シャルア移行期政権の内務治安部隊がフランス人戦闘員が居住するキャンプを攻撃、ウズベク人戦闘員の仲介で撤退(2025年10月22日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アフマド・シャルア移行期政権の内務治安部隊が21日深夜から22日にかけて、県西部のハーリム市の「グラバー(異邦人)・キャンプ」に対する大規模な治安作戦を実施した。

このキャンプは、セネガル系フランス人でジハード主義者のオマル・オムセン(本名オマル・ディアビ)が率いるグラバー旅団の拠点として知られ、同旅団の戦闘員であるフランス人とその家族が居住している。

内務治安部隊の情報筋によると、作戦は、同キャンプの安全上の脅威に対処するために実施され、フランス当局が指名手配している戦闘員、とりわけオムセンの拘束・身柄引き渡しとその影響力の排除を目的にしているという。

グラバー旅団側も、作戦の目的が旅団を解体し、指導者および構成員をフランスへ引き渡すことにあるとの見方を示している。

作戦では、内務治安部隊が軽・中火器を使用してキャンプへの突入を試みたに対して、フランス人戦闘員らが激しく抵抗し、戦闘へと発展、内務治安部隊は複数の戦闘員を逮捕することに成功したものの、双方に死傷者が出た。

なお、シリア人権監視団が得た情報によると、シャルア暫定大統領はフランス政府に対して、フランス人ジハード主義者のシリアからの完全排除とフランスへの引き渡しを約束したとされる。

さらに、モスクワ訪問時にはウラジーミル・プーチン大統領に対して、ロシアおよびチェチェン出身戦闘員の段階的送還を約束したという。

だが、グラバー旅団は声明を発表し、「移行期政権は米国および有志連合と協力し、外国人戦闘員の殲滅計画を実行している。最初の標的がフランス人移民だ」と非難した。

シリア人権監視団によると、内務治安部隊とグラバー旅団の戦闘を受けて、イドリブ県で活動を続けるウズベク人戦闘員の一部が映像声明を出し、フランス人戦闘員への全面的な支援と連帯を表明した。

目撃情報によれば、両者の戦闘は、移行期政権側が無人航空機を投入するなかで激化、グラバー旅団は他の外国人戦闘員に対して支援を要請したという。

シリア人権監視団によると、ウズベク人ら中央アジア諸国出身の戦闘員らはまた、戦闘激化を抑止するため両者の仲介に乗り出した。

内務治安部隊は正午にグラバー・キャンプに対する再突入を予定していたが、仲介を受けてこれを中止し、外国人戦闘員との全面衝突を避けるかたちで撤退した。

事態を受けて、外国人戦闘員が多く居住するイドリブ県北西部のハーリム市、ジスル・シュグール市、カファルヤー町、フーア市などでは、警戒態勢が敷かれていた。

作戦の直接的な契機となったのは、サーラという女性がグラバー・キャンプから脱出した事件で、ウムサンはこの女性の逃亡を助けた別の女性を捕らえて40回の鞭打ち刑を夫と子供、そして住民らの前で公開で執行、さらにアブー・イブラーヒーム・フランサーウィーとアブー・ハースィル・トゥーニスィーを名乗る2人が、サーラの娘を22日に誘拐し、イドリブ県のバーブ・ハワー国境通行所を経由してフランスへ連れ出そうとした。

イナブ・バラディーが23日に伝えたところによると、誘拐されたのは11歳のフランス人ムスリマ少女ミムーナ・フェルステさんで、犯人らは身代金を要求していた。

オムセンは、誘拐事件に関して、グラバー旅団のTelegramチャンネルを通じて、録音声明を発表し、「少女誘拐の件は根拠のない捏造だ」と否定、「我々に対して、少女誘拐、女性への拷問や焼殺、隊内での金銭窃盗、スーフィー信仰や魔術の実践など、虚偽の中傷が流されている。これらは我々の元メンバーを通じてフランス側が広めたデマだ」と述べた。

オムセンによると、シャルア移行期政権当局は、フランス側から「オムセンは9月に仏紙『リベラシオン』の記者に「もしシリア国民がジャウラーニー政権に反乱を起こせば、外国人戦闘員たちは国民の側に立つ」と語った…。オムセンは政権に対する反乱を計画している」との情報を受け取り、オムセンを召喚するとともに、グラバー旅団が所属するアンサール・タウヒード(第82旅団)に情報を共有し、オムセンに警告していたという。

