アレッポ県でロシア軍、有志連合がそれぞれYPG主体のシリア民主軍を爆撃支援、これに対してダーイシュ(イスラーム国)はトルコマン人の村を制圧(2015年12月28日)

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アフリーン市郊外(米トルコが設置合意した「安全地帯」の西端)のマーリキーヤ村、シャワーリガ村一帯で、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が、シャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦した。

戦闘のさなか、ロシア軍と思われる戦闘機がシャワーリガ村一帯、アアザーズ市近郊のファイサル製粉工場一帯を空爆し、シリア民主軍を支援し、シリア民主軍はシャワーリガ村、マーリーヤ村を制圧した。

なおこの戦闘を受け、マーリア作戦司令室声明を出し、シリア民主軍を構成する人民防衛隊、革命家軍との停戦を破棄すると発表した。

一方、ARA News(12月28日付)によると、シャームの民のヌスラ戦線と、サウジアラビアなどが支援するアル=カーイダ系組織のシャーム自由人イスラーム運動が、西クルディスタン移行期民政局アフリーン地区の中心都市アフリーン市を砲撃した。

また、ヌスラ戦線は、アレッポ市シャイフ・マクスード地区からアフリーン市に向かっていた旅客バス5台をアアザーズ市近郊のマアッルスィッタト・ハーン村検問所で拘束した。

乗っていた住民(クルド人)の消息は不明。

他方、マンビジュ市南東部にティシュリーン・ダム(ユーフラテス川)に近いサカーウィヤ村一帯に対して、有志連合と思われる戦闘機が空爆を行い、ユーフラテス川西岸に進軍し、ダーイシュと交戦を続けるシリア民主軍を支援した。

シリア民主軍は米国が支援する組織。

なお、ロシア軍と有志連合によるシリア民主軍への航空支援を受け、トルコのアフメト・ダウトオール首相は「シリア情勢は極めて流動的だ…。現在の情報からすると、ユーフラテス川を越えた集団はアラブ人で、クルド人部隊ではない」と述べ、ユーフラテス川西岸で進軍を続けるシリア民主軍が人民防衛隊を主体としていないとみなした。

トルコ政府は、人民防衛隊がユーフラテス川西岸に進軍することは許されないとの立場を示してきた。

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア民主軍の西進を受け、マンビジュ市およびその一帯から、ダーイシュの外国人戦闘員とその家族約300人が、ダーイシュの中心拠点であるラッカ市内に集団避難した。

同じく、アレッポ県では、シリア人権監視団によると、県北部(米トルコ政府が設置合意した「安全地帯」)のドゥーディヤーン村一帯で、反体制武装集団とダーイシュ(イスラーム国)が交戦した。

反体制武装集団は同地を一時制圧したが、ほどなくダーイシュがこれを奪還したという。

ドゥーディヤーン村は、トルコ国境に近く、クルド人とトルクメン人(トルコ系住民)が多く住む。

また、クッルナー・シュラカー(12月28日付)によると、ダーイシュは、ドゥーディヤーン村に加えて、トルクメン人が多く暮らすカズル村、カッラ・クーバリー村を制圧した。

AFP, December 28, 2015、AP, December 28, 2015、ARA News, December 28, 2015、Champress, December 28, 2015、al-Hayat, December 29, 2015、Iraqi News, December 28, 2015、Kull-na Shuraka’, December 28, 2015、December 29, 2015、al-Mada Press, December 28, 2015、Naharnet, December 28, 2015、NNA, December 28, 2015、Reuters, December 28, 2015、SANA, December 28, 2015、UPI, December 28, 2015などをもとに作成。

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