シリア外務省が国連に送った書簡のなかでサウジアラビアのウラマーらがテロを支援するファトワーを発していると抗議、自由シリア軍参謀委員会はシリアの友連絡グループに武器供与を改めて求めるもフランスが慎重な姿勢を示す(2013年6月20日)

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シリア政府の動き

シリア外務在外居住者省は、国連事務総長と安保理議長宛に書簡を送り、そのなかでサウジアラビアのアブドゥルアズィーズ・アール・シャイフ大ムフティー、ムハンマド・ウライフィー、カタールが庇護するユースフ・カラダーウィー、ムハンマド・ハッサーン、サフワトヒジャーズィー、クウェートのシャーフィー・スルターン・アジャミーといったウラマーが、テロを唱導し、テロリストを支援するようなファトワーを発していると抗議した。

また外務在外居住者省は、「シリアの同胞を救済するためのジハード」を呼びかけたカイロでのイスラーム・ウンマ・ウラマー大会に関して、「エジプト政府は、逸脱したシャイフたちにテロや殺戮を煽動する声明を出すことを許したことは、エジプト政府がテロ犯罪やシリア人の流血に荷担していることを示すものである」と批判した。

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進歩国民戦線加盟政党のシリア民族社会党イサーム・マハーイリー派は、ダマスカス県のダーマー・ルーズ・ホテル(旧メリディアン)で第1回総会を開いた。

総会は12人からなる最高評議会(最高意思決定機関、ズハイル・カトラーン議長)を選出、またイサーム・マハーイリーを党首に、アブドゥッラー・ムナイニーを書記長に選出した。

なおクッルナー・シュラカー(6月20日付)によると、総会に出席したアフマド・バドルッディーン・ハッスーン共和国ムフティーは、シリア革命反体制勢力国民連立メンバーの国籍剥奪を主唱した。

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シリアン・デイズ(6月21日付)は、カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣が、灯油の価格引き上げ決定に署名したと報じた。

これにより、1リットル35シリア・ポンドだった灯油は、60ポンドに値上げとなる。

なおこれに先立ち、ガソリンの値段も1リットル55ポンドから80ポンドに、プロパンガスも550ポンドから1,000ポンドに値上げしていた。

また複数の消息筋によると、内閣はインターネット使用量を100%引き上げることを検討しているという。

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『アフバール』(6月21日付)は、ダマスカス県サーリヒーヤ区、スーク・ジュムアの商店主・露天商多数が、物価高騰に抗議して、部分的なストライキを行った、と報じた。

反体制勢力の動き

ロイター通信(6月20日付)は、イドリブ県などの反体制勢力が政府側の施設と契約し、「解放区」で収穫した小麦を小麦粉に粉砕していると報じた。

同報道によると、反体制勢力はイドリブ県の小麦畑のほとんどを制圧しているが、粉砕機がなく、サラキーン市のパン工場で働く反体制活動家によると「政府ではなく、人々に関わる問題」だとして、契約にいたっているという。

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自由シリア軍参謀委員会政治広報調整官のルワイユ・ミクダードは、「我々の要求は明白だ。それをリストで示し、友好国に渡した…。もっとも重要なのは、携帯用対空ミサイル、対戦車ミサイル、小型の地対地ミサイルだ」と述べ、シリアの友連絡グループに武器供与を改めて求めた。

ミクダード政治広報調整官によると、参謀委員会は、こうした高性能兵器のほかにも、迫撃砲、装甲車、通信機器、防弾チョッキ、ガスマスクの支給を求めているという。

またミクダード政治広報調整官は、「体制が非伝統的な弾道を装着したスカッド・ミサイルを使用して解放区を砲撃することを恐れ、飛行禁止空域を設置するための必要な措置」を講じるよう求めたと付言した。

そのうえで「我々に武器が与えられなければ、我々の前にあるのは人道的悲劇だ」と敗北への恐怖を露わにした。

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ジャズィーラ(6月20日付)は、シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー前事務局長が、同評議会クルド・ブロック代表に選出されたと報じた。

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区、カダム区、ジャウバル区、バルザ区で、軍と反体制武装集団が激しく交戦し、軍が砲撃を行った。

またアブー・ルンマーナ地区で仕掛け爆弾が爆発したが、死傷者はなかった。

一方、SANA(6月20日付)によると、ジャウバル区の旅客バス・ターミナル南東部で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアッバースィーイーン地区、バーブ・シャルキー地区に、反体制武装集団が撃った迫撃砲が着弾し、市民1人が死亡、約20人が負傷した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、サイイダ・ザイナブ町周辺、ハジャル・アスワド市で、ヒズブッラーの戦闘員が支援する軍が反体制武装集団と激しく交戦した。

またハラスター市、ムウダミーヤト・シャーム市、ドゥーマー市などが軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(6月20日付)によると、ドゥーマー市郊外、フバーリーヤ市郊外、ダイル・サルマーン市、バフダリーヤ村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャバーブ・フダー大隊、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市のスライマーン・ハラビー地区の大部分を反体制武装集団が制圧し、軍兵士7人を殺害した。

またアレッポ市では、ブスターン・バーシャー地区、マイダーン地区、シャイフ・ヒドル地区、シャイフ・マクスード地区、サイフ・ッ=ダウラ地区、サラーフッディーン地区、アシュラフィーヤ地区、旧市街で、軍・国防隊・人民諸委員会と反体制武装集団が交戦した。

