ロシアの国連大使は、米国がラッカ県一帯でダーイシュなどからなる「シリア自由軍」を結成させ、テロを行おうとしていると非難(2023年5月30日)

国連安保理でシリア情勢への対応にかかる会合が開催され、ロシアのワシーリー・ネヴェンジャ国連大使は、米国がシリア北東部のラッカ県一帯で新たなテロ組織を結成させ、テロ行為を行わせようとする破壊的な計画があると述べた。

ネヴェンジャ国連大使は以下のように述べた。

我々は米国の破壊的な方法を改めて指摘したい。我々が得ている情報によると、(ヒムス県の)タンフ(国境通行所一帯地域)で違法に結成させた武装集団に武器を垂れ流すだけでは不充分なようで、ワシントンはラッカ県一帯で、テロ組織ダーイシュ(イスラーム国)などの組織の代表らからなるいわゆる「シリア自由軍」なる組織を結成し始めた。

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これに対して、リンダ・トーマス・グリーンフィールド米国連大使は、アラブ連盟に復帰したシリアに関して、より具体的な措置が求められていると主張した。

グリーンフィールド大使は、サウジアラビアのジェッダで18日から19日にかけて開催された第32回アラブ連盟首脳会議の閉幕声明は、シリア政府が国連安保理決議第2254号に沿ってシリアでの紛争を解決するための具体的で実効的な措置を講じる必要を確認していると述べた。

また、シリア政府は、刑務所に収監中の13万人以上の釈放、失踪者や志望者の消息解明を通じて具体的な措置を講じることができると付言、難民の帰還については、帰還者へのいやがらせ、恣意的逮捕、拷問、虐待を行わないという決意を示す兆候がないと非難した。

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ゲイル・ペデルセン・シリア問題担当国連特別代表は、5月1日にヨルダンの首都アンマンで開催されたシリア・サウジアラビア・エジプト・イラク・ヨルダンの5ヵ国外務大臣会合、18日から19日にかけてサウジアラビアのジェッダで開催された第32回アラブ連盟首脳会議、10日にロシアの首都モスクワで開催されたロシア・シリア・トルコ・イランの4ヵ国外務大臣会合について、シリアでの危機の政治的解決の重要性を確認するものだとして、制憲委員会の再開を主唱、「現地」での信頼醸成が火急となっていると強調した。

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RIAノーヴォスチ通信(5月30日付)、SANA(5月31日付)、イナブ・バラディー(5月31日付)などが伝えた。

AFP, May 31, 2023、ANHA, May 31, 2023、al-Durar al-Shamiya, May 31, 2023、‘Inab Baladi, May 31, 2013、Reuters, May 31, 2023、RIA Novosti, May 30, 2023、SANA, May 31, 2023、SOHR, May 31, 2023などをもとに作成。

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