旧ソ連諸国出身の戦闘員を反体制派支配地域に送り込んできた請負業者マルハマ・タクティカルの司令官がイドリブ県で戦死(2019年8月16日)

ロシアおよび旧ソ連邦諸国出身の戦闘員のシリアへの派遣を請け負うマルハマ・タクティカルはテレグラムのアカウントを通じて声明を出し、イドリブ県南部戦線でのシリア軍との戦闘で、司令官のアブー・サルマーン・ベラルーシー氏が15日に死亡したと発表した。

ベラルーシー氏はかつては「アブー・ラフィーク」の名で知られていたウズベキスタン人ジハード主義者で、マルハマ・タクティカルの創設者でもある。

ベラルーシー氏の戦死を受け、マルハマ・タクティカルはアリー・シーシャーニーなる人物を新司令官に任命したという。

マルハマ・タクティカルは、ベラルーシー氏が2015年に設立した「イスラミスト・ブラックウォーター」などと称される軍事請負業者。

シリアのアル=カーイダともくされるシャーム解放機構(旧シャームの民のヌスラ戦線)と密接なつながりがあり、ロシアや旧ソ連邦諸国の特殊部隊に従軍していた元兵士をシリアに送り込んできた。

AFP, August 17, 2019、ANHA, August 17, 2019、AP, August 17, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 17, 2019、Reuters, August 17, 2019、SANA, August 17, 2019、SOHR, August 17, 2019、UPI, August 17, 2019などをもとに作成。

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シリアの国防副大臣がPKK幹部と会談し、カーミシュリー市(ハサカ県)での治安・軍事措置を調整することで合意(2019年8月16日)

シリア政府寄りのアウカート・シャーム通信(8月16日付)は、シリア政府とクルディスタン労働者党(PKK)がハサカ県のカーミシュリー市でロシアの仲介のもとに会合を行ったと伝えた。

人民防衛隊(YPG)の複数の情報筋によると、会合には、アリー・サーリフ国防副大臣とPKK幹部のサブリ・オクらが出席、北・東シリア自治局における軍事・治安措置の調整が図られたという。

これにより、PKK側はカーミシュリー市近郊のナアマトリー村、同市南東部の国際幹線道路一帯へのシリア軍部隊の展開を認める一方、シリア政府側は、トルコが米国に身柄引き渡しを要求したとされるPKKや民主統一党(PYD)の幹部の身の安全の保障を約束したという。

また、両者の信頼醸成の一環として、YPG戦闘員の負傷者約700人が首都ダマスカスの病院で治療するため、空路で搬送されたという。

両者の再接近は、米国とトルコがシリア北東部に「安全地帯」を設置するための合同作戦センター開設に合意したことを受けたものだという。

AFP, August 17, 2019、ANHA, August 17, 2019、AP, August 17, 2019、Awqat al-Sham, August 16, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 17, 2019、Reuters, August 17, 2019、SANA, August 17, 2019、SOHR, August 17, 2019、UPI, August 17, 2019などをもとに作成。

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トルコのアカル国防大臣「安全地帯設置に向けた米国との合同作戦センターは来週から本格的に活動する」(2019年8月16日)

トルコのフルシ・アカル国防大臣は、軍司令官と随行してシャンルウルファ県の対シリア国境地帯を視察、シリア北東部での「安全地帯」設置のために米国と開設することで合意した合同作戦センターに関して、「来週から本格的に活動が開始される」と述べた。

アナトリア通信(8月16日付)が伝えた。

AFP, August 17, 2019、Anadolu Ajansı, August 16, 2019、ANHA, August 17, 2019、AP, August 17, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 17, 2019、Reuters, August 17, 2019、SANA, August 17, 2019、SOHR, August 17, 2019、UPI, August 17, 2019などをもとに作成。

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シリアのアル=カーイダもトルコ占領地からイドリブ県への反体制派増援部隊の派遣に同意(2019年8月16日)

