トルコのエルドアン大統領「明日、イドリブ県で我々がとるであろうステップを発表する」(2020年2月11日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、フアド・エクタイ副首相、メヴリュト・チャヴシュオール外務大臣、フルシ・アカル国防大臣、ヤシャル・ギュレル参謀総長、ハカン・フィダン国家諜報機構(MİT)長官と首都アンカラで安全保障会議を開き、イドリブ県での戦況への対応について協議した。

アナトリア通信(2月11日付)などが伝えたところによると、会合ではイドリブ県、アレッポ県に展開するトルコ軍に対するシリア軍の攻撃が繰り返された場合、断固として対抗するとともに、緊張緩和地帯での戦闘阻止、国境地帯の安全確保、難民流入と人道危機発生阻止のためにシリア領内での部隊駐留を継続することが確認された。

エルドアン大統領は「シリア政府はイドリブ県でトルコ軍兵士を攻撃したことの大きな代償を支払うことになる…。我々はシリア側に最大級の報復を実行した。イドリブ県でも同じく実行した。だが、これで充分だとは思っていない。我々は報復を継続する」としたうえで、「明日、我々がとるであろうステップを発表する」と述べた。

AFP, February 11, 2020、Anadolu Ajansı, February 11, 2020、ANHA, February 11, 2020、AP, February 11, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 11, 2020、Reuters, February 11, 2020、SANA, February 11, 2020、SOHR, February 11, 2020、UPI, February 11, 2020などをもとに作成。

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ジェフリー米国務省シリア問題担当特使がイドリブ県の戦況への対応を協議するためトルコに派遣される(2020年2月11日)

アナトリア通信(2月11日付)によると、ジェームズ・ジェフリー米国務省シリア問題担当特使が、イドリブ県の戦況への対応についてトルコ側と協議するため、トルコの首都アンカラに派遣された。

アンカラに到着したジェフリー特使は、シリア軍の攻撃を厳しく非難するとともに、同盟国であるトルコと密に連絡を取り続けると強調、「私はトルコ政府とともに現状を評価するためにアンカラにやって来た。我々はトルコを最大限支援したい。なぜなら、トルコ軍は米国の同盟者であり、イドリブ県で体制(シリア)とロシアがもたらす危機に直面しているからだ」と述べた。

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マイク・ポンペオ米国務長官は報道向け声明を出し、イドリブ県でのシリア軍の攻撃で死亡したトルコ軍兵士の遺族に弔意を示した。

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NATO(北大西洋条約機構)のヤンス・ストルテンベルグ事務総長はブリュッセルで予定されている加盟国国防大臣会合に先立って、シリア情勢について言及、「イドリブ県での攻撃を非難する。アサド体制とロシアに攻撃を停止するよう至急呼びかけたい」と述べた。

一方、ケイ・ベイリー・ハッチソン米NATO常駐代表は「我々はトルコがシリアで行っている措置すべてに同意はしていないが、ロシアによって支援されたシリアによるこの攻撃は限度を超えている」と非難、「我々はこの事態においてトルコを支援することを断固たる意志をもって検討している・我々はロシアにアサドへの支援を止め、シリアでの和平合意に向けて前進する可能性を創り出すよう求める」と述べた。

AFP, February 11, 2020、Anadolu Ajansı, February 11, 2020、ANHA, February 11, 2020、AP, February 11, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 11, 2020、Reuters, February 11, 2020、SANA, February 11, 2020、SOHR, February 11, 2020、UPI, February 11, 2020などをもとに作成。

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ダルアー県とクナイトラ県でシリア・ロシア軍によるイドリブ県への攻撃の停止や体制打倒を訴えるビラが貼られる(2020年2月11日)

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ナーフタ町、ヤードゥーダ村、タスィール町、ラジャート高原、ウンム・ワラド村、カラク村で、シリア・ロシア軍によるイドリブ県への攻撃の停止を訴えるビラが商店のシャッターや壁に貼られているのが発見された。