イドリブ県のガッサーン・バーキール内務治安司令官は、作戦について、フィルダーン避難民キャンプ(グラバー・キャンプのこと)の住民からの訴えに基づくもので、ディアビ率いる武装集団による拉致・暴行事件に対応したと説明している。

**

イナブ・バラディーが23日に伝えたところによると、オマル・オムセン(49歳)は、フランス当局から「シリアやイラクへ渡ったフランス語圏出身のジハード主義戦闘員の80%を勧誘した人物」とされている。

彼はセネガルで生まれ、幼少期にフランスへ移住。服役中に過激思想に傾倒し、2013年にシリアへ渡った。ラタキア県の山岳地帯を拠点にグラバー旅団を率い、宗教的指導者的存在として信奉を集めている。

2014年9月、国連安保理第1267号委員会(ISIS・アル=カーイダ制裁委員会)は、オムセンをアル=カーイダとつながりがある人物として制裁リストに加えた。

理由は、当時シャームの民のヌスラ戦線に属していたグラバー旅団で指導的役割を担っていること、外国人戦闘員ネットワークの主導的調整者であること、インターネット上でテロ宣伝活動を行っていること。

また、2016年には米国務省がオムセンを特別指定テロリスト(SDGT)に指定、2020年から22年にかけてシャーム解放機構によって逮捕・拘束されていた。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シャフバー町のローマ劇場で「サバーヤー・サナド」が誘拐被害者の解放を求める抗議デモ(2025年10月22日)

スワイダー県では、スワイダー24によると、シャフバー町のローマ劇場で「サバーヤー・サナド」が誘拐被害者の解放を求める抗議デモを行った。

**

シリア人権監視団によると、ダマスカス・スワイダー街道を経由して、シリア・アラブ赤新月社の監督のもと、生活必需品や食料品を積んだ約50台のトラックからなる車列がスワイダー県に輸送された。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アサーイシュは緊急対応部隊(HAT)、米主導の有志連合とともにダイル・ザウル県北部で治安作戦を実施し、ダーイシュのスリーパーセルのメンバー2人を拘束(2025年10月22日)

北・東シリア地域民主自治局内務治安部隊(アサーイシュ)は、公式サイトで声明を出し、緊急対応部隊(HAT)、米主導の有志連合とともに、県北部で治安作戦を実施し、ダーイシュ(イスラーム国)のスリーパーセルのメンバー2人を拘束したと発表した。

シリア人権監視団によると、治安作戦が実施されたのは、タキーヒー村とアッタール村の2ヵ所。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ダイル・ザウル県マイヤーディーン市で正体不明の武装グループがシャルア移行期政権の内務治安部隊の検問所を襲撃(2025年10月22日)

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、正体不明の武装グループが未明に、ダイル・ザウル市で前政権の残党と目される人物を自宅近くで銃撃した。

また、シリア人権監視団によると、マイヤーディーン市では、正体不明の武装グループがシャルア移行期政権の内務治安部隊の検問所を襲撃、隊員3人が負傷した。

**

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、タッルカラフ市近郊のマフタビーヤ村の理容院を正体不明の武装グループが襲撃、男性1人が死亡した。

**

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、サフィーラ市近郊のアズィーズィーヤ村で、車内の爆発物が爆発し、2人が死亡した。

**

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、東ガーリヤ町で、オートバイに乗った2人組の正体不明の武装グループが女性2人に発砲、40代の女性が死亡し、20代の義理の娘が負傷した。

**

ダマスカス県では、内務省(フェイスブック)によると、県のテロ対策局が、ダイドナーヤー刑務所の被拘束者に対する重大な人権侵害に関与した疑いがもたれているアクラム・スルーム・アブドゥッラー容疑者(少将)の身柄を拘束した。

(C)青山弘之 All rights reserved.

アレッポ県ダイル・ハーフィル市一帯をシャルア移行期政権部隊が無人航空機などで攻撃、シリア民主軍が応戦(2025年10月22日)


アレッポ県では、ANHAによると、アフマド・シャルア移行期政権によって昨年12月に制圧されたマンビジュ郡内の複数の墓地が破壊と盗難の被害を受けた。

墓地には、ダーイシュ(イスラーム国)との戦闘での犠牲者が埋葬されている。

同様の事件は4月1日、6月5日、9月12日に続いて4度目。

**

アレッポ県では、ANHAシリア人権監視団によると、シャルア移行期政権の内務省当局と北・東シリア地域民主自治局の内務治安部隊(アサーイシュ)が、移行期政権支配地と自治局支配下のアレッポ市シャイフ・マクスード地区、アシュラフィーヤ地区を結ぶアシュラフィーヤ坂通りを再開通させた。

