シリア民主軍はトルコの侵攻を許したシリア政府を批判する一方、侵攻に対抗するために参戦する意思を示す(2020年3月3日)

人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍は声明を出し、トルコによる4度目のシリアへの侵攻作戦である「春の盾」作戦をめぐって、シリア政府を批判する一方、侵攻に対抗するために参戦する意思を示した。

声明のなかで、シリア民主軍は「トルコは緊張緩和地帯にかかる合意に乗じるとともに、アダナ合意を拡大解釈し、シリア北部を制圧し、避難してきた戦闘員を自分たちの兵士を自分たちのアジェンダのために奉仕させている」と非難、「シリアの国家建設と復興のため、バランスのとれた事態収拾に参加する意思がある」と表明した。

一方、民間人を巻き込んだかたちで行われているシリア軍の攻撃についても「シリア国民の悲劇は政権が体系的に行使した暴力という言葉から始まった」としたうえで、「イドリブ県は激戦に直面しており、シリア国民の苦しみが増し、避難の波が拡がっている。シリアを分割しようと地域諸国や諸外国が介入したためだ…。アサド政権は地域や世界の諸勢力のシリア政策に依存しており、主権という概念は、シリア国民や国家を犠牲にして描かれる(諸外国)のアジェンダにシリア人による決定権が従属することで、その価値を失った」と非難した。


AFP, March 3, 2020、ANHA, March 3, 2020、AP, March 3, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 3, 2020、Reuters, March 3, 2020、SANA, March 3, 2020、SOHR, March 3, 2020、UPI, March 3, 2020などをもとに作成。

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エスパー米国務長官が「トルコに対して航空軍事支援は行わない」と発表するなか、ジェフリー米国務省特使とクラフト米国連大使がアレッポ県北部のトルコ占領地を視察(2020年3月3日)

ジェームズ・ジェフリー米国務省シリア問題担当特使とケリー・クラフト米国連大使がトルコから、アレッポ県のバーブ・サラーマ国境通行所を経由して、トルコ占領地域(「ユーフラテスの盾」地域)に入った。

両名には、ホワイト・ヘルメットのメンバーが同行し、国連によるクロスボーダーでの人道支援の活動状況や難民キャンプなどを視察した。

ヘイリー大使は、ツイッターのアカウント(https://twitter.com/usambun)を通じて、「ドナルド・トランプ大統領、マイク・ポンペオ国務長官に代わって、シリア国民との連帯を示すため、トルコ・シリア国境に来ました」、「国連とトルコの高官とのいずれの会合でも、バーブ・ハワーとバーブ・サラーマの国境通行所を国連安保理に維持して欲しいという呼びかけを耳にした」などと綴った。

両名は2日にトルコの首都アンカラに入っていた。

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米国のマーク・エスパー国務長官は報道向け声明を出し、「米国はイドリブ県でトルコに対して航空軍事支援は行わない」と発表した。

AFP, March 3, 2020、ANHA, March 3, 2020、AP, March 3, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 3, 2020、Reuters, March 3, 2020、SANA, March 3, 2020、SOHR, March 3, 2020、UPI, March 3, 2020などをもとに作成。

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ロシア当事者和解調整センター所長「ギリシャに殺到している難民の3分の2はシリア人ではなく、アフガン人、イラク人、アフリカ諸国出身者」(2020年3月3日)

ラタキア県フマイミーム航空基地のシリア駐留ロシア軍司令部に設置されている当事者和解調整センターのオレグ・ジュラフロフ副センター長(少将)は、トルコ政府が欧州への渡航を希望するシリア難民の移動を阻止しないとの方針を決定(2月27日)したことに関して、「トルコの当局は現在、ギリシャとの国境地帯に設置されていた一時避難キャンプに身を寄せていた難民13万人をギリシャに殺到させようとしているが、その3分の2はシリア人ではなく、アフガン人、イラク人、アフリカ諸国出身者だ」と述べた。