トルコの支援を受ける国民解放戦線を主導するシリア・ムスリム同胞団系のシャーム軍団法務官(兼国民解放戦線法務局長)のウマル・フザイファ氏は、テレグラムを通じて音声声明を出し、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構がアレッポ県北部からの国民軍の援軍の進入を阻止しているとの一部情報を否定した。

フザイファ氏は「シャーム解放機構と国民軍を含む諸派の指導部の間で合意がなされている」と強調した。

ドゥラル・シャーミーヤ(8月16日付)が伝えた。

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ザマーン・ワスル(8月16日付)も、シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構の幹部の1人(氏名は明らかにされず)が、国民軍増援部隊のイドリブ県への進入を阻止しているとの一部情報を否定していると伝えた。

この幹部は「我々はかこれまでにも、そしてこれからも敵を撃退することに参加する者を阻止したりしない。参加したい者はみな歓迎されている…。(アレッポ県)北部と南部(イドリブ県、ハマー県)の作戦司令室との間には完全なる連携があり、(北部からの)前衛部隊は実際に到着し始めている。展開地をめぐる調整も行われている…。こうした噂の背景には、隊列を引き裂こうとする敵がいる。しかしそんなことはアッラーの助けにより起こらないだろう…。数時間もすれば、国民軍所属第1軍団の精鋭部隊がイドリブ県南部に到着する」と述べた。

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なお、国民軍のユースフ・ハンムード報道官(少佐)は、ドゥラル・シャーミーヤ(8月15日付)の取材に応じ、国民軍司令部と国民解放戦線司令部が会合を開き、「必勝」作戦司令室とともにシリア軍と戦うため、国民軍がイドリブ県、ハマー県に増援部隊を派遣することで合意したことを明らかにしていた。

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国民軍(ないしはシリア国民軍)は、2017年12月30日にシリア革命反体制勢力国民連立傘下の暫定内閣国防省がアレッポ県アアザーズ市の参謀委員会本部での会合で結成を宣言した反体制武装集団の連合体。

会合には、アレッポ県東部および北部で活動するすべての反体制武装集団(「家の者たち」作戦司令室、「ユーフラテスの盾」作戦司令室、ハワール・キリス作戦司令室所属組織)の幹部が参加した。

2017年9月に「ハワール・キリス作戦司令室」が設置した統合司令部がその原型。

統合司令部は「国民軍ブロック」、「スルターン・ムラード・ブロック」、「ナスル・ブロック」の三つに大別され、スルターン・ムラード師団、スルターン・ウスマーン旅団、精鋭軍、北部の鷹旅団、北部旅団、ハムザ旅団、第9師団、第23師団、ジャズィーラ革命家、末裔軍、スルターン・スライマーン・シャー旅団、シャームの鷹旅団、ムウタスィム旅団、特殊任務旅団、シャーム自由人イスラーム運動、イスラーム軍、覚醒師団、東部自由人、第1連隊、第5連隊、アサーラ・ワ・タンミヤ戦線、サマルカンド旅団、ムンタスィル・ビッラー旅団、ムハンマド・ファーティフ旅団、ワッカース旅団、第3旅団が参加していた。

これが、国民軍を構成する三つ軍団、すなわち第1軍団(国民軍)、第2軍団(スルターン・ムラード軍団)、第3軍団(シャーム戦線軍団)となった。

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国民解放戦線は2018年6月に結成された連合体で、シャーム軍団、自由イドリブ軍、第1沿岸師団、第2沿岸師団、第1歩兵師団、第2軍、精鋭軍、ナスル軍、ダーライヤー・イスラーム殉教者旅団、自由旅団、第23師団、シリア解放戦線(シャーム自由人イスラーム運動、ヌールッディーン・ザンキー運動)、シャームの鷹旅団、自由人軍、ダマスカス連合からなる。

2019年1月にイドリブ県を中心とする反体制派支配地域(緊張緩和地帯第1ゾーン)でのシリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構との抗争に敗れ、同機構が同地の軍事・治安権限を掌握すると、主力部隊はアレッポ県西部方面に退去、残留部隊はシャーム解放機構の指揮下に入った。

