軍が数週間におよぶ戦闘の末アレッポ市南部の要衝ハナースィル市を完全制圧するなか、シリア国内で活動する複数のサラフィー主義武装集団がイスラーム国にアアザーズ市および同市周辺からの撤退を求める(2013年10月3日)

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反体制勢力の動き

シリア国内で活動するイスラーム軍など複数のサラフィー主義武装集団がインターネットを通じて共同声明を出し、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)にアレッポ県アアザーズ市および同市周辺からの撤退を求めた。

声明はシャーム自由人運動(アブー・アブドゥッラー・ハマウィー)、イスラーム軍(ムハンマド・ザフラーン・アブドゥッラー・アッルーシュ)、タウヒード旅団(アブドゥルカーディル・サーリフ)、ハック旅団、シャームの鷹旅団(アフマド・イーサー・シャイフ)、フィルカーン旅団が発表、「ダーイシュの同胞に部隊、装備をただちに自らの拠点に撤退させる」ことを求めた。

また北の嵐旅団に治しても、「即時発砲停止」を行うよう呼びかけた。

そのうえで、ダーイシュと北の嵐旅団に対して、「イスラーム主義諸派合同シャリーア法廷」(アレッポ市のシャリーア委員会本部で48時間以内に開催予定)の裁定に服するよう呼びかけた。

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アラビーヤ(10月3日付)によると、ラスタン軍事評議会は声明を出し、ヒムス県におけるイラク・シャーム・イスラーム国とシャームの民のヌスラ戦線の駐留を認めないとしたうえで、48時間以内にヒムス市北部郊外一帯から退去するよう最後通告を出した。

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クッルナー・シュラカー(10月3日付)は、ダイル・ザウル県ブーカマール市で活動する武装集団4組織が「スンナとジャマーアの民軍」として統合したと報じた。

同組織に参加したのは、ファトフ旅団、アサルの民旅団、スンナの獅子旅団、ラーヤの民旅団で、司令官はアブー・ムンタスィルを名乗る離反少尉が務めるという。

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シリア革命反体制勢力国民連立のナジーブ・ガドバーン駐米代表は、ザマーン・ワスル(10月3日付)に、国連総会に合わせてニューヨークを訪問したアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長ら使節団が、イランやヒズブッラーの戦闘員のシリア駐留を「非難」し、「政治的解決に入る前にシリアから退去することを求める」べきだと、安保理常任理事国などに伝えたことを明らかにした。

また、ガドバーン代表によると、連立使節団はニューヨークでのシリアの友連絡グループ会合で、国連安保理決議第2118号、シリア国内の過激派の排除、人道支援、ジュネーブ2会議について協議、安保理決議については、国連憲章第7章に依拠した制裁を明記できなかった点、化学兵器以外の兵器によるアサド政権の殺戮を追及していない点などへの不満の意を伝えたという。

またジュネーブ2会議については、トルコ、UAE、カタールに参加を正式に要請した。

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反体制活動家で元文化大臣のリヤード・ナアサーン・アーガー氏は、DPA(10月5日付)に、シャームの民のヌスラ戦線など国内の反体制武装集団がシリア革命反体制勢力国民連立を拒否したことに関して、「連立と自由シリア軍参謀委員会に対して、(ジュネーブ2会議での)交渉で政権に譲歩しないように圧力をかけている」との見方を示した。

またジュネーブ2会議そのものについては「時間だけを食うパレスチナ和平交渉のようになることを恐れている」と懸念を表明した。

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ダマスカス郊外県で活動する反体制武装集団5組織が、アムジャード・イスラーム連合を結成し、統合した。

アムジャード・イスラーム連合に参加したのは、ウンム・クラー旅団、サハーバ末裔旅団、アビー・ザッル・ガファーリー旅団、グータ殉教者旅団、アルバイン殉教者旅団。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、軍と国防隊が数週間におよぶ反体制武装集団との戦闘の末、アレッポ市南部の要衝ハナースィル市を完全制圧し、アレッポ市・サラミーヤ市(ハマー県)間の兵站路を回復した。

3日の戦闘で、軍は反体制武装集団の戦闘員25人を殺害する一方、国防隊の戦闘員18人と軍の兵士数十人が戦死したという。

一方、SANA(10月3日付)によると、クワイリス村、アルバイド村、カスキース村、ラスム・アッブード村、バーブ・アレッポ街道、カフルハムラ村、アターリブ市北部、アレッポ市サラーフッディーン地区、ジュダイダ地区、旧市街、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団を追撃、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、シャーム・イスラーム自由人運動、シャームの民のヌスラ戦線、ハック旅団、ミクダード・ブン・アスワド大隊が、県北部のアラウィー派の町カフルナーン村を制圧した。

