アスタナ15会議が閉幕:「テロとの戦い」継続、分離主義アジェンダ拒否、緊張緩和地帯合意の遵守、制憲委員会での憲法改革案提示を確認(2021年2月17日)

ロシアの避暑地ソチで2月16日に開幕したアスタナ15会議が予定されていた議事を終えて閉幕した。

2日目となる2月17日には、全体会合が開催され、ロシアのアレクサンドル・ラヴレンティフ・シリア問題担当大統領特使、イランのアリー・アスガル・ハージー外務大臣補、トルコのセダト・オナル外務副大臣、イラク、レバノン、ヨルダンの各国代表、ゲイル・ペデルセン・シリア問題担当国連特別代表、シリア政府代表団(アイマン・スーサーン外務在外居住者省次官が代表)、反体制派の代表団(シリア軍事革命諸勢力代表団、アフマド・トゥウマ氏が代表)が参加した。

全体会合では、イドリブ県の緊張緩和地帯の現況、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う人道状況などについて意見が交わされた。

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保障国であるロシア、トルコ、イランは閉幕声明で、ダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線(シャーム解放機構)、アル=カーイダとつながりがあるその他すべての組織・個人に対する「テロとの戦い」の継続、シリアの主権と領土の一体性を妨げる分離主義アジェンダへの対抗、国連安保理決議第2254号、緊張緩和地帯にかかる合意などの遵守、制憲委員会(憲法制定委員会)の基本原則に基づいた憲法改革案の提示を行うことを確認するとともに、欧米諸国による一方的制裁に拒否の姿勢を示し、国際社会に対してさらなる人道支援を呼びかけた。

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ロシアのラヴレンティフ特使は、閉幕時の記者会見で、シリアでの「テロとの戦い」について議論するには、ダーイシュ、シャームの民のヌスラ戦線、そして一部諸外国が「穏健な反体制派」として再編しようとしているいわゆるシャーム解放機構だけでなく、あらゆるテロ組織との戦いに注力しなければならないと述べた。

また、イドリブ県で活動を続けるテロ組織がホワイト・ヘルメットと協力して、シリア軍による化学兵器使用をねつ造しようとしていると警鐘を鳴らした。

さらに、国際社会に対してシリアへの難民帰還を妨害しないよう呼びかけるとともに、シリア北東部各所に違法に駐留する米軍による資源の盗奪を拒否すると表明した。

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スーサーン外務在外居住者省次官は、閉幕時の記者会見で、米国とトルコの違法な部隊駐留が、安定回復とテロ撲滅を阻害し、分離主義運動を奨励する主因だと非難した。

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トゥウマ・シリア軍事革命諸勢力代表団代表とアイマン・アースィミー報道官は記者会見で憲法起草を開始するための作業計画、作業方法、日程が必要との立場を表明したことを明らかにした。

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SANA(2月17日付)、ザマーン・ワスル(2月17日付)、ドゥラル・シャーミーヤ(2月17日付)などが伝えた。

AFP, February 17, 2021、ANHA, February 17, 2021、al-Durar al-Shamiya, February 17, 2021、Reuters, February 17, 2021、SANA, February 17, 2021、SOHR, February 17, 2021、Zaman al-Wasl, February 17, 2021などをもとに作成。

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