米・トルコ両政府がシリア北部に「安全地帯」を設置することで基本合意するも、シリア軍に対する飛行禁止空域の設定、YPGの処遇は不透明(2015年7月27日)

『ワシントン・ポスト』(7月26日付)などによると、米・トルコ両政府は、シリア領内のトルコ国境地帯からダーイシュ(イスラーム国)を排除し、両国の協力のもとに国境地帯に「安全地帯」を設置することで基本合意した。

「安全地帯」は、アレッポ県北東部の一帯に、東西約100キロ、南北約40キロの区域で設定され、トルコ南東部のインジルリク空軍基地から米軍機がこの地域に空爆を行い、ダーイシュを排除し、排除完了後も監視飛行を継続して、ダーイシュの潜入を阻止する計画だという。

また『ニューヨーク・タイムズ』(7月27日付)は、複数の米高官の話として、米政府が、トルコおよびシリアの「穏健な反体制派」とともに、ダーイシュの排除をめざし、トルコ領内に18万人に避難しているとされるシリア人のための避難場所を提供することで合意したと伝えた。

しかし、この「安全地帯」が、シリア軍の進入を阻止するための飛行禁止空域の設置を意味するかは明確ではない。

また、アレッポ県北部、ハサカ県各所で有志連合が空爆によって支援している人民防衛隊がこの「安全地帯」においてどのような処遇を受けるのかも定かではない。

なお、シリア・トルコ国境は全長800キロにおよび、「安全地帯」の設置が予定されているのは、西クルディスタン移行期文民局人民防衛隊主体のユーフラテスの火山作戦司令室が有志連合の航空支援のもとに進軍を続けている一致に限られる。

The Washington Post, July 27, 2015
The Washington Post, July 27, 2015
The New York Times, July 27, 2015
The New York Times, July 27, 2015

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トルコのアフメト・ダウトオール首相は、シリア北部に「安全地帯」を設置することで米国と基本合意に達したことについて「トルコはシリア危機当初から、安全地帯設置の必要を擁護してきた。それは二つの理由によるもので、第1に、シリア人避難民が自分たちの祖国にとどまるのを保障するため、第2に、安全地帯が、テロ集団の進入を阻止するためだ。安全地帯は、シリア政府、そしてテロ集団の攻撃に晒されているシリア人にとって、安全な避難場所となるだろう」と述べた。

また「ダーイシュやシリアのあらゆるテロ集団と戦うため、有志連合に対してトルコの航空基地を開放する」としたうえで、安全地帯が「シリアの反体制派の武装や教練のために利用されるだろう」と付言した。

一方、イラク北部のクルディスタン労働者党(PKK)拠点への空爆については、「この戦争は我々のクルド人ではなく、PKKに対するものだ」と述べた。

ARA News(7月28日付)が伝えた。

AFP, July 28, 2015、AP, July 28, 2015、ARA News, July 28, 2015、Champress, July 28, 2015、The Guardian, July 27, 2015、al-Hayat, July 29, 2015、Iraqi News, July 28, 2015、Kull-na Shuraka’, July 28, 2015、al-Mada Press, July 28, 2015、Naharnet, July 28, 2015、The News York Times, July 27, 2015、NNA, July 28, 2015、Reuters, July 28, 2015、SANA, July 28, 2015、UPI, July 28, 2015、The Washington Post, July 27, 2015などをもとに作成。

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米国務長官がマイケル・ラトニー氏をシリア問題担当特使に任命(2015年7月27日)

ジョン・ケリー米国務長官は声明を出し、ダニエル・ロビンスタイン・シリア問題担当特使の後任として、マイケル・ラトニー氏を新担当特使に任命したと発表した。

AFP(7月28日付)が伝えた。

ARA News, July 28, 2015
ARA News, July 28, 2015

AFP, July 28, 2015、AP, July 28, 2015、ARA News, July 28, 2015、Champress, July 28, 2015、al-Hayat, July 29, 2015、Iraqi News, July 28, 2015、Kull-na Shuraka’, July 28, 2015、al-Mada Press, July 28, 2015、Naharnet, July 28, 2015、NNA, July 28, 2015、Reuters, July 28, 2015、SANA, July 28, 2015、UPI, July 28, 2015などをもとに作成。

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トルコ軍がダーイシュ(イスラーム国)と戦うシリア領内のYPGと自由シリア軍の拠点を重火器で攻撃(2015年7月27日)

