世俗主義は、多様性をよしとする。キリスト教徒、イスラーム教徒、ユダヤ教徒、そしてそのなかのさまざまな宗派といった多様性をだ。世俗主義は、社会が統合し、真の市民性を感じるうえで必要なのだ…。世俗主義を強化する以外の選択肢がないとしても、それはよいことであり、悪いことではない。悪いことは過激化だ。なぜならそれはテロをもたらすからだ」。

(アラブの春に関して)「この概念は間違っている。春は流血、殺戮、過激化…とは無縁だ…。私はこの概念をもてあそぶ者に反対だ」。

「外国の介入には二つの種類がある。第1に仲介者や手先を利用する非直接的な介入、もう一つは戦争を通じた直接介入である。我々は第1の段階にいる。危機の当初、私はシリアへの干渉について、たとえ非直接的であっても、それは活断層に觝触するがゆえに、地域全体を激震させると述べた。このとき、多くの人、とくにメディアは、アサド大統領が危機をみなに拡大すると脅迫しているなどと言った…。しかし現実に目を向けると、イラク、そしてそれ以前にレバノンで起きていることは、シリアで起きていることに起因する悪影響だ。これは当然の結果として起きたに過ぎない…。もし軍事介入が起きたら、事態はもっと悪化するだろう」。

「(シャームの民の)ヌスラ戦線はアル=カーイダの一派だ。彼らは全く同じイデオロギーを持っているが、シリア、イラク、レバノン、ヨルダンにおり…、イスラーム国家を建設すると主唱している。彼らが存在する地域で今、彼らは自らのイデオロギーを実践しようとしている。とりわけ女性に対してだ。彼らはイスラーム法、ないしはイスラーム教を実践していると言い、おそらくそのように確信しているのだろう。しかし、もちろん、彼らの逸脱した実践は、イスラーム教とは関係がない。我々は彼らの蛮行の典型の一部を、ユーチューブの映像を放映する衛星放送などで見ることができる…。彼らのなかには無実の人の首を斬る者もおり、しかもメンバーはシリア人だけでなく、他のアラブ諸国、イスラーム諸国、欧州諸国の出身者だ」。

(サウジアラビアやカタールが反体制勢力を支持していることに関して)「メディアが報じてきたように、彼らは自由や民主主義を信じて武装集団を支援しているのだろうか?そもそも彼らの国に民主主義はあるのだろうか?選挙で選ばれた議会があるのか?国民が選んだ憲法があるのか?…彼らはそもそも自国民のことになど関心はないのだ」。

「この問題(反体制勢力への武器供与)をめぐって、EUは分裂している。欧州各国はシリアという国家を支持しているとは言えないが、シリアという国家に敵対的な姿勢をとっていない国もある。とりわけ英仏とそれ以外の国の間の隔たりは大きい。なかでも、ドイツは、テロリストに武器を供与するとどのような結果が生じるかについて論理的な問いを行っている…。欧州各国は彼ら(反体制勢力)がテロリストだということを知っている。一部の国は、良い戦闘員と邪悪な戦闘員がいる、というようなアメリカが行ってきたような区別を試みており…、今や「良いテロリスト」と「悪いテロリスト」という概念が作られている。これが論理的だと言えようか?この地域に武器がもたらされれば、それはテロリストがやってくることを彼らは知っている。それは二つの結果をもたらすだろう。第1に、欧州の裏庭がテロの庭になり、欧州がその代価を支払うこと…。第2にあなた方(欧州)にテロが直接輸出される、ということだ」。

(ヒズブッラーの戦闘参加に関して)「メディアは今、ヒズブッラーが戦闘していたのであり、シリア軍は弱小で勝利できない、というイメージを作ろうとしている…。しかし現実には、我々は多くの地域で大勝利を収めてきた。そのなかのおそらくもっとも重要なものがクサイルだ…。これらの地域で戦っていたのはシリア軍と、軍とともに自らの地域を防衛するために戦う人民諸勢力だけだ。彼らは地元住民で、これこそがシリアにおける我々の成功の主因だ…。誇張がなされている。テロリストは、ヒズブッラーを支持する国境地帯の村を破壊し始めた。それゆえ、ヒズブッラーはシリア軍とともに混沌を終わらせるべく介入せざるを得なかったのだ」。

「ヒズブッラーの部隊は(シリア国内には)存在しない。彼らはクサイルに近い国境地帯にテロリストがいたために、国境地帯に多数の戦闘員を派遣し、対レバノン国境でのシリア軍の浄化作戦を支援した。しかし彼らは、シリア領内に部隊は派遣していない」。