さらにシリア人権監視団は、アレッポ中央刑務所の収監者100人以上が2013年4月以降の同刑務所をめぐる軍と反体制武装集団の戦闘に巻き込まれて死亡し、食糧品、医薬品の不足に見舞われていると発表した。

しかしSANA(6月20日付)はシリア人権監視団の発表を否定した。

一方、SANA(6月20日付)によると、アレッポ中央刑務所周辺、シャイフ・ナッジャール市で、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市ではスライマーン・ハラビー地区、ブスターン・カスル地区、ブスターン・バーシャー地区、サーフール地区、シャイフ・ヒドル地区、旧市街で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、クッルナー・シュラカー(6月20日付)は、ハーリム市でロシア人パイロットと思われる男性1人を「自由シリア軍」が拘束したと報じた。

同報道によると、現在も取調中だというこの男性は、「自由シリア軍」が2ヶ月前にアレッポ市郊外で撃墜したMiG戦闘機のパイロットだと思われ、拘束時には下着姿で、ロシア語が堪能で、英語も話すという。

また、シリア人権監視団によると、軍が対トルコ国境から2キロの地点に位置するアティマ村近郊のダイル・バッルート村で、民主統一党人民防衛隊と反体制武装集団が交戦、前者の民兵2人と、後者に属す外国人戦闘員ら複数が死亡した。

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ダルアー県では、SANA(6月20日付)によると、シャブラク村、スィースーン市、タスィール町、ジッリーン村、ジャムラ村、タファス市、ムザイリーブ町、タッル・ジュムーウ市郊外で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(6月20日付)によると、ジャバー市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(6月20日付)によると、ラスタン市、ブライジュ市、アイン・フサイン市、シンダーヒーヤ市、ヒムス市ハミーディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、バーブ・フード地区、ハスヤー町で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(6月20日付)によると、タッラ村、シャフルーラ村、スッカリーヤ町で、軍が反体制武装集団と交戦し、カタール人戦闘員など複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(6月20日付)によると、ダイル・ザウル市工業地区、ジュバイラ地区、労働者住宅地区、マリーイーヤ村で、軍が反体制武装集団と交戦し、イスラーム旅団、ハック旅団、ジュバイラ殉教者大隊メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

NNA(6月20日付)などによると、ベカーア県バアルベック郡のラブワ市とアルサール市の住民どうしが撃ち合いとなり、国軍が両者を引き離すため介入した。

またベカーア県のマスナア市、マジュダル・アンジャル市、サアドナーイル市、タアラバーヤー市、ベイルート県コルニーシュ・マズラア、北部県アッブーディーや市、ビーラ市などでは、アルサール住民との連帯を訴え、住民らが主要幹線道路を封鎖し抗議し、軍と衝突、1人が死亡、複数が負傷した。

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レバノンのミシェル・スライマーン大統領は、「もし彼ら(ヒズブッラー)がアレッポの戦闘に参加し、党員にさらなる死者が出れば、それは事態を緊迫させることになる。クサイルで事態を停止させ、彼らはレバノンに戻らねばならない」と警鐘を鳴らした。

諸外国の動き

フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、「我々が信用できない状況で武器供与する余地はない。つまり、我々は自らに向けられるかもしれないなかで、武器供与は行わない…。これは明白だ。反体制勢力が政治的解決にいたるために支援すると常に言ってきた…。これが(自由シリア軍参謀委員会参謀長の)サリーム・イドリース少将とのさらなる協議の必要があると考える理由の一つだ」と述べ、武器供与に慎重な姿勢を示した。

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ロシアのミハイル・ボグダノフ外務副大臣は『ハヤート』(6月21日付)のインタビューに応じ、そのなかで、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長が「反体制武装集団がダマスカスにまで達し、勝利を収めようとするなかで、シリアへの介入を決断した」ことを通達してきたことを明らかにした。

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イスラエルの治安当局高官は『ハヤート』(6月20日付)に対して、「イスラエルへの(シリアからの)ロケット弾砲撃があれば、イスラエル軍は砲撃を停止させるため、シリア領に進入せざるを得ない。そのために我々は陸上からシリアに進入しなければならない。空からだけではそれを停止させることはできない。彼らが我々にいて欲しいと望む場所に我々は行くことになる」と述べた。

また「米国はロシア軍に対抗するため、アフガニスタンのムジャーヒドゥーンにミサイルの供与を行ったとき、このミサイルが数年後米軍に対して使われたことを思い出さねばならない」と述べ、西側諸国によるシリアの反体制勢力への武器供与がイスラエルにとって軍事的脅威になり得ることを示唆した。

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イラクのホシェリ・ゼバリ外務大臣は「地域の混乱、そしてあらゆる基準からみても地域紛争となったシリアの紛争に対してもっとも困難な立場にいる」としたうえで、「中立を維持するためにできることを行うべく努力しているが、圧力はあまりに強く、我々が耐えられるかはシリア情勢の進捗次第だ」と述べた。

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国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、記者団に対して、アサド政権にトルコ経由で人道支援を受け入れることを認めさせることが重要である旨、安保理で訴えたと述べた。

AFP, June 20, 2013、al-Akhbar, June 21, 2013、Aljazeera.net, June 20, 2013、al-Hayat, June 20, 2013June 21, 2013、Kull-na Shuraka’, June 20, 2013、Kurdonline,
June 20, 2013、Naharnet, June 20, 2013、NNA, June 20, 2013、Reuters, June
20, 2013、SANA, June 20, 2013、Syrian Days, June 21, 2013、UPI, June 20, 2013などをもとに作成。

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