ダマスカス郊外県でアラブ・ガス・パイプラインが「テロ行為」によって爆発、全土が停電(2020年8月24日)

ダマスカス郊外県では、SANA(8月24日付)などによると、8月24日未明から早朝にかけて、ドゥマイル市とアドラー市の間を通過するアラブ・ガス・パイプラインの主線で火災が発生した。

アラブ・ガス・パイプラインはエジプトのシナイ半島から、ヨルダン、シリア、レバノンに天然ガスを運ぶパイプラインで、全長は1,200キロ。

火災の発生で、ダイル・アリー火力発電所、ナースィリーヤ火力発電所などに供給されていたガスの圧力が低下し、発電不能となった。

これにより、シリア全土で停電が発生した。

消防隊、民間防衛隊(ホワイト・ヘルメットではなく、正規の消防隊)が消火にあたり、午前中に鎮火、その後、石油鉱物資源省、電力省などの職員が復旧作業にあたった。

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アリー・ガーニム石油鉱物資源大臣は、事件発生直後に報道声明を出し、「南部地域に供給されるガス・パイプラインの主線が、テロ行為と思われる攻撃に晒された」と発表し、テロの可能性を疑った。

その後、シリア政府はテロ行為による爆発だと断定した。

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フサイン・アルヌース首相は、主要閣僚とともに消火直後に現場での復旧作業を視察し、「テロリストたちは爆破を通じて世界全体に破壊という言葉を向けた。なぜなら、犯罪者たちの言葉は不正と破壊だからだ。だが、我が国の労働者は、建設、建築、労働を愛しており、確固たる生活を営みたいという意志が勝者となる」と述べた。

アルヌース首相はまた、「発電所にガスを供給していたパイプラインが破壊されたことにより、1,100メガワットの電力が一時的に供給不能となった」としつつ、「だが、午前8時から開始された復旧作業により、夕方までにパイプラインの修復が完了し、電力供給も再開されるだろう」と付言した。

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イマード・サーラ情報大臣は、テロ行為に関して、スイスのジュネーブでの制憲委員会(憲法委員会)での会合再開に合わせたものだとの見方を示した。

その動機に関して、サーラ情報大臣は「譲歩を得たい者がいるからだ。だが、こうした譲歩は、シリアに対していかなるテロを行おうとも得ることはできないだろう…。英雄的な「奉仕軍」がシリア・アラブ軍の支援を受けて数時間中に被害を修復することが可能で、シリアに電力を再び供給することになろう」と述べた。

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ガーニム石油鉱物資源大臣は、「消火後ただちに技術調査が行われ、破損した部品の交換や修理が開始され、数時間後に復旧、ダマスカス郊外県各所の発電所へのガスの供給を再開した」と述べた。

ガーニム石油鉱物資源大臣によると、この地域のパイプラインが攻撃を受けたのは今回が6度目。

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ムハンマド・ズハイル・ハルブートリー電力大臣は、ガス・パイプラインの火災に伴ってダマスカス郊外県で発生した停電に関して、ヒムス県、ハマー県、沿岸部から電力を融通することで、病院、住居が徐々に解消していることを明らかにした。

AFP, August 24, 2020、ANHA, August 24, 2020、AP, August 24, 2020、al-Durar al-Shamiya, August 24, 2020、Reuters, August 24, 2020、SANA, August 24, 2020、SOHR, August 24, 2020、UPI, August 24, 2020などをもとに作成。

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