自由シリア軍参謀委員会がイスラーム国による人権侵害を非難するなか、アル=カーイダのザワーヒリー指導者が声明を出しシリア国内で武装闘争に加わるサラフィー主義者たちに対して「邪神との戦いにおいて統合」するよう呼びかけ(2013年10月11日)

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反体制勢力の動き

自由シリア軍参謀委員会のルワイユ・ミクダード政治広報調整官はクッルナー・シュラカー(10月11日付)に「民間人を狙ったあらゆる人権侵害、犯罪を非難する…。我々は人道法を指示しており、殺戮と民間人攻撃を認めるバッシャール・アサドの法を支持しない」と述べた。

ミクダード調整官はまたイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)などによるアラウィー派の村々襲撃と住民の殺害に関しても「(人権)侵害を犯している」と非難した。

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シリア人権監視団は、9日にアレッポ県ハナースィル市近郊のハマーム村で、反体制武装集団に参加していたフランス人サラフィー主義者が自爆テロを行ったと発表した。

このフランス人サラフィー主義者は「アブー・カアカーア」を自称し、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国が同村一帯への攻撃を開始する前に、ハマーム村を攻撃した戦闘員の一人だったという。

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シリア革命反体制勢力国民連立の最高ハッジ委員会のムハンマド・シュクリー委員長は、連立がアサド政権支持者のメッカへの巡礼(ハッジ)を妨害しているとの一部報道に関して、『ハヤート』(10月12日付)に事実と異なると否定するとともに、シリア周辺国のサウジアラビアの大使館・領事館も巡礼者へのビザ発給を禁じていないと強調した。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍が、国防隊、ヒズブッラーの民兵の支援のもと、フサイニーヤ町、ズィヤービーヤ町を制圧した。

一方、SANA(10月11日付)によると、フジャイラ村、ブワイダ市、ハラスター市、ムライハ市、バハーリーヤ農場、スバイナ町、ダーライヤー市、ハーン・シャイフ・キャンプ、バイト・ジン農場、ヤブルード市郊外、ナバク市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、軍がサフィーラ市を空爆するとともに、同市錦江のアブー・ジャリーン村で反体制武装集団と激しく交戦した。

またアレッポ市では、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が、インザーラート地区を制圧、またマサーキン・ハナーヌー地区、バーブ街道地区に検問所の設置を開始した。

一方、SANA(10月11日付)によると、サフィーラ市近郊のウンム・ジャリーン村で、軍が反体制武装集団の掃討を完了し、同地の治安を回復した。

またアレッポ市では、サラーフッディーン地区に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退した。

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ヒムス県では、SANA(10月11日付)によると、レバノン領からタッルカラフ市郊外(バールーハ村)に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退した。

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ダマスカス県では、SANA(10月11日付)によると、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、クッルナー・シュラカー(10月11日付)や『ハヤート』(10月13日付)は、ダマスカス県ヤルムーク区広報局からの情報として、反体制武装集団が占拠するダマスカス県ヤルムーク区に対する軍の数ヶ月に及ぶ包囲により、パレスチナ人数万人が被害を受け、ネコなどの肉を食べることを余儀なくされていると報じた。

こうした窮状を受け、同地区のシャイフらは、ネコ、犬、ロバの肉を食べることを認めるファトワーを発する一方、住民らは包囲解除を求めるデモを行っているという。

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イドリブ県では、SANA(10月11日付)によると、サラーキブ市南部、ダルクーシュ町、カスタン村、ムシャムシャーン市、サルジャ村、シャンナーン市、マアッラシューリーン市、マアッラト・シャムシャ市、アブー・ズフール航空基地周辺、ザルズール市、ザアラーナ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(10月11日付)によると、ムザイリーブ町、ムライハ市、スマード村、ダルアー市、タファス市、ナワー市、ティーラ市、タッル・サマン市、インヒル市、サイダー町、ウンム・ヤマーズィン市、タイバ町で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(10月11日付)によると、ダイル・ザウル市ハウィーカ地区、ラシュディーヤ地区、ウルフィー地区、工業地区、マリーイーヤ村などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(10月11日付)によると、ハサカ県ナースィラ地区で、反体制武装集団が仕掛けた爆弾が爆発し、女性1人を含む4人が負傷した。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、モスクワでの記者会見で「カーブルの政府の制圧下にないアフガニスタン領内を、複数の国が違法に使用し、シリアで反体制活動を行う戦闘員に化学兵器の使用などを教練した、との情報が最近流れている」と述べた。

ラブロフ外務大臣はまた「我々の情報によると、シャームの民のヌスラ戦線がイラク領内で有毒物質と専門家を違法に移動させ、イラク領内での攻撃に使用しようとしている」と付言した。

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国連安保理は、シリアの化学兵器の管理・廃棄を行うため、化学兵器禁止機関と国連が約100人規模の合同派遣団を創設することを正式に了承した。

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サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣がフランスを訪問し、ローラン・ファビウス外務大臣と会談、シリア情勢、とりわけジュネーブ2会議開催への協力・調整をめぐって協議した。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今年8月にサラフィー主義武装集団などがシリア国内のアラウィー派の10以上の村々で民間人190人を殺害、200人を拉致していたとする報告書を発表した。

同報告書によると、殺害された民間人190人のうち、女性は57人、子供は18人、67人が処刑されたという。

反体制武装集団は8月に「海岸解放作戦」の名で、ラタキア県山間部への攻撃を激化させたが、同報告書によると、この攻撃は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線、ムハージリーン・ワ・アンサール軍、アンシャール・シャーム、イッズの鷹の5組織が指導、約20の武装集団が参加したという。

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アル=カーイダの指導者アイマン・ザワーヒリー氏が音声声明を出し、シリア、エジプト、チュニジア情勢などについて意見を表明した。

約16分間の声明で、ザワーヒリー氏は、シリア国内で武装闘争を行うサラフィー主義者たちに対して「組織への帰属や党派性を克服し…邪神との戦いにおいて統合」するよう呼びかけた。

しかし「あなた方が合意することはあなた方の選択肢だ」と述べ、統合を支持することはなかった。

AFP, October 11, 2013、al-Hayat, October 12, 2013, October 13, 2013、Kull-na Shuraka’, October 11, 2013、Naharnet,
October 11, 2013、Reuters, October 11, 2013、Rihab News, October 11, 2013、SANA,
October 11, 2013、UPI, October 11, 2013などをもとに作成。

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