アサド大統領はオランダのテレビ局とのインタビューで、欧米諸国が即時退任要求を取り下げ、政治移行プロセスにおける残留を認めたことに関して、冗談交じりに「私は荷物をまとめて、去らなければならないと思っていた。だが、今はとどまることができる。ただ、彼らが何を言おうと関係ない」と発言(2015年12月17日)

アサド大統領はオランダのダッチNPO2テレビの単独インタビューに応じた。

インタビュー映像は大統領府がYoutube(https://youtu.be/Cpmgh6xzpSw)を通じて公開、また英文全文およびアラビア語全訳はSANA(http://sana.sy/en/?p=64343http://www.sana.sy/?p=313821)が配信した。

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, December 17, 2015

SANA, December 17, 2015

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「大多数の国民は、政治的な立場を異にしてはいるが政府を支持している。彼らは依然としてシリアの統合、そして多様性のある一つの社会としての社会統合を支持している」。

(難民の多くがシリア政府の弾圧で国を去ったことに関して)「シリア政府の監督・支援のもとに暮らしているテロリスト、過激派、あるいは民兵…の家族もある。彼らはなぜシリアを去らなかったのだ?」

「国民を拷問…、攻撃、殺害し、なおかつ世界で最も強い西欧諸国やもっとも裕福な湾岸諸国、さらにはトルコといった国の敵意に曝されているのなか…、国民の支持がなくしてなぜ5年近くも(体制が)持ちこたえられようか? 国民を拷問して、国民の支持をどのように得られるのか? つまり実際に過ちがあったとしても、そうしたことはどこでも起こり得たろう…とくに戦争においては、個人による過ちは起こり得る。混乱のなか…そうしたことは排除し得ない。しかしこの手の誤り(拷問)が起こることは、国民を拷問する政策を行うこととは異なっている」。

(HRWなどによる人権侵害についての報告について)「政治化している…。こうした報告は…カタールがするような話に基づいている。多くの報告がカタール、サウジアラビアの資金援助のもとに発表されているが、こうしたことには何の意味もない。調査をしたいのであれば、シリアに来ればいい」。

「テロリストと戦うということはどういう意味か? ダーイシュ(イスラーム国)がここにいるという理由だけで戦うのか? その影響があなたの地域(西欧)に及ぶことを恐れているからか? もし動機が恐怖にあり…、価値観に基づかないのなら、我々は(西欧の)同盟者ではない…。テロとの戦いとは原理原則に関わる問題であるべきだ…。テロとの戦いは持続的な原理に基づくべきだ。そうすることで我々は同盟者となり得る」。

「有志連合の空爆はおそらくは見せ掛け(ショー)だ…。しかし現実において、何の役にも立っていない…それは違法だ。国際法に反している。我々は主権国家だ。もし真剣にテロとの戦いを行うのであれば、シリア政府に「テロとの戦いで協力しよう」と呼びかけることを何が妨げているのか? 唯一の妨げとは、西欧の対シリア政策が「この国、あの大統領を孤立させる必要があるので、彼と取引できない」という姿勢に基づいていることだ」。

「欧州の政府のなかには、テロに関してある種の協力、すなわち治安面での協力を行おうとして、諜報機関を派遣した国もある…。もちろん、我々はそうした要請を拒否した」。

「誰が(大統領の座に)とどまるべきかどうかを言えるのはシリア国民だけだ。シリア国民が私にとどまって欲しくないのなら、私は今日にでもすぐに退任しなければならない」。

「欧州、トルコ、サウジアラビア、カタールといった国々はさまざまなかたちでテロリストを支援している」。

(「アサドは退陣しなければならない」と主張してきた米国が「すぐでなくともいい」と言うようになり、またフランスも「シリア大統領は解決策の一部だ」と述べ、態度を軟化させていることに関して、冗談まじりに)「そう言ってくれた彼らに感謝したい。私は荷物をまとめて、去らなければならないと思っていた。だが、今はとどまることができる。ただ、彼らが何を言おうと関係ない…。これはシリア人の問題だからだ」。

「彼ら(欧米諸国)がシリアの問題を真剣に解決したいのなら…、彼らはトルコ経由でのテロリストの流れを止め、資金や武器兵站支援を止めねばならない」。

「我々は現実主義的でありプラグマティックでもあるので、武装集団・組織とも交渉してきた。我々は彼らが合法的だとはみなしていないが…、シリアの未来について交渉している。我々は…彼らが日常生活に戻り、武器を捨て、恩赦の対象となるために交渉してきた…。これこそが現場で今行われている真の問題解決だ。それは各地で進行中だ」。

「我々は問題解決を支援したいと考えているすべての人と対話をしている…。しかし欧米のどの国も対話の用意ができていない」。

(2011年に起こったような反体制抗議デモが再び起きたら、どのように対処するか、との問いに対して)「もし同じことが起こり、人々が警官を殺害したら、我々は対処しなければならない。それが政府としての仕事だ」。

(紛争で無実の人が死んでいることに関して責任を感じるか、との問いに対して)「私自身が判断はできない。なぜなら自分自身について客観的に話すことはできないからだ。つまり、大統領が充分対応できているかどうかはシリア国民が言う問題だ」。

「(シリアの混乱に)関与する国がテロリストの流れを止め、兵站支援を止めるために真剣な対応をすれば、紛争が1年以内に終わることを保証できる」。

AFP, December 17, 2015、AP, December 17, 2015、ARA News, December 17, 2015、Champress, December 17, 2015、al-Hayat, December 18, 2015、Iraqi News, December 17, 2015、Kull-na Shuraka’, December 17, 2015、al-Mada Press, December 17, 2015、Naharnet, December 17, 2015、NNA, December 17, 2015、Reuters, December 17, 2015、SANA, December 17, 2015、UPI, December 17, 2015などをもとに作成。

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