SANA(10月14日付)は、アサド大統領がシリア時間の14日午前1時に、ロシアの『コムソモルスカヤ・プラウダ』紙のインタビューに応じたと伝え、映像(https://youtu.be/iMGvMQxNDI4)、全文(英語、http://sana.sy/en/?p=90442)、アラビア語全訳(http://www.sana.sy/?p=444301)を配信した。
インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:
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「問題について話したいのなら、問題の核心部分、問題の根源について話さねばならない。それはテロだ…。もっとも重要なのは、誰が連日、毎時間、毎日テロリストを支援しているかということだ…。もしこの問題が解決できれば、あなたが思い描いているすべての複雑なイメージは重要ではなくなる…。つまり、たいした問題ではなくなる…。ロシア、イラン、ヒズブッラーは我々の同盟者で、合法的にやって来た…。彼らはテロリストと戦うために我々を支援している。しかしそれ以外の国は…テロリストを支援している…。第2に、問題は第3次世界大戦にかかわるものだ。この言葉は、シリア情勢が悪化した最近になって頻繁に用いられるようになっている…。それは冷戦以上、戦争以下といったものだ」。
「争点となっているのは、米国が世界の覇権を維持するかということにかかわっている…。これが第3次世界大戦と称されるこの戦争の本質だ…。しかしそれは軍事的な戦争ではない。一部は軍事的で、一部はテロや安全保障、そして政治的なものだ…。シリアはこの戦争の一部なのだ」。
「シリアは中東における地政学的ダイナミズムのハブをなしてきた…。シリアに何かが起きれば、それは、否定的なものであれ、肯定的なものであれ、地域に影響を与える。それゆえ、シリアを支配することは非常に重要なことだ。シリアは小さいが、地域全体を支配するうえで重要なのだ」。
「ロシアはさまざまな理由でテロと戦おうとしており、それはシリアのためだけでも、ロシアのためだけでも、地域全体のためだけでも、欧州のためだけでも、世界全体のためだけでもない。ロシアはテロ拡散が何を意味するかを理解している。これに対して米国は常に…「テロは我々が使うことのできるカードで、我々はそれをテーブルで切ることができる」と考えている」。
「この進攻(トルコ軍のアレッポ県北部への進攻)は侵略だ…。それは国際法、道徳、そしてシリアの主権に対する侵害行為だ…。トルコはこの侵略によって、真の思惑を隠そうとしている…。トルコはダーイシュ(イスラーム国)とヌスラ戦線(シャーム・ファトフ戦線)を支援してきたことを取り繕おうとしている」。
「トルコがダーイシュを作り出したのだ。トルコは、彼らにあらゆる兵站支援を行い、彼らがレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の息子や取り巻きとともに我が国の石油を密輸販売することを認めてきた。世界中がそのことを知っている。しかし、この侵略以降、トルコは…ダーイシュと同根の新たな「穏健な反体制派」について云々言うようになった。トルコはダーイシュからこの「穏健な反体制派」を作ったのだ。トルコは、自らの砲撃や軍、そしてシリアにおける彼らの代理人が複数の地域でダーイシュを放逐し、敗退させたと主張する。しかし、それは遊びに過ぎない」。
「ロシアとトルコの和解は…、我々シリアにとって唯一の希望で、ロシアがトルコの政策を変更することを望んでいる…。私はロシアの対トルコ外交の第1の目的もここにあると確信している」。
「ダーイシュやヌスラ戦線だけでなく、機関銃を持って、シリアで殺戮と夜会を始めたすべてのテロリストがイスラエルの支援を受けてきた…。なぜか? なぜなら、イスラエルは我々の敵で…、彼らは、シリアの社会、軍、国家全体を弱体化させれば、イスラエルが平和に向かって進むことを抑えられると考えている…。シリアが他の問題に没頭すれば、ゴラン高原(の返還)や和平プロセスについて話す暇もなくなると考えている…。イスラエルと、ヌスラ戦線、ダーイシュ、そしてアル=カーイダとつながりのあるどの組織との間にも何の矛盾もないのだ」。