同村では、先月19日から、これらの武装集団と軍、国防隊が攻防を続けていた。

一方、SANA(10月3日付)によると、カフルナーン村、ヒムス県クスール地区、ダール・カビーラ村、ガースィビーヤ村、ハーリディーヤ村、ウンム・サフリージュ村、ラッフーム村で、軍が反体制武装集団を追撃、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またレバノン領から、タルビーサ市、ガントゥー市、タッルカラフ市郊外に潜入しようとした武装集団を軍が撃退した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団が対ヨルダン国境に近いバッカール村を制圧する一方、軍はダルアー市のダム街道地区などを砲撃した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区に軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(10月3日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団を追撃、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ムウダミーヤト・シャーム市で、軍と反体制武装集団が交戦し、軍が砲撃を加えた。

一方、SANA(10月3日付)によると、ザマルカー町、ドゥーマー市郊外、シャイフーニーヤ村、ダイル・サルマーン市郊外、カースィミーヤ市郊外、バイツ・サワー村、ダーライヤー市、バスィーマ村、カーラ市郊外、ヤブルード市、ナースィリーヤ村、ラヒーバ農場などで、軍が反体制武装集団を追撃、シャー布民のヌスラ戦線の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(10月3日付)によると、ハーン・ジャウズ村、ラウダ村で、軍が反体制武装集団を追撃、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(10月3日付)によると、タルマラ村で、軍が反体制武装集団を要撃し、ザーウィヤ山軍事評議会のメンバー全員を殲滅した。

またジスル・シュグール市郊外、アブー・ズフール航空基地周辺、ミシュミシャーン村、カニーヤ村、カーディリーヤ村、ハマーマ村、ザルズール村、アイン・アルーズ村、タッル・マニス村、カフルルーマー村、サラーキブ市、タウーム市、ビンニシュ市、アルバイーン山周辺、ウンム・ジャリーン村、タッル・サラムー村で、軍が反体制武装集団を追撃、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(10月3日付)によると、ダルアー市、アトマーン村、インヒル市、ブスラー・シャーム市、ナワー市で、軍が反体制武装集団を追撃、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、クッルナー・シュラカー(10月3日付)によると、イラク・シャーム・イスラーム国が占拠するラッカ市内の公園で、アッバース朝時代のカリフ、ハールーン・ラシードの像の頭が何者かによってもがれ、破壊されているのが発見された。

Kull-na Shuraka', October 3, 2013

Kull-na Shuraka’, October 3, 2013

レバノンの動き

『ジュムフーリーヤ』(10月3日付)は、ヒズブッラー幹部がミシェル・スライマーン大統領と会談し、シリアからのヒズブッラー戦闘員の撤退について協議したと報じた。

同紙によると、ヒズブッラーは撤退プロセスを開始するにふさわしい条件がレバノン国内で整うことを希望すると伝え、現時点での撤退に消極的な姿勢を示したという。

諸外国の動き

化学兵器禁止機関の調査先遣隊は声明を出し、シリア国内での活動を開始、「調査団が活動する地域の安全を確保するため、シリアの当局との協力を始めた」と発表した。

AFP(10月3日付)によると、先遣隊のうち9人が早朝、ダマスカス県内の滞在先のホテルを出発し、調査現場に向かったが、どこに向かったかは不明だという。

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トルコ国会は、有事にシリアへの軍部隊派遣を政府に認めた法律(2012年10月4日承認)の有効期限を1年間延長することを承認した。

同法律は2013年10月4日に期限切れとなる予定だった。

ロイター通信(10月3日付)が報じた。

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化学兵器禁止機関執行理事会で、サウジアラビアのアブドゥッラー・シャグルード代表大使は、国際社会に対して、シリア危機のあらゆる側面に対処するための道義的・法的責任を負うよう呼びかけるとともに、化学兵器使用などの犯罪をもたらしたすべての者を処罰すべきだと主張した。

AFP, October 3, 2013、Alarabia.net, October 3, 2013、DPA, October 3, 2013、al-Hayat, October 4, 2013, October 5, 2013、al-Jumhuriya, October 3, 2013、Kull-na Shuraka’, October 3, 2013、Naharnet, October 3,
2013、Reuters, October 3, 2013、Rihab News, October 3, 2013、SANA, October
3, 2013、UPI, October 3, 2013などをもとに作成。

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