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「必勝」作戦司令室は、シャーム解放機構、国民解放戦線、そしてドナルド・トランプ前政権の支援を受けた「穏健な反体制派」の一つで、「革命のサヨナキドリ」として知られたアブドゥルバースィト・サールート氏(2019年6月死亡)らも参加していたイッザ軍などが2019年5月2日に結成した連合体。

AFP, August 16, 2019、ANHA, August 16, 2019、AP, August 16, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 16, 2019、Reuters, August 16, 2019、SANA, August 16, 2019、SOHR, August 16, 2019、UPI, August 16, 2019、Zaman al-Wasl, August 16, 2019などをもとに作成。

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スワイダー県でドゥルーズ派の反体制派がシリア軍、ヒズブッラーと交戦、ダルアー県では第4師団兵士2人殺害(2019年8月16日)

スワイダー県では、ドゥルーズ派宗徒からなる反体制組織のシャイフ・カラーマ軍団が、フェイスブックのアカウント(https://www.facebook.com/alkaramaa.99/)を通じて声明を出し、サルハド市近郊で、軍事治安局とヒズブッラーと交戦し、現場で押収した携帯電話や無線の記録から、スワイダー市内で地元の反体制武装集団のメンバーの暗殺を画策しているのを突き止めたと発表した。

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ダルアー県では、ドゥラル・シャーミーヤ(8月16日付)によると、ナフジュ村でシリア軍第4師団の隊員2人が何者かの発砲を受け、死亡した。

また、ドゥラル・シャーミーヤ(8月17日付)によると、アルマー町でシリア政府と反体制派の和解を推し進めてきた大モスクの説教師/礼拝指導者のマフムード・ダーギル氏が何者かに頭を撃たれて死亡した。

AFP, August 16, 2019、ANHA, August 16, 2019、AP, August 16, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 16, 2019、August 17, 2019、Reuters, August 16, 2019、SANA, August 16, 2019、SOHR, August 16, 2019、UPI, August 16, 2019などをもとに作成。

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トルコ軍とその支援を受ける反体制武装集団が北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊を砲撃(2019年8月16日)

アレッポ県では、ANHA(8月16日付)によると、トルコ軍とその支援を受ける反体制武装集団が、北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊のバイナ村(シャッラー村近郊)を砲撃した。

一方、アフリーン解放軍団は声明を出し、トルコ占領下のバーブ市近郊ハズワーン村一帯で15日、トルコ軍とその支援を受ける反体制武装集団の拠点2カ所を攻撃し、ハムザ師団の戦闘員2人を殺害、トルコ軍兵士3人を含む8人を負傷させたと発表した。

AFP, August 16, 2019、ANHA, August 16, 2019、AP, August 16, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 16, 2019、Reuters, August 16, 2019、SANA, August 16, 2019、SOHR, August 16, 2019、UPI, August 16, 2019などをもとに作成。

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シリア・ロシア軍の爆撃でイドリブ県の国内避難民収容所などが狙われ、女性と子供を含む民間人18人、シリア軍兵士22人、反体制派27人が死亡(2019年8月16日)

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯では、シリア・ロシア軍が爆撃を激化させてから107日目を迎えた8月16日、シリア・ロシア軍は同地への攻撃を継続、シャーム解放機構などからなる反体制武装集団と交戦した。

シリア軍戦闘機による爆撃回数は89回を記録、ヘリコプターが「樽爆弾」95発を投下、ロシア軍も44回の爆撃を行った。

またシリア軍の地上部隊による砲撃は1,040発におよんだ。

シリア人権監視団によると、シリア・ロシア軍が緊張緩和地帯への攻撃を激化させた4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より67人(民間人18人(うち女性5人、子供8人)、シリア軍兵士22人、反体制武装集団戦闘員27人)増えて3,385人となった。