RT(3月3日付)が伝えた。

AFP, March 3, 2020、ANHA, March 3, 2020、AP, March 3, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 3, 2020、Reuters, March 3, 2020、RT, March 3, 2020、SANA, March 3, 2020、SOHR, March 3, 2020、UPI, March 3, 2020などをもとに作成。

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トルコ軍と国民軍はアレッポ県マンビジュ市近郊のシリア軍拠点を砲撃(2020年3月3日)

アレッポ県では、ANHA(3月3日付)によると、トルコ軍の支援を受ける国民軍が、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるマンビジュ市北西のウンム・ジャッルード村にある国境通行所を砲撃した。

またトルコ軍が、マンビジュ市西のアラブ・ハサン村一帯に設置されているシリア軍拠点を砲撃した。

一方、シリア人権監視団によると、シリア政府との再和解を拒否していたダルアー県サナマイン市の元反体制武装集団メンバー21人が、シリア政府が用意した大型バスに乗って、トルコ占領下のバーブ市に至る通行所に到着した。

サナマイン市では1日、シリア軍が、戦車などからなる部隊を治安維持のために進駐させようとしたが、地元の武装集団が抵抗し交戦となり、2日に元反体制武装集団メンバーがロシアの仲介でイドリブ県に退去することを政府側と合意していた。

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ハサカ県では、ANHA(3月3日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍がアブー・ラースィーン(ザルカーン)町近郊を砲撃した。

シリア人権監視団によると、国民軍はまた、ラアス・アイン市近郊のタッル・ムハンマド村を砲撃した。

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ラッカ県では、ANHA(3月3日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍がタッル・アブヤド市近郊のカズアリー村、シュルバーニースク村、スライブ村、ハッラーブ・サールーンジュ村を砲撃した。

AFP, March 3, 2020、ANHA, March 3, 2020、AP, March 3, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 3, 2020、Reuters, March 3, 2020、SANA, March 3, 2020、SOHR, March 3, 2020、UPI, March 3, 2020などをもとに作成。

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第3期人民議会選挙の投票日は4月13日に決定(2020年3月3日)

アサド大統領は2020年政令第76号を施行し、第1条で2020年4月13日に第3期人民議会選挙の投票を実施することを決定した。

また、第2条において、各選挙区の定数を発表した。

議席配分は第2期人民議会選挙と同じ。

選挙区 総数 A部門(労働者・農民代表) B部門(その他の人民諸組織代表)
ダマスカス県 29 10 19
ダマスカス郊外県 19 10 9
ヒムス県 23 11 12
ハマー県 22 13 9
アレッポ市 20 7 13
アレッポ県諸地域 32 17 15
イドリブ県 18 12 6
ラタキア県 17 9 8
タルトゥース県 13 6 7
ラッカ県 8 4 4
ダイル・ザウル県 14 8 6
ハサカ県 14 8 6
ダルアー県 10 5 5
スワイダー県 6 4 2
クナイトラ県 5 3 2
250 127 123

AFP, March 3, 2020、ANHA, March 3, 2020、AP, March 3, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 3, 2020、Reuters, March 3, 2020、SANA, March 3, 2020、SOHR, March 3, 2020、UPI, March 3, 2020などをもとに作成。

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首都ダマスカスにある駐シリア・リビア大使館が再開(2020年3月3日)

リビア(リビア国民軍)のアブドゥッラフマーン・ウハイリシュ副首相、アブドゥルハーディー・フワイジュ外務国際関係大臣の訪問を受けて、首都ダマスカスにある駐シリア・リビア大使館が再開された。

SANA(3月3日付)などが伝えた。

AFP, March 3, 2020、ANHA, March 3, 2020、AP, March 3, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 3, 2020、Reuters, March 3, 2020、SANA, March 3, 2020、SOHR, March 3, 2020、UPI, March 3, 2020などをもとに作成。

