ロシア・シリア軍は国連が提供するGPS座標を利用して、医療機関を意図的に爆撃か?(2019年8月19日)

『フォーリン・ポリシー』(8月19日付)は、国連が反体制派支配地域に医療施設のGPS座標をロシア政府と共有していると伝えた。

目的は、ロシア・シリア両軍が「誤爆しないようにするため」だという。

だが、実際にこのシステムは機能しておらず、シリア国内で活動するシリア・米医療協会(SAMS)によると、国連の支援リストに記載されているイドリブ県内に医療施設14カ所が爆撃によって狙われているという。

同誌は「言い換えると、ロシアとシリア政府は爆撃に際して、どこにこれらの施設があるのかを正確に知っていたことになる」とし、国連が提供する情報をもとに、シリア・ロシア軍が国連から得たGPS座標をもとに、医療関連施設を狙っていると暗に疑っている。

AFP, August 22, 2019、ANHA, August 22, 2019、AP, August 22, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 22, 2019、Foreign Policy, August 22, 2019、Reuters, August 22, 2019、SANA, August 22, 2019、SOHR, August 22, 2019、UPI, August 22, 2019などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ロシアのプーチン大統領は、イドリブ県でのシリア軍によるトルコ軍車列爆撃について言及せず(2019年8月19日)

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領は、フランスの首都パリでのエマニュエル・マクロン大統領との会談の冒頭、シリア情勢に言及、「ロシアはイドリブ県でテロリストを殲滅しようとするシリア軍の取り組みを支持する」と述べた。

プーチン大統領はまた「イドリブ県の90%はいわゆる「テロリスト」の支配下にあり、トルコはこの地域を無人偵察機で監視している…。ロシアもイドリブ県から世界の他の地域に戦闘員が移動している動きを監視しているが、これは極めて重大な問題だ」と付言した。

シャーム解放機構、国民解放戦線、イッザ軍などからなる反体制武装集団を支援するためにシリア領内に入ったトルコ軍の車列がシリア軍の爆撃を受けたことについては言及しなかった。

AFP, August 19, 2019、ANHA, August 19, 2019、AP, August 19, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 19, 2019、Reuters, August 19, 2019、SANA, August 19, 2019、SOHR, August 19, 2019、UPI, August 19, 2019などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

トルコ軍の大規模車列がハーン・シャイフーン市方面に向けて南下、シリア軍がこれを爆撃(2019年8月19日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、バーブ・ハワー国境通行所を通じて、トルコ軍の車列がシリア領内に進入し、マアッラト・ヌウマーン市を経由し、アレッポ市とハマー市を結ぶM5高速道路を通って、シリア・ロシア軍の猛攻が続くハーン・シャイフーン市、ハマー県ムーリク市方面に向かった。

車列は、戦車7輌、装甲車6輌を含む車輌25台からなる大規模部隊。

しかし、ANHA(8月19日付)、ドゥラル・シャーミーヤ(8月19日付)などによると、シリア軍戦闘機がマアッラト・ヌウマーン市近郊のマアッル・ハッタート村でこの車列を爆撃し、南下を阻止した。

この爆撃で、車列に随行していた国民解放戦線に所属するシリア・ムスリム同胞団系のシャーム軍団の戦闘員(ムハンマド・フサイン・カースィム氏)が死亡した。

一方、トルコ国防省は声明を出し、「イドリブ第9監視所(ハマー県シール・マガール村)に向かっていた我が軍の車列が爆撃を受け、民間人3人が死亡、12人が負傷した」と発表、「攻撃は…ロシアと我々の合意、協力、対話に反するもので、我々はこれを厳しく非難する」と表明した。

ムーリク市は、近郊にトルコ軍監視所が設置されているが、カフルズィーター市、ラターミナ町、そしてイドリブ県ハーン・シャイフーン市とともにシリア・ロシア軍の猛攻撃を受けており、包囲の危機に直面している。

**

ANHA(8月19日付)が複数の地元筋の情報として伝えたところによると、この爆撃により車列が足止めを食ったことを受け、トルコ軍は別の車列をバーブ・ハワー国境通行所からシリア領内に進入させ、ハーン・シャイフーン市方面に向かわせた。

ドゥラル・シャーミーヤ(8月19日付)によると、トルコ軍の車列は2回にわたり、シリア領内に入り、最初の車列はM5高速道路沿いに新たな監視所を設置し、シリア軍が反体制派の兵站路を遮断しないようにすることが、後続の車列はこれを支援することが目的だったという。

**

シリアの外務在外居住者省の情報筋は、SANA(8月19日付)に対して、トルコ軍車列の進入を「あからさまな主権侵害」と非難した。

また、クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いANHA(8月19日付)は、M5高速道路沿いに新たな監視所を設置する試みが、ロシア、イランとトルコが交わした緊張緩和地帯設置合意に違反するものだと批判した。

**

SANA(8月19日付)やスプートニク・ニュース(8月19日付)は、シリア軍の爆撃を受けた車列が、イドリブ県南部やハマー県北部で活動を続けるシャーム解放機構などの戦闘員らの退路を確保するために進入したとしたうえで、実際にサラーキブ市でシャーム解放機構の戦車2輌を匿ったと伝えた。

AFP, August 19, 2019、ANHA, August 19, 2019、AP, August 19, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 19, 2019、Reuters, August 19, 2019、SANA, August 19, 2019、SOHR, August 19, 2019、Sputnik News, August 19, 2019、UPI, August 19, 2019などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリア軍はイドリブ県南部の反体制派の拠点都市ハーン・シャイフーン市に突入、市内北部と東部の複数の街区を制圧、M5高速道路を寸断(2019年8月19日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯では、シリア・ロシア軍が爆撃を激化させてから110日目を迎えた8月19日、シリア・ロシア軍は同地への攻撃を継続、シャーム解放機構などからなる反体制武装集団と交戦した。

