イドリブ県フーア市・カファルヤー町から住民を載せシリア政府支配地域に向かっていた車列がアレッポ市西部で自爆テロの標的となり多数が死亡(2017年4月15日)

アレッポ県では、SANA(4月15日付)によると、カタールの仲介によるファトフ軍とイラン・イスラーム革命防衛隊・ヒズブッラーの停戦合意に基づき、イドリブ県フーア市およびカファルヤー町の住民約5,000人を載せた車列(旅客バス75台、救急車20台)が向かっていたアレッポ市西部ラーシディーン地区(第4区)のバス集結地点で、反体制武装集団が爆弾を仕掛けた車1台を爆発させ、退去中の住民多数が死亡、50人以上が負傷した。

『ハヤート』(4月16日付)によると、爆発は自爆テロによるものだという。

シリア・アラブ・テレビ(4月15日付)は、死者は39人、負傷者は約50人に達すると報じる一方、クッルナー・シュラカー(4月15日付)は、反体制武装集団支配地域で活動するホワイト・ヘルメットの話として、この爆弾テロで100人以上が死亡、55人が負傷したと伝えた(シリア人権監視団によると、死者は126人、ARA News(4月16日付)によると、死者は112人)。

ラーシディーン地区西方は、シャーム解放機構が主導するファトフ軍の支配地域。

SANA, April 15, 2017

SANA, April 15, 2017

この爆弾テロにより、退去作業は30時間にわたり遅れたが、SANAによると、14日夜までに第1回目の退去作業は完了した。

SANA, April 15, 2017

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一方、クッルナー・シュラカー(4月15日付)によると、ダマスカス郊外県マダーヤー町で籠城してきた反体制武装集団戦闘員とその家族を載せ、同地を出発した旅客バスの車列は、アレッポ市南部ラームーサー地区に到着した。

シリア人権監視団によると、マダーヤー町からの車列には戦闘員約400人を含む2,200人が載っているという。

車列はイドリブ県方面に入る予定だが、停戦合意締結に関与しているシャーム自由人イスラーム運動の匿名司令官によると、フーア市、カファルヤー町からの退去者のなかに「武器を携帯した子供」が混じっており、一般住民ではなく戦闘員の是非をめぐってファトフ軍とイラン・イスラーム革命防衛隊側が対立、移送作業が中断しているという。

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オリエント・ネット(4月15日付)は、シャーム解放機構の広報関係局長のイマードッディーン・ムジャーヒド氏によって開示されたとして、カタール仲介によるファトフ軍とイラン・イスラーム革命防衛隊・ヒズブッラーの停戦合意の内容詳細について明らかにした。

それによると、合意内容は以下の通り:

1. イドリブ県フーア市、カファルヤー町から退去希望者約3,000人を退去。
2. この退去は2回に分けて実施。
3. シリア政府側の刑務所から女性を中心に1,500人を釈放。
4. ダマスカス県南部のヤルムーク・パレスチナ難民への人道支援物資搬入。
5. その2ヶ月後、同キャンプからの戦闘員およびその家族の退去。
6. レバノンに避難中のダマスカス郊外県ザバダーニー市、マダーヤー町住民50世帯の処遇決定。
7. イドリブ県イドリブ市、タフタナーズ市、ビンニシュ市、ラーム・ハムダーン村、シャッラフ村、バルーマー村で9ヶ月間の停戦。

この停戦合意は、シャーム解放機構、シャーム自由人イスラーム運動がカタール政府の仲介のもとイラン側と折衝して成立したという。

AFP, April 15, 2017、AP, April 15, 2017、ARA News, April 15, 2017、Champress, April 15, 2017、al-Hayat, April 16, 2017、Iraqi News, April 15, 2017、Kull-na Shuraka’, April 15, 2017、al-Mada Press, April 15, 2017、Naharnet, April 15, 2017、NNA, April 15, 2017、Orient News Net, April 15, 2017、Reuters, April 15, 2017、SANA, April 15, 2017、UPI, April 15, 2017などをもとに作成。

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