道路の再開は、10月20日にラッカ県タブカ市で行われたシリア民主軍と移行期政権表団との会合を受けたもの。

**

ラッカ県では、ANHAによると、シャルア移行期政権は、ラッカ市とイスリヤー村(ハマー県)を結ぶタブカ・サラミーヤ街道の沿線に設置されているザキーヤ検問所を再び閉鎖した

**

アレッポ県では、ANHAシリア人権監視団によると、シャルア移行期政権に所属する部隊が午前、ダイル・ハーフィル市近郊の検問所一帯を砲撃、また夜にも同検問所一帯を自爆型無人航空機で攻撃した。

シリア人権監視団によると、自爆型無人航空機が標的としたのは、北・東シリア地域民主自治局の内務治安部隊(アサーイシュ)の検問所で、近くに停車していたブルドーザーを直撃した。

シリア人権監視団によると、これに対して、シリア民主軍も報復として、ダイル・ハーフィル市一帯に展開するシャルア移行期政権の部隊を砲撃した。

(C)青山弘之 All rights reserved.

イスラエル軍はクナイトラ県への侵入を続ける一方、ダルアー県を砲撃(2025年10月22日)


クナイトラ県では、SANAシリア人権監視団によると、2台の掘削機、1台のブルドーザー、1台の輸送トラックなどからなるイスラエル軍部隊がハミーディーヤ村に侵入し、村内で掘削作業を行った。

一方、シリア人権監視団によると、イスラエル軍は、占領下ゴラン高原で実施中の大規模軍事演習の一環として、クナイトラ県クードナ村郊外のアフマル丘の前哨基地から複数の砲弾を発射した。

**

ダルアー県では、SANAによると、イスラエル軍部隊がヤルムーク川河畔のクーヤー村を砲撃した。

**

シリア人権監視団は、イスラエル軍兵士が、クナイトラ県トゥルナジャ村に侵入した際に撮影した映像を公開したと発表、これを転載した。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シリアの制裁緩和とシャルア暫定大統領に対する制裁解除を盛り込んだ米国安保理決議案への反対国は現時点で中国のみ(2025年10月22日)

アラビー・テレビ(インスタグラム)は、複数筋の話として、シリアの制裁緩和とシャルア暫定大統領に対する制裁解除を盛り込んだ米国安保理決議案について、中国が現時点で唯一の妨害国であると速報で伝えた。

(C)青山弘之 All rights reserved.

国連安保理:「移行期の初期的成果は多くの女性たちの期待に十分応えるものではなかった」(2025年10月22日)


国連SANAによると、安保理はシリア情勢への対応を協議するための会合(第10021回会合)を開催した。

ナジャート・ロシュディ事務総長副特使は会合で、国際社会による継続的な関与と迅速な制裁解除が、シリアの政治移行を支援し、女性や少数派の実質的な包摂を確保し、同国の主権と領土保全を守るために不可欠であると訴えた。

ロシュディ事務総長副特使は以下の通り述べた。

2024年12月、シリアの女性たちは新しい時代の到来を祝う中で、苦難からの解放、法の支配、真の平等へと至る持続的な歩みを期待した。アフマド・シャルア暫定大統領もその願いへの支持を表明しました。しかし、その後の数ヵ月で、移行期の初期的成果は多くの女性たちの期待に十分応えるものではなかった。
シリアの女性たちは、今後の選挙過程が彼女たちの正当な参加権を保護し、代表の機会を最大化するよう設計されることを期待し、かつ要求している。

ロシュディ事務総長副特使は、10月5日に実施された人民議会の間接選挙が概ね平穏に行われたことを歓迎しつつも、これまでに選出された議員119人の内訳は、キリスト教徒1名、イスマーイール派3名、アラウィー派3名、クルド人4名、そしてドゥルーズ派の議員はゼロであるとし、代表性のさらなる改善が必要であると訴えた。

一方、シリア民主軍とシャルア移行期政権による3月10日の合意についても言及、これを平和的に進展させるべきだと述べるとともに、イスラエルによる領土侵犯を終わらせるよう求め、「シリアへの外部干渉が続いていることは受け入れがたい」と付言した。

人道問題調整事務所(OCHA)のラメシュ・ラジャシンガム人道部門局長も報告を行い、シリアの人道状況を「世界最大級の人道危機の一つ」と形容し、人口の70%以上に影響が及んでいると述べた。