アレッポ県では、ARA News(7月27日付)によると、アイン・アラブ市西部のトルコ国境に位置する西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊と自由シリア軍の拠点複数カ所が深夜、トルコ軍の砲撃を受けた。

人民防衛隊のコバネ司令部によると、トルコ軍の攻撃を受けたのは、アイン・アラブ市の西約35キロに位置するズール・マガール村の人民防衛隊と自由シリア軍の拠点で、トルコ軍は迫撃砲、重火器で砲撃を行ってきたという。

クルディスタン労働者党(PKK)に近い複数の消息筋によると、この攻撃で人民防衛隊の戦闘員3人と自由シリア軍戦闘員1人が負傷し、アイン・アラブ市に搬送されたという。

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これに関して、トルコの高官は、匿名を条件にAFP(7月27日付)の取材に応じ、そのなかで、シリアとイラクにおいてトルコが行っている軍事作戦に関して、「トルコの国家安全保障を脅かす脅威の根絶」が目的だとしたうえで、「シリアのダーイシュ(イスラーム国)とトルコのクルディスタン労働者党(PKK)を標的とし…、シリアの西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊は軍事作戦の標的に含まれない」と述べた。

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しかし、『ハヤート』(7月28日付)によると、トルコのメヴリュト・チャヴシュオール外務大臣は、訪問先のポルトガルで、西クルディスタン移行期民政局を主導する民主統一党などシリアのクルド人勢力に関して、「ダーイシュ(イスラーム国)より良いなどということはない。彼らはシリアの領土の統一性のために戦っている訳ではなく、シリアに和平をもたらそうとしている訳でもない。彼らはシリア領内の一部地域を支配したいだけだ…。彼らは1日たりともテロ活動を停止したことなどない」と批判した。

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なお、ARA News(7月27日付)によると、トルコのアフメト・ダウトオール首相は26日のトルコ各社編集者らとの懇談のなかで、シリアおよびイラク領内での軍事活動について「ダーイシュ(イスラーム国)と戦うシリアの反体制派を航空支援することに限定される」と述べたという。

AFP, July 27, 2015、AP, July 27, 2015、ARA News, July 27, 2015、Champress, July 27, 2015、al-Hayat, July 28, 2015、Iraqi News, July 27, 2015、Kull-na Shuraka’, July 27, 2015、al-Mada Press, July 27, 2015、Naharnet, July 27, 2015、NNA, July 27, 2015、Reuters, July 27, 2015、SANA, July 27, 2015、UPI, July 27, 2015などをもとに作成。

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ハサカ市で、シリア軍、YPGによるダーイシュ(イスラーム国)の追撃続く(2015年7月27日)

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ハサカ市南部各所を戦闘機(所属不明)が空爆する一方、シリア軍がズフール地区、西ヌシューワ地区などのダーイシュ(イスラーム国)拠点を砲撃した。

またハサカ市ズフール地区では、シリア軍、国防隊がダーイシュと交戦した。

一方、カーミシュリー市では、爆弾が仕掛けられた車2台が相次いで爆発し、男性1人死亡、7人が負傷した。

爆発はコルニーシュ通り、ガナム市場で発生、西クルディスタン移行期民政局アサーイシュの車輌などが標的となった。

他方、SANA(7月26日付)によると、シリア軍がハサカ市ズフール地区から逃走するダーイシュ(イスラーム国)戦闘員を追撃、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

シリア軍はまた、バースィル交差点、パノラマ交差点の間の街道沿いに位置する建物に立てこもるダーイシュに対して攻撃を加えた。

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ダマスカス郊外県では、SANA(7月26日付)によると、ザバダーニー市郊外(マダーヤー町)の反体制武装集団に対するシリア軍の特殊作戦でにより、ダーイシュ(イスラーム国)の司令官ハリール・マフムード氏ら3人を殺害した。

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ヒムス県では、SANA(7月26日付)によると、タドムル市北部一帯、採石場一帯、ワーディー・アブヤド、シャンダーヒーヤ村で、シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(7月26日付)によると、アイドゥーン村、ウンク・バージーラー村、トゥルール・フムル村、アカシュ村で、シリア軍がダーイシュ(イスラーム国)と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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米中央軍(CENTCOM)は、7月27日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して32回の空爆を行ったと発表した。

