自由シリア軍参謀委員会のイドリース参謀長が米・前シリア大使と会談し「自由シリア軍への支援や人道支援のあり方」について協議、化学兵器禁止機関の先遣調査隊がシリア国内で化学兵器の破壊を開始(2013年10月6日)

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反体制勢力の動き

『ハヤート』(10月6日付、イブラーヒーム・ハミーディー記者)は、西側などの研究データなどをもとに、シリア国内で武装闘争を行う主な反体制武装集団についての解説記事を掲載した。

同記事によると、シリア国内で活動する主な武装集団は以下の通り:

1. シリア・イスラーム戦線:2012年12月21日結成。シャーム自由人大隊(ハッサーン・アッブード氏が指導、兵力役13,000人)、ハック旅団、戦闘前衛大隊(シリア・ムスリム同胞団から離反)など25~30の武装集団が参加。
2. シリア・イスラーム解放戦線:2011年9月12日結成。ファールーク旅団、タウヒード旅団(アブドゥルカーディル・サーリフ氏が指導)、シャームの鷹旅団(アフマド・イーサー・シャイフ氏が指導)、イスラーム旅団(ザーヒル・アッルーシュ氏が指導)、使徒末裔大隊など約30の武装集団が参加。
3. 自由シリア軍:2011年7月29日結成。参謀委員会(最高軍事評議会)はサリーム・イドリース参謀長が指導。
4. ヤルムーク旅団:バッシャール・ズウビー氏が指導。兵力役5,000人。ダルアー県の対ヨルダン国境地帯で活動。
5. イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ):アブー・バクル・バグダーディー氏が指導。シリアでの武装闘争はアブー・ムハンマド・アドナーニー報道官が指導(イドリブ県ダーナー市が拠点)。兵力約8,000人で、うちシリア人が約60%(推計)とされるが、このほかにダーイシュの戦闘に参加している外国人戦闘員が約4,000~5,000人いるとされる。
6. シャームの民のヌスラ戦線:アブー・ムハンマド・ジャウラーニー氏が指導。
7. ムジャーヒディーン・シューラー評議会:アレッポ県、ダイル・ザウル県の農村地帯に浸透。
8. ムハージリーン大隊:チェチェン人、チュニジア人、リビア人など約2,000人の戦闘員からなる。
9. アンサール・ワ・ムハージルーン:アレッポ県で活動。数百人からなる。
10. 人民防衛隊:民主統一党(サーリフ・ムスリム共同党首)の民兵で、兵力は約25,000人。

なおこれらの武装集団、武装連合に加えて、最近では、イスラーム軍など新たな武装連合が次々と発足している。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長が、ロバート・フォード前シリア大使と会談し、自由シリア軍への支援や人道支援のあり方について協議したことを明らかにした。

連立は声明で「出席者は、ジュネーブ2に関する米国のビジョンがシリア国民の大多数のビジョンや連立の基本方針と一致しており、シリアの未来にアサドがいる場所はないという点で一致していることを確認した」と強調した。

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アレッポ市革命市民運動体連合(16団体から構成)が声明を出し、シャームの民のヌスラ戦線などの反体制武装集団がシリア革命反体制勢力国民連立を拒否するなどの姿勢を占めていることに関して、「シリア国内の市民団体、政治勢力を排除する動き」と批判、連立への支持を表明した。

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アレッポ県西部の「解放区」の司法を担当するとされる中央裁判所は、イード・アル=アドハーを記念して、2013年10月3日以前の「イスラーム教徒に対する殺人罪」、「個人の権利に関する犯罪」に対する恩赦を行うと発表した。

クッルナー・シュラカー(10月6日付)が伝えた。

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クッルナー・シュラカー(10月6日付)によると、自由シリア軍「第1旅団」広報局長で、2013年6月19日に頭を撃たれ重態だったムハンマド・シャリーフ・アブー・バッサーム氏(記者)が死去した。

シリア政府の動き

アサド大統領は『シュピーゲル』(10月6日付)のインタビューに応じた(http://www.spiegel.de/spiegel/damaskus-bericht-aus-einer-belagerten-stadt-a-926471.html)。

SANA, October 6, 2013

SANA, October 6, 2013

インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:

「政治的な決定がなされるたびに、間違いは生じるものだ。世界のどこでもそうしたことは起こる。我々は人間に過ぎない」。

「複数の個人が犯した個人的間違いが起きた。我々みなが間違いを犯した。大統領も間違えを犯した」。

「彼ら(反体制武装集団)がすべての責任を負っていて、我々が何の責任もないと言い切ることなどできない」。

「現実は白黒はっきりした世界ではない。グレーゾーンがある。しかし、我々が自衛しているという言葉は基本的には正しい」。

またSANA(10月7日付)はインタビューの一部をアラビア語で転載した(http://sana.sy/ara/2/2013/10/08/506134.htm)。

SANAが転載したアサド大統領の主な発言は以下の通り。

「過去10年間の西側による政治決定のすべては、意図的か否かはともかく、アル=カーイダを支援する性質を持っていた…。西側の支援によって、シリアでは今日、80カ国からのアル=カーイダ戦闘員がいる」。

「西側はいつも後になってから徐々に現状を認識している。我々が激しい抗議運動に直面していると言っていた頃、西側は平和的なデモだと言ってきた。我々が武装集団のなかに過激派がいると言っていた頃、そしてアル=カーイダがいると言っていたのに、西側はテロリストがごくわずかだと言っていた。しかし今、西側は武装集団のほぼ50%がそうだ(テロリストだ)と理解している」。

「紛争は外国から我々の国に持ち込まれている。反体制勢力のメンバーは外国で腰を下ろし、5つ星のホテルで暮らしている…。しかし彼らはシリアに何の基盤もない。(シリアで)受け入れられている実質的な反体制勢力とは、武器を持たない政治的存在のことをいう…。つまり、もし誰かが武器を放棄し、日常生活に戻れば、我々は彼を反体制活動家とみなして対話できる…。対話を通じた解決は可能だが、武装集団との対話はない」。

「反体制勢力を名乗る者たちの代表は…自分たちを代表して話しているのか、それともシリアの人々を代表しているのか、あるいは彼らの背後にいる国を代弁しているのか?…自分たちがシリア国民を代表していると言う場合、それは投票箱を通じてしか明示し得ない」。

(アサド政権が正統性を失ったとする米国などの主張に関して)「オバマは米国の大統領であって、シリアに関して判断を下すようないかなる正統性もここ(シリア)では持っていない。彼には、誰を大統領に選ぶかをシリア国民に強いる権限などない。彼が言っていることは現実にまったくそぐわない。2年半前に、彼は私が去るべきだと言った。しかしその後何が起きたか?彼の言葉が何らかの影響を及ぼしたか?何も影響を及ぼしていない」。

「我々は化学兵器を使っていない。それ(米国などの嫌疑)は間違えだ。西欧が描くイメージは正しくない」。

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イフバーリーヤ・チャンネル(10月5日付)は、兵士10人、民間人13人、民兵9人を殺害したと証言するアレッポ市マイサル地区出身の少年(シャアバーン・ハミーダくん)の映像を放映した。

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、キリスト教徒が多く住むカッサーア地区のフランス病院周辺、バーブ・トゥーマ近く、聖十字架教会などに、迫撃砲が着弾し、市民4人が死亡、10数人が負傷した。

Champress, October 7, 2013

Champress, October 7, 2013

これに関して、SANA(10月7日付)は、反体制武装集団が撃った3発の迫撃砲弾が着弾し、8人が死亡、27人が負傷したと報じた。

またシリア人権監視団によると、バルザ区、ジャウバル区、カダム区で、軍と反体制武装集団が交戦、軍が砲撃を激化させた。

一方、SANA(10月6日付)によると、ジャウバル区、バルザ区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷・拠点、装備を破壊した。

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クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、ジャバーター・ハシャブ氏、ウーファーニヤー村に軍が砲撃を加える一方、反体制武装集団はタッル・アフマル地方の軍の拠点を手製の迫撃砲で砲撃した。

一方、SANA(10月6日付)によると、軍がマガッル村での反体制武装集団の追撃を完了し、同村の治安を回復した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、タイバト・イマーム市とスーラーン市の周辺一帯で軍と反体制武装集団が交戦し、軍の戦車3輌が破壊された。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ワアル地区などが軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(10月6日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、ジャウラト・シヤーフ地区、クスール地区、ワアル地区、ダール・カビーラ村、ガースィビーヤ村、ハーリディーヤ村、ウンム・タバービール村、ラッフーム村、アブー・ハワーディード村、サムアリール村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷・拠点、装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アルバイーン山一帯で軍と反体制武装集団が交戦し、戦闘員4人が死亡した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アアザーズ市に近いマアリーン村で、民主統一党人民防衛隊がイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の拠点を砲撃、交戦した。