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トルコ軍がシリア軍戦闘機1機を、シリア軍がトルコ軍ドローン2機を撃墜、シリア軍はサラーキブ市近郊の4カ村を奪還(2020年3月3日)

イドリブ県では、SANA(3月3日付)がシリア軍筋の情報として伝えたところによると、県南部で武装テロ集団に対する任務にあたっていたシリア軍戦闘機1機が11時03分にトルコ軍が発射した地対空ミサイルを被弾し、マアッラト・ヌウマーン市北西に墜落した。


ドゥラル・シャーミーヤ(3月3日付)やシリア人権監視団によると、撃墜されたのは旧チェコスロバキア製のL-39軽攻撃機、攻撃を行ったのはトルコ軍のF-16戦闘機。

シリア人権監視団によると、反体制武装集団が撃墜された戦闘機の乗組員2名の遺体を発見したという。

これを受け、シリア軍は、対抗措置としてトルコ軍のバイラクタルTB2無人航空機(ドローン)2機をサラーキブ市近郊とハーン・スブル村東の上空で撃墜した。

SANAによると、うち1機はサラーキブ市近郊のシリア軍拠点に対して爆撃を加えようとしていたところを撃破したという。

また、シリア軍地上部隊は、ビンニシュ市、サルミーン市、ナイラブ村、ジスル・シュグール市およびその一帯、タルナバ村、マストゥーマ基地を砲撃、タルナバ村とマストゥーマ基地に対する砲撃では、トルコ軍兵士4人が死亡、7人が負傷した。

一方、ロシア軍戦闘機は、サルミーン市、ビンニシュ市、アリーハー市一帯、アーフィス村、サラーキブ市西部郊外一帯を爆撃した。

また、イドリブ市で早朝、大きな爆発が発生し、子ども3人を含む7人が死亡、20人が負傷した。

爆発は、ロシア軍の爆撃か弾道ミサイルによるものだという。

SANAによると、一連の戦闘で、シリア軍は、サラーキブ市近郊のジャウバース村、タルナバ村、ダーディーフ村、カフルバッティーフ村からトルコ軍の支援を受ける「決戦」作戦司令室(シャーム解放機構、国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体)を掃討し、同地を再び制圧した。

https://youtu.be/Fi_rbA0JWAs

対するトルコ軍は、砲兵部隊と無人航空機(ドローン)でサラーキブ市一帯、マアッラト・ヌウマーン市近郊、マアッルディブサ村のシリア軍拠点を攻撃した。

また、戦車や装甲車など60輌からなる増援部隊をカフル・ルースィーン村に違法に設置されている国境通行所からシリア領内に進入させた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がタカード村を爆撃した。

これに対して、トルコ軍は、砲兵部隊とドローンでズィルバ村などを攻撃した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、トルコ軍ドローンが、ジューリーン村北のミールザー砦にあるシリア軍拠点を爆撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を50件(イドリブ県9件、ラタキア県21件、アレッポ県20件、ハマー県0件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を35件(イドリブ県23件、ラタキア県0件、アレッポ県12件、ハマー県0件)確認した。

AFP, March 3, 2020、ANHA, March 3, 2020、AP, March 3, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 3, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, March 3, 2020、Reuters, March 3, 2020、SANA, March 3, 2020、SOHR, March 3, 2020、UPI, March 3, 2020などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民1,009人が新たに帰還、2018年半ば以降帰還した難民は567,963人に(2020年3月3日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(3月3日付)を公開し、3月2日に難民1,009人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは212人(うち女性64人、子供108人)、ヨルダンから帰国したのは797人(うち女性239人、子供406人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は567,963人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者179,551人(うち女性54,263人、子ども91,869人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者388,412人(うち女性116,567人、子ども198,083人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

45カ国で難民登録したシリア人の数は6,580,101人(うち女性1,974,030人、子供3,355,852人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は797,243人(うち女性239,488人、子供406,874人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, March 3, 2020をもとに作成。

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