このうちシリア領内での空爆は9回におよび、ハサカ市近郊(7回)、アレッポ市近郊(2回)のダーイシュに対して攻撃が行われたという。

AFP, July 27, 2015、AP, July 27, 2015、ARA News, July 27, 2015、Champress, July 27, 2015、al-Hayat, July 28, 2015、Iraqi News, July 27, 2015、Kull-na Shuraka’, July 27, 2015、al-Mada Press, July 27, 2015、Naharnet, July 27, 2015、NNA, July 27, 2015、Reuters, July 27, 2015、SANA, July 27, 2015、UPI, July 27, 2015などをもとに作成。

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首都ダマスカス県ジャウバル地区でシリア軍による攻勢が激化、従軍記者1人が死亡(2015年7月27日)

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区に対して、シリア軍が20回以上の空爆を加える一方、ヒズブッラー戦闘員とともに砲撃を激化させ、同地でジハード主義武装集団と交戦した。

同監視団によると、シリア軍は、ジャウバル区への突入を試みたが、反体制武装集団の反撃を受け、士官2人を含むシリア軍兵士11人が死亡した。

また、イフバーリーヤ・チャンネル(7月27日付)は、この戦闘の最中、国防隊の従軍記者のサーイル・アジュラーニー氏がジャウバル区での戦闘を取材中に、反体制武装集団の砲撃を受け、死亡したと伝えた。

これに関して、ファイラク軍団の広報局は、対空砲でMiG戦闘機を撃墜し、乗っていたパイロットらシリア軍士官3人と、同乗していたアジュラーニー氏を殺害した、と主張した。

一方、SANA(7月26日付)によると、ジャウバル区でシリア軍がシャームの民のヌスラ戦線、イスラーム軍に対して集中攻撃を加え、同地区東部前線のすべての建物を制圧した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダマスカス県ジャウバル区への突入失敗を受け、シリア軍がドゥーマー市、ムカイラビーヤ市、カフルバトナー町などを激しく砲撃し、6人が死亡した。

このうち、ドゥーマー市では、6回にわたるシリア軍の空爆で、少なくとも3人が死亡した。

またバーラー村では、シリア軍と反体制武装集団が交戦した。

このほか、ザバダーニー市に対して、シリア軍は30発にのぼる「樽爆弾」を投下し、第4師団がヒズブッラー戦闘員とともに、ジハード主義武装集団、地元の武装集団と交戦した。

一方、シリア軍はまた、ハムーリーヤ市近郊、アイン・タルマー村西部、ドゥーマー市、ザマルカー町、ハーン・シャイフ・キャンプ一帯、フサイニーヤ町で反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

さらにシリア軍は、レバノンのレジスタンス(ヒズブッラー戦闘員)とともに、ザバダーニー市での作戦を継続し、市内の複数の建物を制圧した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ファトフ軍がシリア政府支配下のフーア市、カファルヤー町を砲撃した。

一方、SANA(7月26日付)によると、シリア軍がアブー・ズフール町、タッル・サラムー村、ハシール村、マジャース村、ハーン・シャイフーン市、ビンニシュ市を空爆し、ファトフ軍の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(7月26日付)によると、ラスタン市、カフルラーハー市、タッルドゥー市、アクラブ丘で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(7月26日付)によると、ジャバーター・ハシャブ村、タルジャナ村、ハドル村、フッリーヤ村で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(7月26日付)によると、ビータール農場北部、ヌアイマ村、サイダー町、ヤードゥーダ村、ハッラーブ・シャフム村、マスミヤ町、西ガーリヤ村、フラーク市西部にある発電所、ダルアー市カラク地区、バジャービジャ地区などで、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(7月26日付)によると、タルディーン村、アイン・ガザール村、ハーラト・バイト・ハサン村、ナフシャバ村などをシリア軍が空爆し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

シリア軍はまた、バイト・アワーン村、ダッラ村、イブリク村でシャームの民のヌスラ戦線と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

AFP, July 27, 2015、AP, July 27, 2015、ARA News, July 27, 2015、Champress, July 27, 2015、al-Hayat, July 28, 2015、al-Ikhbariya, July 27, 2015、Iraqi News, July 27, 2015、Kull-na Shuraka’, July 27, 2015、al-Mada Press, July 27, 2015、Naharnet, July 27, 2015、NNA, July 27, 2015、Reuters, July 27, 2015、SANA, July 27, 2015、UPI, July 27, 2015などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.