イスラーム軍司令官が声明のなかでシリア革命反体制勢力国民連立を痛烈に批判するなか、ラッカ県で発生した人民防衛隊とイスラーム国の戦闘で民主統一党のムスリム共同党首の息子が死亡(2013年10月9日)

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反体制勢力の動き

イスラーム軍のムハンマド・ザフラーン・アッルーシュ司令官はインターネットを通じて声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立を痛烈に批判した。

Kull-na Shuraka', October 9, 2013。

Kull-na Shuraka’, October 9, 2013。

声明で、アッルーシュ司令官はシャームの民のヌスラ戦線など13の武装集団がシリア革命反体制勢力国民連立の存在を拒否したことを「クーデタ」だと批判する反体制活動家に関して「クーデタとは権力の座にいる者に対する動きだが、いつ連立は権力の座についたというのか?」と反論した。

また、国内の武装集団が、連立の代表ポストの半分を求めたことを連立側が「嘲笑」して却下したことを明らかにしたうえで、「(連立は)ジュネーブ2をめぐって、全権を有する移行期政府について政権との対話を始めた。これは連立が体制と合意したこと、そして彼らにとっての共通の敵が武装部隊になったことを意味する」と主張した。

そのうえで「連立は革命が武装闘争になり、政治的解決などあり得ないということを忘れてしまった。ないしは忘れたふりをしている」と指弾した。

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クッルナー・シュラカー(10月9日付)によると、ダマスカス郊外県カラムーン地方で活動するアンサール・ハック旅団がイスラーム軍への合流を発表した。

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自由シリア軍合同司令部中央広報局のファフド・ミスリー氏は声明を出し、シリア・ムスリム同胞団が「非道徳的で非宗教的な行動・振る舞いで…革命を乗っ取り、殉教者の死やシリアの破壊を助長した」と非難、同胞団に対して2週間以内に軍事部門を解体し、政党としての改編を行うよう通告した。

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シリア革命調整連合は声明を出し、ジュネーブ2会議への反体制勢力の参加に関して、「シリア人の意思は…シリア革命反体制勢力国民連立、自由シリア軍参謀本部の士官、既存の政党を越えている」としたうえで、「独立した革命的戦線を結成し、シリア国民の意思を代表し、革命の原則を遵守する一当事者」とすることを大会参加の条件として提示した。

声明ではまた、アサド政権の退陣、大統領をはじめとする政権幹部の人道虐殺への処罰を求めている。

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クッルナー・シュラカー(10月9日付)は、アレッポ県マンビジュ市で、ムジャーヒディーン・シューラー評議会(イスラーム旅団)とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が停戦に合意したとして、合意書のPDFを公開した。

停戦合意では、両組織の代表者からなる「イスラーム局」が食糧品の配給など社会サービスを担当することなどが定められている。

シリア政府の動き

クッルナー・シュラカー(10月9日付)によると、テロ法廷は、リーマー・シャラービー氏、ヤースミーン・アブドゥルアール氏ら女性14人を釈放した。

国内の暴力

ラッカ県では、サウジアラビア紙『ジスル』(10月9日付)が、タッル・アブヤド市での民主統一党人民防衛隊とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)との戦闘で、サーリフ・ムスリム共同党首の息子で人民防衛隊隊員のシューファーン・ムスリム氏が戦死した、と報じた。

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UPI(10月9日付)などが伝えたところによると、シリア領(クナイトラ県)から発射された迫撃砲弾2発がイスラエル占領下のゴラン高原に着弾し、イスラエル軍兵士2人が軽傷を負った。

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ダルアー県では、リハーブ・ニュース(10月9日付)によると、自由シリア軍が1ヶ月におよぶ軍との戦闘の末、対ヨルダン国境に位置する騎兵大隊の拠点を制圧した。

またシリア人権監視団によると、ダーイル町、インヒル市、ムザイリーブ町などを軍が空爆・砲撃する一方、ナワー市で軍と反体制武装集団が交戦した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、フサイニーヤ町、ズィヤービーヤ町、ブワイダ市で、軍、国防隊、ヒズブッラー民兵、イラク人民兵(アブー・ファドル・アッバース旅団)が、反体制武装集団と激しく交戦、軍側がシャイフ・アムルー村、ズィヤービーヤ町・ブワイダ市間の農園を制圧した。