ラジャシンガム人道部門局長は、アレッポ県での新たな戦闘により民間人の犠牲と避難が発生しているほか、スワイダー県では治安不安から燃料やパンが不足し、各県での山火事が家族の避難と公共サービスの中断を招いていると警告した。

理事会で発言した各国代表のうち、韓国、ギリシャ、デンマーク、スロベニア、英国(ジェームズ・カリオキ)は、シリアで最近達成された成果を評価しつつも、女性および周縁化されたマイノリティ・コミュニティの代表性拡大を求める声が相次いだ。

米国のマイク・ウォルツ大使は、人民議会選挙を「歴史的な機会」と評し、ドナルド・トランプ大統領による制裁解除決定が開いた新しい経済的未来をシリアが積極的に受け入れるよう求めるとともに、安保理各国にも同様の措置を検討し、国連安保理決議第1267号の制裁対象だったシリア指導者らへの制裁解除を促した。

パナマ、パキスタン、フランス(ジェローム・ボナヴォ)の各代表も経済制限の解除の必要性を強調した。

10月の安保理議長国であるロシアのワシーリー・ネヴェンジャ大使は、「一方的な制裁が人道的必要を悪化させ、復興を妨げ、シリア国民の発展権を制限している」と述べ、国際的な投資と支援を呼びかけた。

中国の傅聰大使は、アサド政権崩壊後の混乱を外国人テロ戦闘員が利用しており、これらの集団を「完全に根絶しなければならない」と強調、制裁解除にあたっては、シリアの対テロ・治安状況およびそれがもたらす複雑な影響を十分考慮すべきだと述べた。

トルコは、「バランスの取れたアプローチ」を求め、宗派主義的な勢力の要求に屈することが国民統合を損なう恐れがあると警告、とりわけシリア民主軍の強圧的行為が、地元のキリスト教との緊張を悪化させていると指摘した。

アフリカ諸国を代表して発言したアルジェリアのアンマール・ベン・ジャーミア大使は、国際社会に対して建設的で支援的な役割を果たすべきであると述べた。

パキスタンと、アラブ諸国を代表して発言したオマーンのハーリド・ビン・サーリフ・ルブヒー大使は、米国が仲介するイスラエル・ダマスカス間対話の進展を歓迎しつつ、イスラエルの最近の軍事行動によるシリア主権の侵害およびゴラン高原の継続的占領を強く非難した。

シリアの国連常駐代表であるイブラーヒーム・アラビー大使は、自国の現状に関して多くの発言があったことに応じ、「現在の状況は前例のない成果である」と述べ、「数十年ぶりにシリア国民が選挙に参加できたことは、新しい自由の時代の幕開けである」とし、テロ組織との戦いにおける国際・地域協力の継続を誓い、「私たちは今、自らの手で歴史を書いている」と締めくくった。

(C)青山弘之 All rights reserved.

国連人間居住計画(UN-Habitat)の高林博史シリア事務所長がライード・サーリフ緊急事態災害大臣と会談(2025年10月22日)

緊急事態災害省(フェイスブック)によると、国連人間居住計画(UN-Habitat)のシリア事務所の高林博史所長ら代表団がライード・サーリフ緊急事態災害大臣と会談し、持続可能な都市計画の分野における協力強化の方法、災害リスク軽減のための都市データベース開発、そして復興支援の取り組みを推進する方策について協議した。

また、過去数年間におけるシリアの都市計画分野での課題や、安全・防災基準の適用、包括的な早期警戒システムの構築、精密な地理学的研究に基づく国家リスクマトリクスの策定といった現下の課題についても意見を交わした。

ラーイド大臣は、UN-Habitatによる開発・復興計画支援の努力に謝意を示し、、より安全で持続可能な都市づくりを促進する実践的なパートナーシップの構築への期待を表明した。

(C)青山弘之 All rights reserved.

シャルア暫定大統領が首都ダマスカスのあるモスクでファジュルの礼拝を終えた直後の様子を撮影した動画がネットで拡散(2025年10月22日)

ムラースィルーンは、アフマド・シャルア暫定大統領が首都ダマスカスのあるモスクでファジュルの礼拝を終えた直後の様子を撮影した動画を転載した。

**

外務在外居住者省(X)によると、アスアド・ハサン・シャイバーニー外務在外居住者大臣は、グレゴリー・ガリガン駐シリア大使を迎え、同大使から信任状を正式に受け取った。

**

ムルハフ・アブー・カスラ国防大臣は、Xで、シリアの若手士官学生による留学団が、トルコおよびサウジアラビアの軍事大学へ向けて出発したと発表した。

(C)青山弘之 All rights reserved.