ロシア大統領府報道官:ロシア・トルコ・イラン三カ国首脳会談でイドリブ県への軍事作戦を行うことについては話し合われなかった」(2019年2月14日)

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシア・トルコ・イラン三カ国首脳会談後に、イドリブ県での軍事作戦実施の可能性について、「シリアのイドリブ県の事態を改善するための追加措置の一環として軍事作戦を行うことについて話し合いは行われなかった」と述べ、会談を受けて同地への軍事攻勢が強まるとの見方を否定した。

スプートニク・ニュース(2月14日付)が伝えた。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、Sputnik News, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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ロシア・トルコ・イラン首脳会談でシリア情勢への対応協議:米軍撤退後の情勢、イドリブ県の処遇をめぐって連携を続けることを確認(2019年2月14日)

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、イランのハサン・ロウハーニー大統領は、ロシアのソチで首脳会談を行い、シリア情勢への対応を協議した。

会談には、各国の外務大臣、国防大臣らも同席した。

会談では、シリア駐留米軍撤退決定への対応、北・東シリア自治区の支配下にあるシリア北部の国境地帯の処遇、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握しているイドリブ県および同地一帯の反体制派支配地域(緊張緩和地帯第1ゾーン)の処遇、紛争の政治的解決に向けた制憲委員会設置への対応、シリア復興への対応などについて意見が交わされた。

会談後、三カ国首脳は閉幕声明を発表、共同記者会見に臨んだ。

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閉幕声明の主旨は以下の通り:

1. シリアの主権、独立、領土統一、国連憲章を尊重する。
2. 「テロとの戦い」を口実として、シリアの国土に新たな現実を作り上げようとするあらゆる試みを拒否する。
3. シリア駐留米軍の撤退は、実行されれば、シリアの治安と安定を強化する。それゆえ、その早期実現を求める。
4. シャーム解放機構が影響力を強めているイドリブ県などシリア北西部の緊張緩和地帯にかかる諸合意を実施するための措置を講じる。
5. ダーイシュ(イスラーム国)、シャーム解放機構、そのほかアル=カーイダやダーイシュとつながりのある個人、組織、国連安保理がテロ組織に指定するそのほかの組織の根絶に向けて協力する。
6. シリア北東部情勢に関して、その治安と安定を保証するための連携して努力を行う。その際、これまでの合意に立ち返り、主権、領土保全を尊重する。
7. 国連安保理決議第2254号に従い、危機の軍事的解決は行わない。
8. 制憲委員会の設置と活動開始に向けて、シリアの当事者、そしてシリア問題担当国連特別代表と連携・協力を継続する。
9. シリア全土における安定回復に向けた支援の努力を継続し、国連、関連機関など国際社会に対して、支援を増大させ、水道、電力、学校、病院などのインフラ復旧に貢献し、シリア難民が帰還するのにふさわしい環境を整備するよう呼びかける。
10. 4月にトルコにおいて三カ国首脳会談を開催する。

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ロシアのプーチン大統領は共同記者会見で、「米軍が発表したシリア北東部からの部隊撤退計画がシリア情勢の進展にどのような影響を与えるのかについて議論がなされた…。我々はこうした措置が前向きなもので、シリア国内のこの地位(北東部)の事態の安定化に資すると見ている。合法的な政府が最終的にこの地域を再び掌握しなければならない」と述べた。

イドリブ県などシリア北西部の反体制派支配地域の処遇については、「イドリブ県のテロの温床に寛容であることはできない。これを殲滅するための措置が講じられねばならない」と述べた。

また、「イドリブ県における(アスタナ会議)保障国(監視部隊の)駐留は一時的なもので、反体制派の支配下にあるイドリブ県の過激派が行ってくる敵対行為は懲罰なしには済まされない」と付言した。

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イランのロウハーニー大統領は、トルコとシリア政府の断交状態に関して、「イランはアンカラとダマスカスの関係を緊密化させるため万全の用意がある」と述べ、シリアとトルコの関係改善を仲介する意思を示した。

また、イドリブ県などシリア北西部の反体制派支配地域の処遇については、「ヌスラ戦線(シャーム解放機構)に属していたイドリブ県の戦闘員を浄化する(ロシアの)意志を支援する…。彼らが名前を変えたという理由だけで、彼らを放置するのは間違いだ…。イドリブ県はシリアの一部で、テロリストをそこから浄化する必要がある。どのように名のっていようとシリアから退去させねばならない」と強調した。

そのうえで、「我々はテロとの戦いに関する我々の方針を確認した・我々はイドリブ県にかかる覚書に従ってでき得ることをするよう努力を続ける…。我々はシリアであれ、ほかの地域であれ、イドリブ県であれ、新たな悲劇も新たな人道危機も望んでいない。トルコは、困難ななか、一部諸国の挑発にもめげず、イドリブ県を平穏に保つため、多大な努力を行ってきた」と付言した。

