ストルテンベルグNATO事務総長「イドリブ県でトルコを支援する証として防空体制を強化する」(2020年2月12日)

NATO(北大西洋条約機構)のヤンス・ストルテンベルグ事務総長は加盟国国防大臣会合後の記者会見で、シリア軍がイドリブ県で市民に対して無差別爆撃を行っていると非難、トルコを支援する証として防空体制を強化すると表明した。

AFP, February 13, 2020、ANHA, February 13, 2020、AP, February 13, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 13, 2020、Reuters, February 13, 2020、SANA, February 13, 2020、SOHR, February 13, 2020、UPI, February 13, 2020などをもとに作成。

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ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領が電話会談でソチでの合意を履行する必要を確認(2020年2月12日)

ロシアのヴラジミール・プーチン大統領とトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が電話会談を行った。

ロシア大統領府の発表によると、両首脳はシリア危機、とりわけイドリブ県の緊張緩和地帯での事態悪化への対応について協議、2018年9月17日にソチで交わされた合意(非武装地帯設置合意)を履行する必要があることを確認した。

AFP, February 12, 2020、ANHA, February 12, 2020、AP, February 12, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 12, 2020、Reuters, February 12, 2020、SANA, February 12, 2020、SOHR, February 12, 2020、UPI, February 12, 2020などをもとに作成。

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シリアの外務在外居住者省はエルドアン大統領の演説を「現実から乖離した空虚な発言」と一蹴(2020年2月12日)

シリアの外務在外居住者省筋は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の大国民議会(国会)での演説に関して「現実から乖離し、事態を何ら理解していないた者以外の誰も発することのない、無知に彩られた空虚な発言」と非難した。

SANA(2月12日付)が伝えた。

AFP, February 12, 2020、ANHA, February 12, 2020、AP, February 12, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 12, 2020、Reuters, February 12, 2020、SANA, February 12, 2020、SOHR, February 12, 2020、UPI, February 12, 2020などをもとに作成。

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トルコのエルドアン大統領「トルコ軍がどんな些細な被害を受けようとも、シリア軍に打撃を与える。ソチでの覚書には縛られない」(2020年2月12日)

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は大国民議会(国会)で演説し、シリア・ロシア軍の攻勢が続くイドリブ県での今後の対応策について明らかにした。

エルドアン大統領は次のように述べた。

「現段階において、本日よりここに宣言したい。(シリア領内の)監視所、あるいはそれ以外の場所で我が軍の兵士がどんな些細な被害を受けたとしても、我々はあらゆる場所で政権軍に打撃を与える。それはイドリブ県境に制限されることも、ソチでの覚書に縛られることもない」。

「体制(シリア軍)がシリア北部に駐留する我が軍を標的とすることで、14人が死亡、41人が負傷した…。我が軍兵士の血が流されたいかなる場所においても、誰も安全ではいられない。自分のことを偉大なと考えていてもだ」。

「シリアの体制の航空機は今後、イドリブ県上空を好きに航行することはない…・体制の爆撃は、イドリブ県をたやすく占領するため、住民を我が国国境へと移動させ、この地域を完全に無人化するのが狙いだ」。

「トルコはイドリブ県で起きていることに沈黙はしない。みながそこで起きている悲劇を無視しようともだ」。

「我々はシリア国民の自由のための闘争が8,300万のトルコ市民の闘争であることを忘れてはならない。シリア国民には自国内にとどまる権利があり、そうさせることが我々の責任だ」。

「我々がシリアの体制、そしてこれを支援する体制に主導権を与えてしまったら、我々はトルコで安寧になどしていられない…。我々はシリア国民が領内にとどまるために犠牲を払う用意がある」。

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トルコのフルシ・アカル国防大臣は、トルコ政府がNATO(北大西洋条約機構)加盟国に、イドリブ県でのシリア軍の攻撃を停止させ、新たな難民流入の波を食い止めるために具体的な措置を講じることを期待していると述べた。

アナトリア通信(2月12日付)が伝えた。

AFP, February 12, 2020、Anadolu Ajansı, February 12, 2020、ANHA, February 12, 2020、AP, February 12, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 12, 2020、Reuters, February 12, 2020、SANA, February 12, 2020、SOHR, February 12, 2020、UPI, February 12, 2020などをもとに作成。

