トルコのエルドアン大統領「イドリブ県内のトルコ軍監視所は維持される」(2020年3月6日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、5日のロシアのヴラジミール・プーチン大統領との会談での停戦合意に関して、「国連安保理決議第2254号に従い、シリアの政治プロセスを活性化し、内戦を終わらせることが目的」だと述べた。

また、シリア国内に設置されているトルコ軍監視所については、「現在の場所で維持され、今のところ、この点に関していかなる変化もない…。シリア政府やテロ組織から攻撃に対して警戒態勢にある」と付言した。
アナトリア通信(3月6日付)が伝えた。

なお、「春の盾」作戦開始と同時に、決定された欧州へのシリア難民の移動阻止解除については変更はないという。

AFP, March 6, 2020、Anadolu Ajansı, March 6, 2020、ANHA, March 6, 2020、AP, March 6, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 6, 2020、Reuters, March 6, 2020、SANA, March 6, 2020、SOHR, March 6, 2020、UPI, March 6, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シャーム解放機構支配下のイドリブ県各所でロシア・トルコの停戦合意を拒否するデモ(2020年3月6日)

イドリブ県では、シリア人権監視団やドゥラル・シャーミーヤ(3月6日付)によると、シャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ市、カフルタハーリーム町、ダルクーシュ町、ハーリム市、カッリー町などで金曜日の集団礼拝の後に抗議デモが行われ、ロシアのヴラジミール・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領による停戦合意拒否、シリア・ロシア軍の侵攻反対、国内避難民(IDPs)の発生非難、体制打倒、反体制武装集団支持、「シリア革命」実現が訴えられた。

https://www.facebook.com/syriahro/posts/10158667137143115

AFP, March 6, 2020、ANHA, March 6, 2020、AP, March 6, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 6, 2020、Reuters, March 6, 2020、SANA, March 6, 2020、SOHR, March 6, 2020、UPI, March 6, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ラッカ県のトルコ占領地で爆弾が仕掛けられていた車が爆発し、トルコ軍兵士3人死亡(2020年3月6日)

ラッカ県では、ドゥラル・シャーミーヤ(3月6日付)が国民軍の司令官の情報として伝えたところによると、トルコの占領下にあるタッル・アブヤド市近郊のダーミシーヤ村の検問所で車に仕掛けられていた爆弾が爆発し、トルコ軍兵士3人が死亡した。

トルコ占領地(「平和の泉」地域)でトルコ軍兵士が爆殺されるのはこれが初めて。

**

ハサカ県では、ANHA(3月6日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍がタッル・タムル市近郊のウンム・カイフ村を砲撃した。

**

アレッポ県では、ANHA(3月6日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊のイルシャーディーヤ村、タート・マーラーシュ村、カフル・アントゥーン村を砲撃した。

AFP, March 6, 2020、ANHA, March 6, 2020、AP, March 6, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 6, 2020、Reuters, March 6, 2020、SANA, March 6, 2020、SOHR, March 6, 2020、UPI, March 6, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

北・東シリア自治局とシリアのクルド民族主義組織31団体が「一部クルド人グループが米国の権威のもとにある」とするアサド大統領の発言を非難(2020年3月6日)

北・東シリア自治局は声明を出し、5日のロシア24でのアサド大統領のインタビューに、トルコの政策と調和しており、その論理はクルド問題解決に資さないと批判した。

北・東シリア自治局は声明で、シリアのクルド問題についての「アサド大統領の発言はシリアの主権を侵害したトルコの政策と調和している」としたうえで、「政権の論理は過去数年にわたり何らの解決策ももたらさなかった。こうした対応に固執することは、問題解決の機会を与えることには資さない。テロ組織やトルコ国家が居座っている占領地で起きていることへの完全なる無知だ」と批判した。

**

シリアのクルド民族主義組織31団体は共同声明を出し、アサド大統領のインタビューに異議を唱えた。

31団体は声明で「9年にわたる殺戮、強制移住、破壊を経ても、バッシャール・アサド大統領はシリア国民を大惨事へと陥れたのと同じ考え方と言葉で話している」と批判したうえで、「シリア北・東部のシリア国民は、アラブ人であれ、クルド人であれ、シリア正教であれ、そのすべてがもともとこの地で暮らしており、現在のシリアという国家の国境が画定される前から共生してきた」と主張した。

また「(シリア国民を構成する)諸集団は、政権によってテロの餌食とされた時も、その愛国心とオーセンティシティゆえに自らの存在と尊厳の防衛にあたり、民主的自治を発展させ、民族的・宗派的に多様なモザイクであるシリアの手本となることができた…。我々はシリア政府が言っているような分割に与することはないと明言する」と強調した。

共同声明を発表したのは以下の組織:

シリア・ムスタクバル党
国民調整委員会・民主変革運動
民主統一党(PYD)
スィルヤーニー連合党
クルディスタン民主平和党
クルディスタン・リベラル連合
クルディスタン共産党
シリア・クルディスタン民主パールティー
クルド・シリア民主党
シリア・クルド左派党
シリアクルド民主左派党
クルディスタン愛国連合党
クルディスタン民主変革党
クルディスタン刷新党
クルディスタン労働連合
アラブ国民委員会
シリア近代民主主義党
クルディスタン緑の党
クルド・シリア民主合意党
シリア・クルド民主統一党(イェキーティー)
シリア改革運動
シリア・クルド民主党(アル・パールティー)
アッシリア民主党
クルディスタン友愛党
シリア・クルド民主ロジャ党
国民自由連合ロジャヴァ
民主連合運動
スィタール会議
民主保守者党
民主闘争党
クルディスタン共和党

