最新論考「アサド政権を利する「イスラム国」の台頭:欧米の無力、さらに露呈」(e-World Premium)

青山弘之「アサド政権を利する「イスラム国」台頭:欧米の無力、さらに露呈」

e-World Premium, Vol. 7, 2014年8月、pp. 28-32

■対アサドでアルカイダを黙認した欧米
■既存武装集団の離合集散促す
■欧米諸国に軍事解決認めさせるメッセージ
アルカイダ系過激組織「イスラム国」の攻勢は、イラクの民主政治が宗派主義的プロパガンダにもろいことを白日の下にさらしたが、シリアにおいては、民主化や人道保護の名の下にテロを黙認してきた欧米諸国の干渉政策の失敗を象徴する出来事として捉えることができる。・・・

イスラーム国(ダーイシュ)をめぐる動き(2014年8月1日)

シリア国内の動き

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、アブー・ハルドゥーブ村でダーイシュ(イスラーム国)が部族の民兵と交戦し、女性1人を含む住民・民兵7人が死亡、ダーイシュ戦闘員多数が負傷した。

またティヤーナ村で何者かがダーイシュの広報活動家に手榴弾を投げ込んだ。

一方、ダイル・ザウル市では、ダーイシュがタキーヤト・ナクシュバンディー・モスク、タキーヤト・シャイフ・アブドゥッラー・モスクを閉鎖した。シリア人権監視団によると、ダーイシュは両モスクの爆破を計画しているという。

他方、クッルナー・シュラカー(8月1日付)は、ダーイシュの広報活動家の一人がツイッターで、ダーイシュのアミールの一人でアブー・アリー・シュアイティーを名乗る活動家が「ダイル・ザウルの覚醒評議会」(部族民兵のこと)の要撃を受けて死亡したと綴っている、と報じた。

シュアイティー氏は、本名がアブドゥッラッザーク・イーサーで、シリア革命総合委員会メンバーとして活動したのち、アスラ軍を創設し、ヒムス県クサイル市での戦闘に参加し、敗走後はダーイシュに忠誠を誓い、活動を続けていた。

このほか、ダーイシュの司令官らが報道関係者と会談し、カリフ国家の承認、イスラーム国家の承認、「いわゆるイスラーム国」、「ダーイシュ」といった呼称の使用禁止などを現地での報道活動の条件として告知した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ハサカ県南東部にシリア軍と国防隊が進軍し、ハムル村、サラーリーヤ村、ファッラーハ村、マアルーフ村、マクバラ村からダーイシュ(イスラーム国)が撤退、シャッダーディー市方面に後退した。

レバノン国内の動き

7月29日に死亡が捧持されたヒズブッラー司令官のイブラーヒーム・ハーッジ氏の葬儀が生地のベカーア県バアルベック郡カルヤー村で行われ、住民ら多数が参列した。

ハーッジ氏の死に関して、ジャディード(8月1日付)は、同氏がシリアのダマスカス郊外県カラムーン地方での反体制武装集団との戦闘ではなく、イラクでの「聖地防衛」の任務中に戦死したと伝えた。

Naharnet, August 2, 2014
Naharnet, August 2, 2014

イラク国内の動き

サラーフッディーン県では、マダー・プレス(8月1日付)によると、ティクリート市南部のバラド郡ヤスリブ地方をイラク軍が空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)戦闘員27人を殲滅、車輌6両を破壊した。

またダルーイーヤ軍北部では、軍、警察、部族民兵がダーイシュと交戦し、ダーイシュ戦闘員6人を殺害した。

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ニナワ県では、マダー・プレス(8月1日付)によると、モスル市北部のカンディー軍事基地のダーイシュ(イスラーム国)拠点をイラク軍が空爆し、ダーイシュ戦闘員40人を殺害、車輌20両を破壊した。

