2013年4月20日のシリア情勢

国内の暴力

ハサカ県では、ハワルニュース(4月20日付)によると、ハッダード村の住民の要請により、民主連合党人民防衛部隊が同村に突入し、反体制武装集団(自由シリア軍)を放逐した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ムサッラブ村で続く住民(部族)とシャームの民のヌスラ戦線の戦闘で、住民、ヌスラ戦線双方の死者数がそれぞれ17人、20人に達した。

同監視団によると、戦闘は石油輸送トラックの盗難をめぐって3月末に始まり、住民は軍が供与した武器でヌスラ戦線に対峙しているという。

また戦闘は、住民がヌスラ戦線の戦闘員17人(14人がシリア人、6人が外国人)を殺害したのに対して、ヌスラ戦線が報復として民家30県を爆破したことで、激化したという。

このほか、ダイル・ザウル市郊外で、旅客バスが迫撃砲による攻撃を受け、多数の市民が死亡、またハリータ村への軍の攻撃で、女性1人、子供3人が死亡した。

一方、SANA(4月20日付)によると、ダイル・ザウル市内、マリーイーヤ村などで、軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦し、戦闘員を殲滅した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市郊外の村々で軍と反体制武装集団が交戦し、戦闘員6人が死亡した。

同監視団によると、戦闘には、ヒズブッラーが支援する人民諸委員会(自警団)と武装集団が参加し、戦闘によって軍はラドワーニーヤ村を制圧した。

また軍はクサイル市郊外、ハウラ地方、ヒムス市に砲撃を加えた。

一方、SANA(4月20日付)によると、クサイル市郊外のカーディシュ村、マンスーリーヤ村、ラドワーニーヤ村、サアディーヤ村、サクマーニーヤ村を軍が奪還し、治安を回復した。

またラスタン市、ダール・カビーラ村、ヒムス市ハーリディーヤ地区、アーミリーヤ市、サルーミーヤ市、ウンム・シャルシューフ村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市のアレッポ街道地区で軍が反体制武装集団を要撃し、戦闘員4人を殺害した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍による掃討作戦が続き、ジュダイダト・ファドル市では、この4日で69人が死亡した。死亡した69人のほとんどは武装集団戦闘員だという。

またジュダイダト・アルトゥーズ町、ムウダミーヤト・シャーム市、ドゥーマー市、アイン・タルマー村、ウタイバ村、ヤブルード市などで軍が反体制武装集団の追撃を行った。

これに関して、クッルナー・シュラカー(4月20日付)は、ジュダイダト・ファドル市に対する軍の掃討作戦にはヒズブッラーの戦闘員が多数参加していると報じた。

一方、SANA(4月20日付)によると、ジュダイダト・アルトゥーズ町の住宅街に向かって反体制武装集団が迫撃砲を発射し、複数の市民が負傷した。

またフサイニーヤ町、ビビーラー市、ブワイダ市、ハラスター市、ドゥーマー市、ダーライヤー市、ズィヤービーヤ町、ヤルダー市、フジャイラ村などで、軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、外国人戦闘員など複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区、カーブーン区に軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(4月20日付)によると、バルザ区で反体制武装集団が旅客マイクロバスを襲撃、これにより乗客1人が死亡、16人が負傷した。

またジャウバル区で、軍が反体制武装集団の拠点を攻撃し、複数の戦闘員を殺傷した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、バーラ村、カフルルーマー村、マアッル・シューリーン村、サラーキブ市などに軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(4月20日付)によると、イブリーン村近くで、トルコ領内から武器を持ち込もうとした武装集団を軍が攻撃し、戦闘員を殲滅した。

またタッル・サラムー村、ウンム・ガザール村、アブー・ズフール軍事基地周辺、ビンニシュ市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、サフィーラ市などに軍が砲撃を加え、アレッポ国際空港周辺で反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(4月20日付)によると、ナイラブ村、ハンダラート・キャンプ、マンナグ市、アルカミーヤ村、マーイル町、タッル・リフアト市、フライターン市、ヤーキド・アダス村、カフルハムラ村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、ジャミーリーヤ地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、子供2人が負傷した。

さらに同市のシャイフ・マクスード地区、バーブ街道地区、旧市街、ライラムーン地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、第17師団基地周辺で軍と反体制武装集団が交戦、また第93旅団が展開するアアユージュ村に近いアッジャージュ村が砲撃を受けた。

このほか、サフサーファ町では、部族長のアブドゥッラフマーン・ムハンマド・ファラジュの家に迫撃砲弾が着弾し、ファラジュ氏が死亡した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ジーザ町、ジャースィム市、ナマル町、ダルアー市ダム街道地域などが、軍の砲撃を受けた。

反体制勢力の動き

自由シリア軍合同司令部中央広報局のファフド・ミスリーは、中東通信(4月20日付)に宛てた声明で、シャームの民のヌスラ戦線に代表されるサラフィー主義者の一部が、イラン・イスラーム革命防衛隊やシリアのムハーバラートと連携するイラクからの戦闘員で、「革命を邪悪なものにしようとしている」と断じ、非難した。

またヌスラ戦線のアミールを名乗るアブー・ムハンマド・ジャウラーニーに関して、イランとシリアの諜報機関が作り上げた「音声録音でしか知られていない架空の人物だ」とその存在を否定した。

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シリア革命反体制勢力国民調整委員会はフェイスブック(4月20日付)で声明を出し、「現体制が存在する限り、シリアの危機に政治的解決の余地はない」としたサウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣の発言を「シリアの現状への深遠な理解」と賞賛した。