「最高レベルの動員は…もしこの戦争が数週間、ないしは数ヶ月しか続かないのであれば問題ない。しかし、6年近く続く戦争となれば、それは社会、国家を麻痺させてしまい、社会が麻痺すれば戦争に勝つことはできない。だから、戦争と社会…の基本的なニーズ、そして我々が国民に提供する福祉の間でバランスをとる必要がある」。
「シリアは小さな国で、人口もさほど多くはない。だから、我々は友人の助けを必要としてきた。イランが介入し、ヒズブッラー、そしてロシアという大国が介入することは、現地のパワー・バランスを変えるうえで極めて重要だった…。ロシアに助けをもとめることは当然のことだった。ロシアは、空軍を通じた直接支援以外でも、我々を助けてくれた。ロシアは戦争で必要なすべての兵站支援を担ってくれていた…。シリア領内には40年にわたってロシアの軍事顧問団が駐留している…。我々はロシアを信用しているので、ロシアを招き入れたのだ。我々は、ロシアがテロリスト掃討をめざして我々を支援したいと考えてきたことを知っているので信頼しているのだ…。今のところ、ロシアは我々に何の見返りも要求していない」。
「危機が起こる以前…の主な争点は、イランの核問題だった…。フランスやサウジアラビアは、我々がイランからとにかく距離を置くことを望む、そうなるよう試みた。これらの国が単にイランが嫌いだからという理由でだ…。シリアはこの点に関してハブのような存在だと考えられてきた。東、すなわちイラン、イラク、シリア、地中海から延びるチューブだと考えられていた…。私は西側がこのシリアを受け入れるとは考えていない。なぜなら、シリアは西側の操り人形ではないからだ…。危機が起こって以降…、サウジアラビアから直接、「イランと距離を置き、イランとあらゆる関係を絶つと宣言すれば、あなたを助けてやろう」という申し出があった。極めて単刀直入な申し出だった」。
「これらの戦闘員(反体制派)、イデオロギー的な戦闘員、ないしはテロリスト、つまり我が軍と戦っている者たちに対する唯一の対処法は、彼らと戦い、殺すことだ。それ以外の方法はない。彼らには対話の用意はないし、そのための時間もない。市民を守りたいのなら、彼らを殺さなければならない。だが、それだけでは不十分だ。それではビデオ・ゲームを再生するようなものだ…。1人殺して、次に10人殺すのでは、きりがない。中長期的にもっとも重要なのは、このイデオロギー(ジハード主義)に対して、似通ってはいるが穏健なイデオロギーを駆使して戦うことだ。穏健なイスラーム以外のイデオロギーでは、イスラームにおける過激主義には対抗できない…。しかし、サウジアラビア政府、サウジアラビアのNGOや組織が世界中で唱導しているワッハーブ主義イデオロギーを根絶やしにするには時間がかかり、数世代を要する…。「このイデオロギーと戦う」と言っておきながら、この暗黒のイデオロギーを唱導するシャイフ…を野放しにしておくということはできない…。しかし欧州ではこうしたことが起こっているのだ…。欧州でクラス移民第3、第4世代は…中東で暮らしたこともなければ、アラビア語もしゃべれない。おそらくはコーランも読んだことがない。それなのに、彼らは欧州がワッハーブ主義の浸透を許しているので過激派になってしまっている」。
「これらの戦闘員(反体制派)、イデオロギー的な戦闘員、ないしはテロリスト、つまり我が軍と戦っている者たちに対する唯一の対処法は、彼らと戦い、殺すことだ。それ以外の方法はない。彼らには対話の用意はないし、そのための時間もない。市民を守りたいのなら、彼らを殺さなければならない。だが、それだけでは不十分だ。それではビデオ・ゲームを再生するようなものだ…。1人殺して、次に10人殺すのでは、きりがない。中長期的にもっとも重要なのは、このイデオロギー(ジハード主義)に対して、似通ってはいるが穏健なイデオロギーを駆使して戦うことだ。穏健なイスラーム以外のイデオロギーでは、イスラームにおける過激主義には対抗できない…。しかし、サウジアラビア政府、サウジアラビアのNGOや組織が世界中で唱導しているワッハーブ主義イデオロギーを根絶やしにするには時間がかかり、数世代を要する…。「このイデオロギーと戦う」と言っておきながら、この暗黒のイデオロギーを唱導するシャイフ…を野放しにしておくということはできない…。しかし欧州ではこうしたことが起こっているのだ…。欧州でクラス移民第3、第4世代は…中東で暮らしたこともなければ、アラビア語もしゃべれない。おそらくはコーランも読んだことがない。それなのに、彼らは欧州がワッハーブ主義の浸透を許しているので過激派になってしまっている」。