複数の消息筋によると、民主統一党人民防衛隊は、ダーイシュが自由シリア軍北の嵐旅団との戦闘の末に制圧したアアザーズ市一帯を、対トルコ国境のアティマ村に向かって進軍している、という。

またハナースィル市に近いウンム・アームード村で、軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、クッルナー・シュラカー(10月6日付)によると、アフリーン市で民主統一党人民防衛隊と「イスラーム・ムジャーヒド参謀・部隊」を名乗る武装集団が停戦に合意した。

他方、SANA(10月6日付)によると、ハマー市とアレッポ市を結ぶ街道(サラミーヤ市、ハナースィル市、サフィーラ市、アレッポ国際空港経由)を軍が再開した。

またアレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院、バービース村、マーイル町、フライターン市、カフィーン村、ハイヤーン町、マアルスティー村、アッザーン村、マアスラーニーヤ市、ナイラブ村北部、シャイフ・ナッジャール市、アンジャーラ村、マンスーラ村、アナダーン市南部、ムスリミーヤ村南部、カフルナーハー村、バルクーム村、ダイル・ハーフィル市、ICARDA周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャーム自由人大隊、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷・拠点、装備を破壊した。

さらにアレッポ市では、旧市街、サラーフッディーン地区、カースティールー地区、ライラムーン地区などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷・拠点、装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(10月6日付)によると、バハーリーヤ市北部の鉄道駅からカースィミーヤ市にいたる2キロ地点を軍が制圧、治安を回復した。

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イドリブ県では、SANA(10月6日付)によると、タッル・ハドヤー村、ズィルバ村、ハッルーズ村、アーリヤ村、ジャーヌーディーヤ町、カスタン村、カフル・ウワイド市、カフルシャラーヤー市、マアッルディブスィー市、バニーン市、ブサクラー村、ビーニーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの鷹旅団、ファジュル旅団、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷・拠点、装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(10月6日付)によると、ダルアー市、ナワー市、ヌアイマ村、イズラア市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ムウタスィム大隊の戦闘員らを殺傷・拠点、装備を破壊した。

諸外国の動き

AFP(10月6日付)などによると、化学兵器禁止機関の先遣調査隊がシリア国内で化学兵器の破壊を開始した。

調査隊内の匿名筋によると、調査隊メンバーはシリア国内の「某所で調査と破壊を開始」し、重機を使って未装填の化学兵器用弾頭、手榴弾、薬剤を充填するための設備を破壊した」という。

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アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は、フランスのTV5(10月6日付)などに対して「11月半ばのジュネーブ2会議開催は確実ではない」としたうえで、アサド政権、反体制勢力双方に「無条件でジュネーブに向かう」よう呼びかけた。

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チュニジア内務省高官は、チュニジア人女性がシリア国内でのサラフィー主義者の活動に参加し、「結婚ジハード」(性的慰安)を行っていた問題に関して、「戦闘員に社会奉仕(負傷者の手当、料理、洗濯など)を行うためにシリアに行ったチュニジア人女性はせいぜい15人しかおらず、その一部が結婚ジハードの名のもと、慰安に利用された…。彼女らのうち4人が帰国し、うち1人が妊娠している」と述べた。

また同高官は「妊娠した女性は戦闘員に対して「社会奉仕」を行い、彼らと性的交渉を持ったと証言している」と付言した。

さらにシリアから帰国したチュニジア人女性からの情報として「チェチェン、ドイツ、フランス、エジプト、イラク、モロッコからイスラーム教徒の女性が来ており」、結婚ジハードを行っていたと述べた。

AFP(10月6日付)が伝えた。

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『シュピーゲル』(10月6日付)は、シリアが外国の攻撃を受けた場合、イランの防空兵器・戦闘機、イラン・イスラーム革命防衛隊(パスダラン)を派遣するとの合意を2012年11月にシリアとイランが結んでいたとドイツ諜報機関が秘密報告書で指摘していた、と報じた。

AFP, October 6, 2013、Der Spiegel, October 6, 2013、al-Hayat, October 6, 2013, October 7, 2013, October 8, 2013、al-Ikhbariya, October
5, 2013、Kull-na Shuraka’, October 6, 2013、Naharnet, October 6, 2013、Reuters,
October 6, 2013、Rihab News, October 6, 2013、SANA, October 6, 2013, October
7, 2013、Der Spiegel, October 6, 2013、UPI, October 6, 2013などをもとに作成。

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