北・東シリア自治局はシリア危機解決に向けた9つのイニシアチブを発表(2023年4月18日)

北・東シリア自治局は世論向け声明を出し、シリア危機解決に向けた9つのイニシアチブを発表した。

「シリア危機解決に向けた自治局のイニシアチブ」と題された声明は、アブドゥルハーミド・マフバーシュ執行評議会共同議長がラッカ県のラッカ市にある執行評議会ビルの前で読み上げた。

 

声明では、シリア危機が解決に至らない主な理由として、(1)シリア危機への正しい分析と診断が欠如していたこと、(2)平和的・民主的な解決プログラムが案出されなかったこと、(3)シリアのすべての活動的な勢力が対話プロセスにに参加せず、外から押し付けられた解決策に固執してきたこと、という3つを上げたうえで、危機解決に向けて、以下9つのイニシアチブを提起した。

  1. 北・東シリア自治局は、シリアの領土の一体性と、国家統合の枠組みのなかでのみ問題解決が可能であることを確認し、シリア政府およびすべての政治的当事者と協議し、危機の解決に向けたイニシアチブを示し、解決策を見つけ出すため、会合と対話の用意がある。
  2. 民主的・社会的政策の欠如、シリアを構成する諸社会集団の特殊性や権利への承認欠如が危機の根本にあること、そしてすべての社会集団(宗派、集団)には特殊性、市民権、平等権があり、受容・尊重されるべき国民的共通性と特殊性が国民的な調和(ナスィージュ)を豊かなものにすることを踏まえ、シリア社会を構成するすべてのエスニック(アラブ人、クルド人、アッシリア人)・宗教集団の合法的権利を承認し、その集団としての権利を保護し、民主的価値やしくみを発展させ、民主的・多元的・分権的な行政体制を樹立するという信念のもとに、すべて集団が共有できる民主的解決策に至らねばならない。
  3. 北・東シリア地域において採用されている民主体制の試みによって、同地の諸人民が安全と安定のもと、それぞれの権利と自由を享受していることから、すべての人民は自治局を通じて自らの問題を解決できることが立証されており、女性の自由、環境保護などに基づいて、同地において採用されている社会民主的・環境的なモデルがシリア危機の解決にいたる基礎をなしていると信じている。
  4. 北・東シリア地域を含むシリア全域の経済的な資源(石油、ガス、農産物など)は公正に配分されねならず、シリア政府との対話や交渉を通じてすべての資源を共有する必要を再確認する。また、住民の基本的ニーズに対応するため、ヤアルビーヤ(ハサカ県)国境通行所を始めとする通行所をシリア政府の責任のもとに再開するべきである。
  5. シリアのすべての社会集団の難民、国内避難民(IDPs)が直面する問題や脅威を軽減、解消するため、自治局は彼らを受け入れる用意がある。
  6. ダーイシュ(イスラーム国)やその姉妹組織等に対する「テロとの戦い」を行い、シリア、地域、そして全世界からその脅威を排除する闘争や取り組みは続いており、北・東シリア自治局は世界に代わってこれらの組織を排除するための責任と犠牲を担っている。
  7. トルコ政府はシリアにおける危機を深刻化させ、その敵対的な行為は、地域の人口動態の改悪を目的としており、それによる人道的な悲劇、権利の侵害に沈黙することはできない。
  8. シリア危機の民主的平和的解決を進展させるため、アラブ諸国、国連、そしてシリアの問題にかかわるすべての外国勢力に、シリア政府、北・東シリア自治局、そして愛国的民主勢力が共有し得る解決策を探すのに資するための積極的で実効的な役割を果たすことを求める。
  9. シリアの統合と平和の枠組みのなかで危機を解決し、政治的解決策を発展・実施し、シリアの未来を築き、シリア国民の利益を守るため、北・東シリア自治局は、対話と未来に向けた合意に基づいて、すべての当時者に合理的な解決策を提起する明確は方法を持っている。このイニシアチブを愛国的な基礎のもとで提起し、みなにその参加と貢献を呼びかける。これは国連安保理決議第2254号をはじめとする諸決議と矛盾していない。

AFP, April 18, 2023、ANHA, April 18, 2023、al-Durar al-Shamiya, April 18, 2023、Reuters, April 18, 2023、SANA, April 18, 2023、SOHR, April 18, 2023などをもとに作成。

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