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オブライエン米国家安全保障問題担当大統領補佐官「米国はイドリブ県でのアサド政権とイランの悪行を止める立場にはない」(2020年2月12日)

ロバート・オブライエン米国家安全保障問題担当大統領補佐官はワシントンDCでのシンポジウムでイドリブ県への米軍の介入の可能性を否定した。

オブライアンは補佐官こう述べた。

「アサド体制はトルコ軍および同軍とともに活動する勢力を爆撃した。我々が世界の警察官としての役割を果たし、イドリブに降下し、すべての当事者に戦闘停止を求めることを期待されているのだろうか?」

「米国が何かしなければならないという発想が、本当の言い訳になるとは考えていない。ロシア、イラン、そしてシリアの部隊がトルコ軍のほかにもおり、我々がすべきはそうしたことをしないことだ」。

「イドリブ県の情勢はきわめて悪い。アサドは非常に悪いプレーヤーだ。イランもだ。トルコとロシアがすべき措置は、そこでの現状を改善することに資していない」。

「米政府はシリアの体制とイランの悪行を止めなければならない立場にはなく、イドリブ県の状況を終わらせるための魔法の解決策もない」。

「我々は民間人に対するいかなる攻撃に対しても反対する。恐ろしい内戦だが、我々がイドリブ県に軍事的に介入し、この悪い状況をただそうとするべきだとは考えていない」。

AFP, February 12, 2020、ANHA, February 12, 2020、AP, February 12, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 12, 2020、Reuters, February 12, 2020、SANA, February 12, 2020、SOHR, February 12, 2020、UPI, February 12, 2020などをもとに作成。

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ロシア外務省報道官「イドリブ県での混乱はソチでの合意をトルコが遵守していないのが原因」(2020年2月12日)

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はモスクワでの記者会見で「(イドリブ県での)現下の混乱の原因は、2018年9月17日に発効したソチでの覚書が定める誓約をトルコが遵守していないことにある」と批判した。

ザハロワ報道官はしかし、「ロシアは今もアスタナ・プロセスの一環として交わされた合意に従うつもりで、これを完全なかたちで実施するため、(トルコと)共同で取り組み続けるつもりである」と付言したうえで、「現状において基本的な任務は、現地での暴力のレベルを軽減し、緊張緩和地帯内外に駐留する(アスタナ・プロセスの)保証国の軍人の保護を確実なものとし、軽率な軍事作戦によって炎上している対立を抑えることであり…、ロシア・トルコ首脳がイドリブ県の問題を包括的に解決するために今後行動することを期待している」と強調した。

AFP, February 12, 2020、ANHA, February 12, 2020、AP, February 12, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 12, 2020、Reuters, February 12, 2020、SANA, February 12, 2020、SOHR, February 12, 2020、UPI, February 12, 2020などをもとに作成。

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ハサカ県タッル・タムル町・アブー・ラースィーン町間に展開していたトルコ軍部隊が撤退(2020年2月12日)

ハサカ県では、ドゥラル・シャーミーヤ(2月12日付)やシリア人権監視団によると、タッル・タムル町・アブー・ラースィーン(ザルカーン)町間の村々に展開していたトルコ軍が部隊を撤退させた。

RT(2月12日付)によると、撤退は、同地で国家情報機関(MIT)のメンバー1人が殺害されたのを受けたものだという。

一方、ANHA(2月12日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍がタッル・タムル町近郊の村々を砲撃した。

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アレッポ県では、ANHA(2月12日付)によると、トルコ軍とその支援を受けるシリア国民軍が北・東シリア自治局とシリア政府の共同支配下にあるタッル・リフアト市近郊のバイルーニーヤ村、アイン・ダクナ村、マルアナーズ村を砲撃した。

一方、シリア人権監視団によると、トルコの占領下にあるバーブ市で、トルコの支援を受ける武装集団どうしが交戦した。

AFP, February 12, 2020、ANHA, February 12, 2020、AP, February 12, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 12, 2020、Reuters, February 12, 2020、RT, February 12, 2020、SANA, February 12, 2020、SOHR, February 12, 2020、UPI, February 12, 2020などをもとに作成。

