米国がシリア国内で軍事作戦(2014年8月20日)

『ニューヨーク・タイムズ』(8月20日付)は、米国が、ダーイシュ(イスラーム国)によって拉致された人質を救出するための極秘作戦を実施したが、失敗していたと報じた。

この極秘作戦は、バラク・オバマ米大統領の承認のもと、7月上旬に米陸軍特殊部隊(デルタフォース)の隊員約20人によって実施され、同部隊はシリア国内の「人里離れた地域」にヘリコプターで降下し、人質救出を試みたという。

しかし、ダーイシュが人質を監禁していたとされる場所に、人質はいなかったという。

これに関して、国防総省交換は、「なぜ彼ら(人質)が移動したのか分からない」としたうえで人質が移されてから「数時間、ないしは1日か2日」しか経っていなかったとの見方を示した。

なお救出しようとしていた人質のなかには、ダーイシュによって処刑されたジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏も含まれていたという。

また、リサ・モナコ米大統領補佐官は、オバマ大統領が「人質が危険な状態にある」と判断し、この作戦を承認したことを明らかにした。

The New York Times, August 20, 2014などをもとに作成。

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イスラーム国(ダーイシュ)をめぐる動き(2014年8月20日)

シリア国内の動き

ラッカ県では、シリア人権監視団によると、同県におけるシリア軍最後の一大拠点のタブカ航空基地に対して、19日深夜からダーイシュ(イスラーム国)が重火器などを使用して攻撃を行い、飛行場周辺でシリア軍、国防隊と交戦した。

これに対して、シリア軍は20日、13回にわたり飛行場周辺およびタブカ市のダーイシュ拠点を空爆した。

この戦闘で、ダーイシュ戦闘員少なくとも5人が死亡した。

シリア軍はまたタブカ市近郊のサフサーフ村を空爆、砲撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)が占拠するアフタリーン市、バーブ市各所をシリア軍が空爆した。

またイスラーム戦線タウヒード旅団の拠点であるマーリア市入り口では、ダーイシュとジハード主義武装集団が交戦した。

『ハヤート』(8月21日付)によると、ダーイシュは、タブカ航空基地に対する重火器での攻撃に先立ち、ウマル・シーシャーニー司令官の指揮のもと、同飛行場入り口で自爆攻撃を開始し、

一方、SANA(8月20日付)によると、ダーイシュ(イスラーム国)が占拠するマンビジュ市、サーリヒーンで、シリア軍が追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

このほか、ARA News(8月21日付)によると、ダーイシュ(イスラーム国)がマンビジュ市で、クルド人医師のアーザード・ワーリー氏を拉致した。

イラク国内の動き

ニナワ県では、モスル市住民によると、イラク軍戦闘機が、住民に対してダーイシュ(イスラーム国)掃討のための協力を呼びかけるビラを散布した。

またイラク軍は、同市北部にあるダーイシュ拠点を空爆した。

マダー・プレス(8月20日付)が伝えた。

almadapress, August 20, 2014
almadapress, August 20, 2014

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アンバール県では、アンバール作戦司令室筋によると、米軍戦闘機がラマーディー市西部のハディーサ郡にあるダーイシュ(イスラーム国)の拠点複数カ所に対して空爆を行った。

またハディーサ郡知事によると、イラク軍、警察、部族民兵の合同部隊がバラーウィナ郡入り口にあるダーイシュ拠点を攻撃し、ダーイシュ戦闘員17人を殲滅した。

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サラーフッディーン県では、サラーフッディーン作戦司令室筋によると、イラク軍戦闘機がティクリート市内にあるダーイシュ(イスラーム国)の拠点複数カ所を空爆した。

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ディヤラ県では、県警察によると、ヤアクーバ市北東部のジャズィーラ地区で、警察部隊とダーイシュ(イスラーム国)が交戦し、ダーイシュのミクダーディーヤ郡のアミールを名乗るカイラーン・ミクダーディー氏が殺害された。

またイラク軍はカラ・ティバ村一帯を空爆し、ダーイシュ戦闘員4人を殺害した。

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バービル県では、県治安筋によると、ジュルフ・サフル地方に対するイラク軍の空爆で、ダーイシュ(イスラーム国)戦闘員10人が死亡した。

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キルクーク県では、フワイジャ郡の覚醒評議会筋によると、フワイジャ郡サフラ村近郊でダーイシュ(イスラーム国)の幹部の一人ターリク・アブドゥッラー氏の車に仕掛けられた爆弾が爆発し、アブドゥッラー氏が負傷した。

