トルコのエルドアン大統領はイドリブ県情勢をめぐってシリア北東部に「安全地帯」増設を要求(2020年2月29日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、与党公正発展党(AKP)の党員に対して演説を行い、イドリブ県情勢をめぐって、同地ではなくシリア北東部国境地帯で「安全地帯」を設置し続ける意向を表明した。

エルドアン大統領の主な発言は以下の通り:

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「トルコはアサドではなく、シリア国民の要請を受けて、シリアに向かう」。

「イドリブ県情勢を利用して、トルコを貶めようとする者がいる…。南部国境地帯に100万人以上のシリア人のための「安全地帯」を設置することを求めている」。

「ロシアは手を引き、シリアがシリア政府にだけ(軍事的に)対処できるようにするよう求めている…。代償を支払わねばならないのはシリア政府だ…。我々はイドリブ県にいるシリア人数百万人がシリア政府のもとに置かれることを放置できない…。イドリブ県で続けられている我々の闘争は血塗られた体制と戦う人々を守るためだ」。

「トルコはシリア領内に幅30キロの「安全地帯」を設置しようとし続けている…。しかし、ロシアと米国はテロ組織をシリア北部から排除するという約束を守っていない」。

「EUは我々との約束を守っていないため、我々は難民を前にして門戸を閉ざすことはない。我々が彼らすべてを保護する義務はない…。シリア難民300万人以上がシリア領内で暮らしている。我々はさらなる難民の波に耐えることはできない」。

「我々は、シリアの石油も領土も要らない。我が国の国境に安全を確保したいだけだ。シリアとの国境でテロ組織の脅威に対する安全を確保できなければ、事態は深刻になる…。我々はシリア領内でテロ組織と戦わなければ、我々はトルコで戦わざるを得なくなる…。シリア国内には40,000人から60,000人のテロリストが教練を受け、我が国にとって脅威となっている」。

「我々はすでに、シリア政府側の2,000人以上を殺害し、車輌300輌、滑走路、化学兵器庫を破壊した」。
AFP, February 29, 2020、ANHA, February 29, 2020、AP, February 29, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 29, 2020、Reuters, February 29, 2020、SANA, February 29, 2020、SOHR, February 29, 2020、UPI, February 29, 2020などをもとに作成。

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トルコ国家安全保障会議の決定を受け、シリア難民37,776人が欧州に入る(2020年2月29日)

トルコ国営のアナトリア通信(2月29日付)は、トルコ国家安全保障会議が27日にシリア難民の欧州への移動を阻止しないと決定したのを受け、シリア難民37,776人が27日から29日晩までの間に、エディルネ県から欧州(ギリシャ)に渡ったと伝えた。

AFP, February 29, 2020、Anadolu Ajansı, February 29, 2020、ANHA, February 29, 2020、AP, February 29, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 29, 2020、Reuters, February 29, 2020、SANA, February 29, 2020、SOHR, February 29, 2020、UPI, February 29, 2020などをもとに作成。

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トルコ軍と国民軍は北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊(アレッポ県)を砲撃(2020年2月29日)

アレッポ県では、ANHA(2月29日付)によると、トルコ軍のその支援を受ける国民軍が北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊のシャイフ・ヒラール村、ダイル・ジュマイイル村、カフル・ナーヤー村、イルシャーディーヤ村、タート・マラーシュ村、アルカミーヤ村を砲撃した。

AFP, February 29, 2020、ANHA, February 29, 2020、AP, February 29, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 29, 2020、Reuters, February 29, 2020、SANA, February 29, 2020、SOHR, February 29, 2020、UPI, February 29, 2020などをもとに作成。

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イランのロウハーニー大統領はイドリブ県の事態収拾に向けて、トルコのエルドアン大統領、ロシアのプーチン大統領と電話会談(2020年2月29日)

イランのIRNA通信(2月29日付)によると、ハサン・ロウハーニー大統領がトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、ロシアのヴラジミール・プーチン大統領と個別に電話会談を行い、イドリブ県情勢への対応を協議した。

ロウハーニー大統領は、エルドアン大統領との会談でイドリブ県で「テロとの戦い」を行うことが重要だとしたうえで、「イドリブ県情勢の悪化は、どの国のためにもならない…。イドリブ県の危機は、政治的な対話で解決すべきで、アスタナ会議のプロセスを衰退させるべきではない」と伝えた。

