アサド大統領は、クロアチアの日刊紙『ヴェチェルニ・リスト』(4月6日付)のインタビュー(http://www.vecernji.hr/svijet/svjetska-ekskluziva-al-assad-europa-se-nece-zastititi-od-terorista-jer-ih-podrzava-1161321)に応じた。
インタビュー全文のアラビア語版、英語版はSANAが配信した(http://www.sana.sy/?p=533814、http://sana.sy/en/?p=103658)。
インタビューでのアサド大統領の主な発言は以下の通り:
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「問題はどのように希望を現実に転化させるかということだ。今の段階でこれは二つの実際のアプローチを通じて可能だ。第1にテロとの戦いだ…。第2に武器を棄て、通常の生活に戻りたいと思う者たちとの和解だ…。いずれの面でも進展が見られている…。だから、私は過去数年前よりも希望があると言っているのだ」。
「穏健な反体制派は存在しない。存在する反体制派はジハード主義反体制派だ…。彼らはテロ以外のいかなる対話も解決も受け入れない…。だから、我々は実際にこうした反体制派と(の協議を通じても)何らの実質的な結果を出せないのだ…。これらテロ集団は外国のアジェンダと自分たちを結びつけている。彼らは政治改革や解決を望むシリア人のいかなる潮流、運動にも属していない…。彼らの一部は武器を持たないという意味で政治組織に見えるが、テロを支援している。また別の部分は、サウジアラビア、トルコ、欧米諸国のアジェンダとつながりがある」。
「テロとの戦いを宣言した世界のなかには、テロを支援する西側諸国が含まれている…。西側諸国はいまだにテロを支援しており、それと戦っていない…。これらの国はさまざまな政治的アジェンダを実現するためのカードとしてテロを利用している」。
「シリアでテロと戦っているのは、基本はシリア軍だ…。シリア軍は兵士の意志、そして民衆の支持のおかげで、テロとの戦いで成果をあげることができている。民衆の支持がなければ、こうした勝利を収めることは不可能だ。しかし、イラン、ロシア、レバノンのヒズブッラーといった同盟者の多大な支持も得ている…。軍はシリア国民のすべての代表している」。
「シリアはこれらの国々(欧米諸国)との治安協力を停止した。なぜなら、治安協力と政治対立は両立しないからだ…。こうした治安協力を行えば、欧州でのテロ攻撃を回避できたかと言えば…、平時であれば、答えは「Yes」だ。だが現下の環境下では、答えは「No」だ。なぜなら、欧州、あるいは多くの欧州諸国はテロリストを大規模に支援し、数万ものテロリストをシリアに送り込んでいるからだ…。欧州が自らを防衛したいのであれば、まずシリアのテロリストを支援することを止めるべきだ」。
「米国、そして英国、フランスといった国が主導する西側諸国は…独立国を受け入れようとせず…自分たちの政策を実行するような衛星国を望んでいる…。ほとんどの湾岸諸国は「No」と言えない衛星国だ」。
「連邦制樹立は国民的な問題で、その是非は憲法に準じるべきだ。現行憲法のもとでは国民投票が必要となる。だから、政府として、我々は連邦制を受け入れる、受け入れないと言うことはできない。政府、そして行政は国民の意思を表現するだけだからだ。しかし…、シリア人の大多数は連邦制を受け入れないだろうと言える。なぜなら、それは分裂をもたらすからだ」。
「(西クルディスタン移行期民政局支配地域に米軍が駐留していることに関して)もちろん占領軍だと思う。シリア政府の許可のない介入、戦闘員個人の存在も侵害行為となる…。米国の政策は世界のさまざまな場所で混乱を作り出すことが基本となっている」。
「米国は合法的なシリア政府との連携も要請もなくシリアに派兵した。このことは、この政権(ドナルド・トランプ政権)が、それ以前の政権と同じく、シリアの安定回復をめざすつもりがないことを意味している」。
「(イスラエルとの)戦争は非現実的だ。なぜなら、すでにイスラエルとの戦争のなかに身を置いているからだ…。イスラエルには、トルコ、米国、フランス、英国、サウジアラビア、カタールといった国と同じ狙いがある。これらの国は同じ目的を持っている。それは新たなかたちを得て、新たなツールを通じて行われている…。実際のところ、テロリストに対する我々の勝利とは、これらの国に対する勝利となる」。
「欧州の政策は実質的には変わっていない。なぜなら、欧州の高官はすでに多くのウソをつき過ぎていて、今更Uターンしたいと考えても、欧州世論に「あなたたちは私たちにウソをついてきたのか」と言われることになるからだ…。だからこれらの国はその時々に応じて、若干の修正を加えながらウソを突き続けている。自分たちの顧客、つまり欧州の世論を騙すため、異なったパッケージを使って同じものを再生産している」。
「欧州で今日変化したと言えるのは、企業メディアや政治家が嘘をついているということに世論が気づいたということだ…。だが、世論は真実すべてを知っているわけではない。真実の一部を知っているだけで、シリアで起きていることの真実を探し求めている段階だ」。
AFP, April 6, 2017、AP, April 6, 2017、ARA News, April 6, 2017、Champress, April 6, 2017、al-Hayat, April 7, 2017、Iraqi News, April 6, 2017、Kull-na Shuraka’, April 6, 2017、al-Mada Press, April 6, 2017、Naharnet, April 6, 2017、NNA, April 6, 2017、Reuters, April 6, 2017、SANA, April 6, 2017、UPI, April 6, 2017、Vecernji.hr, April 6, 2017などをもとに作成。
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