諸外国の動き

ダーイシュ(イスラーム国)による米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏処刑を撮した映像に関して、米国家安全保障会議(NSC)のケイトリン・ヘイデン報道官は、米情報機関による分析の結果、映像が本物であるとの結論に達したとの声明を出した。

AFP, August 20, 2014、AP, August 20, 2014、ARA News, August 20, 2014、August 22, 2014、Champress, August 20, 2014、al-Hayat, August 21, 2014、Kull-na Shuraka’, August 20, 2014、al-Mada Press, August 20, 2014、Naharnet, August 20, 2014、NNA, August 20, 2014、Reuters, August 20, 2014、SANA, August 20, 2014、UPI, August 20, 2014などをもとに作成。

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シリア国内の暴力(2014年8月20日)

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、フライターン市をシリア軍が空爆した。

一方、SANA(8月20日付)によると、アレッポ市ジャンドゥール地区、シャイフ・ヒドル地区、スッカリー地区、アルド・マッラーフ地区、サルジュ・ファーリア村、サミーリーヤ村、ハージブ町、クナイトラート村、ウンム・クラー町、トゥライディム村で、シリア軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カフルバトナー町郊外をシリア軍が空爆、またムライハ市近郊、ザブディーン村郊外で、シリア軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員がジハード主義武装集団と交戦した。

一方、SANA(8月20日付)によると、ハーン・シャイフ・キャンプ郊外で、シリア軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市各所、カフルナブル市をシリア軍が空爆し、女児1人を含む10人以上が死亡した。

一方、SANA(8月20日付)によると、カフルシャッラーヤー村周辺で、シリア軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、スマート・ニュース(8月20日付)によると、「自由シリア軍」(ジハード主義武装集団)がシリア軍との交戦の末、クバイバート村を制圧した。

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ヒムス県では、SANA(8月20日付)によると、ヒムス市ワアル地区、スルターニーヤ地区、ラッフーム村、シャンダーヒーヤ村、ムシャイリファ村、ラスタン市、カフルラーハー市、タッルドゥー市、クナイトラート村、アーミラート村、ウンム・シャルシューフ村で、シリア軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(8月20日付)によると、ラジャート高原、アトマーン村周辺、タッル・ムタウワク東部、インヒル市、タイバ町、ジャービヤ丘東部、サムリーン村、ザアタル丘、スラヤー村・ジャースィム市・ブルカ村街道で、シリア軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(8月20日付)によると、西サムダーニーヤ村、ウンム・バーティナ村、ルワイシュナ村、マムティナ村で、シリア軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(8月20日付)によると、カトフ・ルンマーン村、ズワイク町、ダグマシュリーヤ村、サーキヤト・カルト村で、シリア軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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SANA(8月20日付)によると、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、ヒムス県、クナイトラ県、イドリブ県、ラタキア県、ハマー県、スワイダー県、アレッポ県、ラッカ県、ハサカ県で、地元和解プロセスの一環で当局に投降していた反体制武装集団元メンバー379人が、放免となり釈放された。

AFP, August 20, 2014、AP, August 20, 2014、ARA News, August 20, 2014、Champress, August 20, 2014、al-Hayat, August 21, 2014、Kull-na Shuraka’, August 20, 2014、al-Mada Press, August 20, 2014、Naharnet, August 20, 2014、NNA, August 20, 2014、Reuters, August 20, 2014、SANA, August 20, 2014、SMART News, August 20, 2014、UPI, August 20, 2014などをもとに作成。

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シリア政府の動き(2014年8月20日)

JBCニュース(8月20日付)は、「自由シリア軍」が中国製携帯式防空システム飞弩-6(FN-6)を入手し、シリア軍のMiG35戦闘機、Su7戦闘機、さらには「すべてのヘリコプター」の撃墜に使用されていることに関して、シリア政府、さらにはロシア、イラン政府が中国への怒りを露わにしていると報じた。

しかし、同報道によると、中国国防部は、「自由シリア軍」への飞弩-6(FN-6)の直接供与を否定している、という。

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クッルナー・シュラカー(8月20日付)は、バアス党シリア地域指導部のヒラール・ヒラール副書記長ら党幹部らのハサカ市訪問(17日、https://syriaarabspring.info/wp/?p=12086)に先立って、西クルディスタン移行期民政局の使節団が首都ダマスカスを訪問し、アサド大統領本人と会談、民政局による自治を承認するよう求めていた、と報じた。

バアス党筋によると、ハサカ市を訪れたバアス党幹部も、同地で西クルディスタン移行期民政局の代表らと会談し、ハサカ市の治安状況などについて意見を交わし、その際、西クルディスタン移行期民政局が自治承認に固執すれば、シリア政府はハサカ市を放棄し、ダーイシュ(イスラーム国)に同市を明け渡すと脅迫したという。