レバノンの動き

NNA(4月20日付)によると、ベカーア県ヘルメル郡カスル村および同村郊外に、シリア領から発射された迫撃砲弾5発が着弾した。

諸外国の動き

トルコのイスタンブールで、シリアの友連絡グループ会合が開かれ、米英仏、ドイツ、イタリア、トルコ、サウジアラビア、カタールなど11カ国の外相が参加した。

シリアの反体制勢力からは、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長、ジョルジュ・サブラー副議長、リヤード・サイフ副議長、スハイル・アタースィー副議長、ムスタファー・サッバーグ書記長、ガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班、自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長が出席したが、それ以外の組織は参加しなかった。

シリア革命反体制勢力国民連立は、会合開催に合わせて声明を出し、アサド政権が化学兵器や弾道ミサイルの使用などを通じて「テロ」を行っていると断じる一方、シリアの友連絡グループ会合が事態に充分対処していないと非難、4項目からなる要望を行った発表した。

イスタンブールでのシリアの友連絡グループ会合に提出された4項目の要望は以下の通り。

1. シリア政府による弾道ミサイル、化学兵器使用を非難し、その防止を具体化させるための国連安保理決議の採択。
2. シリアの友連絡グループ構成国による無人航空機を使用した弾道ミサイル発射地点に対する「外科的打撃」。
3. 飛行禁止空域の設置。
4. シリア革命反体制勢力国民連立を支援するための国際基金の設置。

この声明に関して『ハヤート』(4月22日付)は、「あらゆる形態のテロを拒否する」との文言が含まれていると報じたが、実際の声明(http://all4syria.info/Archive/78671)にはこうした文言はない。

会合に先立って、ジョン・ケリー米国務長官に同行する米高官は、米国はシリア革命反体制勢力国民連立や自由シリア軍参謀委員会など、穏健な反体制勢力に対して、非殺傷兵器などを追加供与する意思があると述べた。

また自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長は記者団に「対話を通じた政権との問題解決はなく、武力以外による問題解決はない」と述べた。

一方、ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣は「シリアの反体制勢力は過激なテロ勢力から距離を置かねばならない…。ドイツは反体制武装集団への武器増強に疑義を呈している」と述べた。

20日晩、ケリー米国務長官、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・マアーッズ・ハティーブ議長が共同記者会見を開き、6時間にわたる会合の内容について明らかにした。

ケリー米国務長官は、共同記者会見で、米国がシリアの反体制勢力に1億2,300万ドルの追加支援を行い、支援総額を2億5,000万ドルに倍増させることを明らかにした。

支援内容の詳細に関して、ケリー米国務長官は「食料品、医薬品、非殺傷装備など」と述べ、明言を避けた。

また反体制勢力へのすべての支援を、自由シリア軍参謀委員会(最高軍事評議会)を経由して行うことを確認したことを明らかにした。

さらにケリー米国務長官は、シリア革命反体制勢力国民連立から「シリアの未来のビジョンを表した…重要な文書」を受け取ったとしたうえで、その文書で連立が、マイノリティの権利を保障した多元主義、テロや過激主義の拒否、政治的解決の優先を誓約していると強調した。

ケリー国務長官によると、この文書で、シリア革命反体制勢力国民連立は「すべてのマイノリティが自らの権利を享受し、将来の選択に参加する多元的シリアを樹立」することを誓約したという。

またシリア革命反体制勢力国民連立は「テロ、過激主義を拒否し、化学兵器を使用せず、いかなる宗派に対しても復讐を行わず、誤った勢力に武器を渡さない」ことを遵守し、「政治的解決を優先」すると宣言したのだという。

しかし、実際の文書(要望、http://all4syria.info/Archive/78671)にはこうした誓約は明記されておらず、ケリー国防長官の発言からはシリア革命反体制勢力国民連立が強硬姿勢の変更を余儀なくされたことを伺い知ることができる。

なおケリー国務長官は、シリアのとも連絡グループ会合の閉幕時に採択された声明で、シリア革命反体制勢力国民連立が「ジュネーブ合意の枠組みに基づいて…シリア危機を解決するための交渉のテーブルにつくことを支持した」と述べ、連立に政権との交渉するよう圧力をかけたことを暗示する一方、「シリア政府がこの機会を拒否すれば、我々は(反体制勢力への)さらなる支援を発表する」と警告した。

これに関して、『ハヤート』(4月22日付)は、複数の反体制消息筋の話として、米国が反体制勢力に対してすべての支援を自由シリア軍参謀委員会経由で行うことを通知し、「過激派の孤立化」をめざすとともに、「軍事的な政権打倒ではなく、現地でのパワーバランスを変更すること」を狙っていると報じた。

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アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は、国連安保理に対して、シリアでの暴力停止に向けて、統一した姿勢をとるよう呼びかけた。

AFP(4月20日付)が報じた。

AFP, April 20, 2013、Akhbār al-Sharq, April 20, 2013、al-Ḥayāt, April 21, 2013, April 22, 2013、Hawarnews, April 20, 2013、Kull-nā Shurakā’,
April 20, 2013、Kurdonline, April 20, 2013、MENA, April 20, 2013、Naharnet,
April 20, 2013、NNA, April 20, 2013、Reuters, April 20, 2013, April 21, 2013、SANA,
April 20, 2013、UPI, April 20, 2013などをもとに作成。

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