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ハサカ県カーミシュリー市郊外で米軍と住民が衝突、有志連合が同地を爆撃、米軍車輌4輌が破壊され、住民1人死亡(2020年2月12日)

ハサカ県では、SANA(2月12日付)によると、シリア北東部に違法に駐留を続ける米軍部隊が、シリア政府と北・東シリア自治局の共同支配下にあるカーミシュリー市の東に位置するヒルバト・アンムー村、ハームー村で住民に向かって発砲、1人が死亡、1人が負傷した。

住民は、ヒルバト・アンムー村、ハームー村に設置されているシリア軍の検問所前に集まり、米軍車輌4輌の通行を阻止しようとしたが、米軍が実弾や発煙弾を発射した。

両検問所前には数百人の住民が集まっていたという。

発砲を受けた住民は、軽火器などで応戦し、車輌4輌を破壊、米軍も戦闘機を派遣し、ヒルバト・アンムー村の農地を3回にわたって爆撃した。

なお、米軍兵士と破壊された車輌は、衝突の数時間後に現場に派遣された車輌5輌からなる米軍の別の部隊によって回収された。

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米主導の有志連合のマイルズ・コギンズ(Myles Caggins)報道官(米軍大佐)は事件に関して、ツイッターのアカウント(https://twitter.com/oirspox)を通じて以下のような声明を出した。

「2月12日、シリアのカーミシュリー市近郊でパトロールを行っていた有志連合は、親シリア体制部隊によって占領されたチェックポイントに遭遇した。有志連合は一連の警告と緊張緩和の試みを行ったものの、パトロール部隊は何者かから軽火器での発砲を受けた。自衛のため、有志連合は応戦した。事態は緩和し、調査が行われている。有志連合は基地に帰還した。

コギンズ報道官によると、この衝突で米軍兵士1人がかすり傷を負ったという。

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一方、北・東シリア自治局に近いANHA(2月12日付)は、事件に関して、シリア軍と国防隊がヒルバト・アンムー村でメディア関係者と米軍に対して発砲したと伝えた。

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また、シリア人権監視団は、米軍と交戦したのが「地元住民と体制軍寄りの地元武装集団」だとしたうえで、 米軍の爆撃が威嚇の目的としていたと発表した。

AFP, February 12, 2020、ANHA, February 12, 2020、AP, February 12, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 12, 2020、Reuters, February 12, 2020、SANA, February 12, 2020、SOHR, February 12, 2020、UPI, February 12, 2020などをもとに作成。

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シリア軍がアレッポ県の3カ村を新たに制圧、ロシア軍の爆撃で住民7人が死亡(2020年2月12日)

アレッポ県では、SANA(2月12日付)によると、シリア軍がシャーム解放機構などからなる反体制武装集団との戦闘の末、M5高速道路の西側に位置するシャイフ・アリー村、アッラーダ村、アルナーズ村を制圧した。

シリア人権監視団によると、シリア軍はまた、戦車、軍用車輌約100輌からなる増援部隊を、アレッポ市ラーシディーン地区、ハラブ・ジャディーダ地区、M5高速道路沿線に派遣した。

一方、同監視団によると、ロシア軍がイッビーン村、カフル・アンマ村を爆撃し、イッビーン村で住民3人が、カフル・アンマ村で4人が死亡した。

ロシア軍はまた、シャイフ・アリー村、アウラム・クブラー町、カフルナーハー村、カフルタアール村、アスウース村、ジーナ村、アターリブ市、カフル・ヌーラーン村、アレッポ市ムハンディスィーン第1および第2地区、第46中隊基地一帯を爆撃した。