(化学兵器使用疑惑に関して)「米国、フランス、英国、そして一部の西欧の高官は、化学兵器が実際にあるかないかには触れないままに、我々がシリアの複数の地域でこの兵器を使用したと言っている…。しかし「シリアが化学兵器を使用した」という結論に達したことを示す証拠はどこになるのか?こうした発言には笑わざるをえない。彼らが嘘をついており、テロリストの側が化学兵器を使用したという証拠に関して、我々はアレッポでのテロリストが化学兵器を使用した場所への調査委員会の派遣を国連に求めた。そかし英仏はこれを妨害した。なぜなら、調査委員会が派遣されれば、テロリストが化学兵器を使用したことが明らかになり、英仏が嘘をついていることの確かな証拠となるからである」。

「我々は当初から、対話を望む者に手を差し伸べてきた。この姿勢を変えてはいない…。同時に、我々はテロリストと戦っていた。しかし、我々が反体制勢力という概念に言及する場合においても、十把一絡げにしてはならない。テロリストと政治家を同列にしてはならない。反体制活動とは政治的な活動だからだ…。武器を持たず、テロを支援せず、政治的プログラムを持つすべての反体制勢力(が合法的だとして認められるべきだ)。しかし反体制勢力という言葉は選挙と関係がある…。つまりたとえ、私が反体制活動家だとしても大衆的基盤がなければ実質的に価値はない。反体制勢力は選挙を通じて自らを確立せねばならない」。

「我々はジュネーブに対話を行うために行くだろう。しかし、私は実際に起きるであろうことを明らかにするために、この言葉(奴隷ではなく主と対話するとの言葉)を言っただけだ…。これらの国(西側諸国、トルコ、カタール、サウジアラビア)が彼らの背後にいて、彼らが何をするのか、何をしないのかを指示しているからだ…。我々は実質的には英米仏、そしてその道具であるトルコ、カタール、サウジアラビアと交渉することになる」。

(ジュネーブ2会議が失敗したらどうなるかとの問いに対して)「いずれにしても、これらの国はテロリストを支援し続けるだろう。もしシリアの危機が終わらなければ、他の国に波及し、事態はさらに悪化する。論理的に考えて、成功こそが皆にとっての利益になる。ただし在外の反体制勢力は、大会が成功に終われば、自らが手にした財産を失うことになるだろう」。

「もし私がこの状況下で(大統領の地位を)去れば、それは国家反逆罪だ…。しかし国民が退任を決定するのであれば、それは別問題だ」。

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カダム区などを軍が空爆、またジャウバル区、バルザ区では具と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(6月17日付)によると、ジャウバル区、ルクンッディーン区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またザーヒラ地区で、反体制武装集団が仕掛けた爆弾2発が爆発し、市民3人が負傷した。

**

アレッポ県では、『ハヤート』(6月18日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国の拠点の一つとされるドゥワイリーナ村を軍が空爆した。

またマアーッラト・アルティーク村、ハーン・トゥーマーン村などで軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

このほか、バービース村・マアーッラト・アルティーク村間の街道で軍が民間人の乗ったバスを襲撃し、複数が負傷したという。

一方、SANA(6月17日付)によると、マンナグ市、バヤーヌーン町、アレッポ中央刑務所周辺、アレッポ市ダウワール・ジャズマーティー地区、サールーフ地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またドゥワイリーナ村で爆弾が仕掛けられた車が爆発したが、死傷者は出なかった。

**

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、フサイニーヤ町、フジャイラ村、ハジャル・アスワド市などで軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(6月17日付)によると、ハルブーン市、アフマディー市郊外、バッビーラー町、アルバイン市、ハラスター市、バフダリーヤ市、ジュダイダト・シーバーニー市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、ハーリド・ブン・ワリード大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区などで軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(6月17日付)によると、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区、ハーリディーヤ地区、カラービース地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ラタキア県では、SANA(6月17日付)によると、ハヤート村で、軍は反体制武装集団の武器庫を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

**

ハサカ県では、SANA(6月17日付)によると、ハサカ市内の軍検問所に対する反体制武装集団の襲撃を軍が撃退した。

しかしハサカ市のナズィーフ・ジュンディー教育学部が反体制武装集団によって暗殺された。

一方、クッルナー・シュラカー(6月18日付)によると、ハサカ県でアンサール・シャリーア大隊(サラフィー主義者)が、民主連合党人民防衛隊メンバー8人を誘拐し、同部隊が身柄拘束中の戦闘員との「捕虜交換」を要求した。

諸外国の動き

フランスのフランソワ・オランド大統領はG8首脳会議開催を前に記者団に対して「反体制勢力が限定的な武器しか受け取っておらず、死に曝されているなかで、どうしてロシアがバッシャール・アサド体制に武器供与を続けることを受け入れられようか?…化学兵器が使用された証拠が今日あるにもかかわらず、国際社会やG8がそれを非難しないことを受け入れられようか?」と述べた。

**

ロシア外務省のアレクサンドル・ルカシェヴィッチ報道官は、「飛行禁止空域や人道回廊と設置といった計略は、国際法を尊重しないことの直接の結果だ…。我々はこうしたシナリオを許さない…」と述べた。