シリア軍戦闘機による爆撃回数は70回を記録、ヘリコプターが「樽爆弾」30発を投下、ロシア軍も50回の爆撃を行った。

またシリア軍の地上部隊による砲撃は600発以上におよんだ。

シリア人権監視団によると、シリア・ロシア軍が緊張緩和地帯への攻撃を激化させた4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より71人(民間人5人(うち女性0人、子供0人)、シリア軍兵士25人、反体制武装集団戦闘員41人)増えて3,663人となった。

うち、950人が民間人(女性172人、子供237人を含む)、1,253人がシリア軍兵士、1,460人が反体制武装集団戦闘員。

**

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍と親政権民兵がハーン・シャイフーン市内への進攻を開始し、シャーム解放機構、国民解放戦線、イッザ軍などらなる「必勝」作戦司令室との激しい交戦の末、市内北部と東部の複数の街区を制圧した。

同地制圧は、反体制武装集団の撤退を受けたものだという。

ムラースィルーン(8月19日付)によると、これにより、シリア軍はアレッポ市とハマー市を結ぶM5高速道路を寸断することに成功した。

シリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機がヒーシュ村、マアッラト・ヌウマーン市、ハーン・シャイフーン市、タマーニア町、マアッルシューリーン村、ハーミディーヤ村、マアッラト・ハルマ村、タフターヤー村、マウカ村、ジャバーラー村に対して爆撃を実施するとともに、ヘリコプターで県南部各所に「樽爆弾」を投下した。

またシリア軍は地上部隊が県南部の戦闘地域を砲撃した。

ロシア軍もヒーシュ村、マアッラト・ヌウマーン市、ダイル・シャルキー村、カフルナブル市、ハーン・シャイフーン市を爆撃した。

**

ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でラターミナ町、カフルズィーター市、ムーリク市に対して爆撃を実施するとともに、地上部隊が県北部および北西部の戦闘地域を砲撃した。

**

ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍地上部隊がカッバーナ村一帯を砲撃した。

ロシア軍もカッバーナ村一帯を爆撃した。

**

ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を36件(アレッポ県13件、ラタキア県20件、イドリブ県3件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を9件(アレッポ県5件、ハマー県4件)確認した。

AFP, August 19, 2019、ANHA, August 19, 2019、AP, August 19, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 19, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, August 19, 2019、Murasilun, August 19, 2019、Reuters, August 19, 2019、SANA, August 19, 2019、SOHR, August 19, 2019、UPI, August 19, 2019などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ダーイシュ・メンバー多数がトルコの支援を受けてアフリーン郡(アレッポ県)で活動する殉教者バドル旅団に合流(2019年8月19日)

クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)に近いANHA(8月19日付)は、トルコの占領下にあるアレッポ県アフリーン市の独自情報筋の話として、ダーイシュ(イスラーム国)のメンバー多数が、トルコの支援を受け、同地で活動する反体制武装集団の一つ殉教者バドル旅団に合流したと伝えた。

殉教者バドル旅団は、ダイル・ザウル県出身者を中心の構成されており、最近まで東部自由人連合に所属していた。

AFP, August 19, 2019、ANHA, August 19, 2019、AP, August 19, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 19, 2019、Reuters, August 19, 2019、SANA, August 19, 2019、SOHR, August 19, 2019、UPI, August 19, 2019などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ロシア難民受入移送居住センター:レバノンから362人、ヨルダンから677人の難民が帰国、避難民8人(うちルクバーン・キャンプからの帰還者0人)が帰宅(2019年8月19日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(8月19日付)を公開し、8月18日に難民1,039人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは362人(うち女性109人、子供185人)、ヨルダンから帰国したのは677人(うち女性203人、子供185人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は362,027人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者114,727人(うち女性34,574人、子ども58,436人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者247,300人(うち女性74,223人、子ども126,111人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 591,307人(うち女性177,455人、子供301,469人)となった。

なお、45カ国で難民登録したシリア人の数は6,634,214人(うち女性1,990,264人、子供3,383,449人)。

**

一方、国内避難民8人が新たに帰宅した。

うち東グータ地方に帰宅したのは0人、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは6人(女性1人、子供4人)、ヒムス県南東グラーブ山の通行所を経由して帰還したのは2人、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は44,757人(うち女性14,416人、子供20,403人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,303,821人(うち女性393,478人、子供659,949人)となった。

なお、グラーブ山通行所を経由して帰還した2人のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は0人だった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, August 19, 2019をもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

トルコ軍はイドリブ県でシリア軍から爆撃を受けた直後、シリア軍ではなくアレッポ県のYPGを砲撃(2019年8月19日)

トルコ国防省は、ツイッターの公式アカウント(https://twitter.com/tcsavunma/)を通じて、声明を出し、車列がシリア軍戦闘機に狙われたこと直後に、アレッポ県北部に設置されているトルコ軍の部隊が、北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるタッル・リフアト市一帯の人民防衛部隊(YPG)の拠点複数カ所を砲撃したと発表した。

この砲撃は、タッル・リフアト市一帯で活動するYPGが「ユーフラテスの盾」地域を攻撃していることへの対抗措置だという。

AFP, August 19, 2019、ANHA, August 19, 2019、AP, August 19, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 19, 2019、Reuters, August 19, 2019、SANA, August 19, 2019、SOHR, August 19, 2019、UPI, August 19, 2019などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.