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エルドアン大統領は、ドナルド・トランプ米大統領によるシリア駐留米軍撤退決定について「この決定がいつ実施されるのか、そして実際に行われるのかが不明確だ…。イランはロシア、イランと連携して、シリアからの米軍撤退を支援したい。一方でシリアの国土統一の尊重する必要があり、他方で新たに設置されるであろう安全地帯がテロリストに掌握されないようにすることを保証する必要がある」と述べた。

イドリブ県などシリア北西部の反体制派支配地域の処遇については、「イドリブ県では停戦が行われている。シリア政府はそれを守らねばならない…。トルコがめざしているのは、シリアの領土統一を実現し、マンビジュ市(アレッポ県)からテロリストを浄化し、イドリブ県のテロ分子に居場所を与えないことだ」と述べた。

シリア政府との関係修復を仲介するとのロウハーニー大統領の提案に対して、コメントはしなかった。

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RT(2月14日付)、SANA(2月14日付)、ドゥラル・シャーミーヤ(2月14日付)などが伝えた。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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ロシア外務省報道官「トルコがシリア領内に安全地帯を設置するには、アサド大統領からの青信号が必要」(2019年2月14日)

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ソチでのロシア・トルコ・イラン三カ国首脳会談に先だって「アンカラがシリア領内に安全地帯を設置するには、シリアのバッシャール・アサド大統領からの青信号が必要となる」と述べた。

ザハロワ報道官は「主権国家、とりわけシリア領内で、第三国が作戦を行うために部隊を駐留させることの是非は、ダマスカスが直接決着させる問題だというのが、我が国の基本姿勢である」と付言した。

ロイター通信(2月14日付)が伝えた。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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トルコのエルドアン大統領「ロシアと連携してシリア北部に安全地帯を設置したい」(2019年2月14日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、ソチでのロシア・トルコ・イラン三カ国首脳会談に先立って記者団に対して「我々は(シリア北部に)安全地帯を設置する構想を支援する。それが我が国の国家安全保障上の懸念を払拭することに資することになる…。トルコはそのためにロシアと連携したい」と述べた。

エルドアン大統領はそのうえで、「民主統一党(PYD)、人民防衛隊(YPG)をマンビジュ市(アレッポ県)とユーフラテス川以東地域から浄化することなしに、シリアの国土統一を実現することはできない」と強調し、トルコが実質占領下に置いているアレッポ県北部、さらにはイドリブ県の領空で協力態勢を確立することが重要だと指摘した。

シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握したイドリブ県を中心とする反体制派支配地域については「イドリブ県で起こり得るあらゆる攻撃から民間人を守らねばならない。テロ組織の武器を撤去することが(首脳会談で)議論されるだろう」と述べた。

また、2018年1月のソチでのシリア国民対話大会で設置合意された制憲委員会については、近く設置が発表されるだろうとの見方を示した。

ドゥラル・シャーミーヤ(2月14日付)が伝えた。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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YPG主体のシリア民主軍はシリア国内最後のダーイシュの拠点上バーグーズ村を完全制圧、投降した外国人戦闘員約200人連行される(2019年2月14日)

ダイル・ザウル県では、ユーフラテス・ポスト(2月14日付)によると、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が、上バーグーズ村内のダーイシュ(イスラーム国)の支配地域を完全制圧した。

ダーイシュは、上バーグーズ村内に1平方キロの支配地域を掌握していたが、外国人戦闘員200人強がシリア民主軍に投降、シリア民主軍が同地に入り、これを完全制圧した。

同サイトによると、投降した戦闘員を乗せていると思われる大型車輌7両とこれを護衛する米国製のハンヴィー(HMMWV)複数輌からなる車列が同地を後にしたが、目的地は定かではないという。

なお、ANHA(2月14日付)は、イラク人や外国人からなるダーイシュ戦闘員数十人が13日に投降したと伝えていた。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、Euphrates Post, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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アフリーン解放軍団はトルコの支援を受ける反体制武装集団の車輌を爆破(2019年2月14日)

アレッポ県では、アフリーン解放軍団が声明を出し、13日にバーブ市近郊のハズワーン村近くでトルコの支援を受ける反体制武装集団の車輌に仕掛けた爆弾を爆発させ、戦闘員3人を殺害した、と発表した。

ANHA(2月14日付)が伝えた。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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シリア軍がヒムス県東部でダーイシュの残党を追撃、多数の戦闘員を殲滅(2019年2月14日)