うち、908人が民間人(女性170人、子供229人を含む)、1,182人がシリア軍兵士、1,340人が反体制武装集団戦闘員。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でタマーニア町、ハーン・シャイフーン市、ラカーヤー村、カフルサジュナ村、タッル・タルイー村、シャイフ・ムスタファー村、マアッラト・ハルマ村、ヒーシュ村、タフターヤー村、アリーハー市、ジャルジャナーズ町、ガドファ村、マアッルシューリーン村、タッフ村などに対して爆撃を実施するとともに、ヘリコプターでシャイフ・ダーミス村、ヒーシュ村、ハーン・シャイフーン市一帯、シャイフ・ムスタファー村、マアッラト・ハルマ村、ラカーヤー村、ハーミディーヤ村、カフルルーマー村、バスィーダー村などに「樽爆弾」を投下した。

またシリア軍は地上部隊が県南部の戦闘地域を砲撃した。

ロシア軍もヒーシュ村、タマーニア町、カフルサジュナ村、ハーン・シャイフーン市、ラカーヤー村などを爆撃した。

一連の爆撃で、ハーッス村近郊の国内避難民(IDPs)収容所が狙われ、子供6人と女性4人を含む民間人15人が死亡、またシリア軍の砲撃により、アリーハー市では女児1人が、ガドファ村で子供1人が死亡した。

また、負傷者数は50人以上にのぼったという。

一方、シャーム解放機構に近いイバー・ネット(8月16日付)によると、シャーム解放機構、国民解放戦線、イッザ軍などからなる「必勝」作戦司令室が、マダーヤー村一帯でシリア軍と交戦、シャーム解放機構の戦闘員が自爆攻撃などを行った。

https://youtu.be/1IV5KHsU3ME

また、ドゥラル・シャーミーヤ(8月17日付)によると、ハーン・シャイフーン市の名士らが声明を出し、トルコおよび国際社会に対して、ロシア軍の進軍を阻止するよう呼びかけた。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍が戦闘機でムーリク市に対して爆撃を実施するとともに、地上部隊が県北部および北西部の戦闘地域を砲撃した。

ロシア軍もムーリク市、ラトミーン村を爆撃した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍ヘリコプターがカッバーナ村一帯に「樽爆弾」を投下するとともに、地上部隊が同地を砲撃した。

ロシア軍もカッバーナ村一帯を爆撃した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団やSANA(8月16日付)によると、反体制武装集団がアレッポ市のハラブ・ジャディーダ地区、ジャムイーヤト・ザフラー地区を砲撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を31件(アレッポ県14件、イドリブ県1件、ラタキア県13件、ハマー県3件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を15件(イドリブ県4件、ハマー県11件)確認した。

AFP, August 16, 2019、ANHA, August 16, 2019、AP, August 16, 2019、al-Durar al-Shamiya, August 16, 2019、August 17, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, August 16, 2019、Reuters, August 16, 2019、SANA, August 16, 2019、Shabaka Iba’ al-Ikhbariya, August 16, 2019、SOHR, August 16, 2019、UPI, August 16, 2019などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:レバノンから397人、ヨルダンから702人の難民が帰国、避難民4人(うちルクバーン・キャンプからの帰還者0人)が帰宅(2019年8月16日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(8月16日付)を公開し、8月15日に難民1,099人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは397人(うち女性119人、子供202人)、ヨルダンから帰国したのは702人(うち女性211人、子供358人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は359,128人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者113,679人(うち女性34,259人、子ども57,901人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者245,449人(うち女性73,668人、子ども125,167人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 588,408人(うち女性176,585人、子供299,990人)となった。

なお、45カ国で難民登録したシリア人の数は6,634,214人(うち女性1,990,264人、子供3,383,449人)。

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一方、国内避難民4人が新たに帰宅した。

うち東グータ地方に帰宅したのは0人、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山の通行所を経由して帰還したのは4人(うち女性2人、子供1人)、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は44,746人(うち女性14,415人、子供20,399人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,303,811人(うち女性393,477人、子供659,945人)となった。

なお、グラーブ山通行所を経由して帰還した4人のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は0人だった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, August 16, 2019をもとに作成。

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