また、「イラン政府は、シリアでの問題解決に向けたアスタナ会議のプロセスの一環として、イラン、ロシア、トルコの三カ国首脳会談を開催する用意がある」と付言した。

一方、プーチン大統領との会談では、アスタナ会議での合意の包括的な即時実施の重要性を確認するとともに、イドリブ県情勢を口実とした米国のシリア情勢への介入を許さないことが必要だと強調した。

AFP, February 29, 2020、ANHA, February 29, 2020、AP, February 29, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 29, 2020IRNA, February 29, 2020Reuters, February 29, 2020、SANA, February 29, 2020、SOHR, February 29, 2020、UPI, February 29, 2020などをもとに作成。

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トルコ軍がイドリブ県内のシリア軍拠点への爆撃を続け、兵士26人とヒズブッラー民兵10人が新たに死亡(2020年2月29日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、トルコ政府が最近の戦闘での制圧地からのシリア軍の撤退期限としていた2月29日、トルコ軍無人航空機(ドローン)が、M5高速道路沿線のマアッラト・ヌウマーン市、サラーキブ市、マアッルシューリーン村、ハーッス村、タッル・マルディーフ村一帯のシリア軍拠点、ナイラブ航空基地を爆撃した。

この爆撃で、シリア軍兵士26人と、レバノンのヒズブッラーの民兵10人が新たに死亡したという。

トルコ日刊紙『ミッリイェト』(2月29日付)は、トルコ軍が無人航空機を投入し、イドリブ県の領空封鎖を試みていると伝えた。

また、アラビー21(2月29日付)は、トルコ軍がドローン数十機からなる編隊をイドリブ県に進入させ、シリア軍の拠点を爆撃することで進軍を止め、反転攻勢に出ていると伝えた。

トルコ軍はまた、地上部隊がサラーキブ市近郊、ザーウィヤ山にあるシリア軍の拠点を砲撃するとともに、ヒルバト・ジャウズ村に違法に設置されている国境通行所から戦車や装甲車など約120輌をシリア領内に進入させた。

これに対して、ロシア軍戦闘機は、サルミーン市、サラーキブ市、アーフィス村などを爆撃、シリア軍戦闘機もサラーキブ市およびその一帯を爆撃した。

シリア軍はまた、地上部隊がサラーキブ市、サルミーン市、ビンニシュ市、マストゥーマ村、クマイナース村、ダーディーフ村、ザカール村、マアーッラト・ウルヤー村、カフルバッティーフ村、マアーッラト・ナアサーン村、ジャーヌーディーヤ町などを砲撃し、ビンニシュ市では子ども1人が死亡した。

一方、ザーウィヤ山地方のスフーフン村、カフル・ウワイド村では、シャーム解放機構、国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる「決戦」作戦司令室がシリア軍に対して反転攻勢を加え、両村を制圧した。

これに対して、シリア軍が再び反撃し、スフーフン村を奪還した。

なお、SANA(2月29日付)は、シリア軍がカフル・ウワイド村、サラーキブ市でトルコ軍の砲撃支援を受ける「テロ集団」に対する軍事作戦を継続したと伝えた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がカフル・ヌーラーン村一帯、アターリブ市一帯を爆撃した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、「決戦」作戦司令室がクライディーン村、ザクーム村でシリア軍に反転攻勢を加えて、両村を制圧した。

これに対して、シリア軍が再び反撃、クライディーン村を奪還した。

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シリア人権監視団によると、一連の戦闘で、シリア軍兵士23人、「決戦」作戦司令室戦闘員31人が死亡した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を39件(イドリブ県8件、ラタキア県12件、アレッポ県18件、ハマー県1件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を36件(イドリブ県33件、ラタキア県0件、アレッポ県3件、ハマー県0件)確認した。

AFP, February 29, 2020、ANHA, February 29, 2020、AP, February 29, 2020、Arabi 21February 29, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 29, 2020、Milliyet, February 29, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, February 29, 2020、Reuters, February 29, 2020、SANA, February 29, 2020、SOHR, February 29, 2020、UPI, February 29, 2020などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民701人が新たに帰還、2018年半ば以降帰還した難民は565,404人に(2020年2月29日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(2月29日付)を公開し、2月28日に難民701人が新たに帰国したと発表した。


このうちレバノンから帰国したのは178人(うち女性53人、子供91人)、ヨルダンから帰国したのは523人(うち女性157人、子供267人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は565,404人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者178,760人(うち女性54,025人、子ども91,466人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者386,644人(うち女性116,037人、子ども197,181人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

45カ国で難民登録したシリア人の数は6,568,303人(うち女性1,970,491人、子供3,349,835人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は794,684人(うち女性238,720人、子供405,569人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, February 29, 2020をもとに作成。

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