SANA(1月11日付)は、シリア軍、ヒズブッラーが包囲を続けるダマスカス郊外県マダーヤー町と、アル=カーイダ系組織のシャームの民のヌスラ戦線などが包囲を続けるイドリブ県フーア市、カファルヤー町に、国連とシリア赤新月社のトレーラー65輌が人道支援物資への搬入を行った。
AFP(1月11日付)によると、このうちマダーヤー町への搬入作業を行ったトレーラーは44輌、フーア市、カファルヤー町への搬入作業を行ったトレーラーは21輌。
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シリア人権監視団によると、人道支援物資搬入に先立って、赤十字国際委員会、シリア赤新月社、国連の代表団がマダーヤー町に入り、物資受け入れの準備を行う一方、マダーヤー町住民は「武装集団の倉庫に物資を搬入しようとしていた同市の軍事評議会議長」を追放、これを受け、人道支援物資の搬入が実現したという。
また、マダーヤー町を包囲するヒズブッラー戦闘員は、検問所を設置しているマダーヤー町郊外のカウス地区に住民らを誘導し、彼らに対して支援物資配給の仕組みを説明したという。
それによると、支援物資はマダーヤー町内の倉庫に搬入され、支援事務所に登録されている世帯のリストに従い、世帯ごとに配給量が決定され、世帯主がこれを受けとる、という。
ヒズブッラーはまた、住民に対して人道支援物資を受けたい者はクーア地区の検問所に来るよう告知する一方、マダーヤー町から退去したい者はクーア地区の検問所を経由して退去できると合わせて告知したという。
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マダーヤー町、フーア市、カファルヤー町への人道支援物資の搬入は、2015年9月下旬にイランの仲介のもとにシリア政府とアル=カーイダ系組織のシャーム自由人イスラーム運動などの武装集団が交わした停戦合意に基づく措置で、これに先立ち、12月末には、ザバダーニー市で籠城を続けてきたシャーム自由人イスラーム運動の負傷した戦闘員やその家族がレバノン、トルコを経由し、ファトフ軍支配下のイドリブ県に退去、またフーア市、カファルヤー町の住民もトルコ、レバノンを経由し、ダマスカス郊外県に退去していた。
なお、『ハヤート』(1月12日付)によると、マダーヤー町はシリア軍およびヒズブッラー戦闘員によって180日余りにわたり包囲を受けていた。
一方、フーア市、カファルヤー町は、2015年夏以降、ヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などからなるファトフ軍の包囲を受けていた。
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バッシャール・ジャアファリー国連シリア代表は、国連安保理での非公式会合で、マダーヤー町、フーア市、カファルヤー町への人道支援物資搬入に関して「マダーヤー町に人道的危機が生じているというのはまったく根拠がない…。町内のテロリストたちこそが、支援物資を盗み、交渉の手段として利用している」と述べた。
AFP, January 11, 2016、AP, January 11, 2016、ARA News, January 11, 2016、Champress, January 11, 2016、al-Hayat, January 12, 2016、Iraqi News, January 11, 2016、Kull-na Shuraka’, January 11, 2016、al-Mada Press, January 11, 2016、Naharnet, January 11, 2016、NNA, January 11, 2016、Reuters, January 11, 2016、SANA, January 11, 2016、UPI, January 11, 2016などをもとに作成。
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