ヒムス県では、SANA(2月14日付)によると、県東部のタドムル砂漠でダーイシュ(イスラーム国)の残党を追撃するシリア軍部隊がダーイシュと交戦、多数の戦闘員を殲滅、車輌2台を破壊した。

破壊した車輌2台のうち1台には、重火器、弾薬が積載されていた。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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イドリブ県、ハマー県でシリア軍と反体制武装集団が交戦(2019年2月14日)

イドリブ県では、SANA(2月14日付)によると、シリア軍がハーン・シャイフーン市一帯でシャーム解放機構の停戦違反を確認、その拠点、陣地を砲撃した。

シリア軍はまた、スカイク村からシリア政府支配地域に潜入しようとした武装集団を撃退した。

一方、ドゥラル・シャーミーヤ(2月14日付)によると、シリア軍は、ハーン・シャイフーン市を砲撃し、住民1人が負傷した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、軍用車輌約20輌からなるトルコ軍の車列が、14日未明にシール・マガール村に入った。

また、SANA(2月14日付)によると、シリア軍がフワイズ村、フワイジャ村からガーブ平原東部に潜入しようとしたトルキスタン・イスラーム党を撃退した。

一方、ドゥラル・シャーミーヤ(2月14日付)によると、シリア軍はバッザーム丘、カフルズィーター市、マアルカバ村、サフル丘を砲撃した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を4件(アレッポ県1件、イドリブ県2件、ハマー県1件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を7件(ハマー県4件、アレッポ県1件、イドリブ県2件)を確認した。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Ministry of Defence of the Russian Federation, February 14, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:レバノンから304人、ヨルダンから900人の難民が帰国、避難民112人が帰宅(2019年2月14日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(2月14日付)を公開し、2月13日に難民1,204人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは304人(うち女性92人、子供155人)、ヨルダンから帰国したのは900人(うち女性270人、子供459人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は134,248人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者54,210人(うち女性16,393人、子ども27,566人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者79,537人(うち女性23,887人、子ども40,549人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 363,027人(うち女性108,938人、子供185,037人)となった。

なお、45カ国で難民登録したシリア人の数は6,673,308人(うち女性2,002,592人、子供3,404,407人)。

一方、国内避難民112人が新たに帰宅した。

うち東グータ地方に帰宅したのは112人(うち女性33人、子供59人)、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは0人、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は8,303人(うち女性2,828人、子供3,686人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,276,899人(うち女性385,152人、子供647,452人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, February 14, 2019をもとに作成。

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ドイツに続いてフランスでも元諜報機関職員とされるシリア人1人を逮捕(2019年2月14日)

フランス警察は、シリア諜報機関に在職中の2011年から2013年にかけて、人道に対する罪を犯したとされるシリア人男性1人を首都パリで逮捕した。

フランスの検察当局によると、逮捕されたのは、シリアの諜報機関で働いていた30代の男性で、氏名は公表されなかった。

AFP(2月14日付)が伝えた。

なお、13日にはドイツの検察当局が同様のシリア人2人を逮捕したと発表している。

AFP, February 14, 2019、ANHA, February 14, 2019、AP, February 14, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 14, 2019、al-Hayat, February 15, 2019、Reuters, February 14, 2019、SANA, February 14, 2019、UPI, February 14, 2019などをもとに作成。

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シリアの国内避難民(IDPs)対象に実施した世論調査の詳細な結果が公開される(2019年2月14日)

日本学術振興会の科学研究費補助金事業による研究プロジェクト「東アラブ地域の非公的政治主体による国家機能の補完・簒奪に関する研究」(基盤研究(A)、研究代表者:東京外国語大学・青山弘之教授)がシリア世論調査研究センター(SOCPS)の協力を得て昨年9~10月にシリアの国内避難民(IDPs)対象に実施した世論調査「中東世論調査(シリア避難民2018)」の詳細な結果(単純集計報告書)が「現代中東政治研究ネットワーク(CMESP-J.net)」で公開された。

日本語版

英語版

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CMEPS-J.net内の「中東世論調査(シリア避難民2018)」(英語版は「Middle East Public Opinion Survey (Syrian Internally Displaced Persons 2018)」)によると、調査の対象となったのは、割当法によって選ばれたダマスカス県、ダマスカス郊外県、アレッポ県、ヒムス県、ラタキア県、ハサカ県在住の国内避難民(IDPs)1,817人で、聴き取りはアラビア語による個別訪問面接聴取法によって行われた。

AFP, February 13, 2019、ANHA, February 13, 2019、AP, February 13, 2019、al-Durar al-Shamiya, February 13, 2019、al-Hayat, February 14, 2019、Reuters, February 13, 2019、SANA, February 13, 2019、UPI, February 13, 2019などをもとに作成。

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