軍はまたブワイダ市一帯を空爆、ズィヤービーヤ町を包囲しており、この戦闘で反体制武装集団の司令官1人、戦闘員5人が死亡、軍側も10人が死亡したという。

しかし、SANA(10月9日付)によると、フサイニーヤ町、ズィヤービーヤ町で、軍が反体制武装集団の掃討を完了、両市を完全制圧した。

またフジャイラ村、ザマルカー町、ダブラ農場、バハーリーヤ市、サカー市、ヌーラ市、フタイタト・トゥルクマーン市、ドゥーマー市、ダーライヤー市、バイト・ジン農場、カリーナ農場、ワーディー・サリーブ、サキー農場、タイイブ農場、リーマー農場、アドラー市郊外などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市マシュハド地区、サイフ・ダウラ地区、サラーフッディーン地区を軍が激しく砲撃する一方、反体制武装集団はアアザミーヤ地区を襲撃した。

またクッルナー・シュラカー(10月9日付)によると、アレッポ市のハムダーニーヤ遊園地の軍検問所を「自由シリア軍」が襲撃、兵士10人を殺害、2人を捕捉して制圧、またアアザミーヤ地区へと進軍した。

一方、SANA(10月9日付)によると、サフィーラ市を含む8村で軍が反体制武装集団の掃討を完了し、治安を回復した。

治安が回復したとされる8村は、サフィーラ、バラカ、ジュバイスィーヤ、ターター、ブルジュ・ラマーヤ、ジャフラ、ジャバル・ラマーン、アミーリーヤ村。

またダフラト・アブドゥラッブフ地区、アアザーズ市、クワイリス村、アルバイド村、ラスム・アッブード村、ナスルッラー村、フマイマ村、ダイル・ジャマール村、アレッポ市旧市街、サラーフッディーン地区、アアザミーヤ地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

他方、アムジャード・イスラーム旅団の軍消息筋は、クッルナー・シュラカー(10月9日付)に対して、ハマー市とアレッポ市を結ぶ街道(サラミーヤ市、ハナースィル市、サフィーラ市経由)がシリア軍によって制圧されたことを認めた。

このほか、アレッポ・ニュース・ネットワーク(10月9日付)は、複数の消息筋の話として、アブー・アマーラ特殊任務中隊がアレッポ市タラル地区で特殊作戦を敢行し、「ヌーリー・マーリキー政権に属すシーア派シャッビーハ」4人を殺害した、と報じた。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺、ハーミディーヤ市で軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(10月9日付)によると、タイバ村、カーディリーヤ市、カフル・ウワイド市、カンスフラ村、アルバイーン山周辺、マアッルシューリーン市、サラーキブ市、マアッラト・ヌウマーン市、ダーイル町、ムスタリーハ村、マジャース村、ウンム・アルザーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(10月9日付)によると、タッル・タムル町西方のアーリヤ地方で軍が反体制武装集団への特殊作戦を行い、車輌100輌以上、外国人戦闘員ら多数を殺害した。

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ダマスカス県では、SANA(10月9日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またドゥライラア地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、女性1人が負傷した。

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ヒムス県では、SANA(10月9日付)によると、ザーラ村、ハーリディーヤ村、ラスタン市、タルビーサ市、ヒムス市・サラミーヤ市街道、ザイダル村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(10月9日付)によると、スーダー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、サウジアラビア人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

化学兵器禁止機関のアフメト・ウズムジュ事務局長は、ハーグで記者団に対して「(シリア国内で)一時的であれ発砲停止が行われれば、これらの目的(化学兵器廃棄に向けた活動)が実現できると思う…。多くが現地情勢によって左右される。それゆえ、我々はシリアのすべての当事者に協力を呼びかけたのだ」と述べた。

また先遣調査隊の活動へのシリア政府の対応に関して「シリアの高官は極めて協力的だった」と評価した。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長とイスラーム諸国会議機構(OIC)のエクメレッディン・イフサン・オグル事務局長は共同声明を出し、シリア国内の紛争当事者に対してイード・アル=アドハー中の戦闘停止を呼びかけた。

AFP, October 9, 2013、al-Hayat, October 9, October 10, 2013、Kull-na Shuraka’, October 9, 2013、Jisr, October 9, 2013、Naharnet, October 9, 2013、Reuters, October 9, 2013、Rihab News, October 9, 2013、SANA, October 9, 2013、UPI, October 9, 2013などをもとに作成。

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