トルコを拠点とするシリア・テレビ(12月14日付)は、シャーム解放機構指導者でシリア軍事作戦局総司令部(「攻撃抑止」軍事作戦局)司令官のアブー・ムハンマド・ジャウラーニーことアフマド・シャルア氏と単独インタビューを行った。
ジャウラーニー氏は、シリアが直面している悲劇的な現状を克服するには、慎重に計画された対策が必要であると指摘した。さらに、実行可能な措置を講じる前に、データを正確に収集し分析する重要性を強調した。 ジャウラーニー氏は、「シリア革命は勝利を収めたものの、革命の精神でシリアを統治する考え方を避けるべきだ」と述べ、シリアの未来には法と制度に基づく国家の設立が必要不可欠であると主張した。持続可能な安定を確保するには、国家を構築するための法治主義と制度的枠組みが求められるとしている。 また、革命的な思考から国家建設の精神へと意識を移行する必要性を訴え、シリアの未来は統治と正義の基盤を確立することにかかっていると述べた。 一方で、新政権が「シリアにおけるカプタゴンの生産を終わらせる」と明言した。これは、アサド政権が国をカプタゴンの製造拠点に変えたとする国際的な非難を受けたものだという。
ジャウラーニー氏は、アサド政権の崩壊が数年間の準備を経て、わずか11日間で達成されたことを明らかにした。この成果は、軍事作戦に伴った多大な努力と事前の計画の規模を物語っていると述べた。また、新政権が「誰一人として避難させることなく、大都市を掌握した」と主張した。 ジャウラーニー氏は、シリア革命が、内部対立や派閥主義、さらに複数の外国勢力の介入といった困難に直面してきたとしたうえで、これらが世界の他の革命とは異なる特異な状況を生み出したと述べた。こうした複雑な条件が包括的な政治的解決の実現を妨げ、目標を達成する唯一の手段として軍事的選択を余儀なくされたと指摘した。 さらに、ジャウラーニー氏は、シリアの国家をすべてのシリア人にとって、権利と正義を保証するという現代的な基礎のもと、再建するための真摯な努力を行うよう呼びかけた。また、安定を妨げた過去の過ちを繰り返さないよう警告した。 ロシア軍が主に民間施設を標的として攻撃を行ってきたとしたうえで、シリア北部でガザ地区のような状況が繰り返され、人道的課題が深刻化する可能性を懸念していると述べた。
ジャウラーニー氏は、イスラエルの主張が説得力を欠いており、最近の越権行為を正当化できないと述べた。また、イスラエルが兵力引き離し地域侵攻したことが地域に不必要な緊張を引き起こし、事態の悪化を招く恐れがあると指摘した。 さらにジャウラーニー氏は、戦争と紛争を経たシリアの疲弊した状況では、新たな紛争に介入する余裕がないと強調、現段階の優先事項が再建と安定で、さらなる破壊を招く可能性のある争いに関与すべきでないと述べた。 ジャウラーニー氏は、国際社会に対し、この事態悪化に迅速に対応し、責任を果たすよう求めた。また、地域情勢を管理し、シリアの主権を尊重することが重要だと強調した。そのうえで、いかなる無謀な軍事的冒険にも頼らず、外交的手段が唯一の安全と安定を確保する方法であると述べた。 ジャウラーニー氏は、アサド政権の打倒に向けた努力は、個人によるものではなく、すべてのシリア人の共同の成果であったとも強調した。「我々は、アッラーが前体制に勝利をもたらすために用いた道具にすぎない。しかし、この努力は全シリア人の努力である」と述べた。
ジャウラーニー氏は、イランが、シリアを域内での拡張主義というアジェンダを実行するための拠点に変貌させたが、シリアと近隣諸国、そして湾岸諸国に対する重大な脅威を与えていたと指摘した。そして、「我々はシリアにおけるイランの存在を終わらせることに成功したが、イラン国民に敵意を抱いているわけではない。問題は、我が国を傷つけた政策にあった」と述べた。 ジャウラーニー氏は、シリアの指導部がロシアを刺激することを避け、ロシアがシリアとの関係を見直し、双方の利益にかなうかたちで関係を再構築する機会を提供するよう努めたいと述べた。さらに、現段階において、国際関係を慎重に対応するすることが求められると強調した。
AFP, December 14, 2024、ANHA, December 14, 2024、‘Inab Baladi, December 14, 2024、Reuters, December 14, 2024、SANA, December 14, 2024、Sham FM, December 14, 2024、SOHR, December 14, 2024などをもとに作成。
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