AFP, August 20, 2014、AP, August 20, 2014、ARA News, August 20, 2014、Champress, August 20, 2014、al-Hayat, August 21, 2014、JBC News, August 20, 2014、Kull-na Shuraka’, August 20, 2014、al-Mada Press, August 20, 2014、Naharnet, August 20, 2014、NNA, August 20, 2014、Reuters, August 20, 2014、SANA, August 20, 2014、UPI, August 20, 2014などをもとに作成。

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クルド民族主義勢力の動き(2014年8月20日)

ARA News(8月20日付)は、ハサカ県カーミシュリー市空港職員の話として、野党(クルド人政党)の国民青年公正成長党のバルウィーン・イブラーヒーム書記長が、ダマスカス大学、ティシュリーン大学(ラタキア市)での学期末試験開始に先立って、ハサカ県の学生400人にカーミシュリー空港からダマスカス国際空港、殉教者バースィル・アサド国際空港(ラタキア県)などへの航空チケットを支給していた、と報じた。

航空チケット支給は、治安機関の支援のもとに行われていたという。

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ARA News(8月20日付)は、アレッポ県アフリーン市の西クルディスタン移行期民政局アサーイシュが、6月に拘束していたシリア・クルディスタン民主党のフサイン・アイビシュ氏を釈放した。

AFP, August 20, 2014、AP, August 20, 2014、ARA News, August 20, 2014、Champress, August 20, 2014、al-Hayat, August 21, 2014、Kull-na Shuraka’, August 20, 2014、al-Mada Press, August 20, 2014、Naharnet, August 20, 2014、NNA, August 20, 2014、Reuters, August 20, 2014、SANA, August 20, 2014、UPI, August 20, 2014などをもとに作成。

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シリア反体制勢力の動き(2014年8月20日)

ダマスカス県のジャウバル区で活動する複数の活動家は、2013年8月21日のダマスカス郊外県グータ地方での化学兵器使用事件発生から1年目となる数時間前(20日)に、シリア軍がジャウバル区で塩素ガスを使用し、5人が死亡、住民多数が呼吸困難などの症状を訴えたと吹聴した。

クッルナー・シュラカー(8月20日付)が伝えた。

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クッルナー・シュラカー(8月20日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー前代表と民主統一党が19日、ハサカ市の治安および住民保護のための相互理解を深め、双方の捕虜・逮捕者を解放することで合意した、と報じた。

同報道は、ハサカ市のアラブ人、クルド人、アッシリア教徒、シリア正教徒、トルクメン人、アルメニア人、ヤズィード教徒、チェチェン人といった社会集団の利益のためになされた合意だが、ジャルバー前議長が何を代表しているかは不明。

AFP, August 20, 2014、AP, August 20, 2014、ARA News, August 20, 2014、Champress, August 20, 2014、al-Hayat, August 21, 2014、Kull-na Shuraka’, August 20, 2014、al-Mada Press, August 20, 2014、Naharnet, August 20, 2014、NNA, August 20, 2014、Reuters, August 20, 2014、SANA, August 20, 2014、UPI, August 20, 2014などをもとに作成。

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シリアで日本人が拉致(続報、2014年8月20日)

『読売新聞』(8月19日夕刊、20日朝刊)、NHK(8月19、20日付)などは、アレッポ県北部でダーイシュ(イスラーム国)に拉致されたとされる日本人男性と現地で行動をともにしていたというイスラーム戦線メンバーが、男性の所持品などをシリア国内とされる場所で預かっていることを明らかにしたと報じ、『読売新聞』はこの男性のパスポートなどの写真を掲載した。

預かっている所持品のなかには、パスポートのほか、携帯電話、衣服などが含まれており、パスポートには「湯川遙菜」と記され、7月27日付の成田空港の出国印が押されていることが確認できるという。

このイスラーム戦線メンバーによると、この男性は、トルコのイスタンブールからガジアンテップ市を経由して、キリス国境通行所からシリア(バーブ・サラーマ国境通行所)に不法入国したという。

この男性が携帯していた武器は、メンバーが護身用に渡したもので、彼自身は戦闘には参加していないという。

またこのメンバーによると、イスラーム戦線は、捕虜交換を条件としてこの男性を解放するようダーイシュに対して文書や無線で呼びかけているが、ダーイシュ側からの返答はないという。

NHK, August 19, 2014、August 20, 2014、読売新聞2014年8月19日、20日などをもとに作成。

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