**

アサド大統領はインタビューのなかで次のように述べていた。

我々はシリア北部のすべてのクルド人政治グループと連絡をとっている。だが、問題なのは、これらのグループの一部が米国の権威のもとに活動していることだ。我々はクルド人とは言わない。なぜなら、クルド人の大部分は愛国的なグループ・部族で、国家とともにあるからだ。だが、これらのグループは声を出せない。この地域を支配しているのは、米国と共に行動する小さなグループに過ぎない。

シリアにはいわゆるクルド問題はない。理由は簡単だ。クルド人は歴史的にシリアのなかに生きづいているからだ。トルコの弾圧を受けて20世紀にやってきた人々…我々は彼らをシリアに迎え入れた。クルド人やアルメニア教徒らがシリアにやって来たが、問題はなかった…。問題は数十年前から分離主義的なアジェンダを提起するグループにある…。だが、トルコの国家がクルド人に対して弾圧、殺戮を行えば、我々は彼らを支持する。

彼らはシリアで国籍を取得した。もともとシリア人ではなかったのだ。クルド人をめぐってはいつも良いことが生じていた。つまり、いわゆるクルド問題というのは不正確な表現なのだ。

AFP, March 6, 2020、ANHA, March 6, 2020、AP, March 6, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 6, 2020、Reuters, March 6, 2020、SANA, March 6, 2020、SOHR, March 6, 2020、UPI, March 6, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アサド大統領はロシアのプーチン大統領と電話会談し、イドリブ県の停戦に満足の意を表明(2020年3月6日)

シリアのアサド大統領はロシアのヴラジミール・プーチン大統領と電話会談を行い、シリア情勢への進捗について意見を交わしたた。

SANA(3月6日付)によると、会談において、プーチン大統領は、イドリブ県での戦闘での戦果への祝意をアサド大統領に示すとともに、5日のモスクワでのトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領との会談での合意内容について報告した。

これに対して、アサド大統領はロシア・トルコ首脳会談での合意内容に満足していると表明、トルコ側がこれを遵守することで、人道面、社会面、経済面でシリア国民に良い効果がもたらされると伝えたという。

AFP, March 6, 2020、ANHA, March 6, 2020、AP, March 6, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 6, 2020、Reuters, March 6, 2020、SANA, March 6, 2020、SOHR, March 6, 2020、UPI, March 6, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

米国がロシア・トルコによるイドリブ県での停戦合意を支持する国連安保理での声明発表を阻止(2020年3月6日)

ロシアのワシーリー・ネベンジャ国連大使が、5日のモスクワでのヴラジミール・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領によるイドリブ県での停戦合意への支持を表明する声明発表を国連安保理で提案したが、米国が「前例がない」としてこれを拒否した。

AFP(3月6日付)が、複数の外交筋の話として伝えた。

AFP, March 6, 2020、ANHA, March 6, 2020、AP, March 6, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 6, 2020、Reuters, March 6, 2020、SANA, March 6, 2020、SOHR, March 6, 2020、UPI, March 6, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ロシア難民受入移送居住センター:難民755人が新たに帰還、2018年半ば以降帰還した難民は570,237人に(2020年3月6日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(3月6日付)を公開し、3月5日に難民755人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは237人(うち女性72人、子供120人)、ヨルダンから帰国したのは518人(うち女性155人、子供264人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は570,237人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者180,217人(うち女性54,463人、子ども92,208人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者390,020人(うち女性117,049人、子ども198,902人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

45カ国で難民登録したシリア人の数は6,580,101人(うち女性1,974,030人、子供3,355,852人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は799,517人(うち女性240,170人、子供408,032人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, March 6, 2020をもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の停戦合意を受け、シリア軍、ロシア軍、トルコ軍は爆撃を実施せず(2020年3月6日)

英国を拠点に活動する反体制派系NGOのシリア人権監視団は、ロシアのヴラジミール・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領のモスクワでの会談で合意された停戦が5日深夜に発効したのを受けて、6日にはシリア・ロシア軍、トルコ軍による爆撃は確認されなかったと発表した。

しかし、シリア軍は、シャーム解放機構、国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる「決戦」作戦司令室の支配下にあるアレッポ県のタカード村、イドリブ県のファッティーラ村、ハマー県北西部一帯を砲撃した。

また、イドリブ県のザーウィヤ山でシリア軍と中国新疆ウィグル自治区出身者を主体とするトルキスタン・イスラーム党が交戦、シリア軍兵士6人とトルキスタン・イスラーム党メンバー9人が死亡した。

このほか、フライフィル村一帯で、シリア軍と「決戦」作戦司令室が交戦したが、戦闘は数分で収まったという。

一方、シリア駐留ロシア軍司令部が設置されているラタキア県フマイミーム航空基地に向かって飛来する無人航空機(ドローン)を防空部隊(所属は明示せず)が撃墜した。

SANA(3月7日付)によると、飛来したドローンは2機。

このほか、トルコ軍は戦車、装甲車など150輌からなる増援部隊を3度にわたってシリア領内に侵入させた。

**

ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を35件(イドリブ県20件、ラタキア県11件、アレッポ県3件、ハマー県1件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を19件(イドリブ県20件、ラタキア県11件、アレッポ県3件、ハマー県1件)確認した。

AFP, March 6, 2020、ANHA, March 6, 2020、AP, March 6, 2020、al-Durar al-Shamiya, March 6, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, March 6, 2020、Reuters, March 6, 2020、SANA, March 6, 2020、March 7, 2020、SOHR, March 6, 2020、UPI, March 6, 2020などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.