**

イラクのヌーリー・マーリキー首相は、13日のカイロでのイスラーム・ウンマ・ウラマー大会で「シリアの同胞を救済するためのジハード」が呼びかけられたことに関して、「堕落したファトワー」と非難、遺憾の意を示した。

**

パレスチナのハマースはガザで声明を出し、「我々はヒズブッラーにシリアからの兵の撤退を求める。我々はシオニストの敵のみに対して武器を向けるよう彼らに呼びかける」としたうえで、「シリアへの進軍は地域における宗派主義的偏見を強めることにしか資さない」と批判した。

**

『ディヤール』(6月17日付)は、ヨルダンの治安消息筋の話として、シリア時間の午後18時に、米軍の戦闘機6機がシリア領内5キロの地点まで一時領空侵犯したと報じた。

同消息筋によると、侵犯は1分に満たず、また意図的なものではなかったという。

**

バラク・オバマ米大統領とウラジミール・プーチン露大統領はG8首脳会議会場のロックアーン(北アイルランド)で会談し、シリア情勢などへの対応について協議した。

両首脳は、ジュネーブ2会議の開催を通じて、紛争の政治的解決を目指す点では一致したが、化学兵器使用疑惑やアサド大統領の退陣の是非をめぐって意見を異にする両者の溝は埋まらなかった。

オバマ大統領は会談後、シリア情勢で「見方が異なる」と述べ、プーチン大統領も「我々の意見は一致しない」と認めた。

ベン・ローズ米大統領副補佐官によると、オバマ大統領はアサド政権による化学兵器使用を確認した根拠を提示したが、プーチン大統領は懐疑的だったという。

またオバマ大統領は反体制勢力への支援強化についても説明したが、議論は平行線のまま終わったという。

各紙が報じた。

**

米露首脳会談後、G8首脳会議のワーキングディナーが開かれた。

シリアの紛争をめぐる協議は、ワーキングディナーにおける時間のほとんどが割かれたが、アサド政権を擁護するロシアと、反政府勢力を支援する西側諸国の間で、意見の相違は解消されなかったが、各国ができる限りの人道支援を行っていくことや、政治的な解決に向けてアサド政権と反政府勢力の双方の代表が参加する国際会議の早期開催を目指すことなどでおおむね一致した。

加えて、過激派をシリアから排除していくことや、化学兵器のいかなる使用も非難し、国連の調査を進めることなどを、首脳宣言に盛り込む方向で調整を進めることとなった。

ロイター通信(6月18日付)などによると、西側7カ国は首脳宣言に、アサド大統領の退任を求めるとの総意を盛り込もうとしたが、プーチン大統領はこれを拒否したという。

またプーチン大統領は反体制勢力の武器供与に関して、「いずれ逆効果をもたらすだろう」と述べ、紛争の暴力を助長すると非難した。

なお、日本の安倍晋三総理大臣は、「シリアにおいて、何万人もの死者が出るような暴力行為が行われているが、暴力を止めるために、立場の相違点ではなく、共通点に立って議論すべきだ」と述べ、アサド政権と反政府勢力の双方の代表が参加する国際会議を早期に開くべきだという考えを示した。

そのうえで、難民や避難民に対するおよそ1,000万ドルの人道支援や、米国による反体制勢力支援の拠点となりつつあるヨルダンに1億2,000万ドルの円借款を行う方針を表明した。

**

バラク・オバマ米大統領はBBC(6月17日付)のインタビューに応じ、シリア上空に飛行禁止空域を設置する意思も、国境地帯に人道回廊を設置する意思もないことを明らかにした。

オバマ大統領は「我々が飛行禁止空域を設置したとしても、実際に我々は問題を解決することはないだろう」と述べた。

その理由としてオバマ大統領は「実際のところ、被害者の90%はシリア空軍が行う空爆によるものではない…。シリア空軍の武器は必ずしも上質ではなく、彼らはきちんと整備できていない…。実際の戦闘は地上で行われている」と強調した。

また「もし人道回廊を設置したら、それは回廊にいたる航空機を阻止するだけでなく、ミサイルも阻止しなければならないということか?」と自問した。

さらにシリア国内の化学兵器施設への空爆の可能性に関しては「化学兵器の拡散と民間人の殺害をもたらしかねない」として行う意思がないことを明言した。

最後にオバマ大統領は「米国には、人道面での利益だけでなく、深刻な国益がある…。ヨルダンやイスラエルと接する大国(シリア)で混乱が続くことを許すことはできない」と述べた。

AFP, June 17, 2013、al-Diyār, June 17, 2013、al-Ḥayāt, June 18, 2013, June 19, 2013、Kull-nā Shurakā’, June 17, 2013, June 18,
2013、Kurdonline, June 17, 2013、Naharnet, June 17, 2013、Reuters, June 17,
2013、SANA, June 17, 2013、UPI, June 17, 2013などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

カテゴリー: シリア政府の動き, 国内の暴力, 諸外国の動き パーマリンク