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クナイトラ県では、シリア人権監視団によると、サイダー・ハーヌート村、マクラズ村で「アサトは倒れ、革命は続く…。我々は逮捕者(釈放)を欲する…、クナイトラは自由だ…。イランは出て行け」などとかかれたビラが商店のシャッターや壁に貼られているのが発見された。

AFP, February 11, 2020、ANHA, February 11, 2020、AP, February 11, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 11, 2020、Reuters, February 11, 2020、SANA, February 11, 2020、SOHR, February 11, 2020、UPI, February 11, 2020などをもとに作成。

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シリアの外務在外居住者省と軍武装部隊総司令部はそれぞれ声明を出し、トルコの敵対行為はテロ組織を再生させず、シリア軍はこれを殲滅すると発表(2020年2月11日)

外務在外居住者省の公式筋は、イドリブ県に展開するトルコ軍がシリア軍ヘリコプターを撃墜したことを受けて声明を出し、トルコがシリアの主権を侵害し、イドリブ県およびアレッポ県に部隊を展開させ、民間人やシリア軍の拠点に対して攻撃を行っていると非難、こうした敵対行為によってもテロ組織は再生できず、シリア軍は「テロとの戦い」を継続し、これらの組織を殲滅、シリアの全国土を回復すると強調した。

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軍武装部隊総司令部も声明を出し、トルコ軍の敵対行為が、武装したタクフィール主義テロを守り切ることはできず、シリア軍はイドリブ県、アレッポ県での戦闘を継続し、様々な組織名をなのるテロリストを根絶し、シリア全土に治安と安定を回復すると強調した。

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SANA(2月11日付)が伝えた。

AFP, February 11, 2020、ANHA, February 11, 2020、AP, February 11, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 11, 2020、Reuters, February 11, 2020、SANA, February 11, 2020、SOHR, February 11, 2020、UPI, February 11, 2020などをもとに作成。

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トルコ軍と国民軍はハサカ県タッル・タムル町近郊を激しく砲撃(2020年2月11日)

ハサカ県では、SANA(2月11日付)、ANHA(2月11日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍がマーリキーヤ(ダイリーク)市近郊のスッカリーヤ村に反体制武装集団メンバー数十人を移送、タッル・タムル町近郊のルバイア村、ムジャイビラト・シャッラービーン村、ウンム・ハイル村、トゥワイラ村、ダルダーラ村を砲撃した。

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ラッカ県では、ANHA(2月11日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍がタッル・アブヤド市近郊のカズアリー村を砲撃した。

AFP, February 11, 2020、ANHA, February 11, 2020、AP, February 11, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 11, 2020、Reuters, February 11, 2020、SANA, February 11, 2020、SOHR, February 11, 2020、UPI, February 11, 2020などをもとに作成。

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トルコ軍はイドリブ県でシリア軍ヘリコプターを撃墜、アル=カーイダを砲撃支援、対するシリア軍はM5高速道路全線を掌握、イドリブ県バーブ・ハワー国境通行所に至る街道を寸断、ロシア軍もトルコ軍部隊を爆撃(2020年2月11日)

イドリブ県では、SANA(2月11日付)によると、シリア軍ヘリコプター1機が午前11時30分頃、ナイラブ村およびクマイナース村上空で地対空ミサイルを被弾し墜落、乗組員1人が死亡した。

https://youtu.be/uPsvsB0QFJQ

シリア軍ヘリコプターを撃墜したのはトルコ軍で、シリア人権監視団によると、死者は操縦士2人(大佐と大尉)、「樽爆弾」を投下する爆撃手1人の合わせて3人。

また、シリア人権監視団によると、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構、トルコが後援する国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる「決戦」作戦司令室が、トルコ軍の砲撃支援を受けて、M4高速道路沿線に位置するナイラブ村に侵攻、シリア軍との戦闘の末、11日午後に同地を制圧した。

これに対して、シリア軍は反撃し、これを奪還した。

一方、シリア軍は早朝にシャイフ・ダーミス村に進攻し、「決戦」作戦司令室との戦闘の末に同地を一時制圧したが、「決戦」作戦司令室はほどなくこれを奪還、シリア軍兵士1人を捕捉した。