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アンバール県では、マダー・プレス(8月1日付)によると、ラマーディー市西部のハスファ地方(ハディーサ郡・カーイム郡間)をイラク軍が空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)戦闘員60人を殺害した。

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バービル県では、マダー・プレス(8月1日付)によると、ヒッラ市北部のジュルフ・サフル地方をイラク軍が空爆し、ダーイシュ(イスラーム国)戦闘員30人を殺害した。

諸外国の動き

『ハヤート』(8月2日付)によると、エジプトの宗教関係省は声明を出し、1日に各地で行われた反体制デモに関して、ダーイシュ(イスラーム国)とムスリム同胞団が結託していると断じた。

AFP, August 1, 2014、AP, August 1, 2014、ARA News, August 1, 2014、Champress, August 1, 2014、al-Hayat, August 2, 2014、Kull-na Shuraka’, August 1, 2014、al-Mada Press, August 1, 2014、Naharnet, August 1, 2014、NNA, August 1, 2014、Reuters, August 1, 2014、SANA, August 1, 2014、UPI, August 1, 2014などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

レバノンの動き(2014年8月1日)

NNA(8月1日付)によると、シリア軍戦闘機がベカーア県バアルベック郡アルサール村東部の国境地帯(アジュラム地区、ザムラーニー地区)を空爆、複数人が負傷した。

AFP, August 1, 2014、AP, August 1, 2014、ARA News, August 1, 2014、Champress, August 1, 2014、al-Hayat, August 2, 2014、Kull-na Shuraka’, August 1, 2014、al-Mada Press, August 1, 2014、Naharnet, August 1, 2014、NNA, August 1, 2014、Reuters, August 1, 2014、SANA, August 1, 2014、UPI, August 1, 2014などをもとに作成。

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シリア国内の暴力(2014年8月1日)

ダマスカス郊外県では、『ハヤート』(8月2日付)によると、反体制活動家がSNSを通じてアルバイン市で停戦合意案を発表した。

停戦案は、反体制活動家による重火器・中火器の引き渡し、身柄投降者の身柄の自由、アルバイン市の生活の再建、違反者・指名手配者の身柄引渡・釈放に関する委員会設置、治安維持を目的とした反体制活動家による軽火器携帯、アルバイン市入り口のシリア軍への引き渡し、警察署、市庁の再建、治安当局による逮捕者釈放と反体制活動家による拉致者解放など、を骨子とする。

またシリア人権監視団によると、サクバー市、カフルバトナー町、ドゥーマー市、ハムーリーヤ市、ザマルカー町を軍が空爆し、子供1人を含む4人が死亡した。

一方、SANA(8月1日付)によると、カラムーン地方無人地帯(マシュラファ村郊外)、ザバダーニー市、ダーライヤー市、ムライハ市周辺、ハーン・シャイフ・キャンプ郊外、マガッル・ミール市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ドゥーマー殉教者大隊旅団、イスラーム軍、ジュンドッラー、ハビーブ・ムスタファー旅団の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区で軍と反体制武装集団が交戦した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、マアッルザーフ町、カフハーナ村、ラターミナ町を軍が空爆し、子供3人を含む住民多数が死亡した。

またハマー市郊外のマジュダル検問所、ヒクマ学校検問所一帯で、軍とジハード主義武装集団が交戦し、軍が「樽爆弾」を投下した。

なおラターミナ町への軍の空爆に関して、反体制活動家は軍が毒ガスを使用したと主張した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ハイダリーヤ地区のヌール・モスク近くを軍が「樽爆弾」で空爆、またハムダーニーヤ地区(軍事アカデミー周辺、ヒクマ学校一帯)、ダーヒヤト・アサド地区、ラーシディーン地区で、軍、国防隊が、ムジャーヒディーン軍、ヌールッディーン・ザンキー大隊などと交戦した。

