6日にモスクワで開幕したシリア政府と反体制派の和平交渉「モスクワ2」において、シリア政府代表と反体制派代表が直接会談を行った。
『ハヤート』(4月9日付)によると、反体制派代表は、7日までに議題を統一文書として作成し、直接会談においてシリア政府、ロシア外務省に回付した。
この統一文書は11項目からなり、以下の点を骨子としているという:
1. ジュネーブ合意(2012年)の諸原則に基づいた政治的解決が必然であることの確認。
2. 2014年2月にスイスで行われた「ジュネーブ2」会議を継承するかたちでの「ジュネーブ3」会議の開催を可能とするような政策実施に向けた行動を行うこと。
3. すべてのシリア人が、政党、組織のいかんにかかわらず、政治的解決を信じており、政治プロセスの参加者であることの確認。
4. シリア国内でのすべての暴力行為と殺戮の即時停止、人道的悲劇すべてへの対処・解決、テロとの戦い、文民民主国家への民主的移行・変革の実施、シリアの国土を占領する国内外の勢力への対峙、という5点への対処を優先議題とすること。
5. 人種主義、宗派主義、教条主義に基づくようないかなる政治的関係正常化も拒否。
6. シリアでの流血停止に寄与させるため、地域諸国、諸外国の当事者に圧力をかけることを国際社会に要請。
7. 民間人を標的とすることを停止、言論犯・平和的活動家の釈放、人質・捕虜の解放、シリア全土への食糧・医療物資の配給、避難民・難民の即時帰宅、人権最高評議会の設置、メディアの独占の撤廃、逮捕者に関する問題の解決、すべてのシリア人へのパスポート発給・更新。
これに対して、シリア政府代表を率いるバッシャール・ジャアファリー国連代表大使は、直接会談の場で、シリア政府がロシア政府によって示された議題に同意すると表明したのに対し、反体制派代表は、この議題をめぐって意見の一致を見ることができず、独自の議案(統一文書)を提示したとことを明らかにした。
SANA(4月8日付)によると、シリア政府代表と反体制派代表との直接会談に先立ち、ロシア政府は以下の点からなる議題を提出していたという:
1. 国際社会に、カタール、サウジアラビア、トルコなどといったアラブ諸国、諸外国の当事者すべてにテロ支援を停止するよう、真剣且つ早急に圧力をかけるよう呼びかけること。
2. 国際社会に、シリア国民に対して科せられている全ての経済制裁の即時・完全解除を呼びかけること。
3. ジュネーブ合意の原則を基点とした、合意に基づくシリアの危機の解消。
しかし、『ハヤート』は直接会談の雰囲気に関して、政府代表が「モスクワ1」時の強硬姿勢を緩和し、柔軟な勢で臨んだと積極的に評価した。
一方、ジャアファリー国連大使は「参加者の間で、さまざまな見解や考え方が真剣、深淵、そして実り多いかたちで交わされた」と評価するとともに、ロシアが提示した議題のうちの第1、第2の議題の協議に力点が置かれたことを明らかにした。
また「我々は何らかの共通項にたどり着き、反体制派の当事者らがその内容を検討、合意したうえで、明日、相互理解がなされることを願っており、それをロシアの友人らが提示した議題の第1、第2の議題の成果としたい」と付言した。
なお、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は会合には出席しなかった。
複数の外交筋によると、ラブロフ外務大臣は、最終日9日の協議の行方を見据えたうえで、会合への出席を最終決定するものと見られる。
AFP, April 8, 2015、AP, April 8, 2015、ARA News, April 8, 2015、Champress, April 8, 2015、al-Hayat, April 8, 2015、Iraqi News, April 8, 2015、Kull-na Shuraka’, April 8, 2015、al-Mada Press, April 8, 2015、Naharnet, April 8, 2015、NNA, April 8, 2015、Reuters, April 8, 2015、SANA, April 8, 2015、UPI, April 8, 2015などをもとに作成。
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