また、ロシア軍戦闘機は、トルコ軍と「決戦」作戦司令室が攻勢を強めるナイラブ村一帯やトルコ軍が展開するクマイナース村などM4高速道路沿線一帯を爆撃した。

この爆撃でが死傷が出て、トルコ軍ヘリコプターが負傷者を搬送した。

死傷者がトルコ軍兵士なのか、「決戦」作戦司令室の戦闘員なのかは不明。

シリア軍戦闘機もカフルナブル市、クマイナース村一帯、ビンニシュ市、カファルヤー町、フーア市、イドリブ市、サルミーン市を爆撃、ヘリコプターも同地などに「樽爆弾」を投下した。

このうち、イドリブ市に対する爆撃は、工業地区、ジャラー地区に対して行われ、子ども6人を含む12人が死亡、少なくとも32人が負傷した。

なお、トルコ国防省はイドリブ県での戦闘に関して声明を出し、シリア軍兵士51人、戦車2輌、対空砲1基、武器庫1棟を無力化したと発表した。

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アレッポ県では、SANA(2月11日付)によると、シリア軍がシャーム解放機構などからなる反体制武装集団に対する攻撃の末、ハーン・アサル村、アレッポ市西部郊外のラーシディーン第4地区を制圧した。

これに関して、シリア人権監視団は、シリア軍が2012年以来初めて、M5高速道路全線を奪還したと発表した。

同監視団によると、シリア軍はまた、アレッポ市とイドリブ県のバーブ・ハワー国境通行所を結ぶ街道を寸断することに成功した。

バーブ・ハワー国境通行所は、国連安保理決議第2504号(2020年1月11日)でバーブ・サラーマ国境通行所とともに、クロスボーダーでの人道支援が認められている通行所。

一方、ロシア軍戦闘機は、イッビーン村方面に向かおうとしていたトルコ軍の車列を爆撃した。

ロシア軍戦闘機はまた、トルコ軍が拠点を設置したアレッポ市西部郊外にある第46中隊基地、アターリブ市、アブザムー町、アウラム・クブラー町、マンスーラ村、カフルハムラ村、カフル・ヌーラーン村一帯に対しても爆撃を加えた。

これに対して、トルコ軍部隊は、アターリブ市とジーナ村を結ぶ街道に新たな拠点を設置した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がクルド山を爆撃した。

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シリア人権監視団によると、トルコ軍の戦車、大型トレーラーなど200輌以上からなる増援部隊がイドリブ県カフルルースィーン村に違法に設置されている国境通行所からシリア領内に新たに入り、M4高速道路沿線やアレッポ県イッビーン村方面に向かった。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を27件(イドリブ県15件、ラタキア県8件、アレッポ県2件、ハマー県2件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を2件(イドリブ県0件、ラタキア県0件、アレッポ県2件、ハマー県0件)確認した。

AFP, February 11, 2020、ANHA, February 11, 2020、AP, February 11, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 11, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, February 11, 2020、Reuters, February 11, 2020、SANA, February 11, 2020、SOHR, February 11, 2020、UPI, February 11, 2020などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民634人と国内避難民(IDPs)3人が新たにシリア政府支配地域に帰還、2018年半ば以降帰還した難民は549,569人、2019年以降帰還したIDPsは49,960人に(2020年2月11日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(2月11日付)を公開し、2月10日に難民836人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは202人(うち女性60人、子供103人)、ヨルダンから帰国したのは634人(うち女性190人、子供323人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は549,569人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者173,537人(うち女性52,455人、子ども88,799人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者376,032人(うち女性112,854人、子ども191,768人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

45カ国で難民登録したシリア人の数は6,569,742人(うち女性1,970,923人、子供3,350,568人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 778,849人(うち女性233,967人、子供397,489人)となった。

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一方、国内避難民3人が新たに帰宅した。

うちダマスカス郊外県東グータ地方に帰宅したのは0人、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山のジュライギム通行所を経由して帰還したのは3人、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所およびハマー県スーラーン町の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

グラーブ山通行所を経由して帰還した3人のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は49,960人(うち女性16,283人、子供21,666人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,318,556人(うち女性398,842人、子供665,432人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, February 11, 2020をもとに作成。

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