これに対して、反体制武装集団側は、シャーム解放機構がシャイフ・アリー村近郊でシリア軍の拠点に対して爆弾を積んだ車で自爆攻撃を行った。

また、カフル・ハラブ村、ミズナーズ村一帯でシリア軍への反撃を行った。

なお、シリア人権監視団によると、シリア・ロシア軍の攻勢を受けて、過去24時間の間に住民7万人以上が避難した。

これにより、2019年12月初め以降に発生した国内避難民(IDPs)の数は95万人を記録した。

このうちの52万人が1月半ば以降、さらに35万人が1月24日以降に避難を余儀なくされたという。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍戦闘機がマアーッラト・ナアサーン村、アレッポ市とバーブ・ハワー国境通行所を結ぶ街道の沿線一帯を爆撃した。

また、シャーム解放機構、国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる「決戦」作戦司令室が、トルコ軍の砲撃支援を受けて、マアーッラト・ナアサーン村一帯でシリア軍と交戦した。

一方、トルコ軍の戦車、装甲車など約350輌からなる増援部隊および特殊部隊がカフルルースィーン村に設置されている国境通行所からシリア国内に数回に分けて入った。

トルコ軍はまた、イドリブ県北のビンニシュ市・トゥウーム村間に新たな拠点を設置した。

これに対して、シリア軍も、戦車、軍用車輌など約100輌からなる増援部隊が県南部に派遣した。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を22件(イドリブ県8件、ラタキア県9件、アレッポ県3件、ハマー県2件)確認したと発表した。

トルコ側の監視チームは停戦違反を5件(イドリブ県3件、ラタキア県0件、アレッポ県2件、ハマー県0件)確認した。

AFP, February 12, 2020、ANHA, February 12, 2020、AP, February 12, 2020、al-Durar al-Shamiya, February 12, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, February 12, 2020、Reuters, February 12, 2020、SANA, February 12, 2020、SOHR, February 12, 2020、UPI, February 12, 2020などをもとに作成。

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ロシア難民受入移送居住センター:難民695人と国内避難民(IDPs)2人が新たにシリア政府支配地域に帰還、2018年半ば以降帰還した難民は550,264人、2019年以降帰還したIDPsは49,962人に(2020年2月12日)

ロシア国防省は、合同調整センター所轄の難民受入移送居住センターの日報(2月12日付)を公開し、2月11日に難民695人が新たに帰国したと発表した。

このうちレバノンから帰国したのは307人(うち女性92人、子供157人)、ヨルダンから帰国したのは388人(うち女性116人、子供198人)。

これにより、2018年7月18日以降に帰国したシリア難民の数は550,264人となった。

内訳は、レバノンからの帰国者173,844人(うち女性52,547人、子ども88,956人、ザムラーニー国境通行所、ジュダイダト・ヤーブース国境通行所、ダブスィーヤ国境通行所、クサイル国境通行所、タッルカルフ国境通行所を経由して帰国)、ヨルダンからの帰国者376,420人(うち女性112,970人、子ども191,966人、ナスィーブ国境通行所を経由して帰国)。

45カ国で難民登録したシリア人の数は6,569,742人(うち女性1,970,923人、子供3,350,568人)。

また、ロシアがシリア領内で航空作戦を開始した2015年9月30日以降に帰国した難民の数は 779,544人(うち女性234,175人、子供397,844人)となった。

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一方、国内避難民2人が新たに帰宅した。

うちダマスカス郊外県東グータ地方に帰宅したのは0人、ダイル・ザウル県サーリヒーヤ村の通行所を経由してダマスカス郊外県、ヒムス県などに帰宅したのは0人、ヒムス県南東グラーブ山のジュライギム通行所を経由して帰還したのは2人、イドリブ県アブー・ズフール町郊外の通行所およびハマー県スーラーン町の通行所を経由して帰宅したのは0人だった。

グラーブ山通行所を経由して帰還した2人のうち、米主導の有志連合が占領するヒムス県タンフ国境通行所一帯地域(55キロ地帯)に面するヨルダン北東部のルクバーン・キャンプから帰国した難民は0人だった。

これにより、2019年1月以降に帰宅した国内避難民の数は49,962人(うち女性16,283人、子供21,666人)に、2015年9月30日以降に帰宅した国内避難民の数は1,318,558人(うち女性398,842人、子供665,432人)となった。

Ministry of Defence of the Russian Federation, February 12, 2020をもとに作成。

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