一方、SANA(8月1日付)によると、ハーン・アサル村、ハンダラート・キャンプ、ハイヤーン町、カフルナーハー村、ダーラト・イッザ市、ハナースィル市郊外、アウラム・クブラー町、カフルダーイル村、アレッポ市シャッアール地区、カルム・ジャバル地区、旧市街、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(8月1日付)によると、アトマーン村、ダルアー市バジャービジャ地区、ヨルダン街道周辺、ビラール・ハバシー・モスク周辺などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(8月1日付)によると、ダフラト・シューリー村、バイト・ジン村、ハラシュ・アブー・シャッター村近郊、ハズラジーヤ村、ラスム・アクラア村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(8月1日付)によると、サムアリール村、タッルドゥー市、ワアル村、タルビーサ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、1日晩、シャームの民のヌスラ戦線の「イドリブ地方アミール」を名乗るヤアクーブ・ウマル氏が乗った車に仕掛けられた爆弾がハーン・スブル村の自宅近くで爆発し、ウマル氏が死亡、同乗していた息子2人が負傷した。

一方、SANA(8月1日付)によると、リーハーニーヤ村、マルイヤーン村、ドゥーサ村、バザーブール村、タラフ村、ハミーディーヤ村、サルミーン市、ビンニシュ市、シュグル村、ハッルーズ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

AFP, August 1, 2014、AP, August 1, 2014、ARA News, August 1, 2014、Champress, August 1, 2014、al-Hayat, August 2, 2014、August 3, 3014、Kull-na Shuraka’, August 1, 2014、al-Mada Press, August 1, 2014、Naharnet, August 1, 2014、NNA, August 1, 2014、Reuters, August 1, 2014、SANA, August 1, 2014、UPI, August 1, 2014などをもとに作成。

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シリア反体制勢力の動き(2014年8月1日追記)

シリア人権監視団は、2014年7月の死者数が5,340人にのぼったと発表した。

1ヶ月の死者数としては2011年3月の紛争勃発以降、もっとも多いという。

死者の内訳は、民間人2,224人(うち子供225人、女性140人)、ジハード主義者を含む武装集団戦闘員1,157人、シリア軍兵士961人、人民諸委員会、国防隊、親政権民兵937人、ヒズブッラー戦闘員28人、親政権外国人戦闘員78人、だという。

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アレッポ県で活動する武装集団のイスラーム戦線としての統合(https://syriaarabspring.info/wp/?p=11624)を受けるかたちで、シャームの鷹旅団とイスラーム軍(ザフラーン・アッルーシュ氏)が声明を出し、イスラーム戦線として合併すると発表した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ワアル地区で、地元ウラマーがジハード主義武装集団と、強盗、麻薬密売を犯した武装集団戦闘員を死刑に処することで合意した。

AFP, August 1, 2014、AP, August 1, 2014、ARA News, August 1, 2014、Champress, August 1, 2014、al-Hayat, August 2, 2014、Kull-na Shuraka’, August 1, 2014、al-Mada Press, August 1, 2014、Naharnet, August 1, 2014、NNA, August 1, 2014、Reuters, August 1, 2014、SANA, August 1, 2014、UPI, August 1, 2014などをもとに作成。

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シリア反体制勢力の動き(2014年8月1日)

『ハヤート』(8月1日付)は、イドリブ県でのシャームの民ヌスラ戦線とシリア革命家戦線(ジャマール・マアルーフ司令官)の対立(https://syriaarabspring.info/wp/?p=11666)に関して、イスラーム戦線が和解のための仲介を行っている、と報じた。

同報道によると、イスラーム戦線は、①即時停戦、②捕虜解放、③ヌスラ戦線のハーリム村、ダルクーシュ町、アズマーリーン村、ザンバキー村からの撤退、④シリア革命戦線によるこれらの村への包囲解除、⑤シャリーア法廷のもとでの汚職撲滅の設立とすべての武装勢力の参加、⑥紛争調停のための法務委員会の設置、の6点からなる和解案を示している、という。

al-Hayat, August 1, 2014をもとに作成。

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