「ロシアの介入(空爆開始)以降、テロリストの支配下にあった領域は縮小している…。現実が物語っているのだ…。ロシアが現地のバランスをテロリストにとって不利なように変えたのだ」。
「我々はコミュニティ全体について話すことなどできない…。クルド人、トルコ人、アラブ人、チェチェン人、アルメニア人といったシリアのコミュニティが何かを望んでいる、というように言うことはできない。我々が話すことができるのは、一部のクルド人がこれ(連邦制)を必要としているということだけだ。クルド人の大多数はそれを求めていない…。また連邦制、ないしはそれに類するシステムについて話すとき、それは憲法の一部として言及されるべきだ。憲法は政府の持ち物ではなく、シリア国民の意思を反映している。つまり、彼らがシリアで何らかの政治システムを導入したいというのであれば、それをシリア国民のなかで推し進める必要がある。しかし、彼らは私とこのことについて議論していない…。ただし、たとえ私が賛成しても、私は彼らに連邦制を与えることはできない…。シリア国民による国民投票で是非を決めねばならないからだ」。
「(反体制派と)交渉しようとする場合…、問題となるのは誰が現状に対して影響力を行使し、それを変えることができるのかということだ…。現地のテロリストに誰が影響力を行使しているのかということが問題だ。我々は、テロリストの大多数がアル=カーイダとつながりのあるグループ、つまりダーイシュ、ヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などに所属しているということを知っている。彼らはいかなる政治運動にも与していない。彼らは自分たち以外のイデオロギー、すなわちワッハーブ主義以外を気にすることもない。つまり、我々は反体制政治勢力と交渉しても、現状を変えることはできないのだ」。
「ホワイト・ヘルメット(民間防衛隊)は、ヌスラ戦線が支配する地域でヌスラ戦線とともに活動している…。また、より重要なこととして、多くのメンバーが、彼らが撮ったビデオや写真のなかで、シリア軍の死を祝っている」。
「アレッポを我々は「ダマスカスの双子」と呼んでいる。理由は多々あるが、アレッポはシリア第2の都市だ。ダマスカスが政治の首都であるのに対して、アレッポは産業の首都なのだ…。(アレッポ解放)は何よりもまず、戦略レベルで政治的成果、そして国民的成果となる。また戦略的、軍事的な観点に立つと、それは他の地域への「跳躍台」となり、テロリストからこれらの地域の解放することにつながる…。イドリブはトルコに隣接している…。それゆえ、両地を寸断することはできず、浄化しなければならない。この地域を浄化し続け、テロリストをトルコに押し戻さねばならない…。それ以外の選択肢はない。アレッポはこの動きに向けた非常に重要な「跳躍台」になるだろう」。
「イラク・イスラーム国がシリアに入ってきた当初、米国は彼らを「自由シリア軍」と呼んだ…。しかし、彼らがどんどん巨大化し、彼らが行う斬首などの行為が隠しきれなくなると、米国はヌスラ戦線がいると白状したのだ。しかし、実際にはそれは同じ組織だ。ヌスラ戦線は「自由シリア軍」と同じだし、ダーイシュ(イラク・イスラーム国の後身)とも同じなのだ」。
AFP, October 14, 2016、AP, October 14, 2016、ARA News, October 14, 2016、Champress, October 14, 2016、al-Hayat, October 15, 2016、Iraqi News, October 14, 2016、Kull-na Shuraka’, October 14, 2016、al-Mada Press, October 14, 2016、Naharnet, October 14, 2016、NNA, October 14, 2016、Reuters, October 14, 2016、SANA, October 14, 2016、UPI, October 14, 2016などをもとに作成。
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